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QUEST33.スタンディングオベーション
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「ふぅッ」
予想外の"ギフト"に驚きを隠さないロイス。ただ獣化による身体能力の上昇に留まると思っていただけに、正直"メタリングダンサー"では役不足だったと感じてしまった。
なにせ、その間も足による攻撃は止まず、足元以外からならどこからでも飛んでくる。流線型の飛翔物体を炎の盾で、踊りながらも状況に応じて並べ防ぐ。決して難しい振り付けではないものの、速度はかなりハイテンポである。
体で覚えてしまっているのか、"メタリングダンサー"の攻撃さえステップのリズムに取り込んでいた。
――ギュギュルギュウゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
"メタリングダンサー"は単細胞的な見た目に関わらず、レベルの実力を理解して地団駄のような反応を見せた。いくつもの足が焼かれ、踏み込む足などそろそろ生やせなくなったというのに。
しかし、もはや引けない戦いだ。このまま諦めてロイス達に殴り倒されるか、体の全てが失われるまで足を飛ばし続けるか。
"メタリングダンサー"は軟体の中心にある核さえ残っていれば、雑食ゆえに何度でも巨大化できる。その性質をもってして、後者に賭け勝負に出てくる。
「困ったね。防戦一方で終わりそう」
ロイスも驚くほどに呆気ない終わりを、"メタリングダンサー"が最後の核を包んだ肉体を飛翔させたことで、彼は実感した。違いは、今までの板状ではなく棒状に近いということか。さらには回転している。
炎に阻まれるのであれば、それを払い除け貫通すれば良いというわけだ。
「来るッ!」
レベルも、これは流石に単純には受け止められないと判断した。
ロイスが同感とばかりに、ラストのステップと同時にレベルを抱きかかえジャンプする。
一瞬、炎とせめぎ合い突破してきた"メタリングダンサー"の核。二人の間へと割り込んできたそれは、全てを巻き込み回転を続ける。
――ギュッギュッ!?
唐突なランデブーに"メタリングダンサー"は驚き、なおもロイスの意図がわからず飛翔を続けざるを得ない。しかし、すぐに終わりはやってきた。
レベルもロイスの考えを理解したのか。いや、ここまでくればやれることはそれほど多くない。
「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」「はぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
そこから二人は体勢を変え、"メタリングダンサー"を同時に蹴った。
――ギュギュギュッ!?
驚愕か悲鳴か、飛翔物体は加速した。
――ギュギュルギュウゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
ナイスシュートだ。
S級冒険者のラブラブキックを受けた"メタリングダンサー"は、自らの肉体を止めることができずついには石柱へと衝突する。
――ドゴォォォォォォォンッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
石の塔は高速の弾丸を受け、根本から砕けポッキリと崩れ始める。二人は、寸前まで"メタリングダンサー"の核が岩とぶつかり砕けるのを見届けていた。
そして、止めをさす必要性もないと踵を返しセーラのいる方へと進んだ。
抉れた地面のおかげで迷うことなくセーラと合流できた二人。
「お兄さんッ」
セーラは服こそボロボロになりながらも、ロイスの姿を見つけてすぐさま走り寄ってきた。
「おぉう、なかなかの相手だったみたいだね」
ロイスはセーラの体当たりを受け止め、戦いの過酷さを評価するのだった。労いをかけるのはレベルの仕事だ。
「お疲れ様です。本当に、無事で良かったです。セーラさん一人に任せてしまったこと、ちょっと心配だったんですが」
そう言うレベルはわずかばかりの不安を顕にした。相手がS級冒険者4人ともなれば、普通勝算などないというもの。
思わずロイスとダンスをしてしまったが、"メタリングダンサー"を振り切ってでもセーラを助けに行くべきだったのだろう。
「まぁ、『ユールングア』さえあれば大丈夫」
セーラが言うにはそういうことのようだ。それほど特筆することのない折りたたみ可能なだけの大鎌に、どれほどの信頼を寄せているのか定かではない。
「セーラならなんとかできると思ってたし、そこはね」
「はぁ……」
ロイスも似たような感想を述べ、レベルがとやかくいうわけにもいかなくなった。
兄にさえ信じていて貰えればいくらでも力を発揮できるというのがセーラのポテンシャルなのだろう。レベルはそう納得するのだった。
こうしてなんとかクエストを終え、三人は倒した者達の遺品を手に帰還するのだった。
「長官からの手紙だ?」
帰り際、受け取ったのは四通の連絡。
そこには次の仕事の内容が書かれており、なんと見覚えのあるS級冒険者達の名が連なっているではないか。図らずしも、任務を終えたというわけである。
