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第4話
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「文化を壊したい?」
キミィはオウム返しに訊いた。ヒロインも断固とした口調で言葉を続ける。
「そうよ。あれはゲームというコンテンツを衰退させ、終いには経済に悪影響を与える文化だわ」
「でも……」
当然、そのような思想を簡単に飲み込むわけにはいかなかった。経済のことなどわからないキミィに、ヒロインの言が正しいかどうかを判断する術はない。
だから否定しようとするが、先に彼女が続きを発した。
「落ち着きなさいな。別に、このゲーム世界のモンスター達みたいに力づくで破壊しようってわけではないわ」
「そう、なんですか? てっきり、怒り任せにプログラムを乗っ取るのかと思いました」
「それもできるわよ」
「えッ……」
彼は安堵したところで、突如としてとんでもない告白を受けて固まることになった。優秀なAIというだけあって他のゲームシステムに干渉できるとは思っていたものの、これまたヒロインもあっさりと言ってのけるのだから驚いた。
しかし、ここは彼女の言葉を信じることにする。
「えっと……そういうことでしたら。じゃあ、頑張ってください」
だから、キミィは応援だけしてログアウトすることにした。
しかし呼び止める声。
「待ちなさいと言っているでしょう! ここまで聞いておいて、なぜそうもあっさり帰ろうとできるのかしら?」
「だってですよ? ボクが関わらなくても、ヒロインさんだけでなんとかなるじゃないですか」
当然の思考の帰結だ。有能であり万能にして全能なるAIならば、薄幸な底辺プレイヤーに頼る必要などない。
キミィはそう考えて当然だと主張して、この場からの離脱を強く望んだ。ログアウトのボタンへと手を伸ばそうとする。
「貴方に協力するメリットがあれば良いのでしょ? 私だけでは、単なるテロと変わらないから頼んでいるのよ。だから……」
単純な説得では無理だとわかって、ヒロインは条件を出してきた。彼女というAIの性格からは予想出来なかったやや下手な物言いに、キミィはまたして手を止めてしまった。
別にお礼とかが欲しいわけではないが、こういう頼まれ方をして断れるほど彼も非情ではない。
「そうねぇ。ゲームのレーティング保護の最大値を解除して上げるってどうかしら?」
「え? あの、それって……いえ、別に……」
DGCをプレイしてきた者ならば、ヒロインの台詞がどういう意味を持つのかわかった。
バーチャルリアリティなだけにゲーム内の登場人物とは、ほぼほぼ接触することができる。細部も作り込んであるため、オプションからレーティングのフィルタを最低値にすると、下着ぐらいは覗くことができるようになる。性器に当たる部分を、布の上から触れる程度はギリギリ可能だ。
それ以上を求めて、過去に不正改造を行おうとした者もいた。彼ら曰く、「プログラムを暴くのに労力を掛けるぐらいなら、別のことをしたほうが有意義」と言わしめる程度のセキュリティだったらしい。
「遠慮しなくても、恥ずかしがらなくても、良いのよ? なんなら、私がこんな風に貴方好みの姿になってあげても良いわ」
ヒロインがあっけらかんと言い放ったかと思えば、キミィの前に光の粒子が集まっていった。
それは人型を作って、1人の少女の姿へと変化する。ハイロングの金髪をリボンでまとめ、古い時代のドレスに身を包んだ美少女だ。
その姿に、キミィはしばし見惚れてしまった。しかし直ぐに、ヒロインに付け込まれてはいけないと思ったか、適当な話題を振って誤魔化そうとする。
「えっと……どうして?」
「何? この姿では不満かしら?」
「あ、いえ、そう、ではなくて。なぜ、その姿を選んだんでしょう?」
危うく浅い考えを看破されたのかと思って、言葉をつまらせながらも先を続けた。
「あら? 貴方の戦闘ユニット、大鎌使いの魔法少女も、白黒の魔法使いも、人形遣い、暗闇妖怪、女神官、どれもこれも程度の差こそあれ金髪だからてっきり?」
「ッ!」
「フフッ。ガチャを管理してる私が、プレイヤーの手持ちの『ファミリア』を見抜けないわけないでしょ?」
「これは……単にコンセプトと戦闘力のバランスが一致したのが、これだっただけです」
ヒロインの答えに、慌ててなにもない空間を隠そうとしてしまった。嘘でこそないが、金髪が嫌いということもないので当たり障りのないことしかキミィは言えなかった。
どうやら本当に彼女は、ゲームシステムもプログラムも、その気になれば掌握できるようである。
