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Menue2-5
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白熱した会議で疲弊し焼き付いた場を、たった一枚のピザがアンジェラを含めて解し再結集させしまう。それはまるで、様々な食材を一個の世界観にまとめることのできるピザ。
「まぁ、空腹には敵わんというわけですな」
次に流れを理解したのは、顔立ちこそ他の兄妹に似ているが冷静な目をした男だ。長男ピーターであり、その冷静沈着な瞳に最凶の知性を秘めている。
そんなピーターがピザを手にとって食べ始めたので、他の兄妹も何も言えず各々が手に取る。
「では、ご堪能ください」
鼻息を吐いて、エポナは満足げに言うのだった。
持ち上げるだけでドロリと垂れる生地と、滴り糸を引くプロセスチーズ。それらは乙女の柔肌の感触を思わせ、流れ出る雫のように思える。
こう説明すると食欲を無くしそうなのでほどほどにして、各食材ごとの評を見ていこう。
まずシンプルにサラミとトマト。
「なんというか、暴力的だな。いや、不味くはないんだけどよ」
「チーズとトマトが合うのに、さらに肉とトマトも手をつないでいて、美味しいの嵐が……!」
カポネとトーリオの評価は上々で、彼らの口内で味覚の三合会が手を取り合い仲良くゴールを決めた。
続いてはオバニオンが食べているジャガイモと卵のスペースで、もったりとした食感と格闘している。
「ジャガイモと茹で卵か。凄いボリュームだ。後、マヨネーズかこれは?」
オバニオンは童顔をハムスターのように膨らませて、モゴモゴと言った。なんだかんだで手のひらサイズはあるであろう1ピースを平らげた。
サラミ・アンド・トマトもだが、ピザというのはカロリーの塊である。
「男どもが顔を突き合わせてるんだ。ピッツァのようなお高く止まったものじゃ満足できないだろ」
だが、それが良い。時には、こうした不健康なものを楽しむのも良いではないか。
「そうだな。いやぁ、悪くないな。淡白な2つの素材をマヨネーズががっちり掴んで離さない」
オバニオンは納得したように答えた。どいつもこいつも素直に褒めないなと、エポナは内心で呆れる。
特に、ジェンナ兄妹などどうだ。
「……」「……」
長男ピーターと次男サムは、冷ややかな目をしながらも度々うなずいている。貝とピーマン、玉ねぎのピースをお気に召したようだ。
「んん、ん、うん」
言葉こそ無いが、三男ジェームズは貝の不思議な食感に舌鼓を打っている。
「いや、これは。うーん、しかし……」
四男トニーは、それぞれを少しずつ分けてもらって食べ比べのようである。認めたくはないが、それでも本能は正直だと言ったところか。
その奇妙なせめぎ合いは見ていてい滑稽で、ニヤけてしまうのを堪えるのが大変だった。。
「ケッ」
態度は悪いものの、なんだかんだで1ピースをペロッと食べ終えて2つ目に手を伸ばしているあたり、五男マイクもなんだかんだで気に入っているらしかった。
「むぅ~ッ! どれも選び難いね! あぁぁぁぁぁッ!」
そんな中で、3種類を交互に貪り人一倍喜んでいるのが末子アンジェラ。奇声まで発して食べる様はいささか怖い。
それでも喜んで食べてくれるのは嬉しいわけで、エポナはちょっと表情を綻ばせて見つめる。すると、アンジェラも視線に気づいて見てくるのだ。
「エポナだっけ? イヤリングとかもだけど、女みたいだね」
女性のアンジェラにそう評されるのだから、どことなく雰囲気を出してしまっていたのだろう。しかし、ここまで欺いてきてバレるわけにもいかなかった。
エポナはなんとか誤魔化そうとして口を開く。
「女っぽくて悪いかよ」
「ヒュッヒュヒュ。そうは言わない、というかそうだったら良かったなぁって」
エポナが少し威嚇するように言うと、アンジェラから思わぬ返事がきて拍子抜けしてしまった。
「こんな美味しいご飯を作れるなら、友達になりたかったんだけどね。いや、別に男でも良いからお友達になろうよ」
続く言葉もあっけらかんとしており、エポナはさらに言葉が出なくなる。
「お前……友達は選べって。そいつは人参頭だぞ?」
率先してそれを気にするのはマイクだった。見た目を馬鹿にするという、最もやってはいけない忠告まで入れて。
友達申請してくれているアンジェラの前でなければ、彼女の兄であってもこの場で殴り飛ばしていたかもしれない。
「クヒュヒュッ。マイクにーちゃん、そりゃケチってもんだよ。裏通りのおばさんがやってるお店ぐらいケチくさいよ」
「ぐぬ。あそこと比べるかよ……」
「え、あそこってそんなにケチなのか? あぁ、いや、続けてくれ」
アンジェラの指摘に、マイクとエポナは別々の反応を示した。直ぐに気を取り直すも、奇妙な視線を受ける羽目にはなった。
近場にある小売店なので行く予定だったのだが、店員の態度が悪いなら考えものである。妹の方が何かと立場が強いようで、マイクも引き下がらざるを得ないらしい。
「チッ……アンジェラが言うなら仕方ねぇ。けどな、妹に手ぇ出してみろ!」
「お、おう……」
