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第7話
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時間は少しばかり進み、レッサードラゴンを倒し終えた翌日のことである。
キミィはその日もDGCにログインしており、周囲の目を避けるようにして廃墟の影に身を隠していた。
「隠れてるんじゃぁないわッ。それとも、貴方は恥ずかしがり屋なのかしら? それとも、かくれんぼが趣味だったとか?」
「や、やめてッ!」
痺れを切らせたヒロインによって、彼は遮蔽物から蹴り出されることになった。レーティングのセキュリティ設定ギリギリの威力で蹴手繰りするのだ。
当然、彼はそんな性格でもないしそのような趣味もない。
「こんなところで遊んでる暇は無いのよ? ファミリア用の『次元の書』をさっさと見つけなさいな。依頼を受けて、クエスト回して、探索し倒しなさい!」
見ての通り、既に尻に敷かれていた。引きこもった社会人に発破をかけて、仕事へ送りだそうしている家族のような感じだとキミィは感じた。
彼に至っては小動物を彷彿とさせる反応である。
「そ、そんなこと言われましても……。バーに、『ポアロの髭』に行ったら誰かに会いますし、そしたら不正を疑われるかも知れないじゃないですか」
「はぁ~、仕方ないわね……。何度も言うように、貴方が不正をしたという証拠はどこにもないわ。なんと言われようとも、運が良かっただけで通せば良いの」
悩む彼に活を入れる。ヒロインの言葉は、トップランカーを目指すにしては弱気な言葉だが、それこそいきなり実力で勝ったと言う方が不正を疑われる。それが彼女の主張だった。
「わ、わかりましたから……!」
このままでは臀部を蹴って2つに割られかねないので、キミィは物陰から出てカクテルバーへの道を渋々歩いた。
しかし、彼を呼び止める声が。
「おい、キミィ! 覚悟できてんだろーな!?」
「良くも俺達を無視したよな! レーティング下げてついてこい!」
「そんなぁことできる立場だと思ってんのかぁ!?」
聞き覚えのある声が3つ、彼の背中に乱暴なぐらいにぶつけられた。彼は確信を持ってあの3人組だとわかったからか、身を縮こまらせてその場に硬直してしまった。
代わりにヒロインが振り返って3人組を見る。
「なによ、こいつら。秘孔を突かれたモヒカンどもの方がまだマシな面してるわよ」
彼女は出会い頭にいきなり、またしても古い例えを持ち出して罵声を浴びせた。
いくらかの付き合いをしてきたキミィには彼女の、行動を阻害されたことへの苛立ちが声音から聞き取れた。
当然、男達の怒りを買う。その例えで理解できることも、キミィには驚きではあるが。
「なんだとー! この小むすムゥ……」
「そういうことかい。キミィがレッサードラゴンを倒せるなんておかしいと思ったからな。ガリッド、どうしたよ?」
「小娘がドラゴンを倒して、キミィがおこぼれを貰ったぁだけかぁ。髭のマスターをどう騙したのかはしらねぇけどぉ」
ガリッドは何やら言葉を詰まらせるも、残る2人が意外と外れてはいない推測をした。
ただ、クエストの履歴を見ればそれが間違いだとわかる。そこだけは誤魔化しようがないので、ヒロインの視線が見せてやれとばかりにキミィに向く。
「キミィには似合わねーお友達だ。そんなナヨナヨとじゃなくて、俺と友達にならねぇか?」
不意にガリッドがそういって、ゴツゴツとした太い手を彼女の肩に伸ばした。
彼女になら避けられないことのない緩慢な動きだったが、全く男達を意識していなかったがために肩を握られてしまう。
「ッ!」
「……やめろ!」
彼女の目尻が僅かに引きつったため、キミィは咄嗟にガリッドの大きな腕を力いっぱい振り払った。当然、その行動はいじめっ子の怒りに油を注ぐのに十分だった。
「あ?」
ガリッドの声に剣山が混ざった。
当然、脅かされたキミィの声は尻すぼみになってしまう。
「あ、あの……彼女、痛がっています、から……。グッ!」
「誰が、誰に、ものきーてんだ?」
キミィの肩を掴んで、ガリッドは強面をグイグイと近づけて脅した。ほとんど頭突きだ。
「ですか、ら……。その、ガチャ、良いのが引けなくてショックで。ドラゴンの件も、単に、運が良かっただけなんです……」
「そーいうこときーてんじゃねー!」
「ぅわわッ!」
レーティングのセキュリティで力強くは殴れないため、キミィは突き飛ばされるままによろけて尻もちをついた。
そんな様子を見ていたヒロインが、見ていられなくなったのか今度は間に割って入ってくる。
