ホラー短編集【キグルミ】

AAKI

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4篇目タイトル【蘇生の回廊】

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 ――どこで出会ったか覚えてますか?



 夏休みに入る一週間ほど前のことだった。大学の卒業旅行なんてものは漫画とかの中の幻想だと思って期待していなかった。
 それでも案が仲間内から持ち上がったのは、奇跡みたいなものだと桑名くわな 淳平じゅんぺいは思った。

「知り合いが避暑地に別荘を買ったんだけど、使う機会が先になりそうだからってオレへ勧めてくれたんだよ」

 高橋たかはし 行雄ゆきおは話を持ち出した理由をそう説明する。彼は淳平の所属する歴史研究サークルのリーダー的存在で、こうして様々な面でメンバーを引っ張ってくれている。
 人付き合いが得意で人脈も豊富らしく、何か大掛かりな提案をするのは大抵行雄だ。肌黒く大柄な体つきは高校までバスケ部に所属して培ったものらしい。文化系のサークルには不似合いな角刈りの不良めいた人物である。

「へぇ、それで卒業旅行しにキャンプってわけ」

 行雄の言葉に真っ先に反応したのは、これまた歴史研究サークルには不釣り合いな金髪の女性。彼のガールフレンドで富樫とがし 恵理えりという。カップルともに陰気キャラの淳平とはまったく真逆の者達。
 趣味や目的などそれぞれなので誰もとやかくは言わないが。

「そういうのアタシにだけでも先に教えてくれれば良いのにぃ」

 恵理が知らなかったということは、残るメンツ4人が唖然としているように、驚かせようとしていた魂胆がわかる。予定を立てるのに早い段階から教えておいて欲しかったという文句はあるが、夏休みは長い。
 幸いにも、8月の初めには皆して予定がなかったため日取りが決定する。

『20○○年8月5日から7日までの2泊3日を予定。
 場所は信州の避暑地N県にある高橋の知り合いの別荘。
 5日の08:00に△△駅集合、11:00過ぎ▲▲駅着、ちょっとした山道を10分ほど徒歩で進むため服装には注意されたし』
「ん~」

 淳平はスマートフォンに着信したそんな文面を眺め、大学最後にきたひと夏の思い出に期待を馳せていた。
 なにせ、この20と数年は浮いた話もなくやってきたのである。サークル内でも陰キャ(陰気キャラの略)ながら人付き合いは上手くできていたと思う。
 男女3人ずつなのでそれなりにチャンスはある。そう自負していたのだ。

「準備もオッケー。替えのメガネもコンタクトも大丈夫と」
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