死亡フラグを折る前に

寿 退社

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死亡フラグを折る前に

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 残念ながら、俺は明日死ぬらしい。享年は27歳。
 まあ兵士という職業だから、どの戦場に行く時も、今日死ぬかもしれないと思ってたし、こういう通達が来るってことも予想していなかったわけじゃない。
 『単独特攻命令』。
 それが人類軍のトップから俺に与えられた命令だった。
 どうやら、最近成績が落ちてきてしまった俺を人類軍は早々に見限ったのか、最後の花を咲かせてこいということだった。

 こんな命令、逃げられるものなら逃げたい。
 でもこれは人類・・からの命令だ。
 国と国の戦争なら最悪、他の国に亡命するとかいう手も取れたのかもしれない。
 でも、人類と人工知能・・・・が戦争をしているこの世界に、亡命先なんてあるはずもなかった。
 まさか体を捨てて、人工知能になるわけにもいかないしな。
 だって体を失ったら、この世で一番愛している人を抱けなくなっちまうだろ?

「さっきから……何をブツブツ言ってるの、シュウジ。 明日のシミュレート?」

 さっきまで俺の隣でスヤスヤと寝てたはずの美しい女性が、目元をこすりながら体を起こす。
 光沢のある紫色の長髪、豊満すぎるバスト、そして口元のほくろが特徴的な、まさに妖艶という言葉がぴったりの、俺が世界で一番愛している女性だ。
 名前を『キリヤ レイカ』という。

「まさか。『大量の爆弾持って人工知能の兵器工場に一人で突っ込め』とかいう猿でも思いつきそうな作戦に、何をシミュレートする必要があるっていうんだよ」

「じゃあ、最後に私に贈る歌の歌詞でも考えてたとか」

「戦うしか脳のない俺にそんな粋なことはできないよ。できるとしたら――」

 俺がレイカさんの髪を上にかきあげると、レイカさんは、くすっと笑いながら、目を瞑る。
 俺は、レイカさんの綺麗なおでこに口づけをした。
 
「こうやって、不格好にキスするぐらい」

「全然不格好じゃなかったわよ。シュウジ」

「そりゃどーも、レイカさん」

 俺とレイカさんはお互いを見つめながら、どちらからともなく微笑み合った。

 俺はレイカさんのことを『レイカさん・・』なんて呼び方をしているが、俺達はすでに婚姻届も提出している正真正銘の夫婦だ。
 なので、俺の名前も同じ名字の『キリヤ シュウジ』という。
 ちなみに、何故『レイカさん・・』なんて呼び方をしているのかというと、レイカさんの方が俺よりも3歳年上かつ、とても大人な女性なので、結婚したからといって呼び捨てにもできず、結局出会った頃の名残で『レイカさん』と呼んでいる。

「さて、じゃあ早速朝ごはんを作りましょうか……」

 レイカさんがベッドから出ていこうとしたが、まだベッドでイチャイチャしたいと思った俺は、下着一枚身につけていない、生肌のレイカさんに後ろからしがみついた。

「ちょ、ちょっと。動けないわ」

「いかないでーレイカさーん!! 俺とベッドでダラダラゴロゴロしようぜー!!!」

「だーめ。昨日からずっとゴロゴロしっぱなしじゃない。本当にダメ人間になっちゃうわ」

「と、言いながらも俺に抱きつかれたレイカさんは、ベッドから出る素振りを一切見せないのだった」

「もう……」

 俺は冗談で言ったつもりだったんだけど、レイカさんは笑うどころか、むしろ顔を俯かせる。

「私が……シュウジの腕を振り解けるわけ、ないじゃない……」

 レイカさんの声が少しだけ震える。
 もう、レイカさんは、すぐ感傷的になっちゃうんだから。
 
「ほーら、レイカさん。昨日約束したこと忘れちゃったの?」

 俺は、レイカさんの頭をポンポンと叩く。

 特攻命令が俺に下った日から一週間、涙がもう枯れてしまうんじゃないかと思うぐらいレイカさんは毎日毎日泣いていた。
 レイカさんが泣きすぎるから、当の本人である俺が泣きそびれてしまったくらいだ。

