18 / 18
最終 最後くらいは真面目にお別れしましょうか。
しおりを挟む
少しばかり怒られ、出版社の方に連絡はされたものの、真清は無事に“バステズ”から出て戻ってこれた。
建前的なお説教を編集長からくらったことを除けば、特に問題なく記事の執筆に移れたのは“バステズ”の彼女たちの知らぬところだろう。
ちなみに、不思議な体験については伏せることにした。
「こいつはぁ、なかなかセンセーショナルな記事じゃねぇか!」
「ありがとうございます。大変だった分に見合うだけの収穫はあったと思います」
記事を見た編集長は手放しに喜んだ。真清も、いくらかの文句は飲み込んで満足して見せた。
しかし、これでまたおかしな仕事を押し付けられるのは決まったようなものである。
「やっぱり頼んで正解だったぜ。次も頼むぜ」
「いやぁ、できれば遠慮したいところです……」
案の定そう言ってくるので、苦笑いを浮かべて逃げ出す彼女。言っても聞かないのがこの編集長だと思うが。
いずれにせよ、お互いの忙しさゆえに半端な連絡しかできていなかった知り合いにも報告して置かなければならない。そしてちょうど、向こう側から連絡がくる。
『そっちの様子はどうだ?(既読)』
なんとかこっちも片付いた。(既読)』
無事のようだ。
『こっちは大丈夫です。(既読)
お陰様で良い記事が書けました。(既読)
ありがとうございます。(既読)』
当たり障りのない答えを返しておいた。当然、何をしていたかは聞かない。どうせ教えてくれないだろうから。
それでもなんとなく危ない橋を渡っているのだとはわかっている。
『ならもう連絡しなくて良いな。(既読)』
いつもと変わらず冷たい反応だが、それで傷ついたり呆れたりするほど付き合いが短いわけではない。
『そんなこと言わないでくださいよ。(既読)
私たちの仲ではありませんか。(既読)
今度、時間があったら一緒にお食事などどうです?(既読)』
真清は誰かと仕事完了の気持ちを分かち合いたいと思い、知り合いをそうやって誘った。
少しばかり意表を突くセリフだったのか、彼から返信がくるまでに十分を要する。
『珍しいことを言うじゃないか。(既読)
お前と飯を食べるぐらいなら豚小屋の臭い飯のがマシだな。(既読)
老婆心ってやつだがもっと良いヤツを誘え。(既読)』
冷たくあしらおうとしているのかそれとも気遣っているのか、良くわからない言葉を跳ね返してくる。ならばこちらも受け止めるだけだ。
『私だってたまには酔狂なことを言う日だってありますよ。(既読)
美味しい居酒屋を編集長に教えてもらったので。(既読)
ね?(既読)』
いつもいつも、おかしなことを言って飽きられているのは彼女の方だというのに。今日はいつになく真面目で、誰かと一緒にいたいと思ってしまう。
『分かった。(既読)』
彼も真清の気持ちを察してか、短く返事をしてくれた。彼女は、友から受け取った を手にして目的地へと向かった。
まさかフランスから戻ってくるのを待たなければならないとは思わなかったが。
建前的なお説教を編集長からくらったことを除けば、特に問題なく記事の執筆に移れたのは“バステズ”の彼女たちの知らぬところだろう。
ちなみに、不思議な体験については伏せることにした。
「こいつはぁ、なかなかセンセーショナルな記事じゃねぇか!」
「ありがとうございます。大変だった分に見合うだけの収穫はあったと思います」
記事を見た編集長は手放しに喜んだ。真清も、いくらかの文句は飲み込んで満足して見せた。
しかし、これでまたおかしな仕事を押し付けられるのは決まったようなものである。
「やっぱり頼んで正解だったぜ。次も頼むぜ」
「いやぁ、できれば遠慮したいところです……」
案の定そう言ってくるので、苦笑いを浮かべて逃げ出す彼女。言っても聞かないのがこの編集長だと思うが。
いずれにせよ、お互いの忙しさゆえに半端な連絡しかできていなかった知り合いにも報告して置かなければならない。そしてちょうど、向こう側から連絡がくる。
『そっちの様子はどうだ?(既読)』
なんとかこっちも片付いた。(既読)』
無事のようだ。
『こっちは大丈夫です。(既読)
お陰様で良い記事が書けました。(既読)
ありがとうございます。(既読)』
当たり障りのない答えを返しておいた。当然、何をしていたかは聞かない。どうせ教えてくれないだろうから。
それでもなんとなく危ない橋を渡っているのだとはわかっている。
『ならもう連絡しなくて良いな。(既読)』
いつもと変わらず冷たい反応だが、それで傷ついたり呆れたりするほど付き合いが短いわけではない。
『そんなこと言わないでくださいよ。(既読)
私たちの仲ではありませんか。(既読)
今度、時間があったら一緒にお食事などどうです?(既読)』
真清は誰かと仕事完了の気持ちを分かち合いたいと思い、知り合いをそうやって誘った。
少しばかり意表を突くセリフだったのか、彼から返信がくるまでに十分を要する。
『珍しいことを言うじゃないか。(既読)
お前と飯を食べるぐらいなら豚小屋の臭い飯のがマシだな。(既読)
老婆心ってやつだがもっと良いヤツを誘え。(既読)』
冷たくあしらおうとしているのかそれとも気遣っているのか、良くわからない言葉を跳ね返してくる。ならばこちらも受け止めるだけだ。
『私だってたまには酔狂なことを言う日だってありますよ。(既読)
美味しい居酒屋を編集長に教えてもらったので。(既読)
ね?(既読)』
いつもいつも、おかしなことを言って飽きられているのは彼女の方だというのに。今日はいつになく真面目で、誰かと一緒にいたいと思ってしまう。
『分かった。(既読)』
彼も真清の気持ちを察してか、短く返事をしてくれた。彼女は、友から受け取った を手にして目的地へと向かった。
まさかフランスから戻ってくるのを待たなければならないとは思わなかったが。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる