22 / 25
VS魔神軍 激闘編
9 迷宮都市 その5
しおりを挟む
ゴーレムの前にライピョンさんを模したエレキゴーレム『雷神が降臨した。
フォルム自体はライピョンさんと酷似しているが、顔面がロボット風の双眸をしており、そのままロボットアニメにも出て来そうな雰囲気だ。
エミリーが原型を作り、明日香が魔法で強化しているので、エミリーはライピョンさんと二人三脚で操作にほぼ専念し、明日香はほぼ魔力提供にとどまる感じだ。
そのため、明日香は俺たち全体を魔法で防御するだけでなく、その他の作業も時々行う余裕があるようだ。
迷宮の奥からリビングアーマーが時々追加されてくるため、じいちゃんの攻撃だけではすり抜けてきそうになるのだが、それを明日香が強烈な魔力弾で叩き壊している。
実は俺たち『足手まとい』が居なかったら、案外明日香がもっと無双していたのではないかと懸念を感じているのだ。
とはいえ、先頭に出たら明日香を異常に心配させるので、うかつに前に出られないし…。頑張って魔法を勉強してみようか…。
雷神とゴーレムはほぼ互角のつば競り合いを続けている。
スピードでは雷神が勝り、攻撃力・防御力ではゴーレムが優る…と明日香がナビを見ながら解説してくれる。
「雷神ゴーガン!!」
雷神が巨大な弓を取り出し、次々とゴメラ達に向かって矢を放つ。
光でできた矢はゴーレムの体に刺さるのだが、まもなくと中から金属が盛り上がってきて傷がふさがってしまう。
「あのゴーレム、ただでさえ体表が頑丈なうえに、全体の耐久力や回復力が桁違いだわ!」
雷神とゴーレムの戦闘をナビで見ながら明日香が叫ぶ。
「確かに!このままじゃあ、雷神のエネルギーが先にきれてしまう!明日香!どうすればいい?」
「そうね…。雷神用の強力な武器を創造するしかないわね!」
エミリーに問われて明日香が決断する。
「ライピョンさんとエミリーがイメージしやすい武器を強くイメージして!私がそれにエネルギーを加えるから!」
「明日香、わかった!やってみる!」
エミリーは叫ぶと雷神≒ライピョンと意識をリンクさせた。
「牛によく似たお前さん、蚩尤だろ?えらい強い邪神だったということで展開で画像を見たことがあるぜ♪」
「…ほお、我を知っていたか。だが、貴様のような強大な天界の武将は聞いたことがないのだが…。」
「俺はナタコだ。ナタ太子は俺の兄にあたる。ただ、俺はまだ若手だからね。名前はあまり知られていないのさ。まあ、別に名前は有名にならなくても構わない。強い奴とやりあえればいいからね♪」
敵のボス…キメラ魔神とでも呼ぶべき存在の一部である蚩尤とナタコはどうやら同じ世界の出身らしい。
「そうか、あのナタ太子の妹か。それでは、少しいいことを教えておいてやろう。もし、我らを倒せたときに少しは役に立つだろう。
我ら七柱は暗黒邪神ニビルがいろいろなところから引き抜かれて奴の配下になったものばかりだ。
部下が奴の本当の子飼いでないせいか、手下をただの駒としてしか見ていないようであるし、やたら猜疑心が強く、策略を好む奴だ。
おそらくお前さんと真正面からやりあうのを避けて、なんとか罠にかけようとするのではないかと思う。」
「なるほど、それはいい情報を聞いた。では、そのお礼に全力で、苦しまずに済むように止めを刺させてもらうぜ♪」
ナタコが再び戦闘態勢に入る。
「先ほどの攻撃はかなり本気だったのだが、全然ダメージがいっていないようだな…。こちらも全ての力を総動員して、死力を尽くさせてもらう!!」
キメラ魔神は叫ぶと、魔導師ガイアスの口から呪文が唱えられ、魔神の姿が七体新たに現れ、本体を含め、それらが一斉にナタコに襲い掛かる。
「へえ、普通なら見分けられないくらいよくできた分身だね。だが、俺の『真実を見る眼』をもってすれば、本物は必ず見通せる!」
