絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

文字の大きさ
上 下
46 / 77
8睡目・God knows・・・?

11

しおりを挟む
「ハァビー、少し戻る」

「信じて、良いんですよね?」

 俺が言うと、ハァビーはフェイのことを案じて訊いた。俺は頷いてみせた。

「ワダァシィビー!」

 俺が背中に乗って、ハァビーにも了解を得たことを理解した瞬間、シェイプシフターは一言の元に跳躍を開始した。

「ぬぁッ!?」

 危うく悲鳴と同時に舌を噛みそうになった。

 まさにひとっ飛びと言わんばかりの速度に到達したようで、振り落とされそうになる。

「あ……」

 必死にしがみついているせいで、うっかりシェイプシフターのやや主要し始めた部分を触ってしまった。事故とはいえ許されざることをしてしまったのである。ハァビーに続いてまたしても。

 俺の消え入りそうな声を聞き取ったらしく、何事かと訊ねてくる。なるほど、そういうことには疎いようだ。

「カダァジーエス タビーエフ? ビーエムカダーエックスビーエフ マカダーエッチ テダーエックスワイ テビー!」

「えーと……なんでもありません! 責任は取ります!」

「?」

 俺の返事の意味は理解できず、それでも問題はないということはわかってくれたようだ。

 しかし、しっかり掴まっていろと言われても、さっきのことを考えるとお腹に腕を、腰に脚を回した非常に奇妙な体勢で乗らないとダメなんですが。それを振り落とされないようにしてるから、小学生ぐらいには見せられない状態だ。

「も、もう少し、ゆっくりぃッ!」

 当然、悲鳴じみた要求は通らなかった。まず、言語として通じない上にシェイプシフターはフェイに会うことを優先している。

 ほとんど目を回していたような感じだが、気づけば月明かりが俺達を照らしていた。シェイプシフターが立ち止まったのは、暗闇で完全に視界が通らなくなったというわけではなさそうだ。

「タ、タビーエフダージーエス? 痛っ」

 今度はゆっくりと会話することができる。が、掴まっているのに疲れた俺は、ズルリとシェイプシフターの背中から滑り落ちた。

 じ、地面が左右に傾いてる……。

「ダァシィジーダブリュビーエムマ レビィオー」

 そうか。魔力切れか。魔力切れらしいので、今夜はここで野宿らしかった。

 俺が眠りにつく間に話をきいたところ、枯渇するまで魔力を消費したわけではないようだ。エアールの持つ地脈から魔力を吸い上げる力を使えばもう少し走れるとも。まぁ、俺が見た通り、魔力を得るその『踊り』にかかる時間を考えれば大した差はないとのことだが。

 そして、俺は戦いの疲れを癒やすために眠るのだった。

 ……。

 …………。

 目を覚ますと、シェイプシフターは既に起きていて軽いストレッチなどしていた。今日は目的地まで走り通すとのことなので、入念に準備しているのだろう。

 こうして寝起きを気にせず目覚められるって久しぶりなような気がするなぁ。

「えーと、あそこに見える宿場町は……マジか」

 見覚えのある街道沿いの宿を見て、俺は驚いた。

 なにせ、半日経っていないのに2日分の行程を走ってきたのである。そりゃ、運搬車は自転車より少し遅いぐらいだから、シェイプシフターは50キロ時近くで走ってきたのは確かだ。

「昨日と同じぐらいの早さで行くのか?」

「……ん」

 またきつい体勢で背中を掴んでいないとダメなのかと訊いたつもりだが、ついつい慣れ始めたヘエヌジー後で話してしまった。思い出しただけでも胃がひっくり返りそう……。

 それでも伝わったのか、シェイプシフターは小さく頷いてみせるのだ。

「言葉、覚えるの早いなぁ。あ、フェイとも話してたんだもんな。普通かって、何をしてらっしゃるんで?」

 彼女らの頭の良さに感心したんだが、どうやら勘違いだったようだ。

 草むらをジッと見ていたシェイプシフターは、手を徐々に爪の形に変えていく。視線の先を追いかけると、野ウサギらしき生き物が草むらに見えた。

「エキュー? カナジー ガワイ エヌタビィダーエフ ビィピーゃワイ?」

 あぁ、まぁ、確かに昨日の朝から全く食べてないけどね。

「カナセ アイジーワイ エダー ガワイ ビィジーエスビィジェー ジーエッチジィシー ビーアイワイ ダァピィダーエム?」

 リバース物塗りたてな女の子の背中に座るとかそういう趣味ねぇから!

 まぁ、今は空腹の方がまだマシなので、そのまま出発することになった。見逃されたウサギっぽい生物さんが、俺達を安堵した表情で見送ってくれる。

「ビィビーエフワラビィオー……」

 紛らわしくてすみませんでしたね! シェイプシフターの呆れた声に俺の胃が少しムカッと来たけど、大人なところも見せないといけないから気持ちを落ち着かせる。

 ほら、シェイプシフターの変身シーンとか見てると、逆らう方が危ないって本能に言い聞かせられるでしょ?

「ビーエフジィエムキュー!」

 このまま背上で半日ぐらいライドを続けると、本当に胃液が枯れるので掴まり方を変えた。

「まぁ、大した違いはないけど、振り回されない分は楽か。ダァシィビーエフダーエムダァシー カビーナ?」

「ダァティダァジーダブリュビィピィビーダ ジーエル」

 バロメッツマントを紐のように使うのは心苦しいが、ゲロ袋にするよりかはマシだ。シェイプシフターが苦しくないかを確認しながら、首のあたりと俺の背中を縛り付けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双

さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。 ある者は聖騎士の剣と盾、 ある者は聖女のローブ、 それぞれのスマホからアイテムが出現する。 そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。 ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか… if分岐の続編として、 「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...