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5睡目・3/1の純情な感情
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『食堂か。もう昼だし、俺達も行こう』
ケェヌの一言と、俺達の腹の虫の疼きが行動を決行させた。
次の目的地も学園施設の中心部に近く、サムベアさんの部屋から三分ぐらいで到着する。昼食時ということもあってか、多種多様な種族の生徒達が集まってきている。
種族的な身体の違いに配慮した広さ、机とかの置き方になっていることを除けば、誰もが想像する食堂という施設の形から逸脱していない。
「えーと」
『トレーを取れ』
普通に並んでも良いものかと思っていると、ケェヌが指示を出してくれた。もしかして、今のはジョークですか?
とりあえず、大中小の三種の内、ミドルサイズを手にして列に参加する。中型を選んだのが俺の他にシービンとカホー、それからフェイ。A4くらいの小はハァビーのみで、シジットとケェヌがその3倍はあるやつを持った。
棚に並んだ小鉢や皿、スープカップのおかずを好き勝手に選んで最後に精算するスタイルだ。中には、一皿で三つに区切られたランチプレートに盛り付けられるシンプルなのもある。
「色々と配慮されてるんだな……」
ついつい感心してしまった。
ただ、まぁ、メニューの多さと作る量のせいかな。味についてはお察しと言いますか……不味くはないものの、お腹をふくらませるだけよりかはマシなレベルである。サムベアさんのお弁当が人気な理由が良く分かった。
『それじゃあ食べるぞ』「凄い量ですね……。えーと、勧められるままに食べ始めようとしてますけど」
ケェヌも席に着いて、学生時代を思い出す流れで昼食開始だ。大トレーいっぱいのおかずと山盛りになったご飯を前に、ハァビーはもうお腹いっぱいと言った様子。
彼女は元々の目的を思い出して、サムベアさんの姿を探すため周囲を見渡した。
そして、厨房の奥にいるのを見つける。ローブの上から、配膳担当が着ている白いエプロンを身に着けて、巨大な肉塊と格闘していた。ビッグフビフビを解体したものだろうが、注射器との関連性は良くわからない。
食肉用の解体作業自体は、一度だけ見学したことはあるが放血作業は終わっているのでこの段階で使い道があるとは思えない。
「何をやってるんだと思う?」
俺はハァビーに訊いた。
「肉に注射器を差し込みましたね。これは、味付けを行っているのではないでしょうか?」
「あぁ、針にしては太いな。浸透させるためにこんなものまで……」
料理に懸ける情熱を伺わせる光景に、またしても感心するのだった。
見学をしていると、サムベアさんもこちらに気付いたようで作業を止めて厨房から出てくる。
『2人とも、どうしてまた?』
「イエ、ピィビーカエヌ ワイガ デシィビータ ワイアイジーデ ケエヌガシィダー ワイエヌジー」
喜々として、どちらかと言うとからかう様子で訊かれたので、俺は端的な返事をした。
「ワイジェ~エヌ」「調理お疲れ様です。そう言えば、食事代とかってどうしたら良いんです?」
間延びした声に先手を打って、労いの言葉と質問を投げかけた。何気なく昼食をいただいているが、学費を出していない俺達が無料というわけにもいかないはずだ。もちろん、支払い能力はあった上で食事はしているぞ。
『それなら、私が払っておくよ。正式な給与は学園長に申請中だから、悪いけど待ってちょーだい』「あ、わざわざすみません……」
ありがたい話に、ハァビーも少し申し訳なさそうにした。
仕事として雇われているのだから当たり前の権利として受け取れば良いのに……可愛いなぁ、もぉ。
彼女の腰の低い性格に癒やされていると、珍しく刀使いのケェヌが横槍を入れてくる
『では、俺の分も』
『お前は自分で払え』
厚顔な頼みはサムベアさんに一蹴された。食費だけでもバカならないのだろう。
『それで、見学の許可は取ったのか?』
更に横から口を挟んできたのはカホーだった。
今まで静かだったのは、通りかかる美人の女子生徒に色目を使っていたからである。変なところで真面目になるから困る。
「あぁ、そうだった。えーと」
「カエックスダーテ ワイアイビー ケエヌガシィダー エフビーテ ケェジーラエックスダーテ ワイケェジー?」
辞書を引くより早く、異様に早くハァビーが訊いてくれた。
『良いよ。もう学園の関係者だし、可能な限り自由な行動は私が保証する!』
「ありがとう ございます」
サムベアさんは男前な笑顔で許可をくれて、俺達は晴れて気兼ねなく社会見学ができるようになった。
そういうわけで、昼食の後は5人が勧める面白い場所を見て回ることになった。詳しくは本筋と関係ないし、色々と世界のことにも触れるので割愛だ。
少し早い気もするうが、一度家に帰ったのは日が暮れたかどうかという頃だった。また畑の納屋で一晩を過ごして、多方面からの攻撃で緊張を強いられることになるのは勘弁だからな。
「はい、これがエルフについて記した文献の全部です」
帰りた~い、帰りた~い、せきす……心和む木造、まぁ、木そのものな家でくつろぎながらお勉強会だ。ハァビーは2冊ぐらいの資料を本棚から持ってきて、机の上に置いた。
夕食のためのスペースを奪われなくて良いとしよう。
「少ないんだな」
「えぇ、その存在自体は彼女らへの聞き取り調査ぐらいでしか情報がありませんから」
「半実態ってことだっけ? もしかして、死ぬと遺体が残らない?」
「ご存知の様子でしたが、そこまでおわかりになるんですね。凄いです」
今日はやけに褒めてくれた。
ケェヌの一言と、俺達の腹の虫の疼きが行動を決行させた。
次の目的地も学園施設の中心部に近く、サムベアさんの部屋から三分ぐらいで到着する。昼食時ということもあってか、多種多様な種族の生徒達が集まってきている。
種族的な身体の違いに配慮した広さ、机とかの置き方になっていることを除けば、誰もが想像する食堂という施設の形から逸脱していない。
「えーと」
『トレーを取れ』
普通に並んでも良いものかと思っていると、ケェヌが指示を出してくれた。もしかして、今のはジョークですか?
とりあえず、大中小の三種の内、ミドルサイズを手にして列に参加する。中型を選んだのが俺の他にシービンとカホー、それからフェイ。A4くらいの小はハァビーのみで、シジットとケェヌがその3倍はあるやつを持った。
棚に並んだ小鉢や皿、スープカップのおかずを好き勝手に選んで最後に精算するスタイルだ。中には、一皿で三つに区切られたランチプレートに盛り付けられるシンプルなのもある。
「色々と配慮されてるんだな……」
ついつい感心してしまった。
ただ、まぁ、メニューの多さと作る量のせいかな。味についてはお察しと言いますか……不味くはないものの、お腹をふくらませるだけよりかはマシなレベルである。サムベアさんのお弁当が人気な理由が良く分かった。
『それじゃあ食べるぞ』「凄い量ですね……。えーと、勧められるままに食べ始めようとしてますけど」
ケェヌも席に着いて、学生時代を思い出す流れで昼食開始だ。大トレーいっぱいのおかずと山盛りになったご飯を前に、ハァビーはもうお腹いっぱいと言った様子。
彼女は元々の目的を思い出して、サムベアさんの姿を探すため周囲を見渡した。
そして、厨房の奥にいるのを見つける。ローブの上から、配膳担当が着ている白いエプロンを身に着けて、巨大な肉塊と格闘していた。ビッグフビフビを解体したものだろうが、注射器との関連性は良くわからない。
食肉用の解体作業自体は、一度だけ見学したことはあるが放血作業は終わっているのでこの段階で使い道があるとは思えない。
「何をやってるんだと思う?」
俺はハァビーに訊いた。
「肉に注射器を差し込みましたね。これは、味付けを行っているのではないでしょうか?」
「あぁ、針にしては太いな。浸透させるためにこんなものまで……」
料理に懸ける情熱を伺わせる光景に、またしても感心するのだった。
見学をしていると、サムベアさんもこちらに気付いたようで作業を止めて厨房から出てくる。
『2人とも、どうしてまた?』
「イエ、ピィビーカエヌ ワイガ デシィビータ ワイアイジーデ ケエヌガシィダー ワイエヌジー」
喜々として、どちらかと言うとからかう様子で訊かれたので、俺は端的な返事をした。
「ワイジェ~エヌ」「調理お疲れ様です。そう言えば、食事代とかってどうしたら良いんです?」
間延びした声に先手を打って、労いの言葉と質問を投げかけた。何気なく昼食をいただいているが、学費を出していない俺達が無料というわけにもいかないはずだ。もちろん、支払い能力はあった上で食事はしているぞ。
『それなら、私が払っておくよ。正式な給与は学園長に申請中だから、悪いけど待ってちょーだい』「あ、わざわざすみません……」
ありがたい話に、ハァビーも少し申し訳なさそうにした。
仕事として雇われているのだから当たり前の権利として受け取れば良いのに……可愛いなぁ、もぉ。
彼女の腰の低い性格に癒やされていると、珍しく刀使いのケェヌが横槍を入れてくる
『では、俺の分も』
『お前は自分で払え』
厚顔な頼みはサムベアさんに一蹴された。食費だけでもバカならないのだろう。
『それで、見学の許可は取ったのか?』
更に横から口を挟んできたのはカホーだった。
今まで静かだったのは、通りかかる美人の女子生徒に色目を使っていたからである。変なところで真面目になるから困る。
「あぁ、そうだった。えーと」
「カエックスダーテ ワイアイビー ケエヌガシィダー エフビーテ ケェジーラエックスダーテ ワイケェジー?」
辞書を引くより早く、異様に早くハァビーが訊いてくれた。
『良いよ。もう学園の関係者だし、可能な限り自由な行動は私が保証する!』
「ありがとう ございます」
サムベアさんは男前な笑顔で許可をくれて、俺達は晴れて気兼ねなく社会見学ができるようになった。
そういうわけで、昼食の後は5人が勧める面白い場所を見て回ることになった。詳しくは本筋と関係ないし、色々と世界のことにも触れるので割愛だ。
少し早い気もするうが、一度家に帰ったのは日が暮れたかどうかという頃だった。また畑の納屋で一晩を過ごして、多方面からの攻撃で緊張を強いられることになるのは勘弁だからな。
「はい、これがエルフについて記した文献の全部です」
帰りた~い、帰りた~い、せきす……心和む木造、まぁ、木そのものな家でくつろぎながらお勉強会だ。ハァビーは2冊ぐらいの資料を本棚から持ってきて、机の上に置いた。
夕食のためのスペースを奪われなくて良いとしよう。
「少ないんだな」
「えぇ、その存在自体は彼女らへの聞き取り調査ぐらいでしか情報がありませんから」
「半実態ってことだっけ? もしかして、死ぬと遺体が残らない?」
「ご存知の様子でしたが、そこまでおわかりになるんですね。凄いです」
今日はやけに褒めてくれた。
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