ナタコは偽物をすり抜けようとしたが、偽魔神たちの振るうたくさんの武器に阻まれて素早く後ろへとびすさる。
「驚いたな…。全部偽物とは言え、使う武器は本物かい…。しかも偽物の耐久力はともかく、動き自体は本物とほぼそん色がないとはね。」
ナタコが武器を構え直して、キメラ魔神たちを睨みつける。
「その通り。今のお前さん相手に一対一では分が悪いが、『武器王』ギルガメシュの数々の武器と蚩尤の並外れた戦闘力、ガイアスの魔力を合わせることでお前さんを倒しうる力を我らは得た。
貴様らを倒し、暗黒魔神ニビルも倒してみせる!!」
八体のキメラ魔神は再び一斉に動くとナタコに殺到した。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
「ザップマンビーーーム!!ザップマンビーーム!ビームったら、ビーーーム!!!」
「はい、回復魔法です♪」
じいちゃんがビームでどんどんリビングアーマーを倒すものの、迷宮の奥から次から次へと後続のリビングアーマーが出てきて、全く数が減らない。
慣れたおかげでアリーナ王女はじいちゃんが限界に達するすぐ前に気力回復魔法をかけて、再びじいちゃんは光線でリビングアーマーの撃破を再開する…しばらくそんな展開が続いた。
「しんどい!!めっちゃしんどい!!じじいをどんだけ働かす気なんじゃ?!!この迷宮は!!!」
じいちゃんがひいひい言いながらさらに光線を出し続ける。
「アリーナ王女、私にも回復魔法をお願いします!!」
「了解です。『気力・体力・その他回復魔法』!!」
シャリーからの要請にアリーナ王女がシャリーにも回復魔法をかける。
「助かります!!もうひと頑張りしてきます!!」
傷がふさがり、体力と気力も回復したシャリーが再び気合を込めて剣を振るいだす。
「もういやじゃ!!もふもふ成分が切れた!!やりたくないい!!」
光線はなんとか出しながらもじいちゃんがわがままを言いだした。
じいちゃんに何か言おうとしたアリーナ王女はぐはっと言いながら口から大量の血を吐いた。
「わあああああ!!!アリーナちゃん、大丈夫か?!!!!!!」
しかし、アリーナはすぐに自らに呪文を唱えると、血が止まり、青かった顔色が元に戻った。
「失礼!呪文の唱え過ぎで、体への負担が大きくなりすぎました。ですが、もう大丈夫です。」
アリーナは血まみれになった顔を拭いながらにっこりと笑う。
「お兄ちゃん!アリーナ王女に極大回復ポーションを飲ませてあげて!」
俺は明日香の指示に従い、持っていた明日香特製の『極大回復ポーション』をアリーナ王女に飲んでもらう。
え?なんで本人が自分で持って飲まないのかですか?
いえ、本人にも持ってもらっているのですが、俺がやることがあまりないので、せめて『ポーション要員』になっているわけで…。
自分の非力さが憎い!!
幸か不幸か、みんな親切で優しいので誰一人僕を役立たずと言わないし、責めたりしないのだけれど、時々みんなの優しさが逆につらくなります、はい。
もちろん、じいちゃんはそれ以上我がままを言わずに泣きながら光線を出し続けた。
「「「雷神剣!!」」」
ライピョンさんとエミリー、明日香がシンクロし、『雷神の合わせた両手から光でできた剣が長々と伸びる。
「ライピョン!エネルギー消費が激しくてこの武器は長くは保たない!速攻で決めてくれ!!」
「わかった!行くぞ!!」
エミリーの叫びにライピョンさんは呼応し、雷神は剣を構えてゴーレムに突っこんでいく。
「雷神爆雷剣!!」
雷神が輝くエネルギー剣を上段から叩きつけ、ゴーレムがそれを両手で受け止める。
バチバチバチバチ!!!
ゴーレムは両手でしばし、エネルギー剣を受け止めていたが、エミリーとライピョンさんがさらに気合を込めるとエネルギー剣はその輝きを大きく増した。
ブシュウウウ!!
