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10睡目・残酷な天使のベーゼ
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確かに、周りから見ればただただ良い子ちゃんでいたい俺のワガママのようにも見えるはずだ。それこそ、お利口ちゃんとハルピュイアさん達に謗られても文句は言えない。
「相手が何であれ命を奪うなんていうのは最低だ。けど、生きるためにそれが必要なのもわかってる」
「なら……!」
戦争の汚さを知っているケェヌ達にとって、俺の日和った考えは認めづらいはずだ。直接手を出すのもほとんど彼らなんだから、ふざけるなとも怒鳴りたいに決まっている。
「ハルピュイアさん達がってわけじゃないけど、害虫だからって過剰に排除すれば別の方向で環境がおかしくなる。追い立て過ぎれば、俺達以外に被害が及ぶ可能性もある」
「戦争を避けるために殺さないと?」
「そう。お隣の国も3種族のバランスで成り立ってるんだろうし、ここで勢力図を塗り替えたら本当に真っ逆さまだ」
俺の論がどれだけ正しく、起こり得るのかはわからない。しかし、今はそれぐらいしかケェヌを納得させられそうな言葉がなかった。
ここで彼に防衛戦を拒否されても仕方ない。
エルフ達が次々と連絡を持ってくる中で、俺と彼との間に緊張が走る。今までのあらゆく感情が吹き飛んで、漆黒の騎士に恐怖というものを覚えた瞬間。
不意にケェヌは踵を返した。
「それが先生の正義なら貫いて貰う」
「……あ、あぁ、わかった」
急に緊張を透かされたようで、彼の言葉に間の抜けた返事しかできなかった。
まさか、ただ試されただけか? 何があっても善悪ではなく俺のエゴで戦い続けられるかっていう。
「働きの代価は美味しい飯で頼む」
「サムベアさんの即席麺じゃダメ?」
やぁだねぇ。この子は、さっき食べたばっかでしょ? 俺、そんなに美味しい飯は作れないからね。
即席麺含めた食料庫の兵糧が保つのか怪しくなってきた。兵糧攻めは籠城戦に置いて最も懸念すべきことの1つだ。
まぁ、一応、封鎖に対して逃げ道がないわけではないのだが。俺も、サムベアさんに教えられて避難経路がもう一つあることを知った。
「味の種類がもっと欲しい」
「サムベアさんに協力してなんとかしてみるよ。そのためにも、今を乗り切らないとな」
許されたところで、さっさと事務作業を終わらせようと各自の状況を確かめた。
食料はサムベアさん、医療担当はハァビーとフェイとバロメッツとアルラウネだ。臨時の医療施設前を守るのがシジットと俺、それからラフ。正門ストーンサークルからの侵入者をシービンの作った壁により誘導して、ハルピュイアさん達の戦力を削るのがケェヌとカホーとファリッバである。
こちらの戦力バランスやタイミングの相談はほぼ出来ているし、エルフさん達の情報伝達に不安はない。
「じゃあ各自、安全第一で頼む」
『了解』
『いつでも良いですよー』
『大丈夫です!』
各自班の長を決めてあって、各々から返事がやってくる。
準備は万端……とまでは言わないまでもなんとかなると思う。
隊長である俺が聞きかじりの戦術しか知らないんだ。優秀な参謀であるハァビー達が居て、個々の実力が高いからこの分散戦術ができるわけである。
だから、最終的な判断は各自に任せた。
そんな活動を続けて2日である。看板作りと合わせて3日だから、もうそろそろ……。
『こちらシービン、第一波を分断しました。壁が後少しで破壊されそうです』
思っている間にお客さんがきなすった!
例に漏れず、1グループずつ情報を整理していくぞ。まずはシービンの地味ながらかなり重要な仕事からだ。
『まだ壊れないのかッ?』
どうやら、ハルさんがまとめるグループAが学園中枢を目指してせっせと穴掘りをしているようだ。
『もう少しだよ。それにしても、準備していたとは言えほぼ数秒でこんな壁を作るなんて……』
答えたハルピュイアさんにも見覚えがあった。ハルさんに続くのはイアさんのグループCで、グループAと合わせてこっちの世界での1中隊100人規模だ。
武装自体は革製の防具に量産されたであろう武器で、数の差を考えればまだ負ける要素はない。
『外のエルフ達も、さっきのも、こちらの動向を確認しているようだった。こちらの進攻は伝わっているだろう。時間稼ぎ……にしては一方だけ空けているのは』
『戦力の分散を狙っている? しかし、所詮は学園』
『いや、油断するな。この壁にしても、以前の黒い剣士にしても、こんな建物を砦にできるのだから並大抵の実力ではない』
ハルさんは2度も失敗した経験を生かせていて、イアさんに比べてこちらを警戒していた。こちらの戦力が学生ばかりでないことも見抜いてるようだ。
『壁の破壊後、お前の部隊から数名を別働隊の応援に当てろ』
『わかった。皆の者、急げ!』
ハルさんの指示にイアさんが応え、壁への攻撃指示へと戻った。ケェヌ組方向へ行ったのグループBはそれほど多くないようなので、上手く行けば挟み撃ちにできそうだ。
