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第三話・スパイ、怒る
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野口製薬株式会社という大手企業の社長秘書を務める吉川 安那は、嬉々として待ち合わせの場所へと向かっていた。
ストレートヘアーを一本に束ね、瓶底眼鏡を身に着けた野暮ったい化粧っ気のない女。仕事はできるが、どこかそれがつまらなさを生む融通のきかない女。同僚を含む周囲の評価はそれだ。
「~♪」
そんな吉川が鼻歌に興じる程度に、今夜は彼氏との久しぶりのデートだった。仕事が忙しく、ここ一月ほどは逢瀬を重ねる時間もなかったせいだ。
待ち合わせの約束をした都内の忠犬が居座る場所へとたどり着き、既に到着していた彼氏を見つける。人混みの中、吉川に手を振っているのが飯塚 勇人である。
いや、このとき彼氏は、女の知るいつもの人物ではなかった。飯塚の生き別れた双子の兄、飯塚 竹虎にすり替わっていた。
それでも顔立ちは瓜二つで、振る舞いも素の質なのか寸分違わずコピーして、魅せる。少しばかり言葉のアクセントが異なっていても、久しぶりのデートで浮かれていたせいか気にしなかった。
「なんだ。今日は随分と嬉しそうだな」
「えぇ、だって、久しぶりに貴方と会えたのだもの」
飯塚兄の言葉に、吉川はこころなしか弾んだ声で答えた。
先を歩いていってしまう姿を男が追いかけ、あっちにこっちにとデートスポットを巡る。しかしことが進んだのは、食事のためにちょっと高級なレストランへ入り洒落た夕食をたしなんだ後のこと。
「あら……」
「どうした?」
吉川が弱った顔を抑えたことで、飯塚兄は内心でほくそ笑んだことだろう。
お酒に混ぜた薬が効きはじめたのだ。
ちょっとインターネットが使えれば購入するのは難しくなく、効き目自体もそれほど強いわけではない。ただ、大抵の薬はお酒に混ぜると代謝能力が減少して効能が強まってしまう。
「少し、酔っ払いすぎたかも……」
ふらつく体を飯塚兄に預けた。
女性を無理やり拐かすのによくある手口である。大学の新入生歓迎コンパでやられたとかって話は有名になったので、ご存知の人も多いことだろう。
「大丈夫? ちょっと休んでいこうか」
飯塚兄は心配した振りをして、介抱を口実に人の少ないホテルの中へと連れて行った。予め計画に入れておいたプランに倣い、迷いなく路地を進んで寂れた建物へと入った。
明らかにおかしなところへ近づくも、吉川に心配する余力はもうない。
「あ、あぁ……」
うめき声とも変わらないか細い声を出して、何か思考しようと頑張った。しかし、それは形にならなかった。
酔っ払ったとか眠たいといった様相を通り越した女性を、男が連れ込んでも誰一人として気にはしない。人と会うことも少なかっただろうが。
フロントで部屋を選んで鍵を自動的に受け取ると、飯塚兄は慣れた様子で吉川を連れ込むことを完了した。
一連の流れから、結構手慣れてると見て良い。
「暑そうだな。服脱がすから」
「え、あ……」
吉川が答えるよりも早く、飯塚兄がブラウスに手をかけた。
精一杯のおめかしに着てきた衣装だが、その男の前ではそこいらの安売りシャツと遜色はない。引きちぎりたいところだったろう半面、度が過ぎれば策が崩れると気持ちを落ち着かせる。
そして、ボタンを外し終えたところでその白い肌に手をかけた。二子山の下側から肋骨をなぞるようにして、付け根からブラジャーを押し上げながら撫でる。
「……やっぱり、邪魔だから外そうか」
体だけ見ておけば気にならないものの、飯塚兄にはこだわりがあるようだ。野暮ったい瓶底眼鏡を外せば、地味ながらも平均的な顔立ちが現れる。
再び、顕になった膨らみに手を滑らせる。
「アッ……」
薬と酒で火照った体に冷たい手が心地よく、いつもの調子で声が漏れてしまったことだろう。
しかし、同時に気づくことになった。吉川の、自分の体にのっかっている男が、良く知る彼氏とは違うことに。
しかし、回らない頭でははっきりとした答えを出せない。気づいたところで、逃げ出すだけ体が動かない。
「ンン……」
ツゥと舌が谷間から平野を抜けて下腹部の盆地へと降り、不思議な痺れを感じてうめいたはずだ。
ただただ、なすがままに体を弄くられ彼氏だけにしか捧げたことの無い操を、奪われる。薬のせいで、感じたくもない気持ちよさを与えられる。
「い、ぁ……」
「ん~?」
「やめ……」
薬が回りすぎて、記憶さえ曖昧になる中で吉川は訴えた。多分。
それでも、気づくのが一歩遅かった。
最初に拒めていなければ。そこまで用意周到に記録されていた。
「もう手遅れさ」
「ヒゥッ」
耳元での囁きに合わせて、股の間に指が這った。1本、2本と増え、無理やり汁気を引きずり出された。
ここぞとばかりに女の入り口に割って入ってくるものがある。
「い、ぃゃッ、アァァァァ~ッ」
嬌声と悲鳴が上がった。誰にも聞こえることのない、秘密の嘆きが。
