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5睡目・3/1の純情な感情
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シジットとカホーの争いから1日、俺達は納屋で一夜を明かすことになった。俺に関しては、ハァビー、バロメッツ、アルラウネによる全方位からの包囲作戦を受けて少し寝不足だが。
聞いた話によると、ハァビーは俺や生徒達に文句の一言でも言ってやりたいと思って学園へやってきたらしい。精の出ることである。
もう日も暮れ始めてから学園たどり着いてみれば、5人がてんやわんやしていた。倒れている俺を見て、大体の状況を察して治癒を施した。ちなみに、かなり危ない状況だったが、瀕死から重症レベルまで回復できたのはフェイ聖女様様である。
その後は俺の予想通り、小さな傷などをハァビーが治療してくれたわけだ。
そして昼に差し掛かった現在、彼女はケンカの当人達を前に腕組みをして仁王立ちになっている。
「あー、ハァビーさん? 結果的に無事だったんですし、あまり怒らないでやってくださいな」
悪いことをしたのは2人ともわかっているはずなので、厳しいことを言っても逆効果だと思うんだ。フォローこそしてみるが、なかなか気は収まらないことだろう。
まぁ、流れ弾で人死にが出かかる行為をケンカで片付けるのもいかがなものだが。
「若いのですから、ケンカの1つもするでしょう。理由も理由なので、2人には宿題を出しておきました」
「おぉ、ハァビーさん有情! で、どのような宿題を?」
俺が気絶している間に、ちゃんとしておいたのは素晴らしい。
「まず、カホーさんにはアルラウネ用の畝作りと植え付けを。シジットさんには、別の野菜を作るための畝を準備してもらいました。ついでに種もですね」
ほほぅ、準備のよろしいことで。
しかし、どうして他に野菜を作らせようなんて考えたんだい?
そう疑問に思っていると、ハァビーは察して説明してくれる。
「あぁ、野菜については、基本的な動植物の育て方について知って貰うためです」
答えを聞いて、なるほどとしか思えなかった。確かに、植物の顔を見るのは重要だから基本を知るのも大事だ。
珍しい植物の種しか持ってなかったのね。
「それじゃ、ぜひ作業報告を聞かないとな」
俺は相槌を打ったところで、2人からの話を聞くことにした。
「えぇ エックスダーテ、ひとつ ジェダァエーエヌ エルジィダーエフダー ガ」
カホーは作業中に、何か不安に思うところがあったという。
「マエヌ……アルラウネ を ジェビーエックスダァシィジーアイダァビーテ も ダビィピィビーダブリュジィダァティダー ですか?」
アルラウネを植え替えるのに土から出して大丈夫かと、彼は心配しているようだ。
そう言えばまだ教えてなかったっけ?
「ごめん。これについては俺の落ち度だ」
アルラウネとして育った場合、土から引き抜く際に悲鳴を上げたりしない。それを知っているのは、苗を育てていた俺とハァビーぐらいのものである。
「ダビィピィビーダブリュジィダァティダー ダエムジー」
口で言っても納得して貰えそうにないし、実践して見るのが早いと思った。だから持ってきてくれいた鉢から、アルラウネを引っこ抜く。
ハァビー以外は、ズッザァーって勢いで離れた。耳までふさいで失礼な……。
気にしても仕方ないので、茎を引っ掴んで抜いた。
「キャ」「へ?」
顔を真っ赤に染めて、根っこのような手足で必死に体を隠そうとするアルラウネ。これは拙かったネ。
そう思ったときには既に遅く。
「ァァァァァァァァッ!!!」
絶叫は俺の耳を貫通して、空気をつんざいた。
しんでなーい!
「うぉぉ……耳がキーンってするけど。あぁッ、直ぐ植え替えるから泣かないで!」
気絶してた俺にひっついてたクセに、なんで今は恥ずかしがるのさ!?
内心文句は垂れつつも、急いで四角く作られた畝山へと定植して用意していた血をたっぷり含ませてやる。別の場所から持ってきた魔地潜虫のいない土なので、実を着け種子を残せるまで育つことだろう。当然、相応の管理は必要になるが。
ここで重要なのは、『ナスは地獄の底から植えろ』というぐらいなので深く畝に穴を掘っておくことだ。
「ダイナさん……」
「そ、そんな目で見ないでくれ。不可抗力だって……。彼女が恥ずかしがり屋過ぎたテッ! 痛い!」」
ハァビーが不機嫌になってしまったが、とりあえず無事に定植作業は終了だ。まだ怒っているのか、アルラウネが茎を振り回して脛を攻撃していることを除けば。
近づいてきた生徒達も、意外そうな表情でこの様子を眺めている。
「あ~……シービン、居るなら納屋の方を見てくれ」
管理で思い出したが、昨日の争いでシャッター部分が歪んでしまったので、錬成魔法の最高峰にしてもの作りが大好きなシービンに修理をお願いした。
『そうですね。サムベア先生に無理を言って良い納屋を作って貰ったんですもんね」
彼の言う通り、納屋の壁はレンガ製だ。
『後、人を影薄いみたいに言わないでください』
「オォジーメエヌ」
テヘペロ。ちょっと気にしてたでしょ。
冗談はさておき、次はシジットがいつの間にか植え終えていた種子がどうなるかだ。これは早くても数日かかるか。
「はて、今日は何もすることがなくなったぞ?」
アルラウネのための血を集めるのに2日くらいはかかると思っていたので、その間の予定を考えていなかった。
