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初心者イベント編
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気づいたその事実に、私はグレイザさんの意地の悪さに呆れた。
何せ行き先は、初心者用コラボイベントを行っているうちの一つだからだ。
多分、他の大陸でも山奥とかで行われているだろうけど、それがこっちだと先程言ったナクモ村というわけ。
「世界中の深い山渓のどこかに、姿を隠し住まうBUGUウサギなる一族がいる。彼らは過去に国家へと反逆するも、敗れ世界の端へと追い立てられた。幾年月の後、その雪辱と恨みを晴らすべく立ち上がった」
「新たな戦火の種に対し、国の中核または元首達により討伐の司令が下り、各国の冒険者は任に着く」
私が、丸暗記したイベントのストーリーを読み上げていくとMJさんもそれに続いた。
ちゃんと覚えて来ているとは感心、感心。
謎の上から目線で頷いて見せ、私は更に先を続けようとすす。
討伐したBUGUウサギを味方に引き入れ、力を借り受けるというのが本イベントの到達点なんでしょう。能力の奪い合いは能力バトル物の花だからね。
「実は、迫害により追い立てられたということを一族から聞き、協力するか国家につくかを選べるんでございますよ。武具を一つ手に入れた際に、セルシュ様がおっしゃっておられました」
「……」
隠された事実を聞かされて、私は唖然としてしまった。ちょっとばかし、可愛い可愛いBUGUウサギ達を虐めた国に反旗を翻したくなった。
あぁ、一国の一地方を接収して作った都市国家であるスナンドニーは無関係よ。
「国側についても、得られるのがはした金ですから基本的に一族につきますのでご安心を。それに、あくまでイベント中の昔話になぞらえたものです」
先程から私の心を読んでくださりありがとう。
とりあえず、私のBUGUウサギ達が雪辱と恨みを真に晴らせる日が来ることを祈るわ。
「グレイザ様曰く、女子供が喜びそうなお涙頂戴だな、とか」
何の意図があってか、MJさんはグレイザさんの言を伝えてくれた。
小馬鹿にしないと気がすまない性格なのかしら、まったく……。
「良いんですーっ。そういう単純な話が面白いんですぅー」
「拗ねるのも良いですが、話を進めましょう。イベント参加を期待されても困るので」
「え……」
「困るので」
路線を戻したMJさんのセリフに、私の目が再び死んだ。聞き直したから言い直したのでもなく、大事なことなので2回言ったのも追い打ちになった。
上げて落とすの、大概にしていただきたいんですが。
私の無言の訴えなど聞く耳もなく、話は続けられる。
「なぜ行くかという理由は2つございます。まず、このイベントは存外お金がかかるようです。なので、参加しているクランメンバーに"グゴ"を届けに向かいます」
説明を聞いて、私は首をかしげた。
グゴ、ゲーム内通貨がそこまで必要とは、またどうしたことだろう。課金によりイベントを有利に進めることができるというのはあるが。
「えーと……」
「場所をお考えください。ナクモは山深い土地です」
「あぁ、そう言えばアイテムの売買の値段が2割増しでしたか」
ヒントを貰って直ぐに思いついた。狩りをして活動していたらもっと早かったかもしれないけど。
市販品でなければ高値で売れる反面、村で"HPポーション”などを購入するのも少し高くなる。金策だけならば多少手間でも訪れるプレイヤーは多いものの、そういった場所でイベントとなると都合が違う。
アイテムがなくなり次第いちいち大きな街まで買いに行くのでは、イベント終了に間に合わない可能性も出てくる。かといってアイテム所持数もインベントリにも限界がある。
「回復アイテムに連絡用アイテム、基本の所持品を考えても暇がありません。こちらを」
「はい?」
手綱との交換でMJさんから手渡され一枚のメモ用紙には、いくらかの文字と数字が記述されていた。
レベル100前後のプレイヤーにインタビューした情報に、イベントで武具を一つ手に入れるのに要する時間だとかといった物のようね。そこから読み解くことができるのは、MJさんの言う通り相当のお金がかかるという実情。
武具だけに限定しても頭・胴体・両腕・足で五種類で、全部で100万ゴグかかってくる計算。
「中盤まで装備を買い替えていくと200万くらいですから、まぁ、エグいぐらいのバランスの良さですね」
出てくる感想としてはそれぐらいだった。
また別に言うと、100レベル程度のプレイヤーだと100万を貯めようと思えば結構節約しなければいけないということ。平均的にそのランクで使う"中級回復ポーション"が一個300グゴで、収入1万に対して10個は使うっていうのが経験則ね。
とりあえず、お金の援助をクランメンバーや他の仲間に施すというのは理解したわ。
そこで、MJさんは次の話へと移る。
「ただ、お金だけで問題は解決しないのです」
「と言いますと?」
一部に納得できたところで、輸送して終わりというわけではないことを臭わせてきた。
今度こそ、初心者達を助けるのに私がイベントへ参加するチャンスというわけね!
