幻想球 ~ユニーク・スキルは一国守護の要です~

AAKI

文字の大きさ
上 下
31 / 31
レイド・ダンジョン編

2-16

しおりを挟む
「……」

「何だ?」

 信じがたいものを見たような表情に対して、グレイザさんは怪訝な表情でとどめてくれた。

「いえ、きっと今手に入れアイテムは性格を矯正するものだったんでしょうね」

「ねぇよそんなもん!」

「嘘! 他人に謝れるグレイザさんなんてグレイザさんじゃない!」

「俺の評価低いな! おい!」

 流石に失礼だったかもしれないけど、誰もが明日の天気が槍か鉄砲になるんじゃないかって思うわよ。こう言っちゃなんだけれど、何か裏があるんじゃないかって疑ってるわ。

 だって、あの天上天下唯我独尊厚顔無恥ワンマンワガママ起業家社長が、私に対して謝罪なんて夢か何かに決まってる!

「……ったく、とりあえず確認するぞ」

 私の暴言を無視することにして、手に入れたアイテムを確認しだした。

 何かな。何かな。

 頭の中で未来から来た猫型たぬきロボが道具を出すときの音を鳴らしつつ、アイテムを見た。"魔毒パラケルス"とは?

「魔法や戦闘スキルの属性に更に毒を付与できるアイテムみたいだな。サソリらしいと言えばらしいが」

「一時的な効果な分、かなり致命な毒になりえるって感じですか」

 ふむふむ、なるほど。

 残しておいてもそれほど使い道がなさそうなので、さっさとこのイベントで消費してしまおうと私は考える。

「誰が使います? あ、まずはセルシュさんのグループを待たないとですね」

 候補がグレイザさんと2人だけで考えてはいけない。まぁ、一度のスキル限定なので多段ヒット型の攻撃に付与するのがベターだろう。

 アイテムの説明だけでは、一度のヒットで毒状態にできるか不明なのよ。"鑑定《アイテム・ディレクト》"があれば詳細もわかるんでしょうけど……。

 と、そんなことをしている間にセルシュさんがフェーリーを抱きかかえて、私達が来たのとは別の通路からやってきた。

「はぁ、はぁ……おまたせ。もしかして?」

 到着早々の台詞はそれだった。

 こちらは私とグレイザさんの2人だけで、セルシュさんはフェーリーを連れているだけだ。当然、お互いにどういう状況か理解する。

「そっちもほぼ全滅か……」

「うん、ごめん。細い通路で挟撃されて、フェーリーを守るだけで精一杯だった」

「ま、まぁ、仕方ありませんよ」

 あまり険悪な空気になってもいけないと、私は杞憂な仲裁に入った。

「このアイテムはメリーが持っておけ」

「えぇ……。この効果なら、属性攻撃主体じゃないセルシュさんの方が良いのでは?」

 "魔毒"のアイテムを押し付けられるも、属性に特化した私には要らないと辞退した。が、この状況下で二人が私のある魔法を無視するわけがない。

「お前が持っておけ、この調子だと次が踏ん張りどころだろうしな」

 二人に受け取り拒否され、グレイザさんの言う通り私が扱うことになった。そう、【神裂】という無属性にして多段ヒットという究極魔法に期待されたのだ。

 案の定、グレイザさんの予想通りで、運営はとんでもないのをぶつけてきた。

「……」「……」「……」

 扉の向こうへやってくると、巨大な山々の合間をノソノソとあるく巨大な山があった。

 私は、虫とか嫌いだからなんとなくイメージしか記憶にない。それでも本来はこんなに巨大な生物ではないはずだ。

「クマムシだな」

 グレイザさんが、その生物の名前をつぶやいた。

「確か、並大抵の手段では死なないと言われる不死身の虫だっけ?」

「えぇ、そんなのどう倒せっていうんです……」

 セルシュさんの言葉に、私は埒が明かないとばかりに声を重ねた。正直、3人で倒せるようなボスとも思えなかった。

 そこで思い至るのが、先程の"魔毒"と【神裂】だ。

 偶然だとは思うんだけど、運営も救済措置を用意していたのだろうか。

「これが終わったら、話がある」

「僕も話があります」

「え?」

 二人して何やら唐突に言い出すから、私は警戒してしまった。もしかして、活躍できなかったらクラン追放?

 いえ、しがみつくだけの理由はないけれど、それはそれで寂しいのだけれど。元の職場から逃げたような悔しさを味わいたくもないわ。

 MPとかカツカツだけど、やったるわよ!

「いくぞ!」

「誰も神に祈らない 貴方は神を信じない 私は神など知らない 神は誰も救わない 神は貴方を助けない 神は私を生かさない」

 そのグレイザさんの掛け声で、私は祝詞を唱え始めた。

 同時に、"魔毒" を使うためにインベントリを開く。そして、3人の力ある言葉が重なる。

「【剛双破切ウィニングショット】!」

「【虎王砲哮覇ティィィィィゲル・ツゥゥゥゥゥゥ】ッ!!」

「【神裂】!!!」

 結果? それは冒頭を見て頂戴。

 生憎と、この物語はこれでおしまい。結果としては、合言葉の『葉月 零三』で『0803』がわからないお二人とはまだまだ独立できないって状態かしらね。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

処理中です...