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8睡目・God knows・・・?
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「はい。シィディアに危険なものはありませんので、通って大丈夫です」
「失礼します」
その様子を見聞きしていて、俺は感心してしまった。
魔法の空間の中さえも覗き見れること。そして、そこまで徹底している守りの堅さにも。これだけ安全に気を使っているなら、町にいる間に問題が起こることなんてありえないな。
しかし、男兵の視線はいささか問題だ。
「一部を除いて問題もなさそうだし、さっさと買い物だな」
「あ、すみません。その前に、1箇所だけ寄りたいところが。手早く済みそうな時間だと思ったので」
まぁ、ハァビー自身がそれに気づいていないというのが一番危ない。何か考えないといけないなんて思っていると、彼女が急なことに対して申し訳なさそうに言った。
「ぅん? 別に構わないけど」
「時間が出来たらで良いと思っていましたけど、この時間でしたら教会への礼拝が直ぐ終わります」
「教会か。まぁ、あるわな。俺も見学してみたいし、行こう、行こう」
そういうことかと納得して、俺もディヴメア神の祀られている教会へと向かった。聖都にある教会なら、そりゃ時間を選ばないと混み合っていて当然だ。
それでも早朝は数人が掃除などのお勤めをしているだけで、俺達を見ても「祝福がありますように」っていうあの仕草を挨拶にするだけ。きらびやかな羽毛の冠やミノのような着物をまとった姿は、どちらかというとインディアンかな。
「やっぱり質素といか、清貧なのか? 飾りは少し派手だけど、建物はあまりでっかくないし」
そうは言っても鐘楼を含めれば、真上を仰がなければいけないくらいに大きい。しかし、間口や奥行きだけ見ると周囲の住宅にまぎれてしまいそうだ。何、空き地部分が広くて埋もれる住宅が周りに無いんだけどな。
普段のハァビーの生活を見ていると、教義を煩く守れという宗教ではないように思える。こういうことは初めてなので少し聞いてみた。
「フェイやシジットが着ているのはもっと地味だったし」
2人のは、俺の知る法衣とかに近い衣装だったはずである。
「ディヴメア神様は常に子らが幸福であることを願っておいでです。なので、各々が幸せだと感じる範囲で過不足なく富と苦しみを分配せよと。服装についても細かく決められていませんから、あのような一部の奉仕担当を示すときを除いて余程でなければ気にされません。
聖女であるフェイさんやその騎士のシジットさんは、清楚とか動きやすささえ気をつければ大丈夫です。お二人はそのために法服に切れ目を入れていますから、別に許されているんです。
あー、えーと、ディヴメア神様の出生における伝承はまだ話していませんでしたか。礼拝堂へ進んでいただければわかると思うのですがぁあっと!」
「はいはい、気をつけて」
いつもより口が回る、回る。ハァビーは説明しながら進んでいくものだから、段差につまずきかけたりもした。それでも彼女が楽しそうに話すものだから、それを支えて俺も礼拝堂の先へ進んでいった。
そして、なぜ今日は饒舌なのかわかった。
偶像崇拝は禁止していないはずだが、何故かディヴメア神のご尊像みたいなのを見るのは初めてだ。
それは人ではなく、人面を持った鳥類の姿。けれど妖怪変化のような不気味さはなぜかなく、一種の神鳥を彷彿とさせる荘厳さがある。顔立ちも信者を見守る慈母のように柔らかく、けれど悪事を諌める厳しさも持ち合わせている。足元には棺のような箱から漏れ出ていて、止まり木のようになっている。
「なるほど、有翼人種のルーツってわけか」
「それだけではなく、神はあらゆる種族の素となる傀儡と結ばりなさいました。まぁ、流石に有翼人種こそ全種族の頂点などと考えるのは傲慢ですが」
「あ~、逸話とか神話でおさめておくのが良いやつね」
どちら様とは言いませんが、そういう宗教はとても記憶にございました。苦笑いを浮かべて、ハァビーが真面目な解説をしてくれるのをうんうんと聞くのだった。
どうして鐘楼だけが大きく窓まで空いているのかとか、壁や柱の装飾が上から下にかけて地味になっていくのかだとか、いろいろとわかってくる。
「それで、ディヴメア神様をお迎えするために鐘楼を大きくしているんです。空き地が広いのは、建築に関する法律のせいですね」
「お祝いのときに玄関を竹槍や棘付きのイワシの頭で飾るのと似たようなものか」
「ダイナさんの住んでいる場所では、そのような風習があるのですか……」
うん、やっぱり冗談が通じないくらいに真面目モードだった。後でちゃんと説明しておきました。
「詳しくは後でな。早くお祈りを終わらせないと、混んでくるぞ」
「っと、そうでした。すぐに終わりますので」
決して1時間ぐらいが大事な用事ではないものの、市場などの都合を考えればね。
祭壇前で両膝を折り、祈りの所作に入るハァビーの背中を見守る。フと思い出し、俺はこっそりとその場を離れた。
腕を横に伸ばすのとか、詳しい所作の理由などについては後で聞けばわかるからな。
