27 / 77
7睡目・ワガママで悩まさないで
3
しおりを挟む
咄嗟に嘘を答えるものの、声が裏返っていたような気はするし棒読み感マックスである。
「え? あー……こーいう乗り物だよ。車輪2つで動くものが一般的かなぁ」
「そうですか」
おや? 思ったよりもあっさり諦めてくれたな。
「ダイナ先生ってよ。嘘をつくとき、鼻の下がヒクヒク動くよな」
唐突に、カホーがそんな指摘をしてきた。これまで誰も言ってくれたことのない見分け方だったので、思わず鼻の下に走る縦の筋を触ってしまう。
「マジ!? 気付かなかった!」
「嘘だよ」
俺は騙された。カホーまで俺の敵に回るとは思わなか……そんなこのもなかった。
「だが、嘘つきは見つかったようだ」
この間抜け具合には、あのケェヌさえ小さく笑いを漏らした。
男の子達は、どうやら自転車以上の車両の技術に興味がある様子。こぞって先生を騙しにくるなんて、ちゃんとした大人にならないぞ。プンプンッ。
「ダイナせんせぇ? 後学のため、生徒に教授いただけませんか?」
「ダメッ。教えません! 甘えた声を出してねだってもおしえませんッ!」
「甘えた声でねだったりはしませんけど、そこをなんとか」
「ダメダメダメ! ダメったらダメ!」
俺の周りをチョロチョロとするシービンから顔を背けつつ、必死に黙秘を続けるのだった。しかし、こうも頼まれると教えても良いんじゃないか、黙っている方が酷いことをしているような気がしてしまう。
俺って甘い?
そう危うく決意が揺らぎかけたところで、助け舟を出してくれたのはファリッバだった。
「確かシービンさんと言ったか。ダイナ殿は理由があって噤んでおるようジャ。どうか、先の品に免じて引いてはくれんかの?」
青鋼のインゴットと、俺の知識の黙秘とで取引しようって話だ。
「十と僅かの小娘の頼みジャが、どうか聞き届けてはくれんかの?」
「えーと……そういうことなら」
「……」
シービンを説得してくれたは良いが、俺は感謝より先に彼女の年齢に驚いていた。ハッとなって遅れてお礼を言う。
「あっと、その、助かった。若いのに良く出来てるというか」
「ぅ……む。どうということはないのジャ」
すると、ファリッバは白い肌を少し紅潮させてそっぽをむいた。後の方で、ハァビー達がちょーと不機嫌そうな顔をしているような気はするが、無視するとしよう。
シービンも諦めてくれたし一安心ってところで、口を開いたのはフェイだった。
「もしかしてファリッバさんって、『LHC実験』の?」
「ッ……!?」
彼女の指摘に、ファリッバは息を飲んで顔を強張らせた。赤かった肌が白へ、そして青白く染まるのが横目で見ていてわかるほどだ。
シジットがフェイを慌てて抱え、悲鳴を上げるのも気にせず運搬車の荷台に乗せる。
「キャッ」
「さぁ、出発しましょう!」
「そうだな! ファリッバ、悪いな!」
今日も素早いマインスイープお疲れ様!
女の子2人を載せ、男達で漕ぐか押すかして走り出した。皆の慌てようを見たフェイも自分のしでかしたことに気付いたようだ。走る荷台の上からファリッバに向けて、「申し訳ありませんわ」と謝っているのがどこか寂しく響いていた。
一応、ファリッバもフェイに悪気があって言ったのでは無いとわかっているようで、両腕を前後に扇ぐようにして見送ってくれている。旅路が順風満帆であれという、願いを込めた所作だ。
「大仰ですが、ありがたく受け取りましょう。ディヴメア神の風がありますように」
ハァビーと、一応フェイも、胸に手をあてもう片手を前に突き出した。返礼の挨拶みたいなものだ。
「あぁ。それで……さっきのエルエッチシー実験とかなんとかって?」
十分に距離を離したところで、俺は訊くことにした。無理に訊き出そうってつもりもないが。
「あ~……」
「私は詳しく知らないのですが、噂程度であれば……」
フェイとハァビーが言い淀む。
そんなにヤバい話なのか?
「いや、無理にとは言わないけど」
「詳しくはディヴメア神様への冒涜に当たるので伏せておきますわ。ただ、戦争には非道な手段もあるということですわ」
引き下がろうとしたところで、フェイは全てではないにせよ言葉を紡いだ。そこで俺が思い出したのは『聖別』のことだ。
遺伝子組換え食物の如く育ったのだから……それ以上だけど。まぁ、邪道に用いれば人間の生殖能力を変えてしまうぐらいはできるかもしれない。
「他国がこの国を攻める際、内側から人型種族を根絶やしにする術を模索しました……」
ハァビーが更に言葉を継ぎ足した。
それが、LHC実験ってことか。無農薬栽培で非生殖化した虫を解き放って、子孫を残させないようにする方法がある。多分、人型種族の交配可能な生物をそれ以外にしてしまう。そんな感じだ。
「なるほど……」
綺麗事ばかりではないということだな。
納得したところで、俺達は学園への道を急ぐ。
「でも、本当に学園祭をする必要があるのかな?」
途中、疑問を投げたのはシジットだった。これには誰しもが答えを出せず、かと言って全面的に否定はできなかった。
学園祭と言っても、俺が基底世界で経験した学生達のバカ騒ぎじゃない。終戦記念に、隣国の使節団がやってきて聖法国の首脳と会談する。その逆も然り。
そして国内の状況を伝え合って、困っているところをお互いに助け合いましょうって握手と書類を交わす。その際に、国の研究機関でもある学園にもやってくるから、そのおもてなしや護衛を生徒達も巻き込んでやると。
話を聞いたときはカルチャーギャップだったなぁ。
「え? あー……こーいう乗り物だよ。車輪2つで動くものが一般的かなぁ」
「そうですか」
おや? 思ったよりもあっさり諦めてくれたな。
「ダイナ先生ってよ。嘘をつくとき、鼻の下がヒクヒク動くよな」
唐突に、カホーがそんな指摘をしてきた。これまで誰も言ってくれたことのない見分け方だったので、思わず鼻の下に走る縦の筋を触ってしまう。
「マジ!? 気付かなかった!」
「嘘だよ」
俺は騙された。カホーまで俺の敵に回るとは思わなか……そんなこのもなかった。
「だが、嘘つきは見つかったようだ」
この間抜け具合には、あのケェヌさえ小さく笑いを漏らした。
男の子達は、どうやら自転車以上の車両の技術に興味がある様子。こぞって先生を騙しにくるなんて、ちゃんとした大人にならないぞ。プンプンッ。
「ダイナせんせぇ? 後学のため、生徒に教授いただけませんか?」
「ダメッ。教えません! 甘えた声を出してねだってもおしえませんッ!」
「甘えた声でねだったりはしませんけど、そこをなんとか」
「ダメダメダメ! ダメったらダメ!」
俺の周りをチョロチョロとするシービンから顔を背けつつ、必死に黙秘を続けるのだった。しかし、こうも頼まれると教えても良いんじゃないか、黙っている方が酷いことをしているような気がしてしまう。
俺って甘い?
そう危うく決意が揺らぎかけたところで、助け舟を出してくれたのはファリッバだった。
「確かシービンさんと言ったか。ダイナ殿は理由があって噤んでおるようジャ。どうか、先の品に免じて引いてはくれんかの?」
青鋼のインゴットと、俺の知識の黙秘とで取引しようって話だ。
「十と僅かの小娘の頼みジャが、どうか聞き届けてはくれんかの?」
「えーと……そういうことなら」
「……」
シービンを説得してくれたは良いが、俺は感謝より先に彼女の年齢に驚いていた。ハッとなって遅れてお礼を言う。
「あっと、その、助かった。若いのに良く出来てるというか」
「ぅ……む。どうということはないのジャ」
すると、ファリッバは白い肌を少し紅潮させてそっぽをむいた。後の方で、ハァビー達がちょーと不機嫌そうな顔をしているような気はするが、無視するとしよう。
シービンも諦めてくれたし一安心ってところで、口を開いたのはフェイだった。
「もしかしてファリッバさんって、『LHC実験』の?」
「ッ……!?」
彼女の指摘に、ファリッバは息を飲んで顔を強張らせた。赤かった肌が白へ、そして青白く染まるのが横目で見ていてわかるほどだ。
シジットがフェイを慌てて抱え、悲鳴を上げるのも気にせず運搬車の荷台に乗せる。
「キャッ」
「さぁ、出発しましょう!」
「そうだな! ファリッバ、悪いな!」
今日も素早いマインスイープお疲れ様!
女の子2人を載せ、男達で漕ぐか押すかして走り出した。皆の慌てようを見たフェイも自分のしでかしたことに気付いたようだ。走る荷台の上からファリッバに向けて、「申し訳ありませんわ」と謝っているのがどこか寂しく響いていた。
一応、ファリッバもフェイに悪気があって言ったのでは無いとわかっているようで、両腕を前後に扇ぐようにして見送ってくれている。旅路が順風満帆であれという、願いを込めた所作だ。
「大仰ですが、ありがたく受け取りましょう。ディヴメア神の風がありますように」
ハァビーと、一応フェイも、胸に手をあてもう片手を前に突き出した。返礼の挨拶みたいなものだ。
「あぁ。それで……さっきのエルエッチシー実験とかなんとかって?」
十分に距離を離したところで、俺は訊くことにした。無理に訊き出そうってつもりもないが。
「あ~……」
「私は詳しく知らないのですが、噂程度であれば……」
フェイとハァビーが言い淀む。
そんなにヤバい話なのか?
「いや、無理にとは言わないけど」
「詳しくはディヴメア神様への冒涜に当たるので伏せておきますわ。ただ、戦争には非道な手段もあるということですわ」
引き下がろうとしたところで、フェイは全てではないにせよ言葉を紡いだ。そこで俺が思い出したのは『聖別』のことだ。
遺伝子組換え食物の如く育ったのだから……それ以上だけど。まぁ、邪道に用いれば人間の生殖能力を変えてしまうぐらいはできるかもしれない。
「他国がこの国を攻める際、内側から人型種族を根絶やしにする術を模索しました……」
ハァビーが更に言葉を継ぎ足した。
それが、LHC実験ってことか。無農薬栽培で非生殖化した虫を解き放って、子孫を残させないようにする方法がある。多分、人型種族の交配可能な生物をそれ以外にしてしまう。そんな感じだ。
「なるほど……」
綺麗事ばかりではないということだな。
納得したところで、俺達は学園への道を急ぐ。
「でも、本当に学園祭をする必要があるのかな?」
途中、疑問を投げたのはシジットだった。これには誰しもが答えを出せず、かと言って全面的に否定はできなかった。
学園祭と言っても、俺が基底世界で経験した学生達のバカ騒ぎじゃない。終戦記念に、隣国の使節団がやってきて聖法国の首脳と会談する。その逆も然り。
そして国内の状況を伝え合って、困っているところをお互いに助け合いましょうって握手と書類を交わす。その際に、国の研究機関でもある学園にもやってくるから、そのおもてなしや護衛を生徒達も巻き込んでやると。
話を聞いたときはカルチャーギャップだったなぁ。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる