虫 ～派遣先に入って来た後輩が怖い～

果実 派遣先の先輩を好きになりたくない

果実 第13話 ※

　シャワー浴びたら、この熱が冷めて、児嶋さん、我に返ってしまうでしょ……とは言わなかった。
「私が入るのはいいんだけど、児嶋さんが入るのはもったいないんですよね」
「へ？」
「いいにおいがするから。いつもよりも、もっと。昨日シャワー浴びてないせいですかね？　それとも、……」
　児嶋さんは私を振り払おうとした。両手首を捕まえてベッドに押し付ける。
「濡れてるんじゃありません？」
「ちがいます、ちがう！」
「ちがいます？」
　慰めるように、彼女のこめかみに口づける。児嶋さんの胸、
「…………！」
　児嶋さんの体がびくっと跳ねた。服の上から揉み上げて、胸の先端に触れたとたんに。
　……今感じた。
　服の上からゆっくり触れる。指を滑らせ、何度もなぞる。
「ん……っ、」
　顔が真っ赤になってる。胸をいじめられてこんなにわかりやすく恥ずかしがるなんて。児嶋さんは私の視線に気づき、顔をそむけた。
　児嶋さんのツンと立ったとがりを、なるべく同じ動きにならないようにしながら、指で円を描いては時々先端を通るように触れる。
「あ、……んぅ……っく」
　汗ばみ始めた児嶋さんの顔が髪で色っぽく翳る、思わず髪を撫でてかきあげると、児嶋さんが聞き取れないほどかすかな声で文句を言った。
「い……やだ、麻生さん、見ないで……！」
　可哀そうになるぐらい小さな声だった。ぞくぞくくるぐらい、その声に煽られた。
「見てないから」
　見ないでと言われるとよけい見たくなるが、児嶋さんは顔をそむけてしまった。
　そむけたその首筋に、口付けた。
「ん……」
　服の上から胸の突起をつまんだ。
「……ぅ、ぁは！」
「児嶋さん、すごくエロい顔してる。かわいい」
　耳たぶに口付け、甘噛みしながら、両方の突起をじっくり、時々はじくようにして責め続ける。
「あっ、……やっあ、あっ、あっ……」
　児嶋さんの唇から、焦ったような息遣いが聞こえ始めた。
　児嶋さん、少し強く揉んだ後に指先で先端を触ると感じやすい。
「あ、だめ、」
　児嶋さんの体がビクッと逃げるように跳ねる。
「ん……！」
　急に体をこわばらせた児嶋さんは、目をギュッと閉じて、体をビクンと跳ねさせた。
　あれ？　これ、……？
「児嶋さん、胸だけで今、少しイッてました……？」
「イってないよ……」
　児嶋さんは、みるみる顔を赤くした。
　児嶋さんが私を押し返す。思わず押し返して抱きしめた。
　ああもうダメ、かわいい、かわいい……！
　彼女の声に入った泣き色のせいで、ちりちりとした気持ちに火が付く。泣かせたい。
　キスをしながらスカートの中を探る。下着をずらす。
「ちょっと、麻生さん、……ぅ……」
　口を塞ぐようにして、ゆるんと下着の中に指を滑りいれた。
「んぅぅぅう！　んーーー」
　官能の中心にある小さな粒を探りあてたとたん、児嶋さんがもがいた。
　……えっ？
　蜜壺から補充する必要もなく、そこは全体的に潤っていた。
　指で捉えた突起にほとんど摩擦を感じなかった。児嶋さんの状態は、性急すぎた私を安堵させた。撫でるように上下に指を滑らせる。……なるべくゆっくりと。
　指にぬるっ、ぬるっと感触がついてくる。こんなに濡れて、児嶋さんどんな顔ができるんだろう？
「イッてないって？」
　唇を離して目を見ると、児嶋さんは……顔を真っ赤にして、パニック寸前の目をしていた。
「これも、濡れてないとか言います？」
　児嶋さんの顔を見ながら触れていく。少し強くしてしまうとかえって感じないようだった、どちらかというと軽いタッチに反応している。強くしたら痛いかもしれない。
　なるべく優しく。指で、触れているか不安になるくらいかすかに触れて、ゆっくり、時間をかけてなぞる。
「ぁあ、あ、……！　……んやぁあ、」
　逃げたそうな児嶋さんの額にキスをする。様子を見ていると、児嶋さんの額が汗ばみはじめ、追い込まれたように表情をゆがませた。泣きそうになりながら児嶋さんはいやいやをするように首を振り、私の体を叩き始めた。
「……やだぁ！　やだって！　麻生さん！」
　ああ、こんなに余裕のない顔して。もうすぐイくって言ってるようなものなのに。
　児嶋さんはそのまま、顔をぐしゃぐしゃにして、私を見ながら体を跳ねさせた。
　せっかく達してるから徹底的に。指を離さないようにそのままついていって優しく嬲り続ける。足がビクッとこわばり、また跳ねる。
「ぅく、……ひっく、うっ……ぅあぁ！」
　児嶋さんは助けを求めるみたいにしがみついてきて、何度も反り返った。しなやかな細い猫科の獣のように。


「あ……はぁ…っ、ぁ」
　汗ばんだ児嶋さんは、目をぎゅっと閉じてしばらく内面の波に揉まれていた。
「気持ちよくなっちゃいました？」
「……ば……」
　イッてたように見えますけど……、意地悪をしたくなる。
　恥ずかしさを我慢しきれない表情。
「児嶋さん、可愛いです、本当に」
　ふにゃっとなった顔を、児嶋さんは毛布で隠そうとする。耳が真っ赤だ。
「……みないでってば……！」
　ヤダ。みないで、なんて、勿体ないです。イキ顔、すごくやらしいですから。
　児嶋さんの表情、ものすごく興奮する。そのまま責め続けて追い詰めてしまいたい。感じさせて、限界を越えさせてしまいたい、もっとその表情を見たい。
　毛布を除けて、唇を噛んでいる彼女の顔をこっちに向けて、私は見ていた。近い距離で。馬鹿みたいに、どこもかしこも愛しくて、触れたかった。頬に口付け、こめかみに口付け、髪に口付けた。
　いったん追い上げたせいで敏感になって潤んだ果実に触れる。
　ゆっくりと、かすかに触れるように、なでるように。
　私の指がそこを通るたびに、児嶋さんは声を漏らして身体をびくつかせた。
「んーっ……」
　児嶋さんの身体には、多少、抵抗することへの疲れが滲みはじめていた。
　さっきは言葉もないようだった。あたりまえだ。これから無理を強いますと、面と向かって言ったのだから。
「うーっ……」
　彼女の体がこわばる。ああ、この人、もう少しでまたイく。
　彼女が我慢できなくなるまで続けてやろうかとちょっと考える。
「やぁ……だめ、だめ……」
　児嶋さんはさっきからもうだめだとしか言わない。だんだん苦しげになってくる。
「も、……も、だめ、麻生さん、もぅ、」
　だめです、児嶋さん。まだだめです――。気持ち悪かったとか感じなかったとか、明日になったらそう自分に言い聞かせるつもりでしょうね。そんな言い訳はさせない。
　児嶋さんは濡れまくって、私にそれをずっと見られてるんです。完全に自覚させてやる。
　私自身のなかにある、いや、なかったはずの想像上の男性性の象徴が、方向性を持って私の感情をまとめている――。私の頭をじんと痺れさせる。
　じっくりと、指が逸れないで同じところをなぞるように。手首で支えをつけながら、忍耐強く同じ動きを繰り返す。児嶋さんがじっとりと高まっていき、私から逃げようとするのを、引き戻して続けていると、児嶋さんは首を振って、とうとう泣き出した。
「あ、あっ、うあ、やうっ……」
　声だけで私はイッてしまいそうだ。最初のときもそうだったけど、児嶋さんは達しそうになると、声に涙が混ざる。焦ったような、追いつめられたような表情をして、泣き出す。