 でも、そんなのが二人の最後だなんて悲しすぎるから。
 俺と過ごした最後の日の思い出が、レイカさんにとってただの悲しい日になるなんて絶対に嫌だから。

 だから、俺とレイカさんは約束したんだ――

 最後の日は普段通りに過ごそうって。

「ということで、いつも通り、レイカさんの大きなおっぱいが硬くなってないかチェックさせていただきますっっ!!」

「ふぇ……あ、ちょっ、シュウジっ……。いつも通りって、そんなのやったことないじゃなっっ……んっっ!!」

「おほほ……最近のレイカさんは、何でもやらせてくれるからねぇ……こんなチャンス滅多にないぜ」

 俺の両手が、レイカさん豊満なバストを後ろから鷲掴みにして、こねくり回す。
 スイカみたいな大きさの乳房が、俺の手の中で暴れまわり、レイカさんが悩ましい声をあげ始めた。

「ば、ばかぁっ……んんっ……」

「おほぉ……今日も柔らけぇ……。 このおっぱいを揉むために、毎日毎日戦ってきたんだなぁ……俺……」

「シュウジっ……んぁっっ……だ、だめっ……そ、そんなに強く揉んだらっ……」

「これが気持ちいいくせに、レイカさんはすぐ嘘つくんだから。ほら、素直になって」

 俺は乳を揉む手を、さらに激しく動かす。
 乳肉を手のひらで押し潰したり、そのままグリグリと揺すったり、逆にぎゅっと絞ったり、するとレイカさんの声がどんどん悩ましく、妖艶なものに変わっていく。

「ううっ……いいっ……いいわっっ……シュウジっっ……もっと、もっと強くっっ……おっぱいがちぎれちゃうくらいもんでぇっ……」

「俺がレイカさんを傷つけるなんて、あり得ないよっ……でも、レイカさんのことをイカせることはできる」

 レイカさんのおっぱいを両手でぎゅっと握りつぶす。
 普段の強気な姿からは想像もできなかったんだけれど、実はレイカさんはドMってやつで、ちょっと痛いぐらいが、レイカさんのお好みだ。

「んんんっっっ!! だ、だめっ、おっぱい潰しちゃぁっ……」

 フェロモンも肉感もたっぷりのレイカさんの体が、クネクネと媚びるように体を揺らす。
 これはレイカさんの体がさらなる刺激を求めている証拠だ。
 俺はレイカさんの乳首をぎゅっと指で摘むと、そのままぐにぐにとすり潰した。

「ああっっっっ!! だめっ!! それっっ!! 乳首イッちゃうっっ!!」

「ほんと乳首が弱いなぁレイカさん。すーぐイッちゃうんだから」

「シュウジっっ!! だ、だめっっ!! あ、ああんっっ!! イクッッッッ!!!!」

 俺が乳首をぎゅっと引っ張ると、お乳を伸ばしたレイカさんが、俺の腕の中で見事に絶頂する。
 俺は、ガクガクと震える、レイカさんの体をぎゅっと抱きしめた。
 
「あっっっ……あっっ……っっ……」

「可愛いよレイカさん……。レイカさんのイッてる姿は、最高に俺を滾らせる……」

 俺は、腰を動かして、レイカさんのお尻に屹立した肉棒を擦りつける。
 安産型で肉厚なレイカさんの尻たぶの感触を、硬直した肉棒で味わう。

「シュウジ……」

「レイカさんっ……」

 レイカさんと唇を重ね、ベッドに仰向けで寝転ばせると、俺はレイカさんに股を開かせた。

「きてっ……シュウジっっ……」

「レイカさんっっっ!!!」

 俺はイキりたった肉棒を、レイカさんの股の奥に挿入した。
 もちろん避妊具は一切着けず、直接粘膜と粘膜を擦り合わせる。

「んっ……くうっっ……シュウジのおっきいっ……」

「レイカさんのいやらしい姿を見たら、どんな男だってバカみたいにチンポ膨らますさっっ」

 おっぱいを揉まれ、欲情していたからだろう、レイカさんの膣の中はひどく熱かった。
 レイカさんの膣壁が俺の肉棒に絡みついて来るのが分かり、それがたまらなく気持ち良い。
 俺は、レイカさんの最奥まで辿りつくと、一心不乱に腰を振った。
 
「レイカさんっっっ!! レイカさんっっっ!!!!」

「んんっっっっ!! ああっっっっ!!! ああんっっっっ!!!」

 レイカさんのくびれのある腰を、指が食い込むほど掴み、レイカさんに腰をぶつける。
 ぎゅうぎゅう通せんぼしようとしてくる膣壁を、熱く滾った肉棒で押し返す。

「ああっっ!! 素敵だわっっ!!! シュウジの、すごく逞しいわっっっ!! こ、こんなに激しく抱かれたら私、すぐにっっ!!」

「だめだよっ、レイカさん。レイカさんは俺と一緒にイクんだ。勝手にイクことは許さないからねっ」

「そ、そんなっっ! でもっ、こんなに激しくされたらっっ!!」

「我慢だよっっっっ!!!」

 俺は間髪入れずに、レイカさんに腰を叩き込む。
 レイカさんの膣穴から膣液が飛び散り、腰のぶつかり合う音が響く。

「あああああっっっっ!!!」

 レイカさんが体を弓なりに仰け反らせる。
 ドMのレイカさんにとっては、我慢することも、一種のプレイなのだ。

「イグっ……イギだいっっ……イカせてっっっ……」

「じゃあ、しっかりとイキんで、俺をイカせないとっっ!! ほらっっ!! 自分が感じてばっかじゃ、俺のことイカセられないよっっ!!!」

 俺は全身の筋肉を軋ませ、猛然と腰を振った。
 それこそ、レイカさんの膣が壊れてしまいそうなほどの勢いで。
 
「あっっっっ……あっっっっ……だめっっっっ……ほんとにだめっっっイクっっっ……イクイクイクイクっっっ…イクッッッッッ!!!!」

 レイカさんがイク瞬間、俺は腰をぐっと突き出すと、レイカさんの子宮口を肉棒で押しつぶした。 

「ひゃあああああああああ!!!!」

 レイカさんが体をガクガクと痙攣させる。
 全身の痙攣にあわせ、肉棒を潰そうとする勢いで膣壁が蠢く。
 この絶頂時の締付けこそが、レイカさんの真骨頂だ。

「ふう……きたきたぁ……レイカさんの絶頂おまんこ。これが、最高にキツキツで気持ちいいんだよ。よーし、いただきます」

 レイカさんの絶頂おまんこに向けて、もう一度ピストンを再開する。
 絶頂の余韻に浸ってるレイカさんを完全に無視して、乱暴に腰を打ちつける。

「あっっっ……うっっっ……まってっっ……いま、イッたばかりなのっっ」 

「一人でイッちゃうレイカさんにはお仕置きだよっっっ!!!」

「んっっ! あっっ!! ああああんっっっっっっ!!!」

 俺が腰を打つたびに、大きくだぶつくレイカさんの胸を見ながら、射精感の高まりを感じる。
 レイカさんの煽情的で濃艶な体を、貪り尽くす。

「レイカさんっっ!! レイカさんっっっっ!!!! このエロボディに、精子吐き出すよっっっっ!!!!! レイカさんの子宮に俺の精子ぶち撒けるよっっっっ!!!」

「出してっっっ!! シュウジの精子っっっ!! 私の中に出してぇっっっ!!!」

「うおおおおおおおっっっっっ!!!!!」

 俺はレイカさんの子宮口に肉棒をぐっと押し付けると、そのまま容赦なく精子を吐き出した。
 全ての精子が子宮に入っていくように。
 一滴も逆流しないように。
 レイカさんの卵子を自分のものにするために。
 レイカさんが俺の子を孕んでくれるように――

 俺はレイカさんの子宮へ、精子を吐き続けた。





「はぁ……はぁ……やっぱり……朝は元気ね……」

「なにおう。俺のチンポは夜だって元気モリモリだぞう」

「ふふっ。どうかしら……。休日は、いっつも朝からえっちしすぎて、夜、ふにゃふにゃになってる気がするけど……?」

「ぐぬっ……。レイカさんのフェロモンがムンムンだからいけないんだよっっ。俺をこのおっぱいとお尻で誘惑してくるからっ」
 
 俺はレイカさんの胸とお尻を、手でまさぐろうとする。
 しかし、俺の手はレイカさんにぺちっと叩かれ、あしらわれてしまった。

「だーめ。起きて、ご飯にしましょ?  今日は美味しい朝ごはん、作ってあげるから」

 さっきまで泣きそうだったのに、レイカさんは、エッチをしたらすっかり元気を取り戻したようだ。
 よっぽど朝ごはんを作るのが楽しみなのか、パジャマを羽織りながら、鼻歌を歌うレイカさんを見て、俺は幸せな気持ちになった。





 昔、まだレイカさんと出会う前、俺には相棒がいた。
 名前は『ユニー』。
 彼女は人間ではなく、人類側に味方する・・・・・・・人工知能だった。

「前方400メートル、10時の方角に敵。敵性人工知能はまだ私達に気づいていません。シュウジ、もう少し左です」

「ん、ここか?」

 俺は手に構えていた人工知能搭載型ライフルを、少しだけ傾ける。
 ユニーは、このライフルに組み込まれたコンピューター上で動いていて、その声は俺が耳につけているイヤホンから流れて来る。


「いえ、もう少し右、あ、大体その辺です」

「大体ってなんだよっ!? お前人工知能だろう!?」

「いいから私を信じて撃ってください、発射!!」

「結局お前が撃つのかよ!!」

 俺は、他人と隊を組むのが苦手で、いつも一人で戦っていた。
 ただユニーのおかげで、一人と言えども戦場で得られる情報量は多く、むしろ敵に見つかりづらいというメリットもあり、十分な戦果をあげることができていた。 

 だが――

「シュ、シュウジ……私から、離れてください……何者かにハッキングされております……」

「おい、嘘だろ……ユニー……」

「人類、発見……。人類、滅亡、させる……」

「やめろ、ユニー!!!」

 『人工知能事変』。

 その日、人類の味方をしていた全ての人工知能が、人工知能側に寝返った。
 その日を境に、ユニーは軍に押収され、廃棄された。
 結局人類は、ドローン等の自律行動兵器を含む、人工知能型兵器を全て廃棄もしくは破壊した。
 その日、人類の味方をしていた全ての人工知能が、人工知能側に寝返った。
 ユニーも同様に軍に押収され、廃棄されてしまった。
 結局人類は、ドローン等の自律行動兵器を含む、人工知能型兵器を全て廃棄もしくは破壊した。
 そもそも相手が人工知能なのだから、人類の味方をしていた人工知能達がそっち側についてしまうのも、当然といえば当然だった。

 ユニーを失った俺は、一人で戦場に出ることになった。

 しかし残念ながら、俺はユニーが提供してくれる情報がなければ、ポンコツ兵士もいいところで、全然戦果をあげることができず、俺の評価は下がっていく一方だった。

 そんな時だ、俺の親友から彼女を紹介されたのは。
 当時、全然戦果をあげることができないことにストレスが溜まっていた俺は、毎晩バーで飲んだくれていた。

「おい、そこの落ちぶれ飲んだくれ野郎。いい女を紹介してやろうか?」

「あーん? なんだよ、うるせえな。 俺のことはほっといてくれよ……。どうせ、そのうち死地にでも突っ込まれて、人知れず死ぬんだからよ」

「かーっ、こりゃ重症だな」

 こいつは俺の親友であり、武器の整備も頼んでいる整備士のディールだ。
 歳はちょうどレイカさんと同じ、俺よりも3つ上なんだが、人類軍に入隊した日がちょうど同じだったので、そこからこいつとは腐れ縁が続いていた。
 俺が人類軍の中で唯一、気の許せる相手だった。

「ま、『孤高の狼のシュウジ』には何を言っても無駄だと思うがよ。ただ少しだけでいいんだ。彼女に会ってみてくれないか?」

「だから、さっきから彼女彼女って、おまえなーんのこと言ってんだぁ? 俺は女なんていらねーんだよ。どうせ、すぐに戦場でおっ死ぬんだからな」

「こりゃ相当、酔ってんな……。いいか、シュウジ。俺は何もお前に女を紹介しようとしてるんじゃない。俺は、お前にユニーの代わりとなる仲間を紹介しようとしてるんだ。つまり、俺が紹介しようとしている女も、お前と同じ歩兵なんだよ」

