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7睡目・ワガママで悩まさないで
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「ま、まぁ、全部を水に流すことはできなくても、歩み寄りは大事ってことなんだろうよ」
フォローを入れたのはカホー。今、こっそり「隣の国の可愛い子にも会えるし」って言ったね。
「そう、だね。と、先生達は明日の村での祭には参加するんですか?」
「あぁ、そうだな。どうしたものかね」
「ダイナさんさえ良ければ、私も……」
シジットに勧められるままに、ハァビーがチラッチラッと俺を見てきた。村とか小都市の範囲では記念日ってことで賑やかに騒いだりもするので、イブ村も例に漏れずといったところだ。豊作祈願も兼ねているのだとか。
農耕に携わるならお祭りも1つの行事だとか、ご近所付き合いも大事だとか、そういう理由をこねくり回すことはできる。
「ま、せっかくなんだし楽しまないとな」
最終的にはそれがメインなわけだ。ハァビーの表情が華やいだ。
「ただし、他の皆もね?」
「も、もちろんですよ!? そりゃ、二人っきり……いえ、まだ流石に……」
俺達だけ出掛けるのは不公平なのでちゃんと伝えると、彼女も慌てたように肯定した。最後の声は消え入りそうだったが、顔を真っ赤にするのがわかったから内容は理解できた。
可愛いなぁ、もう……。
そんな2人の甘い空気に胸焼けを起こしたのか、シービンが空気に割って入ってくる。
「えーと、学園祭で忙しいので、武器作りは少し後になりそうですね。一週間予定でしたが、もう一週間頂いて大丈夫ですか?」
「おっと。そういうことならかまわないさ。サムベアさんにも、無理のないよう言っておいてくれ」
学園のイベントに差し障ってまで作るものじゃないし、矢面に立ってくれるサムベアさん達に何かあっては俺達も困るしな。
棒術が使い物になるまでも含めて、一体どれだけの期間がかかることやら。
そんなこんなで、俺達は学園へと到着した。いつものように納屋の前に運搬車を止めて、畑の様子を確認しに向かう。
「ボクはサムベア先生に青鋼を渡してきます」
「おう」
シービンは早速、インゴットを渡すためにストーンサークルを潜った。
俺は雑草を抜いたりして野菜の芽の出方や根付きを確認して、他にもカビが発生していないかとかを調べておく。特に問題なし。
アルラウネ用の血が少なくなっているから、近いうちにまた取りにいかないとダメかな。冬には白菜とか菜の花類も植えたいから、高畝を作るためには人間の手よりも耕運機が欲しくなる。思ったよりもいろいろと要りようだな。
「血がそろそろなくなりそうなことを除けば、特に問題はなさそうですね」
「そうだな。後は、できれば牛か馬。農耕にはどの生き物が良いかねぇ」
村にいるのはやせ細った牝馬ぐらいのものだろうか。もっと力強い動物……。
そりゃウチにはシジットという重機みたいなのがいるけど、1人に任せたんじゃ不平が出るし時間もかかる。
「ビッグフビフビなんてどうかな?」
「ビッグフビフビ?」
血を集めるでつながったのは、巨大イノシシのことだった。ただ、俺が短縮して考えた名前は、未だにハァビーには伝わっていなかったのである。
「あのでっかいやつ」
「あぁ、ビーアイジーエフビーエフビーのことですね」
「そう、それ」
相変わらず長い言葉になると早口言葉みたいで聞き取りづらい。
「あれは調教できれば力強いですが、無理とまでは言わないまでも……」
「難しいってことか。他にお勧めはあるか? 賢くて力が強くて、ある程度の数を揃えられる生き物」
ハァビーは少し歯切れの悪い返事をするだけだ。豚とは違って野生が強すぎるというなら無理はせず、別の方針を考える。ビッグフビフビならそこそこの数がいるので、勝手に飼っても大丈夫だと思ったんだが。
シービンにそういう機械を作って貰う? いやいや、どんだけこの世界の技術力を成長させつもりだよ。環境破壊待ったなしだ。
「首都へ行けば探しようはあります」
「時間がかかるんでしょう?」
「はい。なんと、馬を使っても5日ほどかかります!」
出てきた首都行きの案に、某ショッピングみたいなノリで訊ねてみた。ハァビーもわからないまでもノリノリで答えてくれる。
5日も畑を空ける……。ムリダナ。秋頃の植え付けを終わらせた後なら少し時間はあるかもしれないけど、台風的な嵐の都合を考えると圃場の補修や殺菌作業とかで時間を食われる。
「ま、この話は保留だな」
「そう、ですね……。お力になれずすみません」
「ハァビーのせいじゃないさ。俺も無理を言ってるんだし。さぁ、家に帰って明日に備えるぞ」
落ち込むハァビーを元気づけて、俺達は家路に着こうとした。シービンは、サムベアさんと話し込んでいるのか未だに戻ってきていない。
