絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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8睡目・God knows・・・?

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「ゴメンな、バロメッツ……。ほんっとごめん」

 今までも何度か守ってくれたバロメッツに、何度も何度も謝罪する。

 それに対してシェイプシフターは、何事かと首を捻って鋭い視線を向けてくる。

「ン?」

「あ、いや、なんでもない。気にせず行ってくれ」

 言い終わってから、手でゴーサインを出した。

「……」

 やはり何故かこちらをジッと見てから、視線を外すと走り始めた。速度を落としてくれているわけではないが、少し前後の揺れが小さくなった気がした。

 気の所為だとは思うけど、賢い子だから、俺が口にしていないところまでちゃんと察してくれた可能性はある。

「……ダァジィーエッチガビーエムア」

 一応、お礼を言っといた。

「タビーエフ ダァケーカ ジーエルワ」

 つっけんどんに返して来た。

 そこからはちょっとした小休止を挟むことを除いて、一気に学園まで走りきった。

 少し遠くに納屋の屋根が見え始めた頃、上空に人影がちらほらと見え始める。エルフ達だ。

 出迎えと喜んでいる暇はなく緊張が走る。俺のが伝わったのか、それともシェイプシフターの危機回避のセンスか、わずかに筋肉がこわばるのがわかった。

「オジー ビーアイワイ セカマ ケジーエッチ」

 シェイプシフターに喋らせるとややこしいことになるから、俺が皆との話し合いを引き受けることにした。

 すると直ぐに、シェイプシフターの死角を走る人影が現れた。並走した相対速度じゃなかったら、俺にも黒い影が走っているように見えただろう。シェイプシフターは戸惑いを抑えるように、目線だけで影を追おうとする。

「ケェヌ、敵じゃない!」

「……了解。ピィーッ!」

 人影こと疾走するケェヌに伝えた。彼も独りでの判断には迷ったのか、一旦は情報の共有に俺達を追い抜いていった。その場はとりあえず、エルフ達を指笛で解散させた。

 そのまま走りきり、畑に入る前で急停止する。ケェヌから話を聞いたシジット、カホー、シービン、フェイが集まってくる。

「一体なんだよ? センセー」

「あー、えー……」

 カホーが先に声を掛けてくるが、全部を話している暇はないし、ここでフェイの秘密をバラさずに説明する自信はなかった。

「フェイ、悪いが少しつきあってくれ! 急ぎの用事だ!」

 なので、話術など捨て置いてあえてそれだけで突き通すことにした。

「えっと……わかりました」

 フェイは、エアールの姿をした体だけが人間の怪物を見て、大凡のことは察したのだろう。大人しく従う素振りを見せた。

 しかしそれを、シジットが阻もうとする。

「待ってください。どこへ連れて行こうとしてるんです?」

 聖女の騎士として当然の反応だが、それを説明するのは俺じゃなくてフェイだ。そして、今はまだ聖女が聖女でないことしか説明できない。特にシジットにそれを説明すれば、彼の立場を揺るがしかねないから話せないわけである。

「大丈夫、ですわ。ちょっと時間はかかるかもしれませんけど、帰ってきたら、ちゃんと説明します」

 フェイは、一言一言に意を決するよう言って、振り返ることなくシェイプシフターの背中に乗り込んだ。その時、俺の背後で“聖櫃”の描かれた背を撫でる仕草が伝わってきた。

「しっかり掴まってろ。少し激しいぞ」

 俺がフェイが乗り込んだのを確認すると、シェイプシフターも走り出した。

 シジットの呼び止める声がする。カホーも、長い付き合いの中でフェイの異変には気づいているようだ。

「先生、ッ!?」

「良い予感がしねぇ! なぁッ?」

 しかし、暴走しそうな2人を、ケェヌとシービンが阻んでくれているのが見えた。

 2人が居なければ、カホーの魔法で吹き飛ばされた後にシジットの1発を食らっていたかもしれない。

 なんつーか、やるせないっていうか……暴かなくても良い秘密ってあるんじゃないかって思った。爆発しないなら、掘り出さずに埋めておいた方が良い地雷だってさ。

「アナキュー、ジーエフダーエヌダーエル テワイ ビーナレヤ カ?」

 こんなことを言うべきではないのだろうが、シェイプシフターさえフェイを許してやれば皆で口裏を合わせれば、誤魔化し切れるんじゃないかと思った。

 それを訴えようとする。

「ビーエフタワ ワイハ……」「ビー テダーエックスワイ」

 しかし、言い淀む感じのシェイプシフターの言葉を遮ったのはフェイ自身だった。すると走る速度が上がった。

 彼女の決意を無碍にしてはならないと、俺よりもシェイプシフターの方が奮起したように思える。

 そこからは口を開けば舌が2つになりそうなので、夜が訪れるまで走り続けた。

「うへ……胃の中が腸になったみたいだ……」

 揺れこそ抑えられたが、かなりの速度で走ってきたせいで乗り物酔いだ。

 お尻も痛いので、昨日以上に揺れる大地に降りて揉みほぐすのだった。

「すみませんわ。ダイナ先生。私のせいで、苦労をおかけしてしまいましたわね……」

 フェイは申し訳なさそうに言ってくる。

「まぁ、それは良いんだけどさ。えーと……」

 俺から関わってしまったことだから仕方ないさ。さて、人の姿を取ったシェイプシフターが下手なことをしないように見張らないとな。

 こう見ると、本当に姉妹って感じだな。
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