「阿藤零士の心霊事件ファイル ~名探偵は美少女助手と除霊を頑張る~」

AAKI

文字の大きさ
上 下
13 / 26
FILE1.痴漢幽霊騒動

その4-5

しおりを挟む
「なになに? 生徒が飛び降、痛い!」

 手渡されたタブレットに表示されたパワーポイントを不用意に読み上げそうになったところ、零士に副所長パンチがミゾオチに飛ぶ。

「?」
「?」
「?」

 明可達がこちらを気にしてくる。

「いえ、何でもありませんわよ、おほほほほっ!」

 一昔前の漫画のようなセレブ笑いで無理やり誤魔化す双葉。その間にも零士は整理された資料に目を通す。百童子高校の女子生徒が1年前に受験ノイローゼで自らこの世から去ったという話が軸であり、そこから信憑性のある噂などを統合した結果。

「九十九さんの妹が?」
「はい。学校関係者の家族なのは地方紙にも載ってて、さらに生徒達らしきコメントから推察すると……」

 2人でヒソヒソと話し合う。先の明可や無央の反応からして大きくハズレてはいないだろう。

「驚いたが、今回の件には気持ち以外関わってないだろうな」

 校長先生達が当たり障りなく立ち回ろうとしたり、生徒の言い淀む理由もわかった。おかしな壁に当たったと呆れる零士。

「うーん、話を聞きづらくなっちまったな……」
「また別の方法を考えましょう」

 明可の心境を思うと、双葉も所長のデリカシーのなさに託せなくなったらしい。

「お二人とも、よろしいですか?」
「え? あ、はい、大丈夫だぜ?」

 いきなり明可に確認され、零士は慌てて考えもなしに答えた。

「それで、大丈夫、というのは?」

 なんとか冷静さを取り戻した双葉が意味を問い返す。気を散らしていた2人に明可は少し呆れたように答えてくれる。

「聞いていらっしゃらなかったんですか……。放送部の見学をしていくという話ですよ」

 意外な話の進み方に零士と双葉は顔を見合わせそしてまた振り向き確認する。

「勝手に決めて良いのか?」
「さっきの今ですよ?」
「ええ、まあ、五十鈴先生がダメと言えばそこまでですが」
「アタシはもっと2人と話してたいからなんとか説得してみるわ」

 明可は素直に乗り気ではないことを顕にし、反面で無央には気に入られてしまっている。そんな流れで零士達は放送部の部室へと向かうことになる。
 だいぶ日の暮れた時間になるも、放送室には人の気配があった。

「……!」

 零士達ではない。

「まだ機材と格闘してるみたい」

 無央が怒鳴り超えを聞いて推測する。しかし、何か様子が変だ。

「――ぎぃ!!」

 近づくに連れてはっきりしてくる声の内容。防音の扉を突き抜けてくるそれは明らかに通常とは違う声色だった。

「どちらかというと悲鳴じゃないか?」
「ぐぐぅぅぁぁぁっ!」
「うおっ!?」

 やはりセリフになっていない何かだ。

「こんなの普通じゃありませんよ……!」

 異常事態だと気づいた零士と双葉は慌てて放送室の扉に近づくが、中から鍵がされているらしくドアノブを回しても開かない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

いつもと違う日常

k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!

音のしない部屋〜怪談・不思議系短編集

ねぎ(ポン酢)
ホラー
短編で書いたものの中で、怪談・不思議・ホラー系のものをまとめました。基本的にはゾッとする様なホラーではなく、不思議系の話です。(たまに増えます)※怖いかなと思うものには「※」をつけてあります (『stand.fm』にて、AI朗読【自作Net小説朗読CAFE】をやっております。AI朗読を作って欲しい短編がありましたらご連絡下さい。)

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/7:『しんれいしゃしん』の章を追加。2025/3/14の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/6:『よふかし』の章を追加。2025/3/13の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/5:『つくえのしたのて』の章を追加。2025/3/12の朝4時頃より公開開始予定。

熾ーおこりー

ようさん
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞参加予定作品(リライト)】  幕末一の剣客集団、新撰組。  疾風怒濤の時代、徳川幕府への忠誠を頑なに貫き時に鉄の掟の下同志の粛清も辞さない戦闘派治安組織として、倒幕派から庶民にまで恐れられた。  組織の転機となった初代局長・芹澤鴨暗殺事件を、原田左之助の視点で描く。  志と名誉のためなら死をも厭わず、やがて新政府軍との絶望的な戦争に飲み込まれていった彼らを蝕む闇とはーー ※史実をヒントにしたフィクション(心理ホラー)です 【登場人物】(ネタバレを含みます) 原田左之助(二三歳) 伊代松山藩出身で槍の名手。新撰組隊士(試衛館派) 芹澤鴨(三七歳) 新撰組筆頭局長。文武両道の北辰一刀流師範。刀を抜くまでもない戦闘の際には鉄製の軍扇を武器とする。水戸派のリーダー。 沖田総司(二一歳) 江戸出身。新撰組隊士の中では最年少だが剣の腕前は五本の指に入る(試衛館派) 山南敬助(二七歳) 仙台藩出身。土方と共に新撰組副長を務める。温厚な調整役(試衛館派) 土方歳三(二八歳)武州出身。新撰組副長。冷静沈着で自分にも他人にも厳しい。試衛館の弟子筆頭で一本気な男だが、策士の一面も(試衛館派) 近藤勇(二九歳) 新撰組局長。土方とは同郷。江戸に上り天然理心流の名門道場・試衛館を継ぐ。 井上源三郎(三四歳) 新撰組では一番年長の隊士。近藤とは先代の兄弟弟子にあたり、唯一の相談役でもある。 新見錦 芹沢の腹心。頭脳派で水戸派のブレインでもある 平山五郎 芹澤の腹心。直情的な男(水戸派) 平間(水戸派) 野口(水戸派) (画像・速水御舟「炎舞」部分)

赤い部屋

山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。 真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。 東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。 そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。 が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。 だが、「呪い」は実在した。 「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。 凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。 そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。 「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか? 誰がこの「呪い」を生み出したのか? そして彼らはなぜ、呪われたのか? 徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。 その先にふたりが見たものは——。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

処理中です...