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憎しみと決意
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彼女に早く会いたいと言う思いと、時間が経つにつれもうひと俺の中で強く湧きあがる気持ちがあった。
それは、好きな子を苦しめたあの女子達が憎いだった。
月が運ばれた次の日、俺はその女子の内の一人実行犯の加藤を渡り廊下に呼び出す。
にこやかな笑顔で現れた加藤に、憎しみを込めた視線を向けながら問い詰めた。
「なんで、月にあんなことをした?」
そう聞いた途端加藤は、顔色を変え唇を噛みしめると俯いた。
なんとか逃れしようとする加藤に、俺はあの日加藤がしたことを見たままを話す。それでも口を割らない彼女に「話さないようなら、先生に伝える」と脅しをかけたんだ。
すると加藤は泣きだし全てを語った。
「――咲夜の事が、すき、だから……白井さんの事がゆ、ゆるせなかったの!」
好きだからした? 俺が好きなら月を傷つけてもいいってのか? なんで……なんでそんなことが……。
そこまで考え、俺自身が今までして来た事と変わらないのではないか? そう心の中のもう一人の俺が言った。
それは間違いじゃなくて……誰が傷つこうが自分さえよければそれでいい……加藤はそんな俺と同じ事をしただけなのだ。
加藤にも他の女子にも腹は立つ! けれど、それは俺自身にも言える事で……そんな自分に心底腹が立ち、俺自身が嫌になる。
「二度とするな! もし、また月に何かしてみろ?
その時は、お前がした事を実名入りで公表する!」
一方的にそう告げて、俺はその場を後にした。
その後加藤がどうなったのかは分からない。そして、俺は俺自身を変えるための努力を始めた――。
そんな無駄な努力をしながら月が来るのを待つ間に体育祭があり、中間テストが終わってしまう。
毎日が色彩を失ったように暗く感じていた俺は、月に逢うため自分から行動を起こす事を決意する。
決意というほどのものかと言われれば、きっと笑われてしまうぐらいちんけな物だったと思う。
放課後職員室を訪れた俺は扉の前で、深呼吸をすると何度も思い描いた病院もしくは自宅の住所を聞きだすため練習通りにノックをして扉を開けた。
「失礼します。板野先生いますか?」
そう言って声を出した俺に気付いた二十代後半の担任が、不思議そうな表情を作りつつ俺の方へと歩いて来る。
「久瀬君? 板野先生なら、いるけど……何か用事?」
「あぁ、うん。どこにいる?」
「ほら、窓際のあそこ」
「さんきゅ、さゆたん」
「こら! 担任をさゆたんなんて呼ばないの!」
怒る担任にニヤっと笑い、目的の板野先生の元へ向かった。
「板野先生……」俺の呼びかけに答えるように顔をあげた30代後半の男性教師は、訝しそうな表情を見せると「なんだ?」と聞いてきた。
ここからが勝負だ……そう思った俺は、緊張しながらも板野先生にはっきりとした声音で「白井さんの病院を教えて下さい」と伝え直角に頭を下げた。
「ちょ……え……あー」
そう驚いたように立ち上がった板野先生が、困ったような声で「顔を上げなさい」と言う。
それでも頭を上げない俺に溜息を一つ零した先生は、明らかにめんどくさそうな声を出し
「あのなー。こっちにも個人情報を守る義務があるんだよ……わかるだろ?」
そう言った。それでも俺は知りたい。月に逢うために知りたいんだ。
「お願いします。どうしても彼女に逢いたいんです!」
必死に懇願すること30分。
「はぁ~。仕方ない」そうポツリと漏らし板野先生の方が根負けした。
「わかったから……顔を上げなさい」
漸く頭を上げた俺に板野先生は、短く刈った頭を掻き
「本当はだめなんだけど……誰にも言うんじゃないぞ?」
そう言って、サラサラと紙に何かを書いて渡してくれた。