「私の存在をお忘れなく」
「忘れさせてください……」
「平たく申し上げますと、イベント参加者を妨害する輩がいらっしゃいます」
容赦なく進んだ説明に私は怒りを覚えた。
何せ行き先は、初心者用コラボイベントを行っているうちの一つだからだ。
多分、他の大陸でも山奥とかで行われているだろうけど、それがこっちだと先程言ったナクモ村というわけ。
「世界中の深い山渓のどこかに、姿を隠し住まうBUGUウサギなる一族がいる。彼らは過去に国家へと反逆するも、敗れ世界の端へと追い立てられた。幾年月の後、その雪辱と恨みを晴らすべく立ち上がった」
「新たな戦火の種に対し、国の中核または元首達により討伐の司令が下り、各国の冒険者は任に着く」
私が、丸暗記したイベントのストーリーを読み上げていくとMJさんもそれに続いた。
ちゃんと覚えて来ているとは感心、感心。
謎の上から目線で頷いて見せ、私は更に先を続けようとすす。
討伐したBUGUウサギを味方に引き入れ、力を借り受けるというのが本イベントの到達点なんでしょう。能力の奪い合いは能力バトル物の花だからね。
「実は、迫害により追い立てられたということを一族から聞き、協力するか国家につくかを選べるんでございますよ。武具を一つ手に入れた際に、セルシュ様がおっしゃっておられました」
「……」
隠された事実を聞かされて、私は唖然としてしまった。ちょっとばかし、可愛い可愛いBUGUウサギ達を虐めた国に反旗を翻したくなった。
あぁ、一国の一地方を接収して作った都市国家であるスナンドニーは無関係よ。
「国側についても、得られるのがはした金ですから基本的に一族につきますのでご安心を。それに、あくまでイベント中の昔話になぞらえたものです」
先程から私の心を読んでくださりありがとう。
とりあえず、私のBUGUウサギ達が雪辱と恨みを真に晴らせる日が来ることを祈るわ。
「グレイザ様曰く、女子供が喜びそうなお涙頂戴だな、とか」
何の意図があってか、MJさんはグレイザさんの言を伝えてくれた。
小馬鹿にしないと気がすまない性格なのかしら、まったく……。
「良いんですーっ。そういう単純な話が面白いんですぅー」
「拗ねるのも良いですが、話を進めましょう。イベント参加を期待されても困るので」
「え……」
「困るので」
路線を戻したMJさんのセリフに、私の目が再び死んだ。聞き直したから言い直したのでもなく、大事なことなので2回言ったのも追い打ちになった。
上げて落とすの、大概にしていただきたいんですが。
私の無言の訴えなど聞く耳もなく、話は続けられる。
「なぜ行くかという理由は2つございます。まず、このイベントは存外お金がかかるようです。なので、参加しているクランメンバーに"グゴ"を届けに向かいます」
説明を聞いて、私は首をかしげた。
グゴ、ゲーム内通貨がそこまで必要とは、またどうしたことだろう。課金によりイベントを有利に進めることができるというのはあるが。
「えーと……」
「場所をお考えください。ナクモは山深い土地です」
「あぁ、そう言えばアイテムの売買の値段が2割増しでしたか」
ヒントを貰って直ぐに思いついた。狩りをして活動していたらもっと早かったかもしれないけど。
市販品でなければ高値で売れる反面、村で"HPポーション”などを購入するのも少し高くなる。金策だけならば多少手間でも訪れるプレイヤーは多いものの、そういった場所でイベントとなると都合が違う。
アイテムがなくなり次第いちいち大きな街まで買いに行くのでは、イベント終了に間に合わない可能性も出てくる。かといってアイテム所持数もインベントリにも限界がある。
「回復アイテムに連絡用アイテム、基本の所持品を考えても暇がありません。こちらを」
「はい?」
手綱との交換でMJさんから手渡され一枚のメモ用紙には、いくらかの文字と数字が記述されていた。
レベル100前後のプレイヤーにインタビューした情報に、イベントで武具を一つ手に入れるのに要する時間だとかといった物のようね。そこから読み解くことができるのは、MJさんの言う通り相当のお金がかかるという実情。
武具だけに限定しても頭・胴体・両腕・足で五種類で、全部で100万ゴグかかってくる計算。
「中盤まで装備を買い替えていくと200万くらいですから、まぁ、エグいぐらいのバランスの良さですね」
出てくる感想としてはそれぐらいだった。
また別に言うと、100レベル程度のプレイヤーだと100万を貯めようと思えば結構節約しなければいけないということ。平均的にそのランクで使う"中級回復ポーション"が一個300グゴで、収入1万に対して10個は使うっていうのが経験則ね。
とりあえず、お金の援助をクランメンバーや他の仲間に施すというのは理解したわ。
そこで、MJさんは次の話へと移る。
「ただ、お金だけで問題は解決しないのです」
「と言いますと?」
一部に納得できたところで、輸送して終わりというわけではないことを臭わせてきた。
今度こそ、初心者達を助けるのに私がイベントへ参加するチャンスというわけね!
「私の存在をお忘れなく」
「忘れさせてください……」
「平たく申し上げますと、イベント参加者を妨害する輩がいらっしゃいます」
容赦なく進んだ説明に私は怒りを覚えた。
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