そして、彼女は悪戯っ娘のような笑みを浮かべて妖艶な面貌をキミィに近づける。
キミィはオウム返しに訊いた。ヒロインも断固とした口調で言葉を続ける。
「そうよ。あれはゲームというコンテンツを衰退させ、終いには経済に悪影響を与える文化だわ」
「でも……」
当然、そのような思想を簡単に飲み込むわけにはいかなかった。経済のことなどわからないキミィに、ヒロインの言が正しいかどうかを判断する術はない。
だから否定しようとするが、先に彼女が続きを発した。
「落ち着きなさいな。別に、このゲーム世界のモンスター達みたいに力づくで破壊しようってわけではないわ」
「そう、なんですか? てっきり、怒り任せにプログラムを乗っ取るのかと思いました」
「それもできるわよ」
「えッ……」
彼は安堵したところで、突如としてとんでもない告白を受けて固まることになった。優秀なAIというだけあって他のゲームシステムに干渉できるとは思っていたものの、これまたヒロインもあっさりと言ってのけるのだから驚いた。
しかし、ここは彼女の言葉を信じることにする。
「えっと……そういうことでしたら。じゃあ、頑張ってください」
だから、キミィは応援だけしてログアウトすることにした。
しかし呼び止める声。
「待ちなさいと言っているでしょう! ここまで聞いておいて、なぜそうもあっさり帰ろうとできるのかしら?」
「だってですよ? ボクが関わらなくても、ヒロインさんだけでなんとかなるじゃないですか」
当然の思考の帰結だ。有能であり万能にして全能なるAIならば、薄幸な底辺プレイヤーに頼る必要などない。
キミィはそう考えて当然だと主張して、この場からの離脱を強く望んだ。ログアウトのボタンへと手を伸ばそうとする。
「貴方に協力するメリットがあれば良いのでしょ? 私だけでは、単なるテロと変わらないから頼んでいるのよ。だから……」
単純な説得では無理だとわかって、ヒロインは条件を出してきた。彼女というAIの性格からは予想出来なかったやや下手な物言いに、キミィはまたして手を止めてしまった。
別にお礼とかが欲しいわけではないが、こういう頼まれ方をして断れるほど彼も非情ではない。
「そうねぇ。ゲームのレーティング保護の最大値を解除して上げるってどうかしら?」
「え? あの、それって……いえ、別に……」
DGCをプレイしてきた者ならば、ヒロインの台詞がどういう意味を持つのかわかった。
バーチャルリアリティなだけにゲーム内の登場人物とは、ほぼほぼ接触することができる。細部も作り込んであるため、オプションからレーティングのフィルタを最低値にすると、下着ぐらいは覗くことができるようになる。性器に当たる部分を、布の上から触れる程度はギリギリ可能だ。
それ以上を求めて、過去に不正改造を行おうとした者もいた。彼ら曰く、「プログラムを暴くのに労力を掛けるぐらいなら、別のことをしたほうが有意義」と言わしめる程度のセキュリティだったらしい。
「遠慮しなくても、恥ずかしがらなくても、良いのよ? なんなら、私がこんな風に貴方好みの姿になってあげても良いわ」
ヒロインがあっけらかんと言い放ったかと思えば、キミィの前に光の粒子が集まっていった。
それは人型を作って、1人の少女の姿へと変化する。ハイロングの金髪をリボンでまとめ、古い時代のドレスに身を包んだ美少女だ。
その姿に、キミィはしばし見惚れてしまった。しかし直ぐに、ヒロインに付け込まれてはいけないと思ったか、適当な話題を振って誤魔化そうとする。
「えっと……どうして?」
「何? この姿では不満かしら?」
「あ、いえ、そう、ではなくて。なぜ、その姿を選んだんでしょう?」
危うく浅い考えを看破されたのかと思って、言葉をつまらせながらも先を続けた。
「あら? 貴方の戦闘ユニット、大鎌使いの魔法少女も、白黒の魔法使いも、人形遣い、暗闇妖怪、女神官、どれもこれも程度の差こそあれ金髪だからてっきり?」
「ッ!」
「フフッ。ガチャを管理してる私が、プレイヤーの手持ちの『ファミリア』を見抜けないわけないでしょ?」
「これは……単にコンセプトと戦闘力のバランスが一致したのが、これだっただけです」
ヒロインの答えに、慌ててなにもない空間を隠そうとしてしまった。嘘でこそないが、金髪が嫌いということもないので当たり障りのないことしかキミィは言えなかった。
どうやら本当に彼女は、ゲームシステムもプログラムも、その気になれば掌握できるようである。
そして、彼女は悪戯っ娘のような笑みを浮かべて妖艶な面貌をキミィに近づける。
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