板野先生がくれた紙を開き見た俺は、何かをいいかけた板野先生の言葉に被せお礼を伝える。そして、急いで月の入院先である病院に向かった――。
それは、好きな子を苦しめたあの女子達が憎いだった。
月が運ばれた次の日、俺はその女子の内の一人実行犯の加藤を渡り廊下に呼び出す。
にこやかな笑顔で現れた加藤に、憎しみを込めた視線を向けながら問い詰めた。
「なんで、月にあんなことをした?」
そう聞いた途端加藤は、顔色を変え唇を噛みしめると俯いた。
なんとか逃れしようとする加藤に、俺はあの日加藤がしたことを見たままを話す。それでも口を割らない彼女に「話さないようなら、先生に伝える」と脅しをかけたんだ。
すると加藤は泣きだし全てを語った。
「――咲夜の事が、すき、だから……白井さんの事がゆ、ゆるせなかったの!」
好きだからした? 俺が好きなら月を傷つけてもいいってのか? なんで……なんでそんなことが……。
そこまで考え、俺自身が今までして来た事と変わらないのではないか? そう心の中のもう一人の俺が言った。
それは間違いじゃなくて……誰が傷つこうが自分さえよければそれでいい……加藤はそんな俺と同じ事をしただけなのだ。
加藤にも他の女子にも腹は立つ! けれど、それは俺自身にも言える事で……そんな自分に心底腹が立ち、俺自身が嫌になる。
「二度とするな! もし、また月に何かしてみろ?
その時は、お前がした事を実名入りで公表する!」
一方的にそう告げて、俺はその場を後にした。
その後加藤がどうなったのかは分からない。そして、俺は俺自身を変えるための努力を始めた――。
そんな無駄な努力をしながら月が来るのを待つ間に体育祭があり、中間テストが終わってしまう。
毎日が色彩を失ったように暗く感じていた俺は、月に逢うため自分から行動を起こす事を決意する。
決意というほどのものかと言われれば、きっと笑われてしまうぐらいちんけな物だったと思う。
放課後職員室を訪れた俺は扉の前で、深呼吸をすると何度も思い描いた病院もしくは自宅の住所を聞きだすため練習通りにノックをして扉を開けた。
「失礼します。板野先生いますか?」
そう言って声を出した俺に気付いた二十代後半の担任が、不思議そうな表情を作りつつ俺の方へと歩いて来る。
「久瀬君? 板野先生なら、いるけど……何か用事?」
「あぁ、うん。どこにいる?」
「ほら、窓際のあそこ」
「さんきゅ、さゆたん」
「こら! 担任をさゆたんなんて呼ばないの!」
怒る担任にニヤっと笑い、目的の板野先生の元へ向かった。
「板野先生……」俺の呼びかけに答えるように顔をあげた30代後半の男性教師は、訝しそうな表情を見せると「なんだ?」と聞いてきた。
ここからが勝負だ……そう思った俺は、緊張しながらも板野先生にはっきりとした声音で「白井さんの病院を教えて下さい」と伝え直角に頭を下げた。
「ちょ……え……あー」
そう驚いたように立ち上がった板野先生が、困ったような声で「顔を上げなさい」と言う。
それでも頭を上げない俺に溜息を一つ零した先生は、明らかにめんどくさそうな声を出し
「あのなー。こっちにも個人情報を守る義務があるんだよ……わかるだろ?」
そう言った。それでも俺は知りたい。月に逢うために知りたいんだ。
「お願いします。どうしても彼女に逢いたいんです!」
必死に懇願すること30分。
「はぁ~。仕方ない」そうポツリと漏らし板野先生の方が根負けした。
「わかったから……顔を上げなさい」
漸く頭を上げた俺に板野先生は、短く刈った頭を掻き
「本当はだめなんだけど……誰にも言うんじゃないぞ?」
そう言って、サラサラと紙に何かを書いて渡してくれた。
板野先生がくれた紙を開き見た俺は、何かをいいかけた板野先生の言葉に被せお礼を伝える。そして、急いで月の入院先である病院に向かった――。
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