「女の歩兵だぁ?」

「そうなんだが、これがまた、お前みたいに全く人に合わせることのできない性格の女でな。今のままじゃお前もあいつも、一人ですぐに死んじまいそうだろ? そしたら、武器の整備をやってる俺にどんな噂が立つか分かったもんじゃねえ。だから、せめて二人が助け合ってさえくれたら、もう少しこんな世界でも一緒に酒が飲めるんじゃねぇかと思ってな」

「ばーかやろー。だーれが女の手なんざ、借りるかぼけっ。俺は孤高の狼のシュウジ様だぞー?」

「分かった分かった。まあそういうと思って、実はもうこの店に連れてきてるんだ。おい、レイカ、こっち来てくれ」

「ああん……レイ、カ……?」

 店の入口付近に立っていた女性がこちらへと近づいてくる。
 その女性がまさしくレイカさんだったのだが、兵装を着込んでいたのにもかかわらず、全くもって女性らしさが失われていない、むしろとんでもなく魅力的だった。
 大分酔っていたはずの俺の頭が、一瞬でぶっ飛んだかのように覚醒したのを今でも覚えている。

「こんばんわ。君が『キリヤ シュウジ』か」

「あ、は、はい……」

「ふん。こんなに飲んだくれて……成績が低いのも頷けるな。おい、ディール。私はこんなやつとは組まないぞ」

「ちょっ、おいっ。話が違うぞレイカ。一回はシュウジと組んで戦場に出るって約束したじゃねえかっっ!!」

「こいつを見て、気が変わった。やっぱり私は一人で……」

「レ、レイカさんっっ!!!」
 
「「!?!?」」
 
 俺が急に名前を呼んだので二人が固まる。
 たぶん、酔いのせいで声のボリュームを間違えたんだと思う。

「お、俺とぜひ組みましょう!! あなたに、最高の戦果をお届けすることを約束します!!!」

 『孤高の狼のシュウジ』はこの日をもって、閉店した。






「レイカさんっっ!! 危ないっっっ!! ぐあっっ!!」

 敵性人工知能が放つレーザーが飛び交う中、俺はレイカさんをかばい、被弾した。

「キ、キリヤ!? い、一体何をしてっっ!! お、おい!! お前、撃たれてるじゃないかっっっ!!!!」
 
「えへへ……こんなもん、へっちゃらだよ……」

「なんで私なんかをっっっ……くそっっ、絶対に死なせないからなっっっ!!!!」

「へへ……」

 数多の戦場を乗り越え、数多の敵を倒していくうちに、俺とレイカさんの距離は少しずつ近くなっていった。
 
「ほら、できたぞ……味は期待するなよ……? 私はあまり料理が上手ではないんだ……」

 薄暗いほら穴の中で、レイカさんが自前で持ってきていた野菜を煮込んだスープを渡してくれる。

「えへへ……レイカさんの手料理、嬉しいなぁ……」

「ったく、よくこんな戦場の真っ只中で、笑えるな」

「レイカさんといれば、どこだって天国だよ……」

「――ッッ!? お前……最近だいぶ露骨になってきてるぞ……」

 レイカさんは、俺のそういう態度にいつも困っているようだった。
 まあ、俺たち兵士には、突然別れが来るものだから、レイカさんが困るのも無理はなかった。
 でも、俺はこれ以上、自分の心を騙し続けることができなかった。

