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46P・ようやく叶う水の音
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温泉にたどり着いた2人は早速、服を脱いで湯の中へと向かう。本来ならばパスクが入り終えるのを待つはずだが、今回ばかりはそれも許されそうにない。
リナルドは陛下に少し遅れること服を脱ぎ終えると、念の為に普通に細剣を携えたまま先をゆく。
「そう構えるな。少なくとも、敵だってここじゃ素っ裸だろ」
敵影は湯気に映り込むことなく、無駄に身構えていた近衛騎士隊長をパスクは笑った。
パスクの顔が少し赤くなった。
「クククッ、もうのぼせたか? 剣は置いておくんだな」
さらに笑いを重ねるも、このままでは冷えてしまうので急かした。
そして、リナルドが細剣を岩場に立てかけた瞬間。
「ガッ!」
まさかだが、背後から衝撃が襲いかかってきた。完全に油断していたリナルドは回避することなどできず、その一撃をくらってしまった。
何が起こったのかを理解するより早く水面が近づいてきて、見事に水面に津波を呼び寄せて沈むこととなる。
「ゴボッ! ゴホッ! ゴホッ! 何をなさるのですか、陛下!?」
「すまん。すまん! しっかし、お前が容易く不意打ちを受けるとはな」
温泉にいきなり叩き落されて、流石にもリナルドも不満をぶつけようとした。直ぐにパスクが謝るも、反省した様子もなく言葉を続けた。
そして、王はその意味するところを顎に手を当てわざとらしく考える。
「何を浮かれているんだ?」
既に内心では出ていたであろう答えを、パスクは意地悪く口にした。
「ッ! そ、それは……」
指摘を受けて言い淀むリナルド。気づかれているとは思ってもいなかったと言わんばかりに目を見開くも、ここで本音を言うわけにもいかなかった。
なにせ、久しぶりにこうして側に居られる。それに加えて裸の付き合いともなれば、少しぐらい気持ちが高ぶっても仕方ないというもの。
しかし、そのような邪な心根を打ち明けることなど不敬極まる。
「そうか。すまない」
口ごもっていると、なぜかパスクが謝ってきた。
そのようなことをさせてはいけないと思ったものも、直ぐに次のセリフが出てくる。
「生きて戻ってきたら褒美をやると言っていたことを、ついつい忘れていたな」
「は? あ、え、えっと、そのような約束もいたしておりましたね……」
パスクも温泉に浸かって、側に寄ってくる。リナルドはだいぶ戸惑いつつも、言われてみればと思い出した。
最愛の陛下との約束を忘れているとはなんたることか。
自分の愚かしさを呪い、さらにはどうしたものかと頭を悩ませる。
「それにつきましては、首都へ帰還してからゆっくりとッ」
「ここで決めろ」
「なッ!」
直ぐには思いつかないため保留にしようとしたところで、パスクが強行で無体な命令を下してきた。
流石に横暴だと抗議しようとするも、戦王たるそれとは違う威圧を放ってくる。
「い、今、ですか……?」
「あぁ、今だ。無理とは言わさんぞ」
「そ、そんな……えっと、しかし……」
「なんでも言ってみろ。俺が約束を違えたことなんてないだろ?」
どちらかと言えば、威圧感以上に迫ってくるパスクの体と顔に気圧されてしまったが。
隆々とした腕がリナルドの顔の横を通り過ぎ、温泉の岩と挟み込むように逃げ場を封じてくる。一気に跳ね上がる鼓動。
胸の高鳴りが聞こえてしまうのではないかとリナルドは不安になった。
「で、では……」
なんとか言葉を絞り出して、心臓がドラムを鳴らしているのをなんとか誤魔化そうとした。
いや、これから吐き出そうとしているセリフを思えば今の脈動などマキシの怒鳴り声と小鳥の囀りほど違ってくる。
それの加えて、まるで鼓動を聞こうとしているかのようにパスクの顔が、顔同士くっつきそうになるぐらい近づいてくる。
もはや全身の火照りが、のぼせたせいか興奮のせいかわからない。
もはや自分でもその行動が正しいのかわからないまま、リナルドは一言謝罪してから動く。
「陛下! 不敬をお許しください!」
言い終わると同時に、パスクの首に腕を回して抱きついた。勢いのままお湯に沈み、口をつないで呼吸を確保する。
確保できただろうか。
2人は抱き合ったまま、静かに口づけを交わす。拒絶されることもなく、パスクの方から舌を絡めてきたことには驚いた。
けれど、どこかでそれが当然だという感じがしていた。
2人の髪は解けるようになびき、そして気持ちを通じ合わせるように絡まる。リナルドがリナルドとして、パスクアーレと初めて結ばれた瞬間だ。
「んん……」
「ぅん……」
一分はそうしていただろうか。タイミングを合わせて水面へと上がった。
「プハッ!」「はぁ、はぁ……」
一度息を整え直したところで、少し見つめ合っただけで理解し合った。
「チュッ」
「んちゅぅ~」
再び口づけして、舌と舌を重ね合わせて同時に吸い合う。口内に残ったお湯を飲み干すと、次にはこれでもかとヨダレが溢れ出てきた。
それすらも枯らす勢いで舐め合い、そしてネチョネチョといやらしく音を立て舌を絡める。
下腹部にぶつかる熱く硬い剛直を意識したところで、唾液を舌に乗せながら少しずつ口を離した。
リナルドは陛下に少し遅れること服を脱ぎ終えると、念の為に普通に細剣を携えたまま先をゆく。
「そう構えるな。少なくとも、敵だってここじゃ素っ裸だろ」
敵影は湯気に映り込むことなく、無駄に身構えていた近衛騎士隊長をパスクは笑った。
パスクの顔が少し赤くなった。
「クククッ、もうのぼせたか? 剣は置いておくんだな」
さらに笑いを重ねるも、このままでは冷えてしまうので急かした。
そして、リナルドが細剣を岩場に立てかけた瞬間。
「ガッ!」
まさかだが、背後から衝撃が襲いかかってきた。完全に油断していたリナルドは回避することなどできず、その一撃をくらってしまった。
何が起こったのかを理解するより早く水面が近づいてきて、見事に水面に津波を呼び寄せて沈むこととなる。
「ゴボッ! ゴホッ! ゴホッ! 何をなさるのですか、陛下!?」
「すまん。すまん! しっかし、お前が容易く不意打ちを受けるとはな」
温泉にいきなり叩き落されて、流石にもリナルドも不満をぶつけようとした。直ぐにパスクが謝るも、反省した様子もなく言葉を続けた。
そして、王はその意味するところを顎に手を当てわざとらしく考える。
「何を浮かれているんだ?」
既に内心では出ていたであろう答えを、パスクは意地悪く口にした。
「ッ! そ、それは……」
指摘を受けて言い淀むリナルド。気づかれているとは思ってもいなかったと言わんばかりに目を見開くも、ここで本音を言うわけにもいかなかった。
なにせ、久しぶりにこうして側に居られる。それに加えて裸の付き合いともなれば、少しぐらい気持ちが高ぶっても仕方ないというもの。
しかし、そのような邪な心根を打ち明けることなど不敬極まる。
「そうか。すまない」
口ごもっていると、なぜかパスクが謝ってきた。
そのようなことをさせてはいけないと思ったものも、直ぐに次のセリフが出てくる。
「生きて戻ってきたら褒美をやると言っていたことを、ついつい忘れていたな」
「は? あ、え、えっと、そのような約束もいたしておりましたね……」
パスクも温泉に浸かって、側に寄ってくる。リナルドはだいぶ戸惑いつつも、言われてみればと思い出した。
最愛の陛下との約束を忘れているとはなんたることか。
自分の愚かしさを呪い、さらにはどうしたものかと頭を悩ませる。
「それにつきましては、首都へ帰還してからゆっくりとッ」
「ここで決めろ」
「なッ!」
直ぐには思いつかないため保留にしようとしたところで、パスクが強行で無体な命令を下してきた。
流石に横暴だと抗議しようとするも、戦王たるそれとは違う威圧を放ってくる。
「い、今、ですか……?」
「あぁ、今だ。無理とは言わさんぞ」
「そ、そんな……えっと、しかし……」
「なんでも言ってみろ。俺が約束を違えたことなんてないだろ?」
どちらかと言えば、威圧感以上に迫ってくるパスクの体と顔に気圧されてしまったが。
隆々とした腕がリナルドの顔の横を通り過ぎ、温泉の岩と挟み込むように逃げ場を封じてくる。一気に跳ね上がる鼓動。
胸の高鳴りが聞こえてしまうのではないかとリナルドは不安になった。
「で、では……」
なんとか言葉を絞り出して、心臓がドラムを鳴らしているのをなんとか誤魔化そうとした。
いや、これから吐き出そうとしているセリフを思えば今の脈動などマキシの怒鳴り声と小鳥の囀りほど違ってくる。
それの加えて、まるで鼓動を聞こうとしているかのようにパスクの顔が、顔同士くっつきそうになるぐらい近づいてくる。
もはや全身の火照りが、のぼせたせいか興奮のせいかわからない。
もはや自分でもその行動が正しいのかわからないまま、リナルドは一言謝罪してから動く。
「陛下! 不敬をお許しください!」
言い終わると同時に、パスクの首に腕を回して抱きついた。勢いのままお湯に沈み、口をつないで呼吸を確保する。
確保できただろうか。
2人は抱き合ったまま、静かに口づけを交わす。拒絶されることもなく、パスクの方から舌を絡めてきたことには驚いた。
けれど、どこかでそれが当然だという感じがしていた。
2人の髪は解けるようになびき、そして気持ちを通じ合わせるように絡まる。リナルドがリナルドとして、パスクアーレと初めて結ばれた瞬間だ。
「んん……」
「ぅん……」
一分はそうしていただろうか。タイミングを合わせて水面へと上がった。
「プハッ!」「はぁ、はぁ……」
一度息を整え直したところで、少し見つめ合っただけで理解し合った。
「チュッ」
「んちゅぅ~」
再び口づけして、舌と舌を重ね合わせて同時に吸い合う。口内に残ったお湯を飲み干すと、次にはこれでもかとヨダレが溢れ出てきた。
それすらも枯らす勢いで舐め合い、そしてネチョネチョといやらしく音を立て舌を絡める。
下腹部にぶつかる熱く硬い剛直を意識したところで、唾液を舌に乗せながら少しずつ口を離した。
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