男の唾液と煙草の相性

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 まるでブラックホールかよ、と目の前の名前の知らない女を見て思う。金曜日の夕方、仕事が終わって久しぶりに大学時代のツレと飲むことになり仕事を早々に切り上げて学生時代によく通っていた居酒屋に向かった。明日は休みということもあって気が大きくなったのかだいぶ酔ってしまい、たまたま隣で飲んでいた女の子2人組に声を掛けたのはおれからだ。
「やだー私たち今日は女二人でゆっくり飲む予定なんですー」
 茶色い髪色をした女はそう言っておれたちを遠ざけようとした。その辺によくいる頭の軽そうな女という印象を受ける。
「そんなこと言わないでよ、頑張って働いている僕たちに一杯だけでも付き合ってよ」
 男はわざと馬鹿な振りをした方がいいとおれは知っている。脳みその詰まってない女は馬鹿な振りする男と本物の馬鹿な男の見分けがつかない。
「一杯でいいからさ、おれたち奢るし。な」
 一緒に飲んでいたツレに同意を求める。
「えー、お兄さんたちどんな仕事してるのー」
 まず何を聞いてくるのかと思えば勤めてる会社名かよ。ことごとくおれの予想を裏切らない目の前の女が可哀想とすら思えてくる。
 女は男の肩書きにしか興味のない生き物だ。おれは適当に有名な商社の名前を出して反応をうかがう。
「わーすごーい、私その会社知ってるー、お兄さんもしかしてすごい人ー?」
 何がすごくてどうしたらすごくないのかわからないが、とりあえず肯定しておく。
「二人は今大学生なのかな、どこの大学行ってるの?」
 きゃはは、と笑いながら女たちは想像の斜め上をいく有名大学の名前を出してきた。どうせ中途半端な高校を出て推薦もらって入ったんだろう。
「うわ、すげえ偶然、おれたちも同じ大学出身」
「ほんとにー、やだーすごーい、こんな偶然ってあるんだねー」
「この偶然に乾杯しよう」
「もー仕方ないなー」
 きゃはは、と彼女たちは何が面白いのかわからないが声を立てて笑っている。同じような髪色をして同じような髪型をして同じようなメイクをして同じような格好をした特に個性のない、明日には忘れてしまいそうな女たち。
 注文したビールが人数分届くと女の片方がタバコに火を点け出した。美味しそうに煙を吸って長く細く息を吐き出す。なかなかエロいじゃないか。
 タバコの女はジョッキを片手に持ち、かんぱーい、と甲高い声を上げた。おれもそれに続く。
「今日はこの偶然にとことん付き合ってもらおうかな」
「もーとことんってなによー」
 おれはタバコの女の隣に座って彼女の腰に手を当てた。抵抗するかと思いきやおれの手を嫌がる素振りはない。
「まだまだ飲めるでしょ、お兄さんたちに付き合ってもらうから」
「私そんなに飲めなーい」
 きゃはははは。女の笑い声を聞きながら身体を密着させていく。きゃはははは。きゃはははは。
 そのままホテルに行くことなんて造作もないことだった。同じ大学を出た大手商社に勤めていることになっているおれの腕に抱かれ、大して酔っていないくせに歩けない振りをしている女を近くの『休憩所』に連れて行くだけだ。
 ベッドに横にさせて身につけていたカーディガンやブラウスを脱がしていく。ちょっとやめてよー、と抵抗になっていない声を上げながらおれの手を掴む女にキスをする。タバコとお酒の混じった味のする唾液を舌で絡めとる。
 こいつのマンコに挿入したい。はち切れんばかりに膨らんだ自分のちんこを一刻も早く解放させたい。細いブレスレットを巻いた腕を伸ばしておれの股間に手を持ってくる女に勃起したちんこを触らせる。とっとと舐めろ。
 朝、目が覚めると隣に女はいなかった。代わりにバスルームからジョボジョボと水の流れる音がする。おれは裸のまま瞼を擦りつつバスルームへ向かった。
 中を覗くと女がゆったりと半身浴をしていた。昨日の夜も思ったが、こいつはスタイルだけは異様に良い。頭がすっからかんな代わりに神様がこんな女でも世の中を生き抜けるよう素敵なプレゼントをしてくれているみたいだ。
「おれも入っていい?」
 たずねると、女は伏せていた目をこちらに真っ直ぐ向けて、
「どうぞ」
 大人びた調子でそう告げた。バスルームでタバコを吸ったのか、煙の残り香が漂っている中を歩いておれもバスタブに身を沈める。
「気持ちいいね」
「そうね」
「昨日も気持ちよかったよ」
 おれが言うと、女はくすっと笑いながら、
「ほんと? 私も気持ちよかったよ」
 と続けた。
 バスタブの中で絡め合っている脚が気持ちいい。この一晩限りの出会いの最後にもう一度この女を抱いておきたい。おれは女の脚を持ち上げて舐めた。すべすべした脚をした女はくすぐったそうに身を捩らせた。今までたくさんの男とやってきたであろうこいつの性器は緩かったが、そんなことどうでもいい、思いっきり突いてやる。
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