そこから先は、様々なものがぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまい覚えていない。
ストレートヘアーを一本に束ね、瓶底眼鏡を身に着けた野暮ったい化粧っ気のない女。仕事はできるが、どこかそれがつまらなさを生む融通のきかない女。同僚を含む周囲の評価はそれだ。
「~♪」
そんな吉川が鼻歌に興じる程度に、今夜は彼氏との久しぶりのデートだった。仕事が忙しく、ここ一月ほどは逢瀬を重ねる時間もなかったせいだ。
待ち合わせの約束をした都内の忠犬が居座る場所へとたどり着き、既に到着していた彼氏を見つける。人混みの中、吉川に手を振っているのが飯塚 勇人である。
いや、このとき彼氏は、女の知るいつもの人物ではなかった。飯塚の生き別れた双子の兄、飯塚 竹虎にすり替わっていた。
それでも顔立ちは瓜二つで、振る舞いも素の質なのか寸分違わずコピーして、魅せる。少しばかり言葉のアクセントが異なっていても、久しぶりのデートで浮かれていたせいか気にしなかった。
「なんだ。今日は随分と嬉しそうだな」
「えぇ、だって、久しぶりに貴方と会えたのだもの」
飯塚兄の言葉に、吉川はこころなしか弾んだ声で答えた。
先を歩いていってしまう姿を男が追いかけ、あっちにこっちにとデートスポットを巡る。しかしことが進んだのは、食事のためにちょっと高級なレストランへ入り洒落た夕食をたしなんだ後のこと。
「あら……」
「どうした?」
吉川が弱った顔を抑えたことで、飯塚兄は内心でほくそ笑んだことだろう。
お酒に混ぜた薬が効きはじめたのだ。
ちょっとインターネットが使えれば購入するのは難しくなく、効き目自体もそれほど強いわけではない。ただ、大抵の薬はお酒に混ぜると代謝能力が減少して効能が強まってしまう。
「少し、酔っ払いすぎたかも……」
ふらつく体を飯塚兄に預けた。
女性を無理やり拐かすのによくある手口である。大学の新入生歓迎コンパでやられたとかって話は有名になったので、ご存知の人も多いことだろう。
「大丈夫? ちょっと休んでいこうか」
飯塚兄は心配した振りをして、介抱を口実に人の少ないホテルの中へと連れて行った。予め計画に入れておいたプランに倣い、迷いなく路地を進んで寂れた建物へと入った。
明らかにおかしなところへ近づくも、吉川に心配する余力はもうない。
「あ、あぁ……」
うめき声とも変わらないか細い声を出して、何か思考しようと頑張った。しかし、それは形にならなかった。
酔っ払ったとか眠たいといった様相を通り越した女性を、男が連れ込んでも誰一人として気にはしない。人と会うことも少なかっただろうが。
フロントで部屋を選んで鍵を自動的に受け取ると、飯塚兄は慣れた様子で吉川を連れ込むことを完了した。
一連の流れから、結構手慣れてると見て良い。
「暑そうだな。服脱がすから」
「え、あ……」
吉川が答えるよりも早く、飯塚兄がブラウスに手をかけた。
精一杯のおめかしに着てきた衣装だが、その男の前ではそこいらの安売りシャツと遜色はない。引きちぎりたいところだったろう半面、度が過ぎれば策が崩れると気持ちを落ち着かせる。
そして、ボタンを外し終えたところでその白い肌に手をかけた。二子山の下側から肋骨をなぞるようにして、付け根からブラジャーを押し上げながら撫でる。
「……やっぱり、邪魔だから外そうか」
体だけ見ておけば気にならないものの、飯塚兄にはこだわりがあるようだ。野暮ったい瓶底眼鏡を外せば、地味ながらも平均的な顔立ちが現れる。
再び、顕になった膨らみに手を滑らせる。
「アッ……」
薬と酒で火照った体に冷たい手が心地よく、いつもの調子で声が漏れてしまったことだろう。
しかし、同時に気づくことになった。吉川の、自分の体にのっかっている男が、良く知る彼氏とは違うことに。
しかし、回らない頭でははっきりとした答えを出せない。気づいたところで、逃げ出すだけ体が動かない。
「ンン……」
ツゥと舌が谷間から平野を抜けて下腹部の盆地へと降り、不思議な痺れを感じてうめいたはずだ。
ただただ、なすがままに体を弄くられ彼氏だけにしか捧げたことの無い操を、奪われる。薬のせいで、感じたくもない気持ちよさを与えられる。
「い、ぁ……」
「ん~?」
「やめ……」
薬が回りすぎて、記憶さえ曖昧になる中で吉川は訴えた。多分。
それでも、気づくのが一歩遅かった。
最初に拒めていなければ。そこまで用意周到に記録されていた。
「もう手遅れさ」
「ヒゥッ」
耳元での囁きに合わせて、股の間に指が這った。1本、2本と増え、無理やり汁気を引きずり出された。
ここぞとばかりに女の入り口に割って入ってくるものがある。
「い、ぃゃッ、アァァァァ~ッ」
嬌声と悲鳴が上がった。誰にも聞こえることのない、秘密の嘆きが。
そこから先は、様々なものがぐちゃぐちゃに混ざり合ってしまい覚えていない。
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