フェイなどは、なぜか旅支度みたいな大きめのカバンを1つ持ってきている。
フォローを入れたのはカホー。今、こっそり「隣の国の可愛い子にも会えるし」って言ったね。
「そう、だね。と、先生達は明日の村での祭には参加するんですか?」
「あぁ、そうだな。どうしたものかね」
「ダイナさんさえ良ければ、私も……」
シジットに勧められるままに、ハァビーがチラッチラッと俺を見てきた。村とか小都市の範囲では記念日ってことで賑やかに騒いだりもするので、イブ村も例に漏れずといったところだ。豊作祈願も兼ねているのだとか。
農耕に携わるならお祭りも1つの行事だとか、ご近所付き合いも大事だとか、そういう理由をこねくり回すことはできる。
「ま、せっかくなんだし楽しまないとな」
最終的にはそれがメインなわけだ。ハァビーの表情が華やいだ。
「ただし、他の皆もね?」
「も、もちろんですよ!? そりゃ、二人っきり……いえ、まだ流石に……」
俺達だけ出掛けるのは不公平なのでちゃんと伝えると、彼女も慌てたように肯定した。最後の声は消え入りそうだったが、顔を真っ赤にするのがわかったから内容は理解できた。
可愛いなぁ、もう……。
そんな2人の甘い空気に胸焼けを起こしたのか、シービンが空気に割って入ってくる。
「えーと、学園祭で忙しいので、武器作りは少し後になりそうですね。一週間予定でしたが、もう一週間頂いて大丈夫ですか?」
「おっと。そういうことならかまわないさ。サムベアさんにも、無理のないよう言っておいてくれ」
学園のイベントに差し障ってまで作るものじゃないし、矢面に立ってくれるサムベアさん達に何かあっては俺達も困るしな。
棒術が使い物になるまでも含めて、一体どれだけの期間がかかることやら。
そんなこんなで、俺達は学園へと到着した。いつものように納屋の前に運搬車を止めて、畑の様子を確認しに向かう。
「ボクはサムベア先生に青鋼を渡してきます」
「おう」
シービンは早速、インゴットを渡すためにストーンサークルを潜った。
俺は雑草を抜いたりして野菜の芽の出方や根付きを確認して、他にもカビが発生していないかとかを調べておく。特に問題なし。
アルラウネ用の血が少なくなっているから、近いうちにまた取りにいかないとダメかな。冬には白菜とか菜の花類も植えたいから、高畝を作るためには人間の手よりも耕運機が欲しくなる。思ったよりもいろいろと要りようだな。
「血がそろそろなくなりそうなことを除けば、特に問題はなさそうですね」
「そうだな。後は、できれば牛か馬。農耕にはどの生き物が良いかねぇ」
村にいるのはやせ細った牝馬ぐらいのものだろうか。もっと力強い動物……。
そりゃウチにはシジットという重機みたいなのがいるけど、1人に任せたんじゃ不平が出るし時間もかかる。
「ビッグフビフビなんてどうかな?」
「ビッグフビフビ?」
血を集めるでつながったのは、巨大イノシシのことだった。ただ、俺が短縮して考えた名前は、未だにハァビーには伝わっていなかったのである。
「あのでっかいやつ」
「あぁ、ビーアイジーエフビーエフビーのことですね」
「そう、それ」
相変わらず長い言葉になると早口言葉みたいで聞き取りづらい。
「あれは調教できれば力強いですが、無理とまでは言わないまでも……」
「難しいってことか。他にお勧めはあるか? 賢くて力が強くて、ある程度の数を揃えられる生き物」
ハァビーは少し歯切れの悪い返事をするだけだ。豚とは違って野生が強すぎるというなら無理はせず、別の方針を考える。ビッグフビフビならそこそこの数がいるので、勝手に飼っても大丈夫だと思ったんだが。
シービンにそういう機械を作って貰う? いやいや、どんだけこの世界の技術力を成長させつもりだよ。環境破壊待ったなしだ。
「首都へ行けば探しようはあります」
「時間がかかるんでしょう?」
「はい。なんと、馬を使っても5日ほどかかります!」
出てきた首都行きの案に、某ショッピングみたいなノリで訊ねてみた。ハァビーもわからないまでもノリノリで答えてくれる。
5日も畑を空ける……。ムリダナ。秋頃の植え付けを終わらせた後なら少し時間はあるかもしれないけど、台風的な嵐の都合を考えると圃場の補修や殺菌作業とかで時間を食われる。
「ま、この話は保留だな」
「そう、ですね……。お力になれずすみません」
「ハァビーのせいじゃないさ。俺も無理を言ってるんだし。さぁ、家に帰って明日に備えるぞ」
落ち込むハァビーを元気づけて、俺達は家路に着こうとした。シービンは、サムベアさんと話し込んでいるのか未だに戻ってきていない。
フェイなどは、なぜか旅支度みたいな大きめのカバンを1つ持ってきている。
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