「すみません」
「はい?」
俺は外に出ると、羽飾りの服をまとった修道女さんに話しかけた。
「失礼します」
その様子を見聞きしていて、俺は感心してしまった。
魔法の空間の中さえも覗き見れること。そして、そこまで徹底している守りの堅さにも。これだけ安全に気を使っているなら、町にいる間に問題が起こることなんてありえないな。
しかし、男兵の視線はいささか問題だ。
「一部を除いて問題もなさそうだし、さっさと買い物だな」
「あ、すみません。その前に、1箇所だけ寄りたいところが。手早く済みそうな時間だと思ったので」
まぁ、ハァビー自身がそれに気づいていないというのが一番危ない。何か考えないといけないなんて思っていると、彼女が急なことに対して申し訳なさそうに言った。
「ぅん? 別に構わないけど」
「時間が出来たらで良いと思っていましたけど、この時間でしたら教会への礼拝が直ぐ終わります」
「教会か。まぁ、あるわな。俺も見学してみたいし、行こう、行こう」
そういうことかと納得して、俺もディヴメア神の祀られている教会へと向かった。聖都にある教会なら、そりゃ時間を選ばないと混み合っていて当然だ。
それでも早朝は数人が掃除などのお勤めをしているだけで、俺達を見ても「祝福がありますように」っていうあの仕草を挨拶にするだけ。きらびやかな羽毛の冠やミノのような着物をまとった姿は、どちらかというとインディアンかな。
「やっぱり質素といか、清貧なのか? 飾りは少し派手だけど、建物はあまりでっかくないし」
そうは言っても鐘楼を含めれば、真上を仰がなければいけないくらいに大きい。しかし、間口や奥行きだけ見ると周囲の住宅にまぎれてしまいそうだ。何、空き地部分が広くて埋もれる住宅が周りに無いんだけどな。
普段のハァビーの生活を見ていると、教義を煩く守れという宗教ではないように思える。こういうことは初めてなので少し聞いてみた。
「フェイやシジットが着ているのはもっと地味だったし」
2人のは、俺の知る法衣とかに近い衣装だったはずである。
「ディヴメア神様は常に子らが幸福であることを願っておいでです。なので、各々が幸せだと感じる範囲で過不足なく富と苦しみを分配せよと。服装についても細かく決められていませんから、あのような一部の奉仕担当を示すときを除いて余程でなければ気にされません。
聖女であるフェイさんやその騎士のシジットさんは、清楚とか動きやすささえ気をつければ大丈夫です。お二人はそのために法服に切れ目を入れていますから、別に許されているんです。
あー、えーと、ディヴメア神様の出生における伝承はまだ話していませんでしたか。礼拝堂へ進んでいただければわかると思うのですがぁあっと!」
「はいはい、気をつけて」
いつもより口が回る、回る。ハァビーは説明しながら進んでいくものだから、段差につまずきかけたりもした。それでも彼女が楽しそうに話すものだから、それを支えて俺も礼拝堂の先へ進んでいった。
そして、なぜ今日は饒舌なのかわかった。
偶像崇拝は禁止していないはずだが、何故かディヴメア神のご尊像みたいなのを見るのは初めてだ。
それは人ではなく、人面を持った鳥類の姿。けれど妖怪変化のような不気味さはなぜかなく、一種の神鳥を彷彿とさせる荘厳さがある。顔立ちも信者を見守る慈母のように柔らかく、けれど悪事を諌める厳しさも持ち合わせている。足元には棺のような箱から漏れ出ていて、止まり木のようになっている。
「なるほど、有翼人種のルーツってわけか」
「それだけではなく、神はあらゆる種族の素となる傀儡と結ばりなさいました。まぁ、流石に有翼人種こそ全種族の頂点などと考えるのは傲慢ですが」
「あ~、逸話とか神話でおさめておくのが良いやつね」
どちら様とは言いませんが、そういう宗教はとても記憶にございました。苦笑いを浮かべて、ハァビーが真面目な解説をしてくれるのをうんうんと聞くのだった。
どうして鐘楼だけが大きく窓まで空いているのかとか、壁や柱の装飾が上から下にかけて地味になっていくのかだとか、いろいろとわかってくる。
「それで、ディヴメア神様をお迎えするために鐘楼を大きくしているんです。空き地が広いのは、建築に関する法律のせいですね」
「お祝いのときに玄関を竹槍や棘付きのイワシの頭で飾るのと似たようなものか」
「ダイナさんの住んでいる場所では、そのような風習があるのですか……」
うん、やっぱり冗談が通じないくらいに真面目モードだった。後でちゃんと説明しておきました。
「詳しくは後でな。早くお祈りを終わらせないと、混んでくるぞ」
「っと、そうでした。すぐに終わりますので」
決して1時間ぐらいが大事な用事ではないものの、市場などの都合を考えればね。
祭壇前で両膝を折り、祈りの所作に入るハァビーの背中を見守る。フと思い出し、俺はこっそりとその場を離れた。
腕を横に伸ばすのとか、詳しい所作の理由などについては後で聞けばわかるからな。
「すみません」
「はい?」
俺は外に出ると、羽飾りの服をまとった修道女さんに話しかけた。
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