それにしても、これだけシービンの土壁へ攻撃されても、流れ弾とは言えほとんどダメージを受けない青鋼合金の壁も凄いな。
「相手が何であれ命を奪うなんていうのは最低だ。けど、生きるためにそれが必要なのもわかってる」
「なら……!」
戦争の汚さを知っているケェヌ達にとって、俺の日和った考えは認めづらいはずだ。直接手を出すのもほとんど彼らなんだから、ふざけるなとも怒鳴りたいに決まっている。
「ハルピュイアさん達がってわけじゃないけど、害虫だからって過剰に排除すれば別の方向で環境がおかしくなる。追い立て過ぎれば、俺達以外に被害が及ぶ可能性もある」
「戦争を避けるために殺さないと?」
「そう。お隣の国も3種族のバランスで成り立ってるんだろうし、ここで勢力図を塗り替えたら本当に真っ逆さまだ」
俺の論がどれだけ正しく、起こり得るのかはわからない。しかし、今はそれぐらいしかケェヌを納得させられそうな言葉がなかった。
ここで彼に防衛戦を拒否されても仕方ない。
エルフ達が次々と連絡を持ってくる中で、俺と彼との間に緊張が走る。今までのあらゆく感情が吹き飛んで、漆黒の騎士に恐怖というものを覚えた瞬間。
不意にケェヌは踵を返した。
「それが先生の正義なら貫いて貰う」
「……あ、あぁ、わかった」
急に緊張を透かされたようで、彼の言葉に間の抜けた返事しかできなかった。
まさか、ただ試されただけか? 何があっても善悪ではなく俺のエゴで戦い続けられるかっていう。
「働きの代価は美味しい飯で頼む」
「サムベアさんの即席麺じゃダメ?」
やぁだねぇ。この子は、さっき食べたばっかでしょ? 俺、そんなに美味しい飯は作れないからね。
即席麺含めた食料庫の兵糧が保つのか怪しくなってきた。兵糧攻めは籠城戦に置いて最も懸念すべきことの1つだ。
まぁ、一応、封鎖に対して逃げ道がないわけではないのだが。俺も、サムベアさんに教えられて避難経路がもう一つあることを知った。
「味の種類がもっと欲しい」
「サムベアさんに協力してなんとかしてみるよ。そのためにも、今を乗り切らないとな」
許されたところで、さっさと事務作業を終わらせようと各自の状況を確かめた。
食料はサムベアさん、医療担当はハァビーとフェイとバロメッツとアルラウネだ。臨時の医療施設前を守るのがシジットと俺、それからラフ。正門ストーンサークルからの侵入者をシービンの作った壁により誘導して、ハルピュイアさん達の戦力を削るのがケェヌとカホーとファリッバである。
こちらの戦力バランスやタイミングの相談はほぼ出来ているし、エルフさん達の情報伝達に不安はない。
「じゃあ各自、安全第一で頼む」
『了解』
『いつでも良いですよー』
『大丈夫です!』
各自班の長を決めてあって、各々から返事がやってくる。
準備は万端……とまでは言わないまでもなんとかなると思う。
隊長である俺が聞きかじりの戦術しか知らないんだ。優秀な参謀であるハァビー達が居て、個々の実力が高いからこの分散戦術ができるわけである。
だから、最終的な判断は各自に任せた。
そんな活動を続けて2日である。看板作りと合わせて3日だから、もうそろそろ……。
『こちらシービン、第一波を分断しました。壁が後少しで破壊されそうです』
思っている間にお客さんがきなすった!
例に漏れず、1グループずつ情報を整理していくぞ。まずはシービンの地味ながらかなり重要な仕事からだ。
『まだ壊れないのかッ?』
どうやら、ハルさんがまとめるグループAが学園中枢を目指してせっせと穴掘りをしているようだ。
『もう少しだよ。それにしても、準備していたとは言えほぼ数秒でこんな壁を作るなんて……』
答えたハルピュイアさんにも見覚えがあった。ハルさんに続くのはイアさんのグループCで、グループAと合わせてこっちの世界での1中隊100人規模だ。
武装自体は革製の防具に量産されたであろう武器で、数の差を考えればまだ負ける要素はない。
『外のエルフ達も、さっきのも、こちらの動向を確認しているようだった。こちらの進攻は伝わっているだろう。時間稼ぎ……にしては一方だけ空けているのは』
『戦力の分散を狙っている? しかし、所詮は学園』
『いや、油断するな。この壁にしても、以前の黒い剣士にしても、こんな建物を砦にできるのだから並大抵の実力ではない』
ハルさんは2度も失敗した経験を生かせていて、イアさんに比べてこちらを警戒していた。こちらの戦力が学生ばかりでないことも見抜いてるようだ。
『壁の破壊後、お前の部隊から数名を別働隊の応援に当てろ』
『わかった。皆の者、急げ!』
ハルさんの指示にイアさんが応え、壁への攻撃指示へと戻った。ケェヌ組方向へ行ったのグループBはそれほど多くないようなので、上手く行けば挟み撃ちにできそうだ。
それにしても、これだけシービンの土壁へ攻撃されても、流れ弾とは言えほとんどダメージを受けない青鋼合金の壁も凄いな。
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