妹思いと言うべきか、手を出せばどうなるかぐらい言われずともわかっていた。
「当然だ。私だって顔の穴を増やされたくはないからな」
毎度の同じようにエポナは両手を上げて、聖書に手を添えて宣誓したい気持ちで答えた。
「まぁ、空腹には敵わんというわけですな」
次に流れを理解したのは、顔立ちこそ他の兄妹に似ているが冷静な目をした男だ。長男ピーターであり、その冷静沈着な瞳に最凶の知性を秘めている。
そんなピーターがピザを手にとって食べ始めたので、他の兄妹も何も言えず各々が手に取る。
「では、ご堪能ください」
鼻息を吐いて、エポナは満足げに言うのだった。
持ち上げるだけでドロリと垂れる生地と、滴り糸を引くプロセスチーズ。それらは乙女の柔肌の感触を思わせ、流れ出る雫のように思える。
こう説明すると食欲を無くしそうなのでほどほどにして、各食材ごとの評を見ていこう。
まずシンプルにサラミとトマト。
「なんというか、暴力的だな。いや、不味くはないんだけどよ」
「チーズとトマトが合うのに、さらに肉とトマトも手をつないでいて、美味しいの嵐が……!」
カポネとトーリオの評価は上々で、彼らの口内で味覚の三合会が手を取り合い仲良くゴールを決めた。
続いてはオバニオンが食べているジャガイモと卵のスペースで、もったりとした食感と格闘している。
「ジャガイモと茹で卵か。凄いボリュームだ。後、マヨネーズかこれは?」
オバニオンは童顔をハムスターのように膨らませて、モゴモゴと言った。なんだかんだで手のひらサイズはあるであろう1ピースを平らげた。
サラミ・アンド・トマトもだが、ピザというのはカロリーの塊である。
「男どもが顔を突き合わせてるんだ。ピッツァのようなお高く止まったものじゃ満足できないだろ」
だが、それが良い。時には、こうした不健康なものを楽しむのも良いではないか。
「そうだな。いやぁ、悪くないな。淡白な2つの素材をマヨネーズががっちり掴んで離さない」
オバニオンは納得したように答えた。どいつもこいつも素直に褒めないなと、エポナは内心で呆れる。
特に、ジェンナ兄妹などどうだ。
「……」「……」
長男ピーターと次男サムは、冷ややかな目をしながらも度々うなずいている。貝とピーマン、玉ねぎのピースをお気に召したようだ。
「んん、ん、うん」
言葉こそ無いが、三男ジェームズは貝の不思議な食感に舌鼓を打っている。
「いや、これは。うーん、しかし……」
四男トニーは、それぞれを少しずつ分けてもらって食べ比べのようである。認めたくはないが、それでも本能は正直だと言ったところか。
その奇妙なせめぎ合いは見ていてい滑稽で、ニヤけてしまうのを堪えるのが大変だった。。
「ケッ」
態度は悪いものの、なんだかんだで1ピースをペロッと食べ終えて2つ目に手を伸ばしているあたり、五男マイクもなんだかんだで気に入っているらしかった。
「むぅ~ッ! どれも選び難いね! あぁぁぁぁぁッ!」
そんな中で、3種類を交互に貪り人一倍喜んでいるのが末子アンジェラ。奇声まで発して食べる様はいささか怖い。
それでも喜んで食べてくれるのは嬉しいわけで、エポナはちょっと表情を綻ばせて見つめる。すると、アンジェラも視線に気づいて見てくるのだ。
「エポナだっけ? イヤリングとかもだけど、女みたいだね」
女性のアンジェラにそう評されるのだから、どことなく雰囲気を出してしまっていたのだろう。しかし、ここまで欺いてきてバレるわけにもいかなかった。
エポナはなんとか誤魔化そうとして口を開く。
「女っぽくて悪いかよ」
「ヒュッヒュヒュ。そうは言わない、というかそうだったら良かったなぁって」
エポナが少し威嚇するように言うと、アンジェラから思わぬ返事がきて拍子抜けしてしまった。
「こんな美味しいご飯を作れるなら、友達になりたかったんだけどね。いや、別に男でも良いからお友達になろうよ」
続く言葉もあっけらかんとしており、エポナはさらに言葉が出なくなる。
「お前……友達は選べって。そいつは人参頭だぞ?」
率先してそれを気にするのはマイクだった。見た目を馬鹿にするという、最もやってはいけない忠告まで入れて。
友達申請してくれているアンジェラの前でなければ、彼女の兄であってもこの場で殴り飛ばしていたかもしれない。
「クヒュヒュッ。マイクにーちゃん、そりゃケチってもんだよ。裏通りのおばさんがやってるお店ぐらいケチくさいよ」
「ぐぬ。あそこと比べるかよ……」
「え、あそこってそんなにケチなのか? あぁ、いや、続けてくれ」
アンジェラの指摘に、マイクとエポナは別々の反応を示した。直ぐに気を取り直すも、奇妙な視線を受ける羽目にはなった。
近場にある小売店なので行く予定だったのだが、店員の態度が悪いなら考えものである。妹の方が何かと立場が強いようで、マイクも引き下がらざるを得ないらしい。
「チッ……アンジェラが言うなら仕方ねぇ。けどな、妹に手ぇ出してみろ!」
「お、おう……」
妹思いと言うべきか、手を出せばどうなるかぐらい言われずともわかっていた。
「当然だ。私だって顔の穴を増やされたくはないからな」
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