ホラー短編集【キグルミ】

AAKI

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4篇目タイトル【蘇生の回廊】

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「細かけぇな。こんなのは適当に並べて、肉の合間に食えば良いんだよ」
「あっ」

 順番に焼いていきたい几帳面なタイプに対して、豪快派の行雄の邪魔が入る。皿からヒョイヒョイと野菜を掴んでは、戸惑っている間に熱された網の上に置いていく。
 肉にも菜箸が伸び、ジュゥと食材たちのコラボレーションが始まった。それぐらいになると、お酒の力もあってかおかしなテンションで別荘での奇妙な恐怖はどこかへいってしまっていた。
 2時間も経ったかどうかという頃。

「あー、もう食べられない」
「ヒィック……もう後はただの焼き肉だな」
「うっぷ……」
「また太っちゃうぅ」
「食べました、食べました」
「片付けする気力も出ないくらい満腹です」

 皆は満足したことを報告する。
 残った食材は別荘の台所でも焼けるので持ち帰るとして、片付けは消化がある程度終わってからになった。ゴミも、地元から文句が出ては次の機会がないと考えしっかり回収。
 片付けや洗い物が終わったのは4時を過ぎたくらいである。

「さぁて、戻るぞー、ひぃく」

 酔っ払った行雄はほとんど役に立たなかったが、気前よく重い荷物を持って、何度も転びそうになりながらも別荘まで戻ってくれた。今度は腹が重たくはなったものの持ち上げる荷物は軽くなり、皆で少しずつ抱えながら細い道をゆく。
 帰ってからもすぐに休めるというわけではない。

「放っておくと金網にこびりついたままになるのでつけ置きにしてください。重曹も用意してきました」
「えぇ、わざわざ洗う必要あるんです? 捨てれば良いじゃないですか」

 奈々が余計な指示を飛ばしてきたため、淳平も面倒くさいと遠回しに訴える。肉の油と煤で銀から黒へと変わった網を再び使う機会などあるとは思えなかったのだ。
 しかし、奈々は軍手をはめた手でコゲの塊を押し付けてくる。

「はいっ。お皿洗いは任せてください」

 ムスッとした表情でそう言うと、さっさと空いたお皿などを洗い始めてしまう。

「……まぁ、ここまで準備されたら」

 怒らせてしまったように感じた淳平は、文句を言うのを諦めて掃除を担当する。重曹まで用意してくる知識の豊富さには感心した。
 バーベキューのコンロも、灰こそ地面に捨ててしまうがこびりついた煤は重曹と水で相当の汚れを落とせる。ブラシなどを用意してこないことを見越して準備してくる先見もすごいと淳平は思った。

「そろそろつけ置きは良いっしょ。ここはオレにまかせて金網の方頼む」
「え。あぁ、そうさせてもらうよ」
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