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初心者イベント編
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山賊まがいの行為をするこいつらを許せないのは確かだけれど、だからといって反撃のタイミングを間違えたら駄目。幸い、荷車の方の3人はまだ隠れてくれている。
既にMJさんがしてるだろうけど、周囲をさり気なく見渡して敵の様子を伺う。
岩場の上に5人ばかし"弓兵”と魔法職が並んでいて、2メートルほど前方に3人の下っ端山賊がいる。前に2人、後ろに1人という展開して囲むのが容易な陣形ね。その更に後方にボスと思しい大柄な男と、側仕えの回復役であろう奴が控える。
「よく見ると悪くねぇ顔じゃんか」
「……」
そういう卑猥なことはできないゲームだけど、演技のつもりらしいセリフが非常に気持ち悪かった。
「やですわ。お姉さん嬉しゅうございますのッ」
MJさんはそれでも嬉しいみたい。
その猫なで声に、山賊達は少し疑問に思ったみたい。
「あ? そっちのポンチョのは、女かと思ったけど男なのか……?」
「可愛ければ男とか女とか関係はございませんとも」
「うっせー! 気持ち悪いだろぉが!」
山賊達の個人的感想です。私個人は、女装男子、両性、ありだと思います。
「ちょっと、こいつのステータスを見ろ!」
何を躍起になったのか、"魔道術者"にMJさんステータスを暴くよう命令した。
いや、私も気にはなっていたけどね。
「私に聞かせて 貴方があるべき姿を 私に教えて 貴方の持つべき力を ここにいる全ての者と その真実を共有しましょう」
敵さんの魔法使い――マジックユーザー系ジョブの総称――が呪文を唱え始めた。
先制して魔法を放つことは出来たかもしれないけれど、MJさんの性別とかは気になっていたし、彼に任せることをにする。
「【能力走査】!」
魔法使いが魔法を放つと、三角形の光が伸びてきた。
光線が私達の体を舐め回すように前後左右に走った後、インターフェイスのスフィアが出てくる。普段と違うのは、ステータス画面に固定されていることと、それが外側に表示されているってこと。
「チッ。やっぱり男じゃねぇか。まぁ、警戒するほどの強さじゃねぇな」
そうなるとステータスは山賊さん達に見えて、当然ながらMJさんの性別もバレてしまう。
が、後半の発言から私は確信した。性別がどちらかではなく、調べるだけ無駄だという事実にね。
「もう、ご満足でしょうか?」
MJさんはそう言いながら、右半分しかない鷹の半面を顔に降ろした。
瞬間、リーダー各らしい男の大きな体が震える。
「おいッ、気をつけろ!」
部下達に忠告しようとして、彼らも振り向いた。
「その仮面は、『カンパニーの番鳥』の!」「へ?」「あ?」「おい?」
リーダーの言葉が終わらないうちに、MJさんが腕を一振りした。なぜか両翼の2人がリーダーの方へ倒れたのを見て、もう1人も傍らの仲間に声を掛けた。
遅かった。もはや、今から注意したところで手遅れだったのよ。
敵を前に余所見をすべきではない。
「ヒッ! や、やられてやがる!? てめぇら、何をしガッ!?」
私達へ振り返ろうとした雑魚1名は、腹パンを食らって倒れた。
MJさんが距離を詰めていたのだ。
拳を引くと、そこには指先に装着された鋭く尖った鉤爪のようなもの。ポンチョのどこからか隠していた刺突爪を取り出し、一撃で倒したのである。
先に倒れた男達へも、懐の小型ナイフを投げつけたに過ぎたい。
「な、何をしてる! 撃てぇ!!」
山賊のリーダーが慌てて合図を送り、構えられていた矢やクロスボウのボルトが放たれる。
「【高質防壁】!」
私も取り急ぎ周囲に魔法の壁を張った。
しかし、やはり咄嗟に展開した魔法スキルでは多くの攻撃は受け止めきれない。
「クッ!」
ギシィッとドーム状の壁が軋んだ後、鏃に貫かれたところから砕けて落ちていった。
「【火炎矢】!」「【氷結雨】!」「【暗黒散弾】!」
そのゴミを隠滅させるかのように、魔法の嵐が吹き荒れた。
それぞれ違うジョブの魔法スキルは容赦なくMJさんへと殺到した。
えぇッ、私よりそっちを狙うのは当然ですよね!