「時間が余ったんですか? どうしましょう?」
さっきまで機嫌が悪かったハァビーが、妙に明るい声で反応を示した。
聞いた話によると、ハァビーは俺や生徒達に文句の一言でも言ってやりたいと思って学園へやってきたらしい。精の出ることである。
もう日も暮れ始めてから学園たどり着いてみれば、5人がてんやわんやしていた。倒れている俺を見て、大体の状況を察して治癒を施した。ちなみに、かなり危ない状況だったが、瀕死から重症レベルまで回復できたのはフェイ聖女様様である。
その後は俺の予想通り、小さな傷などをハァビーが治療してくれたわけだ。
そして昼に差し掛かった現在、彼女はケンカの当人達を前に腕組みをして仁王立ちになっている。
「あー、ハァビーさん? 結果的に無事だったんですし、あまり怒らないでやってくださいな」
悪いことをしたのは2人ともわかっているはずなので、厳しいことを言っても逆効果だと思うんだ。フォローこそしてみるが、なかなか気は収まらないことだろう。
まぁ、流れ弾で人死にが出かかる行為をケンカで片付けるのもいかがなものだが。
「若いのですから、ケンカの1つもするでしょう。理由も理由なので、2人には宿題を出しておきました」
「おぉ、ハァビーさん有情! で、どのような宿題を?」
俺が気絶している間に、ちゃんとしておいたのは素晴らしい。
「まず、カホーさんにはアルラウネ用の畝作りと植え付けを。シジットさんには、別の野菜を作るための畝を準備してもらいました。ついでに種もですね」
ほほぅ、準備のよろしいことで。
しかし、どうして他に野菜を作らせようなんて考えたんだい?
そう疑問に思っていると、ハァビーは察して説明してくれる。
「あぁ、野菜については、基本的な動植物の育て方について知って貰うためです」
答えを聞いて、なるほどとしか思えなかった。確かに、植物の顔を見るのは重要だから基本を知るのも大事だ。
珍しい植物の種しか持ってなかったのね。
「それじゃ、ぜひ作業報告を聞かないとな」
俺は相槌を打ったところで、2人からの話を聞くことにした。
「えぇ エックスダーテ、ひとつ ジェダァエーエヌ エルジィダーエフダー ガ」
カホーは作業中に、何か不安に思うところがあったという。
「マエヌ……アルラウネ を ジェビーエックスダァシィジーアイダァビーテ も ダビィピィビーダブリュジィダァティダー ですか?」
アルラウネを植え替えるのに土から出して大丈夫かと、彼は心配しているようだ。
そう言えばまだ教えてなかったっけ?
「ごめん。これについては俺の落ち度だ」
アルラウネとして育った場合、土から引き抜く際に悲鳴を上げたりしない。それを知っているのは、苗を育てていた俺とハァビーぐらいのものである。
「ダビィピィビーダブリュジィダァティダー ダエムジー」
口で言っても納得して貰えそうにないし、実践して見るのが早いと思った。だから持ってきてくれいた鉢から、アルラウネを引っこ抜く。
ハァビー以外は、ズッザァーって勢いで離れた。耳までふさいで失礼な……。
気にしても仕方ないので、茎を引っ掴んで抜いた。
「キャ」「へ?」
顔を真っ赤に染めて、根っこのような手足で必死に体を隠そうとするアルラウネ。これは拙かったネ。
そう思ったときには既に遅く。
「ァァァァァァァァッ!!!」
絶叫は俺の耳を貫通して、空気をつんざいた。
しんでなーい!
「うぉぉ……耳がキーンってするけど。あぁッ、直ぐ植え替えるから泣かないで!」
気絶してた俺にひっついてたクセに、なんで今は恥ずかしがるのさ!?
内心文句は垂れつつも、急いで四角く作られた畝山へと定植して用意していた血をたっぷり含ませてやる。別の場所から持ってきた魔地潜虫のいない土なので、実を着け種子を残せるまで育つことだろう。当然、相応の管理は必要になるが。
ここで重要なのは、『ナスは地獄の底から植えろ』というぐらいなので深く畝に穴を掘っておくことだ。
「ダイナさん……」
「そ、そんな目で見ないでくれ。不可抗力だって……。彼女が恥ずかしがり屋過ぎたテッ! 痛い!」」
ハァビーが不機嫌になってしまったが、とりあえず無事に定植作業は終了だ。まだ怒っているのか、アルラウネが茎を振り回して脛を攻撃していることを除けば。
近づいてきた生徒達も、意外そうな表情でこの様子を眺めている。
「あ~……シービン、居るなら納屋の方を見てくれ」
管理で思い出したが、昨日の争いでシャッター部分が歪んでしまったので、錬成魔法の最高峰にしてもの作りが大好きなシービンに修理をお願いした。
『そうですね。サムベア先生に無理を言って良い納屋を作って貰ったんですもんね」
彼の言う通り、納屋の壁はレンガ製だ。
『後、人を影薄いみたいに言わないでください』
「オォジーメエヌ」
テヘペロ。ちょっと気にしてたでしょ。
冗談はさておき、次はシジットがいつの間にか植え終えていた種子がどうなるかだ。これは早くても数日かかるか。
「はて、今日は何もすることがなくなったぞ?」
アルラウネのための血を集めるのに2日くらいはかかると思っていたので、その間の予定を考えていなかった。
「時間が余ったんですか? どうしましょう?」
さっきまで機嫌が悪かったハァビーが、妙に明るい声で反応を示した。
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