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14話目・どうせ聞きかじりの知識だろうって? ち、違いますよ!? そりゃ知識は他所から仕入れますけど、問題はどう使うかで…

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「街のことなら」
「記念館ですね」

 そんなところに情報があるのかと思うかもしれないが、区役所、学校、記念館の3箇所は街を作りの発起人たちが運営している。ならば、それらは利権の場であり繋がりがあるはずなのだ。
 その上で大した貴重品もなく、警備が手薄なところといえばそこだろう。

「少し遠いけど、ここから北に行ったところだよ」
「分かりました。あまり時間もありませんし、急ぎましょう」

 二人はうなずき合って記念館に向かった。
 記念館の建物を内包する公園の時計が頂点を指すころ、なんとかトラブルもなく敷地を囲む柵の側に着いた。

「とりあえず、この扉以外に邪魔しそうなものはないよ」
「おっと。本当、神出鬼没ですね……。ワープしてるんです?」
「さあ?」

 走っている間はどこにも見当たらなかったというのに、気づけば側に出現している。そんなゲームで随伴ずいはんしてくるノンプレイヤーキャラクターの如き動きを、どう解釈して良いか迷う真清。聞いたところで、ミレイにもわからない様子だった。
 それでも、誰にも見つからず偵察できるのはこれとない利点である。

「こうも警備が薄いと予想を外しているように感じますねぇ」

 敷地内をコソコソと横断している間にも、静かな夜半に騒ぎが起こっている気配はどこにもなかった。とりあえず警戒は怠らずに建物へと近づいた。

「さてさて、表からが正解か裏口からが正解か」
「お姉さんの言ってたような機器はどこにも設置されたなかったよ。表からだと事務所に近づくのに時間がかかりそう」

 建物側面に張り付き侵入経路を確認していると、トイレの窓をコツコツと叩いてミレイが報告してくれた。

「ありがとうございます。では、裏口から」
「初めて来たけど、スゴく寂しいものだね。記念館ってこれで良いの?」

 まさか監視カメラの1台もなければ、鍵すら南京錠という低コストぶりに、本気で利権搾取の匂いを感じた。ミレイは街以外を知らないからか、正しい記念館の在り方を聞いてきた。

「まぁ、ものによりけりですね。出来立ての街ですからなんら歴史資料もないでしょうが、せめて箱物としてのガワくらいは整えて欲しいものです」

 正解はないと答える真清。利権としての出来の悪さに悪態をつける程度に余裕があった。
 そうしている間にも、既に解錠しておいた裏口から侵入し事務所へと向かう。そこまでは良かったものの、問題が発生する。

「金庫、ですか」
「だね。どうにかできる?」

 侵入前にミレイがその難題について教えなかったのは、ここまでがあっさりしていたからだろう。

「えーと、これが使えそうですね」

 キョロキョロと周囲を見渡した。
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