幻想球 ~ユニーク・スキルは一国守護の要です~

AAKI

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~現在~

 私は選択を迫られていた。

「俺か弟か、どちらかを選べ」

「僕か兄か、どっちかを選んで」

 兄弟が言う通り、両者いずれかを選ぶこと。私に迫られている選択それだけ。

 どちらが優秀とかの差異なんてほぼなく、ちょっと属性が違っているという程度である。だからこそ迷う。

 これが、貧乏だけど超イケメン対お金持ちだけどすっごくみにくい顔、みたいなのだったら私の心情に従うだけで済むのだけれど……。

 けれど2人とも今はゲームのアバターという仮の姿をとっているけど、絶世とまでは言わないものの十二分に美形だわ。お金持ちであることも知っているし、人格の面でも多少難はあっても甲乙つけがたい。強引に引っ張られたいときもあれば、甘えてくれるのもまた悪くはないと思う。

 なので、どっちかを選んでも気持ちを裏切る形になってしまう。さらに証人として集めた人達にも見られた状態よ?

「どうした? 俺達では不満か?」

「そんなことないよね?」

「え、えっと……そんなこと言われても……はぁ」

 当然ながら私は戸惑うも、断らせてくれる気配は2人からしてこない。諦めたわ。

 しかし、私から選んで恨みを買うのはお断りよ。だから、恨みっこなしに勝負で決着をつけることにする。もっとロマンチックな結末を迎えたかったけれど、もしかしたらこれで劇的に変わるかもしれない。

「あの、私が選ぶのではお二人の気持ちがわかりません。だから、2人で勝負をしてください……」

「勝負だと?」

「決闘でもしろっていうのかい?」

 2人の反応も当たり前だけど、気が早いのはちょっと困りものかな。

 とりあえず、手で制して勝負の条件を提示する。

「慌てないでください。本当に私のことを必要だと思うなら、合言葉がわかるはずです。答えられた人を選ばさせて貰ても良いでしょうか?」

「……」「……」

 私に問われた2人は、少し戸惑った様子で顔を見合わせた。

 合言葉だとかどうとかいった話は、答えこそ伝えてこそいないものの両方とヒントは持っているはず。後は、どれだけ私のことを想ってくれているかね。

葉月はづき レミ――」「メリー――」

 2人が真剣な表情をして、私の名前を呼んだ。一方は本当の名前、もう一方は現実ではない名前。

「――お前のこと助けが必要だ」「――君と一緒に仕事がしたい」

「……」

 続くのは、言われた側が呆れかえってしまいそうなほど純粋な台詞だった。

 とても真面目で、とても真摯な言葉だけに、私は一瞬どう反応して良いのかわからなかった。それでも、正解を選ばなければならない。

 時間にして数秒の戸惑いも、私には長い長い答えを探す旅よ。

 ちなみに二人とも、大外れだ! 私だから一緒が良いのかもしれないけど、もう少し良い文句があるだろうが!
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