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7睡目・ワガママで悩まさないで

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 まずアルラウネは口こそあるが走れないので、匙を咥える担当だ。次にバロメッツは、走れこそするが口が開かないのでアルラウネを抱える担当。服のない二人羽織みたいな感じになる。

 コース自体はバロメッツでも完走できるぐらいだから、これで誰も仲間はずれにせず参加できるというわけ。

「なるほど。これなら1人分と考えて問題ありませんな」

 村長からの許可もいただいた。

「じゃあ、バロメッツこっちに。保護用の布を巻くけど大丈夫か?」

 葉っぱの役割である足が傷つかないように、布で保護して走れるようにしてやった。靴だと通気性が悪くて嫌がるが、これなら少しの間は我慢してくれる。

 うなずくのを見て、次にアルラウネを抱えてどこをどう走るかなども説明していった。

 村人チームの選手決めが終わったところで、バロメッツも競技の内容を覚えたようなので勝負開始。まぁ、コース誘導を俺が先行して行なう感じなんだけどね。

「バロメッツ、頑張ってください!」

「アルラウネを大きく揺らさないのがコツなのジャ」

 果たしてハァビーやファリッバの応援の内容をどこまで理解しているかはわからないが、バロメッツ達もやる気みたいだから楽しんで貰うとしよう。

 対する村人チームは40~50代の女性で、足よりもバランス感覚に自信ありって感じ。農村だからあの年齢でも現役だし、足場の悪い畑で鍛えられているだけある。

 落としたら、球を拾って匙から離れる直前のところから始めないといけないルールだから、いかにバランスを気をつけるかが重要な勝負なのね。

 一言で言うと、バランス感覚の危ういバロメッツ達が不利!

「所定位置に……開始!」

 しかし、無情にも櫓の男性が出走の合図を送った。

 両者一斉に走り出す……走っているんだと思う。少し前屈みになった状態で、自然と重心を下げてスプーンを運んでいく。落とさないように気をつけてるから、ルールはちゃんと理解しているようだ。

 俺はバロメッツ達の前で、アンヨが上手、アンヨが上手ってコース誘導する。園児とかの親の気持ちがわかるぅ~!

「よーし、良いぞ。ゆっくりで大丈夫だからな。弧を描いてるから、大きく膨らんでも良いから、横に振らずに曲がるように」

 どうすればバロメッツが球を落とさずに運べるかを考えて、俺自身に言い聞かせながら後歩きに進む。両選手がコーナーを曲がりきる頃、まだそれほど差はついていないがバロメッツが優勢だ。

 しかし最後の直線、焦ったのかバロメッツの足がもつれる。

「あっ!」

 踏みとどまったものの、誰もが俺と似たような声を上げたはずだ。揺れのせいで匙の上から球がこぼれた。

 転々と転がるボールを追いかけ、掴まえると同じ位置に戻ってまた球運びを始める。当然、相手の女性は先へと進んで行ってしまっている。なんだか申し訳なさそうな顔で通り過ぎていった。

 そしてバロメッツも、少し遅れてゴールの線を超える。

「お疲れ様。残念だったけ……そうか」

 労いのために小さな体を抱きかかえた。言葉をかけようとするも、フワフワと全身が震えているのがわかって頭を撫でてやった。

 アルラウネも俺の肩に乗り、葉っぱを垂らして角の部分に触れる。

「来年もまた頑張ろうな」

 俺の言葉に、バロメッツは変わらない笑顔でうなずくのだった。

「後もう少しでしたね。次こそは大丈夫ですよ」

「バロメッツの弔い合戦なのジャ」

 ハァビーもファリッバも、そしてエルフ首長も次の機会には一位でゴールしている絵を描いて慰めた。

 その様子を村人達も微笑ましく見守ってくれている。来年も、このお祭りをしてくれることだろう。

「続いて、『宝探し』!」

 紙片が引き抜かれ、次のゲームが宣言された。

 ほう? 村に隠された秘密のお宝ですか?

「この村のどこかに、お宝……の代わりに3枚の木札を隠してあります。先に2枚を見つけた側の勝ちです」

「あ~、なるほどね」

 残念。ごっこ遊びみたいなもののようだ。

 ロマンな話かと思って肩透かしをくらい、内心で肩を落としているとファリッバが顔を覗き込んでくる。

「お宝が単なる木札なのが拍子抜けだったという感じなのジャ。数百万セブなど容易く稼げるダイナ殿とは思えないのジャが」

「うーん、違うんだよ。お金では手に入らない夢みたいなものかな。今も、十分に夢みたいな状況なんだろうけど」

「男とはそういうものなのジャろか?」

「そんなもんなんじゃよ」

 彼女のさりげない言葉を、笑って受け流した俺。

「ならば、その分は働いて返すのジャ」

 別にそこを気にする必要はないのだが。蚕達のエサを生産すること以外は、ファリッバの方で管理してくれるのだろうし。

 危うい話をしている間に、ゲームの説明が終わってしまったようである。聴いてなかった。

「ダイナさん、ファリッバさん、ちゃんと聞いていましたか?」

 ハァビーが小さなふくれっ面を作って言った。

「ごめん、ごめん。それで、何か特別なルールでもあった?」

「もぅ……。えっとですね。まず、普通にあっちこっちを探し回っても構いません」

 ふむふむ。ここは流石に普通だ。
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