「ッ……MJさん!」
爆裂は止み、漂っていた蒸気とおぞましいオーラが晴れる前に安否を確認した。
まだ視界は塞がれていて返事もないため、私も行動に出ることにする。まずは馬車を覆うように魔法防壁を展開し、続いてこう言い含めておく。
ここまで馬車に子守っていたことを考えれば、指示がないうちは動かないだろうけど。
「どこかに伏兵がいるかも。お金守っていてちょうだい!」
「お、おう」「大丈夫です?」「頑張るわ……」
見える範囲に出ている敵は、リーダーを除いてそれほどではないはず。だから、他の伏兵もそれほどではないと考えた。
こちらは任せ、MJさんが無事であることを祈りながらたたか……ウッ。
私は、改めて煙幕の向こうを注視してからドン引きした。
何せ、MJさんは無事でこそあった。あくまで、倒れてリスポーンしていないだけという状況と言い換えるべきか。
「な、なんで生きてやがる!」
大人の都合で死なないので、敵神官のセリフはやや意味が違うが概ね言いたい気持ちはわかった。
既にMJさんがしてるだろうけど、周囲をさり気なく見渡して敵の様子を伺う。
岩場の上に5人ばかし"弓兵”と魔法職が並んでいて、2メートルほど前方に3人の下っ端山賊がいる。前に2人、後ろに1人という展開して囲むのが容易な陣形ね。その更に後方にボスと思しい大柄な男と、側仕えの回復役であろう奴が控える。
「よく見ると悪くねぇ顔じゃんか」
「……」
そういう卑猥なことはできないゲームだけど、演技のつもりらしいセリフが非常に気持ち悪かった。
「やですわ。お姉さん嬉しゅうございますのッ」
MJさんはそれでも嬉しいみたい。
その猫なで声に、山賊達は少し疑問に思ったみたい。
「あ? そっちのポンチョのは、女かと思ったけど男なのか……?」
「可愛ければ男とか女とか関係はございませんとも」
「うっせー! 気持ち悪いだろぉが!」
山賊達の個人的感想です。私個人は、女装男子、両性、ありだと思います。
「ちょっと、こいつのステータスを見ろ!」
何を躍起になったのか、"魔道術者"にMJさんステータスを暴くよう命令した。
いや、私も気にはなっていたけどね。
「私に聞かせて 貴方があるべき姿を 私に教えて 貴方の持つべき力を ここにいる全ての者と その真実を共有しましょう」
敵さんの魔法使い――マジックユーザー系ジョブの総称――が呪文を唱え始めた。
先制して魔法を放つことは出来たかもしれないけれど、MJさんの性別とかは気になっていたし、彼に任せることをにする。
「【能力走査】!」
魔法使いが魔法を放つと、三角形の光が伸びてきた。
光線が私達の体を舐め回すように前後左右に走った後、インターフェイスのスフィアが出てくる。普段と違うのは、ステータス画面に固定されていることと、それが外側に表示されているってこと。
「チッ。やっぱり男じゃねぇか。まぁ、警戒するほどの強さじゃねぇな」
そうなるとステータスは山賊さん達に見えて、当然ながらMJさんの性別もバレてしまう。
が、後半の発言から私は確信した。性別がどちらかではなく、調べるだけ無駄だという事実にね。
「もう、ご満足でしょうか?」
MJさんはそう言いながら、右半分しかない鷹の半面を顔に降ろした。
瞬間、リーダー各らしい男の大きな体が震える。
「おいッ、気をつけろ!」
部下達に忠告しようとして、彼らも振り向いた。
「その仮面は、『カンパニーの番鳥』の!」「へ?」「あ?」「おい?」
リーダーの言葉が終わらないうちに、MJさんが腕を一振りした。なぜか両翼の2人がリーダーの方へ倒れたのを見て、もう1人も傍らの仲間に声を掛けた。
遅かった。もはや、今から注意したところで手遅れだったのよ。
敵を前に余所見をすべきではない。
「ヒッ! や、やられてやがる!? てめぇら、何をしガッ!?」
私達へ振り返ろうとした雑魚1名は、腹パンを食らって倒れた。
MJさんが距離を詰めていたのだ。
拳を引くと、そこには指先に装着された鋭く尖った鉤爪のようなもの。ポンチョのどこからか隠していた刺突爪を取り出し、一撃で倒したのである。
先に倒れた男達へも、懐の小型ナイフを投げつけたに過ぎたい。
「な、何をしてる! 撃てぇ!!」
山賊のリーダーが慌てて合図を送り、構えられていた矢やクロスボウのボルトが放たれる。
「【高質防壁】!」
私も取り急ぎ周囲に魔法の壁を張った。
しかし、やはり咄嗟に展開した魔法スキルでは多くの攻撃は受け止めきれない。
「クッ!」
ギシィッとドーム状の壁が軋んだ後、鏃に貫かれたところから砕けて落ちていった。
「【火炎矢】!」「【氷結雨】!」「【暗黒散弾】!」
そのゴミを隠滅させるかのように、魔法の嵐が吹き荒れた。
それぞれ違うジョブの魔法スキルは容赦なくMJさんへと殺到した。
えぇッ、私よりそっちを狙うのは当然ですよね!
「ッ……MJさん!」
爆裂は止み、漂っていた蒸気とおぞましいオーラが晴れる前に安否を確認した。
まだ視界は塞がれていて返事もないため、私も行動に出ることにする。まずは馬車を覆うように魔法防壁を展開し、続いてこう言い含めておく。
ここまで馬車に子守っていたことを考えれば、指示がないうちは動かないだろうけど。
「どこかに伏兵がいるかも。お金守っていてちょうだい!」
「お、おう」「大丈夫です?」「頑張るわ……」
見える範囲に出ている敵は、リーダーを除いてそれほどではないはず。だから、他の伏兵もそれほどではないと考えた。
こちらは任せ、MJさんが無事であることを祈りながらたたか……ウッ。
私は、改めて煙幕の向こうを注視してからドン引きした。
何せ、MJさんは無事でこそあった。あくまで、倒れてリスポーンしていないだけという状況と言い換えるべきか。
「な、なんで生きてやがる!」
大人の都合で死なないので、敵神官のセリフはやや意味が違うが概ね言いたい気持ちはわかった。
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