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4睡目・俺ひとりじゃない
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『二度か三度、文献を借りるために家へ行きましたけど、眠そうにしてなかった日はなかったですね』「ッ! そ、そういうことは言わないでください!」
シービンの言葉にまたしてもハァビーは顔を赤くした。
「通訳しなけりゃ良いのに」
『長々と居座るのが憚られる雰囲気だったよね』「あ、あのときは少し人見知りがあっただけで!」
俺の出会う前の彼女のことも少し聞けた。
サムベアさんや彼女自身から話して貰うのは今の所、難しそうなのでちょっと嬉しかった。
そうしている間に水分混じりの油が魚から垂れて、ジュッと焚き木とぶつかり合う。
「キューハアールビー テエックスダーエフダーダブリュダーアァール、はぐっ!」
ケェヌは焼けた魚を1つ咥え、後2つを手に持ち皆に何かを言った。
ハァビーの通訳の呼吸を読んだかのようなタイミングで、皆が動き出してからとなる。流石は刀使い。
「撤収? ちょっと、皆さん!?」
「あら、急ぐんですのね?」
どうやら、何かを予想してケェヌは帰る指示を出したようだ。
ハァビーが慌てる中で、他の4人はさっさと準備を始めている。俺が仕切るべきなんだろうが、彼らには彼らのノリもあるからあまり教師面してもね?
残る魚を生徒達が掻っ攫って、俺達は撤収を始める。学校までは四時間ちょっとの距離だが、ハァビーの家までは30分もかからない。ここに残しておいても余程のことがなければ大丈夫だろう。
フェイがお弁当箱を片付け、カホーが百キロ以上はある血を溜めた桶を数分の内に自身のシィディアに収めてるというデタラメをやった。
「そういうわけだから、先に家に戻ってて。じゃ!」
俺は皆に次の作業を指示したりしなければならないので、そのままついていくことにした。
「ダイナさぁーん!」
背中に悲痛な声が投げかけられた。
取り残されたハァビーには申し訳ないと思いつつも、学園までの道のりをひーこらと歩くのであった。
最初にやることは、50センチほどの苗に成長したマンドラゴラを畑に植え替える作業だ。ここまではハァビーの指示通りに育ててくれたようだが、ここからが重要と言わざるを得ない。
「どう です。この広さ ワイエヌジー 畑 に エフビーテ おき ました よ」
誇ったようにドヤ顔をしてみせたのはカホーだった。ハァビーが居ない間はゆっくり話してくれるので聞き取れるし、なんとか手作り辞書で通訳できた。
学園から借りた土地を畑として使わせて貰うに際して、ただの空き地だったところを生徒達に耕してもらった。500平方メートルくらいの土地に、作業用兼道具置きの小屋を1つ建てただけの場所。
「シィダーレ を 5人で、タエックスダータ 数日で?」
「えぇ、俺 が マジェジィダー で」
うん? 今、魔法でやったって言わなかったか?
嫌な予感を覚えて確認する。
「これを、魔法で? ゼエヌティダー?」
「ジィダー!」
俺が訊くと、カホーが力強く頷いた。
学園にいる生徒の平均的な能力だと、魔法で土を耕すより牛や馬なんかに鋤を引かせた方が早い。だから、俺はついつい伝えるのを怠ってしまっていたのだ。こんなデタラメをやらかせる奴がいるとは思わなかったからね!
「あー……ワエルディビー。この辺りにごっそり オォディーダブリュディディー ワイアイジー ジェダーエヌ を。えー、マビーテ アイダーエヌジー ワイデ 二重に覆って」
手振り身振りで、作業の指示を伝えていった。牛糞を一定範囲にたっぷりと撒いて二重の布で被覆するという内容を、生徒達は片言の言葉でなんとか理解してくれたようだ。しかし、どうしてそうするのか理解していない。
「アイエヌデ デエフダー?」
ここからは結構難儀した。
最たるものは、『魔地潜虫』という専門用語を伝えることだった。こちらの世界における根こぶ線虫 ネコブセンチュウ のようなもので、魔力の宿った植物の根に潜り込む。文献を書いた先人が作った造語でもあるので、そっち自体は通訳がいてもどうしようもなかったと思うが。
ただ、これを理解して貰えないことには、どうして魔法で地面を耕すもといぶちかましては行けないのか納得させられない。絵心のない、牙のあるミミズみたいなものを地面に描いたりすること30分。
「あぁ、エフジィダー いう こと か!」
「小さな 虫 が 根っこ を シィビィピィダーエッチダァシィケ て シィビーマダーエヌ です ね」
先に理解を示してくれたのはシービンとフェイだった。次がケェヌで、シジット、カホーの順だ。
「そう、エフジィダー。じゃあ、テサオォビーブイ で」
これでなんとか前に進める。
できればここで、こちらの世界における『マンドラゴラ』と『アルラウネ』の違いについて、先人の見解を述べておきたかった。どうやら、魔地潜虫にやられて干からびたようになったものをマンゴラゴラと呼称するようだ。
そりゃ、怪我をした体をいきなり擦られて外気にさらされたなら痛いに決まっている。激痛に叫んで、魔力の乗った力ある衝撃波を受けるのも仕方ないことじゃないだろうか。そしてそのまま、種子も作らずに錬成魔法の触媒にしたんじゃ絶滅したっておかしくはない。
シービンの言葉にまたしてもハァビーは顔を赤くした。
「通訳しなけりゃ良いのに」
『長々と居座るのが憚られる雰囲気だったよね』「あ、あのときは少し人見知りがあっただけで!」
俺の出会う前の彼女のことも少し聞けた。
サムベアさんや彼女自身から話して貰うのは今の所、難しそうなのでちょっと嬉しかった。
そうしている間に水分混じりの油が魚から垂れて、ジュッと焚き木とぶつかり合う。
「キューハアールビー テエックスダーエフダーダブリュダーアァール、はぐっ!」
ケェヌは焼けた魚を1つ咥え、後2つを手に持ち皆に何かを言った。
ハァビーの通訳の呼吸を読んだかのようなタイミングで、皆が動き出してからとなる。流石は刀使い。
「撤収? ちょっと、皆さん!?」
「あら、急ぐんですのね?」
どうやら、何かを予想してケェヌは帰る指示を出したようだ。
ハァビーが慌てる中で、他の4人はさっさと準備を始めている。俺が仕切るべきなんだろうが、彼らには彼らのノリもあるからあまり教師面してもね?