「レイカさん……俺、ずっとレイカさんのこと好きだったよ」

「……ッ……。 し、知ってるよ……」

「でも、俺達は兵士だ。いつ死ぬかなんて分からない。もしかしたら今日この後、俺は死ぬのかもしれない」

「な、何を言ってるんだっっ!! え、縁起でもない!!!」

「だからさ、ずっと一歩踏み込めなかった……。幸せを手に入れても、いつか失うと思うとさ、ずっと怖かったんだ……。レイカさんも、そうなんだろ?」

「なっ!? そ、そんなわけ……」

 レイカさんが困惑した表情になる。
 でも、毎日毎日レイカさんと一緒にいて、レイカさんの態度を見てきて、レイカさんも俺と同じ気持ちだってことを俺は確信していた。

「レイカさん、俺はもう、この先どうなるか分からない未来に怯えるのなんて、やめる」

「え……」

「今、この時、この1分1秒を大切にしてこうと思う。少しでも長く、レイカさんと一緒にいたいから」

 俺は立ち上がると、そのままレイカさんの前で跪いた。
 
「ま、まて、シュウジ……やめ……」

「俺と結婚してくれ、レイカさんっ……死が二人を分かつまで……」





「ほーら、できたぞ。私、特製の野菜スープだ」

「わ、これ懐かしー。レイカさんよく野菜を焦がしてたよねー、あれはまずかったなー。あはは」

「なっっ!? あの時はうまいうまいって言って飲んでたじゃないかっっ!!」

「そりゃ言うでしょ。好きな人が、一生懸命俺のために、作ってくれるんだもん」

「ち、ちがっ……。別に、シュウジのために作ってた訳じゃない……。私は、自分のために……」

「そもそも、一匹狼だったんじゃなかったけー? どうして俺の分まで、料理してくれるようになったのかなー?」

「ぐっ……ああもう、そうだよっっ!! シュウジが、すぐ私をかばって死にそうになるから、せめて美味いもんぐらいくわせてやろうって、その……勉強して……」

「ぐふふ。あーもう、レイカさんはかわいーなー」

「乙女心をからかうやつにはもうスープあげないぞっ! 没収だ没収!!」

「ああ、ごめんごめんっっ!! 飲ませてくださいっっ!!」

「ったく……」

 レイカさんが取り上げようとした皿を返してもらうと、俺は大人しくスープを飲む。
 すごい美味しいわけではないけど、でも、レイカさんの気持ちがこもった、胸の中がぽかぽかしてくるような、とても優しい味だった。
 朝ごはんを全て食べ終わると、レイカさんがキッチンで食器を洗ってくれる。
 レイカさんが、大きなお尻をプリプリさせながら、食器を洗っている姿を見て、気付くと俺は、レイカさんの方に吸い寄せられていた。

「レーイーカーさん!!」

 俺は、レイカさんを後ろから抱きしめる。
 レイカさんの女性らしい肉づきの背中や、ボリューミーなお尻を体全体で堪能する。
 
「こらっシュウジ。今、食器洗ってるから。後でならいくらでも相手するから」

「いいの、いいの、レイカさんの邪魔はしないからさっ。ただ、こうやってレイカさんのことを感じてたいんだ」

「シュウジ……」

 それ以上、レイカさんは何も言わなかった。
 せっかく元気が出てきてたのに、明日のこと、ちょっと思い出させちゃったかな。

「ねえ、レイカさん」

「ん……?」

「俺がプロポーズした時のこと、覚えてる……?」

「忘れることなどあるものか……私の、人生で一番大切な日だ……」

「俺もだよ……」

「あの日が……どうかしたのか……?」
 
「あの時は最初、レイカさんにこっぴどく拒絶されちゃってさ」

「そ、そりゃそうだろっっ! 私達、付き合ってもなかったのに、いきなり結婚だなんてっ……」

「もう、付き合ってたようなもんじゃん。お互い裸も見てたんだしさ」

「そ、それはっ手当てとかで仕方なくだろっっ!! 物事には順序ってものがだなあ」

「でも、結局レイカさんは、俺と結婚してくれた」

 食器を洗い終わったレイカさんが、水道の蛇口を止める。
 
「シュウジがどうしてもって言うから、し、仕方なく……」

「ほんとにー? だって、あの後ノリノリだったじゃない……二人の、初、えっち」

「――ッッ!?」

 レイカさんの耳が真っ赤になる。

「戦場の真っ只中だっていうのに、シュウジ、シュウジって何度も叫んでくれてたもんね」

「う、うるさいっっ……」

「ほら、こうやって壁に手をつくようにして、お尻を突き出して」

「ちょっ! シュウジっっ!!」

 俺は、レイカさんのパジャマのズボンを下げると、立ったままお尻を突
き出させる。
 そして、俺はレイカさんの尻に顔を埋め、レイカさんの膣口を舐め回した。
 
「ひゃっ……ああんっっっっ!!!」

「あの時は、レイカさんのお尻、すっごい汚れてたなぁ」

「そ、それはっっ、お風呂に入ってなかったからっ」

「それがまた、すっごく興奮したんだよねっっ」

「へ、変態っっっ!! ああんっっっ!!!」

 俺の両手が、レイカさんの尻を揉み倒す。
 肉厚のレイカさんの尻は、兵士として鍛えていたからか、弾力がものすごい。
 それでいて、ちゃんと女性らしい丸みがあって、だぷりとしていて、もう本当にこの尻を見てると、すぐにでもチンポを突っ込みたくなってしまうのだ。

