【R18】特殊能力にかまけて学業をおろそかにするダメンズな隣人を挑発したら手篭めにされて【番外編閲覧注意】

AAKI

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レイヤー0-2・形は無いのに重い

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 セミの声が鳴り響く中、二森 龍生は折りたたみの小型自転車に跨り田畑脇の道を走っていた。

 時刻は直感だが、朝と昼の間ぐらい。夏場の旅ということで、そろそろ休憩場所を見つけようと考えた矢先のことだった。しかし、一目には田舎の集落へと足を踏み入れてしまったため、ここぞという休憩場所を見つけられずにいる。

「うわぁ……。見事に寝られそうな場所がねぇ」

 周囲を見渡して龍生はぼやいた。

 駅もなければ、並木のある公園もない。辛うじてバス停には掘っ立て小屋のような枠とベンチが見られるも、だからといって専有するほど龍生も浅はかではない。

「あれは……」

 そんな折り、彼は住宅の集まった場所から少し離れたところ、畑に囲われてポツンと佇む納屋らしき建物を見つけた。

 近づいてみれば扉や窓も開けっ放しになっており、もはやもない気をつける気もなさそうだ。。建物も小綺麗で、最近に立てられた共同の物置といった感じである。

 窓から覗き込めば、中にほとんどものが置かれていないこともわかる。子供が入り込んでも文句もなさそうなため、龍生は少々の申し訳無さを感じつつも休ませて貰うことにする。

「ちょっとすみません。お借りします」

 誰も居ない屋内に断りを入れて、コンクリート造りのヒヤリとした空気と外気が混じり合った中へと踏み込んだ。自転車を折りたたみ、脇に抱えて奥へと進む。薄暗い中に9時か10時の日差しが流れ込んで、綺麗にされているのがわかった。

 ちょうど、積み上げられた肥料袋の奥にビニールで作られた塊があった。

 荷物を脇に置いて、袋の陰に隠れるよう龍生はビニールベッドへと体を投げ出した。それから数分後には微睡みの中へと堕ちていく。

「おーし、さっさと始まるで」

「よし、服を脱がして吊れや」

「戸締まりを忘れるな」

 汗とビニールに包まれた気だるさから引き戻したのは、そんな奇妙な会話だった。最初こそ半分寝ている状態だったため意味を理解しかねたが、頭がはっきりとしてくるとなんとなくわかってきた。

 犯罪が行われているのだ。

 それがわかったところで、その時の龍生には何もできない。なにせ、逃げ出そうにも入り口は犯罪者達に抑えられている。警察に連絡しようにも、この周辺の住所もわからない上に少しでも身動きすればバレてしまう。

 チラリと傍にある荷物を見るも、手さえ伸ばせないことが苛立たしい。

「なんね。縛るんかい」

「ただ吊っただけじゃ面白くないしの」

「急げよ。他の奴らが来たら時間が少なくなる」

 口々にいう推定3人組。まだ仲間が増えるという旨の話を聞いて、龍生は焦りを覚えた。

 仮にここで見つからなかったとして、人が増えればいずれは隠れているのがわかってしまう。いつまでも身動きせずにいることも難しいだろう。

 ならば、この場で飛び出してハッタリでもかました方がマシだと考えたのである。

「ふー……」

 一呼吸を置いた後、荷物の口に手を突っ込んでスマートフォンを引き抜いた。

 当然、音もするので龍生の存在は明るみになってしまった。

「なんやぁッ?」

「ガキが忍び込んでたんか?」

「ちゃんと調べてなかったな」

 立ち上がった龍生の前に、動物のお面が現れた。動物だけではなく、所謂お祭りのお面である。狐、狸、特撮のヒーローとちぐはぐだ。

 顔を隠しているのは別に仕方ないとして、今は精一杯の口八町で逃げ切ることを考える。

「あんたら止めとけよ! もう警察には連絡したからな!」

 狐面の男に、絶賛縛られている。正しく言うと緊縛されている裸体の少女らしき人影を一瞥して、龍生は画面を見せないように通信端末を見せつけた。

 3人組が思った以上に驚いていなかったのは誤算だし、縄を動かす手は止まらない。

「誰や?」

 狐面が、誰何ではない問いを他の2人にぶつけた。

「さぁ、知らん。村の人じゃないんね」

 狸面が応えた。

「泥棒ってわけでもないだろうし、旅行者か?」

 ヒーロー面は冷静に分析してみせた。とは言え、仮面男達にとって龍生の正体はあまり意味をなさない。

 警察に通報したという話についても、特に焦った様子がないのも怪しい。

「俺やその子に何かしたら、罪を重くするだけだぞ……」

 龍生は精一杯のハッタリをかまして、ジリジリと出口へと向かって移動した。できれば少女らしき被害者も助けたいが、3対1では如何ともし難かった。

「石動の本家も首を縦に振ったしなぁ」

「なんとかなるやろ。まぁ、兄ちゃんも落ち着きな」

「そうそう。別に兄ちゃんを取って食おうってつもりはないさ。ここで悪ささえしてなかったらな」

 仮面男達が口々に言った。

 それを聞いて、龍生は良い予感がしなかった。家族ぐるみどころか集落で目の前の行為を保証しているというのだから、警察を呼んだところで解決はしないだろう。

 龍生に対しては危害を加えないというのは、不法侵入者の戯言を地元の警察官が信じないから、いくらでも自身らの行為を正当化できる自陣だからである。

「……誤報とでも言えば、無事に返してくれるって?」

 龍生が馬鹿なとばかりに確認した。

「構わないよ」

 ヒーロー面が事も無げに答えた。

 狐面と狸面など、少女の足を棒にくくり付けて海老反りに吊し上げている。もはや立ち止まるつもりはないようで、ヒーロー面も続けて口を開いた。
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