1500人の女に何が起こったのか

AAKI

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12話目・男社会で男がそういう広告とかを求めるから、女の子も売れる作品として作らないといけなくなるんです!

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「この街の五分ごぶくらいの人口はこんなもんだよ」

 以前に調べたところ、現在の“バステズ”は3万人ほどがいるとのことだ。そのうちの5%ならば1500人といったところだろう。

「なるほど。まずは……決して貧しい生活をしているという感じではなさそうですが?」

 真清は座布団もない畳の上に座りつつ、漫画家女性に妙なちぐはぐさについて聞いた。お金とは違う事情でこの人物は今の生活を甘受しなければならなくなっているのだと考えた。

「うん、確かに金銭面は贅沢こそできないけど問題ないよ」

 漫画家は服や髪を撫でて仕事着だという程度の主張をしてくる。

「私ら作家って仕事は、自由に作品を作ることもできないんだよ。下手すると、不名誉作家のレッテルを貼られる」

 一度話を始めると、後は少し突っつくだけであれこれと続けてくれる。真清は続けた。

「ほう。システムとしてはわかりませんが、検閲が入るって捉えても?」
「そこまでじゃないけど、そんなとこかな」

 要領を得ない回答ではあったものの、少なくとも今の作風を気に入っているという風ではなかった。コンビニでチラ見したことのある漫画の作者だった。

「真バステズ民が気に入らないものを書くと、それこそ炎上って勢いで叩かれるんだよ」
「あぁ、なるほど」

 起こる事実を伝えられて、真清も得心がいった。早い話、自主規制を強要される感じなのだろう。
 およそ作家と呼ばれる職業は“バステズ”の上位階級とか模範的な民衆に忖度しなければ続けられないのである。

「たまに抜き打ちで、そういうものを作ったりしてないか見にくることもある」

 真清が感じた通り、ここは心の牢獄だった。当然、当たり前の疑問をぶつける。

「外に出ていこうとかは考えないのですか?」

 それほどやりづらい環境であるなら、『オリク』から出て働けば良いだけなのだ。しかし、それも甘い考えだったようである。

「それも無理」

 短い否定だ。

「なぜ?」
「ここが表向きには駆け込み寺っていうのは知ってるでしょ? 私らは元々、外では生きづらくて逃げてきた女なのに、いまさらそんなことできるはずないでしょう」
「あ~……」

 端的に尋ねると、うっかり失念していた情報を再確認することになった。確かに、一度は逃げ出したところへ逃げても上手くいくという保証はない。
 怖気づいたら人というのは間違った選択をし続ける。

「せめて、このことを外に伝えようとは、いや、そうか……」
「そう。街がなくなったら困るというのは皆同じ。けど、誰かは何度も暴露しようとしたヤツもいた」

 自分から動かない理由はすぐに思いついた。さらに、ウワサにはなりつつも行政が動くまでにいたらない理由も。

「ここに逃げてきたとき、なにか精神的な検査をしましたね?」

 真清はネットに転がっている様々な与太話を思い出して漫画家女性に確認した。
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