　頬にキスをしながら、肩に軽く爪をたてた瞬間、声を上げて児嶋さんは私にしがみついた。児嶋さんの身体がビクッビクッと跳ねた。私の鎖骨や首あたりの皮膚が総毛だつようにぞくっと痺れた。脳に白い波が押し寄せ、その光でいっぱいになるのを、私は感じながらやりすごす。
　相性なのか、彼女は簡単に達してしまう。こっちが上手いんじゃないかと勘違いしたくなるほど感じやすい。私が上手いわけではない――思いもしないことで、彼女は声をあげる。私はそこを忠実に覚え、彼女になりかわって感じようとする。
　児嶋さんの反応のよさに、驚きが隠せないまま、私は完全に調子に乗った。
　ぬるぬると足の間を前後する指は、風呂に入ったあとのようにふやけている。
　この体勢だと、私は彼女がもがいても簡単に扱うことができる。児嶋さんは指をばらばらに動かすのが感じるみたいだ。濡れ方が変わってくる。足の付け根に触れるたびに、反応が大きくなる。指先が蜜のあふれる壺の口をつつくたびに、彼女は吐息をおさえきれず、呼吸困難の様相を呈してくる。
　彼女はいやいやをするみたいにして逃げ始めた。それについていって、中指を入れた。
「だ、」
　彼女はビクッとして急に顔を真っ赤にし、上に逃げようとした。壁に頭が当たった、頭を覆うようにして守った。浅く、第二関節まで突き入れて、そこで止めた。
　痛がったらやめようと思っていたが、あまり痛いわけでもなさそうだった。
　少しずつ奥へ。行きつ戻りつしながら、もどかしくなるぐらいじっくり、あまり奥までいかないように指をすすめる。指でなぞるようにいったん抜いて、またゆっくりと彼女の中へもぐりこませる。ゆるゆるとその深さまでで入れたり出したりを繰り返していると、彼女は唇を噛んで私の腕をどけようとしてきた。
　……痛い……？
「や、やだ、」
「本当に？　……」
　時間をかけて抜き差しした。
「児嶋さん」
　頬を撫でながら、ちゃんと聞こえるように、ゆっくりと言う。
「も…、しないで……」
　耳まで真っ赤だ……。
「ぅはぁっ…これっ、ぅあ、……」
「いやです」
　彼女はもう何も言わず、潤んだ溺れそうな目で見上げてきた。こんな表情――こんなの、やめるわけない。
　赤くなったちぎれそうな耳を咥え、軽いキスを繰り返し、児嶋さんが首を傾けて逃げるその唇を、覆いかぶさるようにしてついばんだ。
　じっとみつめている私の視線の中で、彼女の額や頬がじんわりと汗ばんで艶めく。目を閉じて息を漏らして耐えている。
「ふっ…うっ、」
　なんて色っぽい表情をするんだろう。
　入り口付近まで戻しては指をスライドさせる。指の腹で内壁に沿ってなぞる。ゆっくりと、時々押し付けるようにして。彼女の喉が、きゅうっと音をたてる。
　熱い。彼女の粘膜がぎゅうっと締め付けてくる。指をゆっくりと戻した。指を抜く動作で、児嶋さんは声をあげた。
　もう一度指を入れる、薬指を添えて。彼女は涙を滲ませて、声をかみ殺した。
　指を曲げて、ゆっくり指の腹で撫でる。そのまま押してみる。
　指を動かすたびに、逃げるように腰がうごくものだから、この人、人の「犯したい」という感覚をいやでも呼び起こす。
　指を入れたまま、手の平でやんわりと包むように、敏感な芽の周辺に親指の付け根で触れる。手の平がたっぷりの潤いで濡れそぼっている。
　手を揺らしながら、指の根元から曲げて、指の腹で彼女の中をとんとんと押した。 　反応が……さっき反応がよかったのは、このあたり。
「あ、ぅ、やあっ、」
　びっくりしたみたいに彼女は私の手を押し返そうとしていた。
「だ……ぁ、やぁ…だぁ、」
　続けていると、彼女は首を振った。
「だめ、やだ……ふっ、うっぐっ……！　やだ、ゃだ」
　呂律がまわらなくなっている。彼女の中が膨らんでは、ぎゅうぎゅうと指を締め付けてくる。ナカも感じるなんて、珍しいことでしかないから、親指は充血した芽の部分にかすかに触れるように動かす。
　だんだん、彼女の声が哀願するみたいになってきていた。
　すごく可愛い。もともとＳっけがあるのは自覚していたが、ここまで可愛い反応を返されると、火がついてしまう。ドエスそのもののいじめたい欲求をぶつけるわけにはいかないから、セーブはしているけど。
「麻生さん……麻生さん、あそ……」
「ん？　なに……？」
　児嶋さんの唇が震え、突っ張る……足ががくがくしている。指が何度となく締め付けられる。
　児嶋さんはうーっとうなって、涙をぼろぼろこぼした。
「やめて、やめて、やだ……おかしくなる」
　かわいくて、頭を抱え込んで髪を撫でた。その耳元に、あまり怖く感じないように――優しく小さな声で囁いた。
「いいですよ。おかしくなってください」
　極限の表情はとてもきれいだ。もっと見たい。もっと声をききたくなる。
「やあっ！」
　がくがくと体をゆらして彼女は達した。
　そこからは、児嶋さんは泣きっぱなしだった。
　自分でおかしくなると言った通り、境界を越えてしまったらしい。
　顔を真っ赤にして、涙をにじませて歪んだ児嶋さんの顔は、私の体の芯に疼きを与えてくる。やめてと言いながらコントロールを失ったように腿で私の腕を挟んでくる。
　こんなになるんだ、児嶋さん。
　だんだんと、可愛い声から唸り声のようなものが混じる声に変わっていって、彼女は自分でそれに気づいたのか、布団を噛んでいた。
　何度目だ、これ。彼女が私を締め付けるのは。何度かめに彼女が達する直前に優しく頬をノックした。
「目をあけて？」
　私は彼女に言った。
「閉じちゃダメですよ。あけてください」
「うーっ、……やめて、もぅだめだよ、ぅやっ……」
　――刷り込んでやる。
「目をみて。私を見ながらイくんです」
「！　……あ、」
　彼女の背が反り、それについていって私は瞳を見つめていた。
　押し返そうとする彼女の小さな手指が、まるで私にしがみつくかのように胸元の服をにぎる。感電した人間が電線を離すことができないように。その動きは、攻撃されているようでもあり、頼られているようでもあり……彼女のうっすらと開けた目が溺れるかのように私を見つめていた。
　カタカタっと児嶋さんの両足が震えた。
「ん――！」
　そうだよ、これから何回でも、例え他の人とする時でも、一人でする時でも、私を思い出せ。そうなってしまえ。
「あ――……っ、ぁっ、うっく、ふぅっ…く」
　切なそうに涙で潤んだ瞳が私を見ていた。
　その喉が小さく唸り、唇が震えてなにかしゃべろうとする。あそうさん、と動く。
　かわいい……。胸がぎゅうっと甘くしぼられて、私は児嶋さんを同じ強さで抱きしめる。
　彼女はまた私の服に爪をたてて、悩ましげに涙で滲んだ目で私を見ながら黙ってイってしまう。
　そんなことを何時間か続けるうちに、私のほうもおかしくなってきていた。もともと、身体中が熱くなって、蕩けていた。私の器官はそのためには何も触れられていないのに、蕩けていた。彼女が名前を呼ぶたびに、声を上げるたびに、あやしいさざ波が脳に直接光を帯びて流れ込んできた。
　自分のほうが痙攣でも起こしてしまいそうだった。
　いままで、自分が達するときには、たいてい誰かに触れてもらっていた。こんなことは初めてだった。彼女の反応があまりに色っぽかったからなのか。
　かえって身体に触れられていないせいで、いつもはついてくることができなかった繊細な脳の刺激がゆっくりと現れたのか。
　ちかちかと光り輝く波のせいで、頭が痺れていた。
　頬が、こめかみが、唇が、皮膚が……びりびりと甘く痺れてしまっていた。
　私は、はじめて、完全にどこにも触れられていない状態で今までよりも強い忘我へと達していた。