剣を受けていたゴーレムの手が少しずつ高熱で溶け出している!!
「でりゃああ!!!!」
ライピョンさんがさらに叫ぶと、剣はゴーレムの頭頂から股下までバッサリ切りぬいた。
切り裂かれたゴーレムは次第に形が崩れていき、残骸を明日香から伸びた影が呑み込んでいった。
…今の影は明日香が言っていたレインボードラゴンだね。
「く、ゴーレムが?!!」
たくさんの分身が一斉攻撃に出るものの、ナタコの堅い守りに阻まれて、なかなか大きなダメージを与えられないでいたキメラ魔神はゴーレムが崩れ去るのを見て、一瞬ひるんだ。
「おっさんたち!甘いぜ!!」
ナタコが八本の腕のうち六本を引っ込めると、残った二本の剣が大きく輝いた。
「斬妖刀神速剣!!」
ナタコが目にもとまらぬ速さで動くのにキメラ魔神と分身は何とか対応しようとしたが、一歩及ばず、ナタコは本体の眼前に到達していた。
一瞬後、双方がすれ違った後、ナタコの左頬から血が流れ、キメラ魔神の胴体が斜めにずり落ちた。
「…やはり、届かなかったか…。だが、ここまで戦えて、悔いなし…。」
キメラ魔神はナタコに斬られるとその体が砂のように崩れていった。
「…ええと、明日香?あの魔神はレインボードラゴンに食べさせなくていいのか?」
「……ええと、エネルギーを使い果たしたカスみたいなものだから、食べさせても意味がないのよね…。誤算だわ…。」
キメラ魔神が消えゆくさまを俺たちは呆然と見やるほかなかった。
「ふははははははは!!!そうか!今度は奴らはゴーレムの力は取り込めたものの、ガイストたちを取り込むのに失敗したわけだな!!!あれ以上強化されていては、さすがのわしもてこずったろうからな。念入りに防御システムの罠を張り巡らせておいてやろう!」
暗黒邪神ニビルは部下の報告を聞きながら、にやりと笑った。
「……てなことになっていると思うのよ。ゴーレムが過去迷宮内に集められていた力を予想以上に取り込んでおいてくれたから、結果的には予定していたのとほぼ変わらないくらいの力を取り込めたし、今回取り込んだプログラムも、向こうの古代都市のシステムと同じプログラムを使っているはずだから、向こうに着いてから古代都市の防衛システムの解析には予定よりも時間がかからないと思うの。
こちらが失敗したと思って相手が油断している分、勝率が上がると思うわ。
あとはどうやって狐と狸の化かし合いに勝つかよね♪」
「…明日香さま、ずい分自信がおありのようですね。」
「ふふふ、自分が強いとか、頭がいいと思いあがっている相手は相手のプライドを刺激してあげると、意外と簡単に引っかかるのよ。
ナタコちゃんとか、エミリーみたいに自分を冷静に見れる相手の方が手ごわいわよ。
さあ、バハムート。あなたの本当のスゴサは『力ではない』ことを力の信奉者の邪神に存分に見せてあげましょうね♪」
レインボードラゴンは明日香が笑うのを見て、小さくため息をついた。
フォルム自体はライピョンさんと酷似しているが、顔面がロボット風の双眸をしており、そのままロボットアニメにも出て来そうな雰囲気だ。
エミリーが原型を作り、明日香が魔法で強化しているので、エミリーはライピョンさんと二人三脚で操作にほぼ専念し、明日香はほぼ魔力提供にとどまる感じだ。
そのため、明日香は俺たち全体を魔法で防御するだけでなく、その他の作業も時々行う余裕があるようだ。
迷宮の奥からリビングアーマーが時々追加されてくるため、じいちゃんの攻撃だけではすり抜けてきそうになるのだが、それを明日香が強烈な魔力弾で叩き壊している。
実は俺たち『足手まとい』が居なかったら、案外明日香がもっと無双していたのではないかと懸念を感じているのだ。
とはいえ、先頭に出たら明日香を異常に心配させるので、うかつに前に出られないし…。頑張って魔法を勉強してみようか…。
雷神とゴーレムはほぼ互角のつば競り合いを続けている。
スピードでは雷神が勝り、攻撃力・防御力ではゴーレムが優る…と明日香がナビを見ながら解説してくれる。
「雷神ゴーガン!!」
雷神が巨大な弓を取り出し、次々とゴメラ達に向かって矢を放つ。
光でできた矢はゴーレムの体に刺さるのだが、まもなくと中から金属が盛り上がってきて傷がふさがってしまう。
「あのゴーレム、ただでさえ体表が頑丈なうえに、全体の耐久力や回復力が桁違いだわ!」
雷神とゴーレムの戦闘をナビで見ながら明日香が叫ぶ。
「確かに!このままじゃあ、雷神のエネルギーが先にきれてしまう!明日香!どうすればいい?」
「そうね…。雷神用の強力な武器を創造するしかないわね!」
エミリーに問われて明日香が決断する。
「ライピョンさんとエミリーがイメージしやすい武器を強くイメージして!私がそれにエネルギーを加えるから!」
「明日香、わかった!やってみる!」
エミリーは叫ぶと雷神≒ライピョンと意識をリンクさせた。
「牛によく似たお前さん、蚩尤だろ?えらい強い邪神だったということで展開で画像を見たことがあるぜ♪」
「…ほお、我を知っていたか。だが、貴様のような強大な天界の武将は聞いたことがないのだが…。」
「俺はナタコだ。ナタ太子は俺の兄にあたる。ただ、俺はまだ若手だからね。名前はあまり知られていないのさ。まあ、別に名前は有名にならなくても構わない。強い奴とやりあえればいいからね♪」
敵のボス…キメラ魔神とでも呼ぶべき存在の一部である蚩尤とナタコはどうやら同じ世界の出身らしい。
「そうか、あのナタ太子の妹か。それでは、少しいいことを教えておいてやろう。もし、我らを倒せたときに少しは役に立つだろう。
我ら七柱は暗黒邪神ニビルがいろいろなところから引き抜かれて奴の配下になったものばかりだ。
部下が奴の本当の子飼いでないせいか、手下をただの駒としてしか見ていないようであるし、やたら猜疑心が強く、策略を好む奴だ。
おそらくお前さんと真正面からやりあうのを避けて、なんとか罠にかけようとするのではないかと思う。」
「なるほど、それはいい情報を聞いた。では、そのお礼に全力で、苦しまずに済むように止めを刺させてもらうぜ♪」
ナタコが再び戦闘態勢に入る。
「先ほどの攻撃はかなり本気だったのだが、全然ダメージがいっていないようだな…。こちらも全ての力を総動員して、死力を尽くさせてもらう!!」
キメラ魔神は叫ぶと、魔導師ガイアスの口から呪文が唱えられ、魔神の姿が七体新たに現れ、本体を含め、それらが一斉にナタコに襲い掛かる。
「へえ、普通なら見分けられないくらいよくできた分身だね。だが、俺の『真実を見る眼』をもってすれば、本物は必ず見通せる!」
ナタコは偽物をすり抜けようとしたが、偽魔神たちの振るうたくさんの武器に阻まれて素早く後ろへとびすさる。
「驚いたな…。全部偽物とは言え、使う武器は本物かい…。しかも偽物の耐久力はともかく、動き自体は本物とほぼそん色がないとはね。」
ナタコが武器を構え直して、キメラ魔神たちを睨みつける。