残る魚を生徒達が掻っ攫って、俺達は撤収を始める。学校までは四時間ちょっとの距離だが、ハァビーの家までは30分もかからない。ここに残しておいても余程のことがなければ大丈夫だろう。
フェイがお弁当箱を片付け、カホーが百キロ以上はある血を溜めた桶を数分の内に自身のシィディアに収めてるというデタラメをやった。
「そういうわけだから、先に家に戻ってて。じゃ!」
俺は皆に次の作業を指示したりしなければならないので、そのままついていくことにした。
「ダイナさぁーん!」
背中に悲痛な声が投げかけられた。
取り残されたハァビーには申し訳ないと思いつつも、学園までの道のりをひーこらと歩くのであった。
最初にやることは、50センチほどの苗に成長したマンドラゴラを畑に植え替える作業だ。ここまではハァビーの指示通りに育ててくれたようだが、ここからが重要と言わざるを得ない。
「どう です。この広さ ワイエヌジー 畑 に エフビーテ おき ました よ」
誇ったようにドヤ顔をしてみせたのはカホーだった。ハァビーが居ない間はゆっくり話してくれるので聞き取れるし、なんとか手作り辞書で通訳できた。
学園から借りた土地を畑として使わせて貰うに際して、ただの空き地だったところを生徒達に耕してもらった。500平方メートルくらいの土地に、作業用兼道具置きの小屋を1つ建てただけの場所。
「シィダーレ を 5人で、タエックスダータ 数日で?」
「えぇ、俺 が マジェジィダー で」
うん? 今、魔法でやったって言わなかったか?
嫌な予感を覚えて確認する。
「これを、魔法で? ゼエヌティダー?」
「ジィダー!」
俺が訊くと、カホーが力強く頷いた。
学園にいる生徒の平均的な能力だと、魔法で土を耕すより牛や馬なんかに鋤を引かせた方が早い。だから、俺はついつい伝えるのを怠ってしまっていたのだ。こんなデタラメをやらかせる奴がいるとは思わなかったからね!
「あー……ワエルディビー。この辺りにごっそり オォディーダブリュディディー ワイアイジー ジェダーエヌ を。えー、マビーテ アイダーエヌジー ワイデ 二重に覆って」
手振り身振りで、作業の指示を伝えていった。牛糞を一定範囲にたっぷりと撒いて二重の布で被覆するという内容を、生徒達は片言の言葉でなんとか理解してくれたようだ。しかし、どうしてそうするのか理解していない。
「アイエヌデ デエフダー?」
ここからは結構難儀した。
最たるものは、『魔地潜虫』という専門用語を伝えることだった。こちらの世界における根こぶ線虫 ネコブセンチュウ のようなもので、魔力の宿った植物の根に潜り込む。文献を書いた先人が作った造語でもあるので、そっち自体は通訳がいてもどうしようもなかったと思うが。
ただ、これを理解して貰えないことには、どうして魔法で地面を耕すもといぶちかましては行けないのか納得させられない。絵心のない、牙のあるミミズみたいなものを地面に描いたりすること30分。
「あぁ、エフジィダー いう こと か!」
「小さな 虫 が 根っこ を シィビィピィダーエッチダァシィケ て シィビーマダーエヌ です ね」
先に理解を示してくれたのはシービンとフェイだった。次がケェヌで、シジット、カホーの順だ。
「そう、エフジィダー。じゃあ、テサオォビーブイ で」
これでなんとか前に進める。
できればここで、こちらの世界における『マンドラゴラ』と『アルラウネ』の違いについて、先人の見解を述べておきたかった。どうやら、魔地潜虫にやられて干からびたようになったものをマンゴラゴラと呼称するようだ。
そりゃ、怪我をした体をいきなり擦られて外気にさらされたなら痛いに決まっている。激痛に叫んで、魔力の乗った力ある衝撃波を受けるのも仕方ないことじゃないだろうか。そしてそのまま、種子も作らずに錬成魔法の触媒にしたんじゃ絶滅したっておかしくはない。
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