1500人の女に何が起こったのか

AAKI

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10話目・だから私のことを過大評価しすぎなんですって! これだから男の子って自分勝手で困りますよ!

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「ミレイですか。よろしくお願いします、ミレイ君」
「ミレイで良いよ」
「そうですか」

 名前が決まったところで本題に移った。

「この地区を見てくれたからわかっていると思うけど、“バステズ”という街は楽園じゃないんだよ」
「あばら……お家の中もヒドい状態なんでしょうね」

 重々理解している点について二人は認識を示し合わせた。真清が問うとミレイも首を縦に振る。

「お姉さんはこのことを外に伝えてくれるんでしょ?」
「そのつもりですが、呼び出したということはもっと別の特ダネがあるんですよね?」
「お姉さんは記者の人?」
「知らずに声をかけたのですか。早すぎた埋葬並に気が早いですね」
「お姉さんが何を言っているかわからないけど、病院の窓から姿が見えたから」

 それなりに仲良くなれた気がしたが、選ばれた理由がシンプル過ぎて複雑な気分になった。幾度かの脱線を終えて本題に移る。

「特ダネかはさておき、お姉さんにはまだ見てもらいたいところはあるよ」

 ここまでの情報では記事にしても、街の外の人間はなんとなく気づいていることばかりだ。もっと確証のある取材ができなければ意味がない。
 ミレイの連れて行ってくれる場所は果たして確たる証拠が得られるのだろうか。
 案内されてたどり着いたのは集落を少し離れた場所にある建物。

「ここ」
「まーた、これは、昭和のボロアパートって感じのところのきましたね。今は令和ですよ」
「おばさん臭い感想ありがとう」
「大丈夫ですよ。体は若いですから」
「そこは心は若いって言いたいところだよね。まぁ、行こうよ」

 などというやり取りをしながらも、コソコソとギシギシ響く階段を踏みしめて中へと入っていく。もはや隠れて進む方が怪しまれるくらいである。
 何かを知っているようで、ミレイも同意見のようだ。

「見つかっても通報されたりしないよ」
「そうですか」
「たぶん」
「たぶんですか……」

 お互いに頼りない。
 それでも、ミレイを信じて堂々と歩き始める。階段を上がりきった先は、薄暗い通路の左右に幾つかの扉が並ぶ。窓のない白熱電球だけが微かに灯る廊下は新聞紙や雑誌の束、ゴミ袋などで埋まっている。
 なんとかかき分けて進む。
 しかし、こんなボロアパートに案内してどうしようというのだろう。どうするか悩みあぐねている間に、ミレイは適当な扉をノックしてしまった。

「えぇぇ、何やってるんです!?」

 いくら通報されないとしても、用件もなく訪ねてどうするというのだろう。
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