長官からしてみればスタンディングオベーションものだろう。そんなわけでロイス達は、重労働の疲労を身に街へと帰りつくのだった。
予想外の"ギフト"に驚きを隠さないロイス。ただ獣化による身体能力の上昇に留まると思っていただけに、正直"メタリングダンサー"では役不足だったと感じてしまった。
なにせ、その間も足による攻撃は止まず、足元以外からならどこからでも飛んでくる。流線型の飛翔物体を炎の盾で、踊りながらも状況に応じて並べ防ぐ。決して難しい振り付けではないものの、速度はかなりハイテンポである。
体で覚えてしまっているのか、"メタリングダンサー"の攻撃さえステップのリズムに取り込んでいた。
――ギュギュルギュウゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
"メタリングダンサー"は単細胞的な見た目に関わらず、レベルの実力を理解して地団駄のような反応を見せた。いくつもの足が焼かれ、踏み込む足などそろそろ生やせなくなったというのに。
しかし、もはや引けない戦いだ。このまま諦めてロイス達に殴り倒されるか、体の全てが失われるまで足を飛ばし続けるか。
"メタリングダンサー"は軟体の中心にある核さえ残っていれば、雑食ゆえに何度でも巨大化できる。その性質をもってして、後者に賭け勝負に出てくる。
「困ったね。防戦一方で終わりそう」
ロイスも驚くほどに呆気ない終わりを、"メタリングダンサー"が最後の核を包んだ肉体を飛翔させたことで、彼は実感した。違いは、今までの板状ではなく棒状に近いということか。さらには回転している。
炎に阻まれるのであれば、それを払い除け貫通すれば良いというわけだ。
「来るッ!」
レベルも、これは流石に単純には受け止められないと判断した。
ロイスが同感とばかりに、ラストのステップと同時にレベルを抱きかかえジャンプする。
一瞬、炎とせめぎ合い突破してきた"メタリングダンサー"の核。二人の間へと割り込んできたそれは、全てを巻き込み回転を続ける。
――ギュッギュッ!?
唐突なランデブーに"メタリングダンサー"は驚き、なおもロイスの意図がわからず飛翔を続けざるを得ない。しかし、すぐに終わりはやってきた。
レベルもロイスの考えを理解したのか。いや、ここまでくればやれることはそれほど多くない。
「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」「はぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
そこから二人は体勢を変え、"メタリングダンサー"を同時に蹴った。
――ギュギュギュッ!?
驚愕か悲鳴か、飛翔物体は加速した。
――ギュギュルギュウゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
ナイスシュートだ。
S級冒険者のラブラブキックを受けた"メタリングダンサー"は、自らの肉体を止めることができずついには石柱へと衝突する。
――ドゴォォォォォォォンッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
石の塔は高速の弾丸を受け、根本から砕けポッキリと崩れ始める。二人は、寸前まで"メタリングダンサー"の核が岩とぶつかり砕けるのを見届けていた。
そして、止めをさす必要性もないと踵を返しセーラのいる方へと進んだ。
抉れた地面のおかげで迷うことなくセーラと合流できた二人。
「お兄さんッ」
セーラは服こそボロボロになりながらも、ロイスの姿を見つけてすぐさま走り寄ってきた。
「おぉう、なかなかの相手だったみたいだね」
ロイスはセーラの体当たりを受け止め、戦いの過酷さを評価するのだった。労いをかけるのはレベルの仕事だ。
「お疲れ様です。本当に、無事で良かったです。セーラさん一人に任せてしまったこと、ちょっと心配だったんですが」
そう言うレベルはわずかばかりの不安を顕にした。相手がS級冒険者4人ともなれば、普通勝算などないというもの。
思わずロイスとダンスをしてしまったが、"メタリングダンサー"を振り切ってでもセーラを助けに行くべきだったのだろう。
「まぁ、『ユールングア』さえあれば大丈夫」
セーラが言うにはそういうことのようだ。それほど特筆することのない折りたたみ可能なだけの大鎌に、どれほどの信頼を寄せているのか定かではない。
「セーラならなんとかできると思ってたし、そこはね」
「はぁ……」
ロイスも似たような感想を述べ、レベルがとやかくいうわけにもいかなくなった。
兄にさえ信じていて貰えればいくらでも力を発揮できるというのがセーラのポテンシャルなのだろう。レベルはそう納得するのだった。
こうしてなんとかクエストを終え、三人は倒した者達の遺品を手に帰還するのだった。
「長官からの手紙だ?」
帰り際、受け取ったのは四通の連絡。
そこには次の仕事の内容が書かれており、なんと見覚えのあるS級冒険者達の名が連なっているではないか。図らずしも、任務を終えたというわけである。
長官からしてみればスタンディングオベーションものだろう。そんなわけでロイス達は、重労働の疲労を身に街へと帰りつくのだった。
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