「殴り合いの喧嘩なんて文化的ではないわ。ゲームらしく決闘なさいな」
そう提案した。
キミィはその日もDGCにログインしており、周囲の目を避けるようにして廃墟の影に身を隠していた。
「隠れてるんじゃぁないわッ。それとも、貴方は恥ずかしがり屋なのかしら? それとも、かくれんぼが趣味だったとか?」
「や、やめてッ!」
痺れを切らせたヒロインによって、彼は遮蔽物から蹴り出されることになった。レーティングのセキュリティ設定ギリギリの威力で蹴手繰りするのだ。
当然、彼はそんな性格でもないしそのような趣味もない。
「こんなところで遊んでる暇は無いのよ? ファミリア用の『次元の書』をさっさと見つけなさいな。依頼を受けて、クエスト回して、探索し倒しなさい!」
見ての通り、既に尻に敷かれていた。引きこもった社会人に発破をかけて、仕事へ送りだそうしている家族のような感じだとキミィは感じた。
彼に至っては小動物を彷彿とさせる反応である。
「そ、そんなこと言われましても……。バーに、『ポアロの髭』に行ったら誰かに会いますし、そしたら不正を疑われるかも知れないじゃないですか」
「はぁ~、仕方ないわね……。何度も言うように、貴方が不正をしたという証拠はどこにもないわ。なんと言われようとも、運が良かっただけで通せば良いの」
悩む彼に活を入れる。ヒロインの言葉は、トップランカーを目指すにしては弱気な言葉だが、それこそいきなり実力で勝ったと言う方が不正を疑われる。それが彼女の主張だった。
「わ、わかりましたから……!」
このままでは臀部を蹴って2つに割られかねないので、キミィは物陰から出てカクテルバーへの道を渋々歩いた。
しかし、彼を呼び止める声が。
「おい、キミィ! 覚悟できてんだろーな!?」
「良くも俺達を無視したよな! レーティング下げてついてこい!」
「そんなぁことできる立場だと思ってんのかぁ!?」
聞き覚えのある声が3つ、彼の背中に乱暴なぐらいにぶつけられた。彼は確信を持ってあの3人組だとわかったからか、身を縮こまらせてその場に硬直してしまった。
代わりにヒロインが振り返って3人組を見る。
「なによ、こいつら。秘孔を突かれたモヒカンどもの方がまだマシな面してるわよ」
彼女は出会い頭にいきなり、またしても古い例えを持ち出して罵声を浴びせた。
いくらかの付き合いをしてきたキミィには彼女の、行動を阻害されたことへの苛立ちが声音から聞き取れた。
当然、男達の怒りを買う。その例えで理解できることも、キミィには驚きではあるが。
「なんだとー! この小むすムゥ……」
「そういうことかい。キミィがレッサードラゴンを倒せるなんておかしいと思ったからな。ガリッド、どうしたよ?」
「小娘がドラゴンを倒して、キミィがおこぼれを貰ったぁだけかぁ。髭のマスターをどう騙したのかはしらねぇけどぉ」
ガリッドは何やら言葉を詰まらせるも、残る2人が意外と外れてはいない推測をした。
ただ、クエストの履歴を見ればそれが間違いだとわかる。そこだけは誤魔化しようがないので、ヒロインの視線が見せてやれとばかりにキミィに向く。
「キミィには似合わねーお友達だ。そんなナヨナヨとじゃなくて、俺と友達にならねぇか?」
不意にガリッドがそういって、ゴツゴツとした太い手を彼女の肩に伸ばした。
彼女になら避けられないことのない緩慢な動きだったが、全く男達を意識していなかったがために肩を握られてしまう。
「ッ!」
「……やめろ!」
彼女の目尻が僅かに引きつったため、キミィは咄嗟にガリッドの大きな腕を力いっぱい振り払った。当然、その行動はいじめっ子の怒りに油を注ぐのに十分だった。
「あ?」
ガリッドの声に剣山が混ざった。
当然、脅かされたキミィの声は尻すぼみになってしまう。
「あ、あの……彼女、痛がっています、から……。グッ!」
「誰が、誰に、ものきーてんだ?」
キミィの肩を掴んで、ガリッドは強面をグイグイと近づけて脅した。ほとんど頭突きだ。
「ですか、ら……。その、ガチャ、良いのが引けなくてショックで。ドラゴンの件も、単に、運が良かっただけなんです……」
「そーいうこときーてんじゃねー!」
「ぅわわッ!」
レーティングのセキュリティで力強くは殴れないため、キミィは突き飛ばされるままによろけて尻もちをついた。
そんな様子を見ていたヒロインが、見ていられなくなったのか今度は間に割って入ってくる。
「殴り合いの喧嘩なんて文化的ではないわ。ゲームらしく決闘なさいな」
そう提案した。
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