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9睡目・ビター・ゴングとシュガーストップ
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「ごめん!」
「……」
とりあえず謝っておいた。へエヌジー世界に来てから、最初なんて野ウサギを捌くのもためらってたんやぞ!
しかし、ほとんど意味のない謝罪に対しラフが笑ったような気がする。
そして、先ほどまで苦しみながら墜落していたハルピュイアさんが翼を広げ直す。
「はぁ……はぁ……。クソッ。恩を売ったなどと思うな!」
あくまで俺達を敵とみなしている様子だ。
まぁそれは良い。どうせ止めないとダメなのは確かなのだから、ただ殺さずにそうしたというだけでだな。
「今ので追いついた!」
「ジーエムビーエッチジー!」
「はい?」
体勢を立て直したハルピュイアさんを、もう少しで捕まえられるところだ。が、俺の考えとは裏腹に、ラフが暴挙に出てくださいました。
ダンッと岸壁から跳躍して、ハルピュイアさんを蹴り落としにかかったのだ。嘘やろ?
「ゴフッ!?」
これにはハルピュイアさんもたまらずダウン!
錐揉みして砦の足場を支えている土台を支えている柱にぶつかっていく。そのおかげか、滑り落ちていって着水のダメージは相当弱まったようだ。いや、山岳生物に蹴られて無事な人とかそうそういないぞ。
多分、ギリギリのところで翼の方で防御したんだろう。
そんなことを心配している間に、俺達も落下を続けていた。水場の柱はまだ佇んでいるらしく、ほぼなんの成果も上げられずこれでは悲しくなってくる……。
「テダーエックスヤ ビーナ」
「やったかやってないかじゃなくて! なあ! さっきので飛べるようになってないのか!?」
「あんな ビーエムダーエフカ ダァピィビィシー じゃ 無理」
冷静に分析している場合じゃないでしょ。
俺が大慌てで訊くも、あっさりと否定されてしまった。一滴にもならない体液では大した変身はできず、両手にちょっと羽毛を生やせただけだ。
俺達は5メートルぐらいの高さから落ちているわけだが、今から足を下に向けるような器用なことはできない。頭を守ろうと思えば背中からになる。
ならばやるべきことは1つ。
この高さなら死ぬほどの衝撃はないにしても、最悪を回避することだ。
この間0.5秒。
「もしもの時は頼んだ」「なっ? 私が!」
そうラフに伝えると、俺は小さな体を無理やり抱え込み落下方向へ。要するに、ラフのクッションになれる体勢だ。
ラフさえ無事なら瀕死レベルのダメージからでも回復できるはずだからである。しかし、もしラフのダメージが予想外で、自分だけしか治癒できない場合もある。
それを指摘しようとする前に、俺達は水面へと激突した。
薄れゆく意識の中で……ってぇぇぇぇッ! バロメッツマントも合わさって、気絶できないから背中への衝撃がめっちゃ辛い!
「がぼばばッ! いったぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁいっ!」
「プハッ。ばか?」
魂の叫びみたいな苦悶に対し、ラフは当然のように雑言を放ってきた。覚えたての罵りである。
酷いとは思うが、そう言われても仕方ない。無駄死にではないが無駄身代わりだしな。
それでも、何とか俺やハルピュイアさんを岸まで連れて泳いでくれる優しい子だ。
「ジーエフビー ない と あれ」
「うん? あ、これは……」
着水の衝撃で聞こえなかったが、どうやらギリギリで水場の柱を壊すことに成功していたらしい。
倒壊すれば足場部分まで崩れ、落水の波に巻き込まれて溺れる可能性だってある。今は、とりあえずこの場を逃れることに専念した。
何とか無事に岸へとたどり着き、水が襲ってこないところまでたどり着く。堰自体が破壊されなかったのは良かった。溜め込んだ水がダッケジー村へ流れ込んだら一大事だ。
砦はいらないまでも、この水場自体は村にとっても役立つから壊れるのはもったいない。
「一旦は、これで解決か。ハルピュイアさん達のことは……まぁ、国に伝えないとダメか」
「そうね。ジィピーエアビイエムジーエッチ」
そうだな。とりあえず、ハルピュイアさん達が逃げ出してるから、気絶してる子にも起こして立ち去ってもらおう。
ラフと俺の考えが一致しているかわからないが、起こす必要があるのは確かだ。
「グッ……うぅ……。ゴホッ! こほっ、こほっ。はぁ、はぁ……」
飲み込んでいた水を吐き出し、何とか目を覚ました。完全に無事というわけではないだろうが、飛び立てれば良いんだけど。
「大丈夫か? お仲間さんは撤退を開始したぞ」
「翼の骨が少し……」
俺が訊くと、ハルピュイアさんは羽根の腕を少し動かして答えた。やはり、ラフの蹄を受け止めてダメージを負っているらしい。
俺はラフを見る。
「私がやるの? はぁ~」
すると、「何百本とある骨の内1本が折れたからなによ」とばかりに見つめ返してきた。それでも、優しいラフはハルピュイアさんに治癒の聖法魔法を唱えてくれた。
「助けたと思うな……」
それでもハルピュイアさんの態度は硬化したままだ。
そうやってしばらく淡い光で翼を治療したら、今度は俺の方を向くラフ。ハルピュイアさんに対しては、さっさと行ってしまえとばかりに手で追い払う。
「ダイナ も セビィケー なさい」
俺の傷の様子を気にかけてくれたらしい。
頼んでも良いかなと思ったのも束の間、俺達を呼ぶ声がする。
「……」
とりあえず謝っておいた。へエヌジー世界に来てから、最初なんて野ウサギを捌くのもためらってたんやぞ!