「その通り。今のお前さん相手に一対一では分が悪いが、『武器王』ギルガメシュの数々の武器と蚩尤の並外れた戦闘力、ガイアスの魔力を合わせることでお前さんを倒しうる力を我らは得た。
貴様らを倒し、暗黒魔神ニビルも倒してみせる!!」
八体のキメラ魔神は再び一斉に動くとナタコに殺到した。
~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~
「ザップマンビーーーム!!ザップマンビーーム!ビームったら、ビーーーム!!!」
「はい、回復魔法です♪」
じいちゃんがビームでどんどんリビングアーマーを倒すものの、迷宮の奥から次から次へと後続のリビングアーマーが出てきて、全く数が減らない。
慣れたおかげでアリーナ王女はじいちゃんが限界に達するすぐ前に気力回復魔法をかけて、再びじいちゃんは光線でリビングアーマーの撃破を再開する…しばらくそんな展開が続いた。
「しんどい!!めっちゃしんどい!!じじいをどんだけ働かす気なんじゃ?!!この迷宮は!!!」
じいちゃんがひいひい言いながらさらに光線を出し続ける。
「アリーナ王女、私にも回復魔法をお願いします!!」
「了解です。『気力・体力・その他回復魔法』!!」
シャリーからの要請にアリーナ王女がシャリーにも回復魔法をかける。
「助かります!!もうひと頑張りしてきます!!」
傷がふさがり、体力と気力も回復したシャリーが再び気合を込めて剣を振るいだす。
「もういやじゃ!!もふもふ成分が切れた!!やりたくないい!!」
光線はなんとか出しながらもじいちゃんがわがままを言いだした。
じいちゃんに何か言おうとしたアリーナ王女はぐはっと言いながら口から大量の血を吐いた。
「わあああああ!!!アリーナちゃん、大丈夫か?!!!!!!」
しかし、アリーナはすぐに自らに呪文を唱えると、血が止まり、青かった顔色が元に戻った。
「失礼!呪文の唱え過ぎで、体への負担が大きくなりすぎました。ですが、もう大丈夫です。」
アリーナは血まみれになった顔を拭いながらにっこりと笑う。
「お兄ちゃん!アリーナ王女に極大回復ポーションを飲ませてあげて!」
俺は明日香の指示に従い、持っていた明日香特製の『極大回復ポーション』をアリーナ王女に飲んでもらう。
え?なんで本人が自分で持って飲まないのかですか?
いえ、本人にも持ってもらっているのですが、俺がやることがあまりないので、せめて『ポーション要員』になっているわけで…。
自分の非力さが憎い!!
幸か不幸か、みんな親切で優しいので誰一人僕を役立たずと言わないし、責めたりしないのだけれど、時々みんなの優しさが逆につらくなります、はい。
もちろん、じいちゃんはそれ以上我がままを言わずに泣きながら光線を出し続けた。
「「「雷神剣!!」」」
ライピョンさんとエミリー、明日香がシンクロし、『雷神の合わせた両手から光でできた剣が長々と伸びる。
「ライピョン!エネルギー消費が激しくてこの武器は長くは保たない!速攻で決めてくれ!!」
「わかった!行くぞ!!」
エミリーの叫びにライピョンさんは呼応し、雷神は剣を構えてゴーレムに突っこんでいく。
「雷神爆雷剣!!」
雷神が輝くエネルギー剣を上段から叩きつけ、ゴーレムがそれを両手で受け止める。
バチバチバチバチ!!!
ゴーレムは両手でしばし、エネルギー剣を受け止めていたが、エミリーとライピョンさんがさらに気合を込めるとエネルギー剣はその輝きを大きく増した。
ブシュウウウ!!
剣を受けていたゴーレムの手が少しずつ高熱で溶け出している!!
