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レイド・ダンジョン編
2-16
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「……」
「何だ?」
信じがたいものを見たような表情に対して、グレイザさんは怪訝な表情でとどめてくれた。
「いえ、きっと今手に入れアイテムは性格を矯正するものだったんでしょうね」
「ねぇよそんなもん!」
「嘘! 他人に謝れるグレイザさんなんてグレイザさんじゃない!」
「俺の評価低いな! おい!」
流石に失礼だったかもしれないけど、誰もが明日の天気が槍か鉄砲になるんじゃないかって思うわよ。こう言っちゃなんだけれど、何か裏があるんじゃないかって疑ってるわ。
だって、あの天上天下唯我独尊厚顔無恥ワンマンワガママ起業家社長が、私に対して謝罪なんて夢か何かに決まってる!
「……ったく、とりあえず確認するぞ」
私の暴言を無視することにして、手に入れたアイテムを確認しだした。
何かな。何かな。
頭の中で未来から来た猫型たぬきロボが道具を出すときの音を鳴らしつつ、アイテムを見た。"魔毒"とは?
「魔法や戦闘スキルの属性に更に毒を付与できるアイテムみたいだな。サソリらしいと言えばらしいが」
「一時的な効果な分、かなり致命な毒になりえるって感じですか」
ふむふむ、なるほど。
残しておいてもそれほど使い道がなさそうなので、さっさとこのイベントで消費してしまおうと私は考える。
「誰が使います? あ、まずはセルシュさんのグループを待たないとですね」
候補がグレイザさんと2人だけで考えてはいけない。まぁ、一度のスキル限定なので多段ヒット型の攻撃に付与するのがベターだろう。
アイテムの説明だけでは、一度のヒットで毒状態にできるか不明なのよ。"鑑定《アイテム・ディレクト》"があれば詳細もわかるんでしょうけど……。
と、そんなことをしている間にセルシュさんがフェーリーを抱きかかえて、私達が来たのとは別の通路からやってきた。
「はぁ、はぁ……おまたせ。もしかして?」
到着早々の台詞はそれだった。
こちらは私とグレイザさんの2人だけで、セルシュさんはフェーリーを連れているだけだ。当然、お互いにどういう状況か理解する。
「そっちもほぼ全滅か……」
「うん、ごめん。細い通路で挟撃されて、フェーリーを守るだけで精一杯だった」
「ま、まぁ、仕方ありませんよ」
あまり険悪な空気になってもいけないと、私は杞憂な仲裁に入った。
「このアイテムはメリーが持っておけ」
「えぇ……。この効果なら、属性攻撃主体じゃないセルシュさんの方が良いのでは?」
"魔毒"のアイテムを押し付けられるも、属性に特化した私には要らないと辞退した。が、この状況下で二人が私のある魔法を無視するわけがない。
「お前が持っておけ、この調子だと次が踏ん張りどころだろうしな」
二人に受け取り拒否され、グレイザさんの言う通り私が扱うことになった。そう、【神裂】という無属性にして多段ヒットという究極魔法に期待されたのだ。
案の定、グレイザさんの予想通りで、運営はとんでもないのをぶつけてきた。
「……」「……」「……」
扉の向こうへやってくると、巨大な山々の合間をノソノソとあるく巨大な山があった。
私は、虫とか嫌いだからなんとなくイメージしか記憶にない。それでも本来はこんなに巨大な生物ではないはずだ。
「クマムシだな」
グレイザさんが、その生物の名前をつぶやいた。
「確か、並大抵の手段では死なないと言われる不死身の虫だっけ?」
「えぇ、そんなのどう倒せっていうんです……」
セルシュさんの言葉に、私は埒が明かないとばかりに声を重ねた。正直、3人で倒せるようなボスとも思えなかった。
そこで思い至るのが、先程の"魔毒"と【神裂】だ。
偶然だとは思うんだけど、運営も救済措置を用意していたのだろうか。
「これが終わったら、話がある」
「僕も話があります」
「え?」
二人して何やら唐突に言い出すから、私は警戒してしまった。もしかして、活躍できなかったらクラン追放?
いえ、しがみつくだけの理由はないけれど、それはそれで寂しいのだけれど。元の職場から逃げたような悔しさを味わいたくもないわ。
MPとかカツカツだけど、やったるわよ!
「いくぞ!」
「誰も神に祈らない 貴方は神を信じない 私は神など知らない 神は誰も救わない 神は貴方を助けない 神は私を生かさない」
そのグレイザさんの掛け声で、私は祝詞を唱え始めた。
同時に、"魔毒" を使うためにインベントリを開く。そして、3人の力ある言葉が重なる。
「【剛双破切】!」
「【虎王砲哮覇】ッ!!」
「【神裂】!!!」
結果? それは冒頭を見て頂戴。
生憎と、この物語はこれでおしまい。結果としては、合言葉の『葉月 零三』で『0803』がわからないお二人とはまだまだ独立できないって状態かしらね。
「何だ?」
信じがたいものを見たような表情に対して、グレイザさんは怪訝な表情でとどめてくれた。
「いえ、きっと今手に入れアイテムは性格を矯正するものだったんでしょうね」
「ねぇよそんなもん!」
「嘘! 他人に謝れるグレイザさんなんてグレイザさんじゃない!」
「俺の評価低いな! おい!」
流石に失礼だったかもしれないけど、誰もが明日の天気が槍か鉄砲になるんじゃないかって思うわよ。こう言っちゃなんだけれど、何か裏があるんじゃないかって疑ってるわ。
だって、あの天上天下唯我独尊厚顔無恥ワンマンワガママ起業家社長が、私に対して謝罪なんて夢か何かに決まってる!
「……ったく、とりあえず確認するぞ」
私の暴言を無視することにして、手に入れたアイテムを確認しだした。
何かな。何かな。
頭の中で未来から来た猫型たぬきロボが道具を出すときの音を鳴らしつつ、アイテムを見た。"魔毒"とは?
「魔法や戦闘スキルの属性に更に毒を付与できるアイテムみたいだな。サソリらしいと言えばらしいが」
「一時的な効果な分、かなり致命な毒になりえるって感じですか」
ふむふむ、なるほど。
残しておいてもそれほど使い道がなさそうなので、さっさとこのイベントで消費してしまおうと私は考える。
「誰が使います? あ、まずはセルシュさんのグループを待たないとですね」
候補がグレイザさんと2人だけで考えてはいけない。まぁ、一度のスキル限定なので多段ヒット型の攻撃に付与するのがベターだろう。
アイテムの説明だけでは、一度のヒットで毒状態にできるか不明なのよ。"鑑定《アイテム・ディレクト》"があれば詳細もわかるんでしょうけど……。
と、そんなことをしている間にセルシュさんがフェーリーを抱きかかえて、私達が来たのとは別の通路からやってきた。
「はぁ、はぁ……おまたせ。もしかして?」
到着早々の台詞はそれだった。
こちらは私とグレイザさんの2人だけで、セルシュさんはフェーリーを連れているだけだ。当然、お互いにどういう状況か理解する。
「そっちもほぼ全滅か……」
「うん、ごめん。細い通路で挟撃されて、フェーリーを守るだけで精一杯だった」
「ま、まぁ、仕方ありませんよ」
あまり険悪な空気になってもいけないと、私は杞憂な仲裁に入った。
「このアイテムはメリーが持っておけ」
「えぇ……。この効果なら、属性攻撃主体じゃないセルシュさんの方が良いのでは?」
"魔毒"のアイテムを押し付けられるも、属性に特化した私には要らないと辞退した。が、この状況下で二人が私のある魔法を無視するわけがない。
「お前が持っておけ、この調子だと次が踏ん張りどころだろうしな」
二人に受け取り拒否され、グレイザさんの言う通り私が扱うことになった。そう、【神裂】という無属性にして多段ヒットという究極魔法に期待されたのだ。
案の定、グレイザさんの予想通りで、運営はとんでもないのをぶつけてきた。
「……」「……」「……」
扉の向こうへやってくると、巨大な山々の合間をノソノソとあるく巨大な山があった。
私は、虫とか嫌いだからなんとなくイメージしか記憶にない。それでも本来はこんなに巨大な生物ではないはずだ。
「クマムシだな」
グレイザさんが、その生物の名前をつぶやいた。
「確か、並大抵の手段では死なないと言われる不死身の虫だっけ?」
「えぇ、そんなのどう倒せっていうんです……」
セルシュさんの言葉に、私は埒が明かないとばかりに声を重ねた。正直、3人で倒せるようなボスとも思えなかった。
そこで思い至るのが、先程の"魔毒"と【神裂】だ。
偶然だとは思うんだけど、運営も救済措置を用意していたのだろうか。
「これが終わったら、話がある」
「僕も話があります」
「え?」
二人して何やら唐突に言い出すから、私は警戒してしまった。もしかして、活躍できなかったらクラン追放?
いえ、しがみつくだけの理由はないけれど、それはそれで寂しいのだけれど。元の職場から逃げたような悔しさを味わいたくもないわ。
MPとかカツカツだけど、やったるわよ!
「いくぞ!」
「誰も神に祈らない 貴方は神を信じない 私は神など知らない 神は誰も救わない 神は貴方を助けない 神は私を生かさない」
そのグレイザさんの掛け声で、私は祝詞を唱え始めた。
同時に、"魔毒" を使うためにインベントリを開く。そして、3人の力ある言葉が重なる。
「【剛双破切】!」
「【虎王砲哮覇】ッ!!」
「【神裂】!!!」
結果? それは冒頭を見て頂戴。
生憎と、この物語はこれでおしまい。結果としては、合言葉の『葉月 零三』で『0803』がわからないお二人とはまだまだ独立できないって状態かしらね。
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