しかし、ほとんど意味のない謝罪に対しラフが笑ったような気がする。
そして、先ほどまで苦しみながら墜落していたハルピュイアさんが翼を広げ直す。
「はぁ……はぁ……。クソッ。恩を売ったなどと思うな!」
あくまで俺達を敵とみなしている様子だ。
まぁそれは良い。どうせ止めないとダメなのは確かなのだから、ただ殺さずにそうしたというだけでだな。
「今ので追いついた!」
「ジーエムビーエッチジー!」
「はい?」
体勢を立て直したハルピュイアさんを、もう少しで捕まえられるところだ。が、俺の考えとは裏腹に、ラフが暴挙に出てくださいました。
ダンッと岸壁から跳躍して、ハルピュイアさんを蹴り落としにかかったのだ。嘘やろ?
「ゴフッ!?」
これにはハルピュイアさんもたまらずダウン!
錐揉みして砦の足場を支えている土台を支えている柱にぶつかっていく。そのおかげか、滑り落ちていって着水のダメージは相当弱まったようだ。いや、山岳生物に蹴られて無事な人とかそうそういないぞ。
多分、ギリギリのところで翼の方で防御したんだろう。
そんなことを心配している間に、俺達も落下を続けていた。水場の柱はまだ佇んでいるらしく、ほぼなんの成果も上げられずこれでは悲しくなってくる……。
「テダーエックスヤ ビーナ」
「やったかやってないかじゃなくて! なあ! さっきので飛べるようになってないのか!?」
「あんな ビーエムダーエフカ ダァピィビィシー じゃ 無理」
冷静に分析している場合じゃないでしょ。
俺が大慌てで訊くも、あっさりと否定されてしまった。一滴にもならない体液では大した変身はできず、両手にちょっと羽毛を生やせただけだ。
俺達は5メートルぐらいの高さから落ちているわけだが、今から足を下に向けるような器用なことはできない。頭を守ろうと思えば背中からになる。
ならばやるべきことは1つ。
この高さなら死ぬほどの衝撃はないにしても、最悪を回避することだ。
この間0.5秒。
「もしもの時は頼んだ」「なっ? 私が!」
そうラフに伝えると、俺は小さな体を無理やり抱え込み落下方向へ。要するに、ラフのクッションになれる体勢だ。
ラフさえ無事なら瀕死レベルのダメージからでも回復できるはずだからである。しかし、もしラフのダメージが予想外で、自分だけしか治癒できない場合もある。
それを指摘しようとする前に、俺達は水面へと激突した。
薄れゆく意識の中で……ってぇぇぇぇッ! バロメッツマントも合わさって、気絶できないから背中への衝撃がめっちゃ辛い!
「がぼばばッ! いったぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁいっ!」
「プハッ。ばか?」
魂の叫びみたいな苦悶に対し、ラフは当然のように雑言を放ってきた。覚えたての罵りである。
酷いとは思うが、そう言われても仕方ない。無駄死にではないが無駄身代わりだしな。
それでも、何とか俺やハルピュイアさんを岸まで連れて泳いでくれる優しい子だ。
「ジーエフビー ない と あれ」
「うん? あ、これは……」
着水の衝撃で聞こえなかったが、どうやらギリギリで水場の柱を壊すことに成功していたらしい。
倒壊すれば足場部分まで崩れ、落水の波に巻き込まれて溺れる可能性だってある。今は、とりあえずこの場を逃れることに専念した。
何とか無事に岸へとたどり着き、水が襲ってこないところまでたどり着く。堰自体が破壊されなかったのは良かった。溜め込んだ水がダッケジー村へ流れ込んだら一大事だ。
砦はいらないまでも、この水場自体は村にとっても役立つから壊れるのはもったいない。
「一旦は、これで解決か。ハルピュイアさん達のことは……まぁ、国に伝えないとダメか」
「そうね。ジィピーエアビイエムジーエッチ」
そうだな。とりあえず、ハルピュイアさん達が逃げ出してるから、気絶してる子にも起こして立ち去ってもらおう。
ラフと俺の考えが一致しているかわからないが、起こす必要があるのは確かだ。
「グッ……うぅ……。ゴホッ! こほっ、こほっ。はぁ、はぁ……」
飲み込んでいた水を吐き出し、何とか目を覚ました。完全に無事というわけではないだろうが、飛び立てれば良いんだけど。
「大丈夫か? お仲間さんは撤退を開始したぞ」
「翼の骨が少し……」
俺が訊くと、ハルピュイアさんは羽根の腕を少し動かして答えた。やはり、ラフの蹄を受け止めてダメージを負っているらしい。
俺はラフを見る。
「私がやるの? はぁ~」
すると、「何百本とある骨の内1本が折れたからなによ」とばかりに見つめ返してきた。それでも、優しいラフはハルピュイアさんに治癒の聖法魔法を唱えてくれた。
「助けたと思うな……」
それでもハルピュイアさんの態度は硬化したままだ。
そうやってしばらく淡い光で翼を治療したら、今度は俺の方を向くラフ。ハルピュイアさんに対しては、さっさと行ってしまえとばかりに手で追い払う。
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