「でりゃああ!!!!」
ライピョンさんがさらに叫ぶと、剣はゴーレムの頭頂から股下までバッサリ切りぬいた。
切り裂かれたゴーレムは次第に形が崩れていき、残骸を明日香から伸びた影が呑み込んでいった。
…今の影は明日香が言っていたレインボードラゴンだね。
「く、ゴーレムが?!!」
たくさんの分身が一斉攻撃に出るものの、ナタコの堅い守りに阻まれて、なかなか大きなダメージを与えられないでいたキメラ魔神はゴーレムが崩れ去るのを見て、一瞬ひるんだ。
「おっさんたち!甘いぜ!!」
ナタコが八本の腕のうち六本を引っ込めると、残った二本の剣が大きく輝いた。
「斬妖刀神速剣!!」
ナタコが目にもとまらぬ速さで動くのにキメラ魔神と分身は何とか対応しようとしたが、一歩及ばず、ナタコは本体の眼前に到達していた。
一瞬後、双方がすれ違った後、ナタコの左頬から血が流れ、キメラ魔神の胴体が斜めにずり落ちた。
「…やはり、届かなかったか…。だが、ここまで戦えて、悔いなし…。」
キメラ魔神はナタコに斬られるとその体が砂のように崩れていった。
「…ええと、明日香?あの魔神はレインボードラゴンに食べさせなくていいのか?」
「……ええと、エネルギーを使い果たしたカスみたいなものだから、食べさせても意味がないのよね…。誤算だわ…。」
キメラ魔神が消えゆくさまを俺たちは呆然と見やるほかなかった。
「ふははははははは!!!そうか!今度は奴らはゴーレムの力は取り込めたものの、ガイストたちを取り込むのに失敗したわけだな!!!あれ以上強化されていては、さすがのわしもてこずったろうからな。念入りに防御システムの罠を張り巡らせておいてやろう!」
暗黒邪神ニビルは部下の報告を聞きながら、にやりと笑った。
「……てなことになっていると思うのよ。ゴーレムが過去迷宮内に集められていた力を予想以上に取り込んでおいてくれたから、結果的には予定していたのとほぼ変わらないくらいの力を取り込めたし、今回取り込んだプログラムも、向こうの古代都市のシステムと同じプログラムを使っているはずだから、向こうに着いてから古代都市の防衛システムの解析には予定よりも時間がかからないと思うの。
こちらが失敗したと思って相手が油断している分、勝率が上がると思うわ。
あとはどうやって狐と狸の化かし合いに勝つかよね♪」
「…明日香さま、ずい分自信がおありのようですね。」
「ふふふ、自分が強いとか、頭がいいと思いあがっている相手は相手のプライドを刺激してあげると、意外と簡単に引っかかるのよ。
ナタコちゃんとか、エミリーみたいに自分を冷静に見れる相手の方が手ごわいわよ。
さあ、バハムート。あなたの本当のスゴサは『力ではない』ことを力の信奉者の邪神に存分に見せてあげましょうね♪」
レインボードラゴンは明日香が笑うのを見て、小さくため息をついた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。
次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。
時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く――
――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。
※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。
※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
マーベル子爵とサブル侯爵の手から逃げていたイリヤは、なぜか悪女とか毒婦とか呼ばれるようになっていた。そのため、なかなか仕事も決まらない。運よく見つけた求人は家庭教師であるが、仕事先は王城である。
嬉々として王城を訪れると、本当の仕事は聖女の母親役とのこと。一か月前に聖女召喚の儀で召喚された聖女は、生後半年の赤ん坊であり、宰相クライブの養女となっていた。
イリヤは聖女マリアンヌの母親になるためクライブと(契約)結婚をしたが、結婚したその日の夜、彼はイリヤの身体を求めてきて――。
娘の聖女マリアンヌを立派な淑女に育てあげる使命に燃えている契約母イリヤと、そんな彼女が気になっている毒舌宰相クライブのちょっとずれている(契約)結婚、そして聖女マリアンヌの成長の物語。

大草原の小さな家でスローライフ系ゲームを満喫していたら、何故か聖女と呼ばれるようになっていました~異世界で最強のドラゴンに溺愛されてます~
うみ
ファンタジー
「無骨なドラゴンとちょっと残念なヒロインの終始ほのぼの、時にコメディなおはなし」
箱庭系スローライフが売りのゲームを起動させたら、見知らぬ大草原に!
ゲームの能力で小屋を建て畑に種を撒いたりしていたら……巨大なドラゴンが現れた。
「ドラゴンさん、私とお友達になってください!」
『まあよい。こうして言葉を交わすこと、久しく忘れておった。我は邪黒竜。それでも良いのだな?』
「もちろんです! よ、よろしくお願いします!」
怖かったけど、ドラゴンとお友達になった私は、訪れる動物や魔物とお友達になりながら牧場を作ったり、池で釣りをしたりとほのぼのとした毎日を過ごしていく。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる