絶滅危惧種の子なら隣で寝てるけど? ~異世界で保護飼育は難しい~

AAKI

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7睡目・ワガママで悩まさないで

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「ダイナ先生は、何か好きな武器はありますか? これが使いやすいとか」

 すると唐突に、シービンがまた訊ねてきた。

「ぶ、武器? 急にそんなことを言われてもなぁ……」

 武術の経験なんて学生時代に柔道を少しやった程度だから、戸惑うこと戸惑うこと。防具の方が役に立つんじゃないかとも思うが。

「防具じゃ駄目か? ケェヌみたいな手甲や足甲みたいな」

「この量の青鋼ではそれぐらいが精々ですが、先生の身体能力では雑兵に大盾ほど無用の代物です。扱える武器で自衛に走る方が、まだ懸命というものでしょう」

 冷静な反論をありがとう。厳しいお言葉だが、正論なので受け止めることにした。そりゃ、危険な狩りやらを生徒に任せようとするぐらいですけど……。

 扱える武器などと言いつつ隣でケェヌは密かに刀をお勧めしてくるし、カホーやフェイは魔法の杖みたいなものを推奨している。

「……」

「ダイナ先生の魔力は存じませんが、魔法ロッドが良いのでは?」

「まぁ、確かに。シジットぐらいの魔力でも、あれならそこそこやれるな」

 ありがたい話だが、刀は技量として追いついていないと考えられた。魔法の杖だと、ハァビーと役割が被るから何か違う気がした。

 だから、考えて1つの結果を出す。

「うーん……じゃぁ、棍とか」

「棍、ですか?」

「あぁ、サムベアさんって簡単な杖術ぐらい教えられるだろ? 棒術も少しぐらいはわかるんじゃないかと思って」

 下手なものより殺傷能力は低く、それでいて自衛のためなら振り回しているだけでもなんとかなりそうな武器だ。

「わかりました。それでは、サムベア先生と一緒に錬成します」

 シービンは頷いて、ルンルンとスキップなどしながら机のインゴットを手に取り、古ぼけたカバンに大事に仕舞った。

 しかし、生徒達は俺をからかうためだけに来てるのか? この一週間だって、普通に看病の様子を面白おかしく眺めていたくせに。雨も降ってる中、わざわざご苦労さまなことである。

「さておき、言い渡してあった作業は?」

 怪我で動けない間、5人には学校の畑を使ってオクラやらトウモロコシやら、夏から秋にかけて作れる野菜の世話を指示していた。以前の聖別した種の事件みたいにめちゃくちゃにせず、ちゃんと植生を学ばせるための勉強だ。

 雨季の前からハウスツリーまでレポートを作成しに来ていたのだから、これぐらいのことはできるだろうと試験代わりに出したのである。

「それについては問題ねぇぜ」

「今度こそ、まともな野菜畑になるよ」

 カホーとシジットが胸を張って答えた。

 ほう、これは期待して見させて貰えそうじゃないか。

 今から久しぶりに学園に向かって、サムベアさんの作ったご飯のご相伴に預からせて貰おうか。あ、目的が違うね。

 ちなみに、エルフ達が絵で教えてくれた評価は上々だった。

「おっと、ありがとう。へぇ、ちゃんと野菜別にして、畝幅や株間もしっかり測ってるな」

 感心、感心。

 俺はハァビーと生徒達を伴い、運搬車を漕いで学園まで向かうことにする。そこでフと気づくのだ。はて……三輪車のハンドルに何やら見覚えはないけどなんとなく知っているダイヤルめいたものがあるぞ?

 シービンの方を流し目で見る。

「変速ギア、こんなのでどうです? 聞いた話だけで、歯車をどう切り替えるのか悩みましたけど」

「……はぁ」

 俺はため息混じりに呆れた。まさか、本当に作ってしまうとは思わなかった。それも一週間程度で。

 多分、技術的には文明に間に合っているとは思うからそのまま使っても大丈夫だろう。

「壊れたりはしないと思うので、試してみてください」

「あ、あぁ……。迂闊なことは言えないんだがなぁ……」

「何か?」

 急かされて乗ることになり、俺は自分の過ちを小さく後悔した。小声を聞き取られそうになったから、さっさと三輪車を漕ぐことにする。

 まず、乗り心地についてはこれまでと変わらず、これと言って操作性に難はない。次にメインの変速ギアだが、これは3段階と意外に少なめである。いきなり6段階とか10段階なんてやってられないわな。

「ギアHが最も重くて、ギアCが最も軽くなっています」

「いつもの重さがギアFか。お、この感じは良いな。たっぷりと荷物を載せても足が軽い。もう坂道も怖くない!」

 なんだか首なしライダーになりそうなことを言いつつ、俺はキコキコと初めて自転車を買って貰った子供みたいに試乗してみせた。ギアを変更しても、チェーンが外れるようなこともなくスムーズだ。

 あの発言だけで、良くぞここまで作れたものだと感心した。

「ちゃんとできてるな。けどなんで『変速ギア』の言葉だけで推測できたんだ?」

 訊いてみた。

「運搬車には乗り慣れている様子でしたし、ギアというのが歯車の別名だとハァビー先生に伺って、予想できたのがこれでした。変速という単語で、言葉の流れから言って速度を変えるというのが理解できれば、後はこの通りです」

 シービンは、なんてことないと言った様子で答えてくれた。

 くっ……この物創りの天才め! エンジンの理屈を俺の知識レベルで伝えても、ガソリン車は無理でも魔法自転車ぐらいは作るんじゃないか?

「ところで、ダイナ先生。先生のところでは、どのような乗り物を使ってらしたんでしょう?」

 迂闊なことを言えないと改めて自戒していると、シービンが不意打ちまがいに訊いてきた。
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