幻想球 ~ユニーク・スキルは一国守護の要です~

AAKI

文字の大きさ
上 下
17 / 31
レイド・ダンジョン編

2-2

しおりを挟む
 たどり着いたのは、元老議場である。会議場のすり鉢状に椅子が並んだ方には、既に何人かのクランメンバーが集まっていた。

 見知ったメンバーや、その知り合いに挨拶をしながら人集りの前方へと進む。

「来たか。お前で最後だな」

 すると、早速掛かった声はそれだ。グレイザさんとセルシュさんが、メモ用紙を手に佇んでいるのが見えた。

 げっ、最後になったことを文句言われてしまう……。ちゃんと名簿まで用意して面々を出迎えてくれている辺り、準備がよろしいと言いますか。

「それでは、ただいまより新しく実装された"レイドダンジョン”へと挑む!」

「お?」

 警戒していたのに、反して皆への鼓舞をし始めるものだから私はつい拍子抜けしてしまった。

 久しぶりに多人数で挑むダンジョンだから、グレイザさんもワクワクドキドキなんでしょうね。子供みたいなところがあるのは、まぁね?

「どうした? 何か忘れ物なら、依頼を受注する前にしておけよ」 

「いえ、なんでもないです。準備も大丈夫なので、行きましょう」

 やぶ蛇にならないよう誤魔化しつつ、私は集団の後ろをついていった。

 なのに、なぜかグレイザさんは先頭をセルシュさんに任せて後ろにやってくる。ホントなぜに?

「クランマスターが、前に行かないと駄目では……?」

 流石に側にクランマスターにいられると緊張してしまうので、さり気なく離れていただけるよう言った。

「前はセルシュとMJに任せてある。後ろのカバーと、指示はリーダーの役目だろうが」

「そりゃぁ……えー」

 私が拒絶しているのを知ってか、二の句が告げない程度に理由付けを用意してきやがった。

 将軍が前に出ていくなんてそうそうあることじゃないし、軍師も兼ねるなら後ろから指示を飛ばすのもわかる。適材適所を考えれば、切り込み隊長のセルシュさんと得手不得手がはっきりしたMJさんを、臨機応変に動かす方が良いのも自明だわ。

 けれど、それでは私の胃が持たないの!

「そんな万年胃痛に悩まされている中間管理職みてぇな顔をするんじゃねぇよ」

 無茶を言わないでもらえると助かる。

 第一、私の立場は本当に中間管理職だからね。

「皆には頑張ってもらわないといけないからな」

 最善を尽くし、皆を鼓舞するのは当たり前だとリーダーらしいことを言った。えぇ、えぇ、以前のBUGUウサギイベントでもそうでしたが、都市の元首としてもよくやってくれていますとも。

 基本、その頑張りが私に降り掛かってきている気がするのは気のせいですか?

 イベントのアイテムは辛うじてコンプリートできたけど、貯金していたお金をかなり使ったわ。ゲーム内通貨だから貯めようと思えば難しくないけれど、この先も良いアイテムなどに必要かもしれない。

 今回も、果たしてどこで損を被るかしら。

「はぁ……わかりました。けど、暑苦しいので離れてください」

「ふん」

 傍らにいられては冷や汗さえ出てくるので、私は突き放してしまった。

 傷ついただろうか?

「今回を逃すと、次に大勢が集められるのが5日後になるんでな。ちょっとばかし、俺も浮き立っているのかもな」

 むぅ……。グレイザさん、こういうなんだかんだで自分の在り方をさらけ出すところは嫌いになれないのよね。

 喧嘩みたいになっていたから余計に。

「昨日まで取っていたアンケートはそういうことでしたか」

 適当に話をあわせて、事務的に振る舞っているように見せた。なぜか、周りの視線が奇異なものを見るそれになっているからだ。

 私は経理担当なのでそこに乗っかる必要はないのかもだけど、放っておくと何も解決しない気がする。

 それは、グレイザさんのセリフにも現れている。

「あぁ。今回で24人だからな。次回になると21人でMJもいないから、もっと厳しくなるぞ」

「十分いけそうな人数ですけど、何か懸案事項でも?」

「ダンジョンの説明を読んでこなかったのか?」

 質問に質問で返されると困るが、どうやら私の見ていないところに原因があるらしかった。

「えぇっと、急いで帰ってきましたから。ストーリー紹介ぐらいしか……あ、化粧も落としてない」

 だから皆が私の顔を見てくるのか!

「はっきり言うとそれは関係ない」

 何よ。逃げ場ぐらい残しておきなさいよ!

 まぁ、良いわ……。

「以前は、"レイド・ボス"の城が世界各所に登場して多くのチームがこぞって財宝を求めたという。そんな話ですよね」

 前のダンジョンでは、"ヴァンパイアロード"のいる城に乗り込んでフルボッコにするって感じだったっけ。実装から一ヶ月は、クリアするごとに一つずつ"ユニーク・アイテム"を手に入れることができる。

 そんな感じだから、今回も似たようなスタイルだと考えている。なんか、ボッコボッコにやられて財宝を奪われるって可哀想よね。

「確かに、流れは大凡考えている通りだ」

「今回は確か、共和国に謎の障壁が現れて困っているから攻略してくれという話でしたよね。"フィールド・ボス"を含むレイド・ボスを4体倒して」

「今度のは一つの土地をめぐる戦いだ。しかも、一緒に入ったチームが全滅しない限りはリスポーンした仲間は再入場できない」

 注意事項を聞いて、何が問題なのか理解した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

入れ替わりノート

廣瀬純一
ファンタジー
誰かと入れ替われるノートの話

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...