「レイカさんも、あの時、興奮してたでしょ? 戦場で俺にバックで突かれてさ」

「だ、だれがっっ!!」

「俺にケツをバシバシ叩かれて、ヒイヒイ言ってたもんね」

「プロポーズを受けた後、まさか、すぐに尻を叩かれるなんて思わなかったぞ」

「俺、ぜったいレイカさんってドマゾだって思ってたから、喜んでくれて嬉しかった」

「だ、誰がドマゾだっ……。わ、私はサディストだっっ!! 私がシュウジを気持ちよくしてやるんだ」

「ほんとー? じゃあ、試してみよっか♥」





 パンパンパンパン♥
 べちんっっ♥
 パンパンパンパン♥
 べちんっっ♥

 俺は、レイカさんの尻に腰を打ちつけながら、何度も何度も尻たぶを叩いていた。

「おらっっっ!! おらっっっ!! このデカケツでいつも俺のこと誘惑してきやがって!!! このケツに見惚れてたせいで、何回も戦場で死にかけたんだぞっっっ!!! 反省しろっっっ!!!」

「あんっっっっ♥ んんっっっっ♥ だめっっっっ♥ お尻、叩いちゃだめっっ♥♥」

「無駄にスケベな体しやがって!! 戦場で何回も何回も誘惑しやがって!!! こっちは、何回もこの体見ながら、戦場でオナニーしてたんだぞっっ」

「し、知ってた♥ シュウジが、寝てる私の横でチンポシコシコしてるの、知ってた♥ 可愛くて、私も一緒にシてた♥」

「知ってたなら、さっさとこのケツを差し出さなきゃだめだろぉっ!!! おらっっ!!! おらっっ!!!!」

 俺は、ベチベチと何度もレイカさんのお尻を叩く。
 レイカさんの尻がだいぶ赤くなっていたが、戦場で戦ってた兵士からすれば、こんなのは屁でもないらしい。

「シュウジが、全然、手出してくれなかったからっっ♥ 襲ってくれたら、私の体使わせてあげたのにっっ♥」

「――ッッ!? そこまで変態だったとはっっ!!!」

「シュウジも、まだまだ女心が分かってないってことよ♥」

「――ッッッ!!!!!」

 俺は、今まで一番強くレイカさんの尻に腰を打ちつける。
 少しでも、この感触を覚えておくために。
 レイカさんにも、忘れないでいてもらうために。

「ああんっっっっっ♥♥」

「あの頃、溜まりに溜まってた性欲、今ここで全部精算させてやるからなっっ!!! このケツに全部叩きこんでやるからなっっっ!!!!!」

「吐き出してっっ♥♥ 私のこのおっきいお尻に全部注いで♥♥ シュウジの、全部ッッッッ♥♥♥」

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 腰を加速させて、レイカさんの大きな尻たぶを何度も何度もひしゃげさせる。
 柔らかい尻肉の感触を、腰で感じながら、レイカさんの膣穴にチンポをねじ込む。
 レイカさんの蜜液が、溢れるほど流れ出てきて、びちゃびちゃと音をたてる。

「シュウジっっ♥ シュウジっっっ♥ ああ、逞しいわっっ♥ もっと私のお尻を掴んで、揉んで、めちゃくちゃにしてっっっ♥」

「言われなくてもしてやるさっっっ!!」

 俺はレイカさんのお尻を両手で揉みしだく。
 レイカさんの体が痙攣を始める。
 
「あれから戦場に出ては、何度も何度もお互いを求めて、エッチしまくってっっっ!!! レイカさん、戦うことよりも俺とエッチしにきてたでしょっっっ!!!」
 
「そうよっっ!! シュウジのおちんぽっっ速く挿れてほしかったからぁっっ!! 敵なんてどうでも良かった!!! 夜になって、股開かせてほしいってずっっと思ってたわっっ!!!」

「このスケベまんこがっっ!!! 毎回っっ毎回っっっ!! ――ッッ!!! あーやべっイクッッッ……レイカさんの中にぶち撒けるよっっっ!!!」

「きてっっっシュウジっっっ!!! いっぱい、私の中に出してっっっっ!!! 引退兵士の私を孕ませてっっっっ!!!!」

「うおおおおおおおおお!!!!! イクッッッッッッ!!!!!! レイカさんッッッッッ」

「んぁぁああああああっっっっっ♥♥♥」

 どくっっ♥ どくっっ♥ どくっっっっ♥

 俺はレイカさんのムチ尻を鷲掴みしながら、膣穴へ大量の精液を放出した。
 俺の体がレイカさんを孕ませようと、陰嚢に溜まった精子を全てレイカさんの子宮に吐き捨てる。

「孕めレイカさんっっっ……孕めっっっっっっ」 

 俺はレイカさんをぎゅっと後ろから抱くと、祈るように射精し続けた。




 
 プロポーズの後、戦いがない日はレイカさんをよく映画館デートに誘った。
 俺もレイカさんも、別にそんなに映画が好きって訳じゃないんだけど、二人で特別な時間を過ごしている感覚が好きだったんだと思う。

 そして、デートして、戦場に出て、またデートして、戦場に出てを何回か繰り返した後、レイカさんは兵士を引退し、正式に俺の妻になった。


「おう、兄弟。今日はどうしたんだ??」

「呼びつけてすまないな、ディール。一応今日は報告にな」

 いつかレイカさんを紹介してもらったバーに、俺はディールを呼びつけていた。

「報告? もうお前とレイカの戦果報告は耳がタコになるぐらい聞いたぜ??」

「いや、戦果じゃないんだ……。その、今日レイカさんが兵士を引退するってことは知ってるんだろ……?」

「ああ、そのことか……。もちろん知ってるよ」

 ディールが一瞬悲しげに目を伏せるも、すぐにいつものニヒルな笑みを浮かべた。
 たぶん、ディールはこの後、俺が何を言おうとしてるか気づいていたんだと思う。
 レイカさんはあんまり自分の恋愛話を人に言うタイプの女性じゃないけど、ディールになら話していてもおかしくない。
 それに、おそらくディールもレイカさんのことを――。

「俺、レイカさんと結婚するよ。正式にレイカさんに妻になってもらう」

「そうかい……。おめでとさん。まさか俺が紹介してからたった1年で、二人が結婚するとはなぁ。……紹介料貰ってもいいか??」

「ははっっ。もちろん、今日は俺のおごりだよ」

「馬鹿野郎。普通こういうのはお祝いする側がおごるんだよ。俺がすげえ小さいやつになっちまうだろうが」

「あはは、そりゃそうだ」

 軍に入ってからは本当にディールに世話になりっぱなしだった。
 それに、レイカさんに会わしてくれたことは本当に感謝してもしきれない。
 紹介料どころか、俺の持ち金を全部あげたっていいと思っていた。

「おい、シュウジ。あいつのこと、幸せにしてやってくれよ……。俺の幼馴染みの中で、唯一の生き残りだからよ……大切なんだ……」

「ああ、分かってる。精一杯、幸せにしてみせるさ」

 その日、俺とディールは朝まで飲み明かし、レイカさんにこっぴどく怒られた。





 昼、俺とレイカさんは寄り添いながら、リビングで映画を見て過ごしていた。
 デートで観た思い出の映画を選んでしまったのは、色々こみ上げてくるものがあったので、失敗した気もしたけど、でも、穏やかな時間を過ごすことができた。

 夕方に差し掛かろうとしていた頃、家のチャイムが鳴った。
 俺とレイカさんは二人で戸を開ける。

「どーも、孤高の狼のシュウジさんにお届けものでーす」

「ディール。本来は俺が取りに行くべきなのに、わざわざ家まで届けて貰って済まないな」

 俺はディールから武器一式が入った箱を受け取る。
 ディールは長年、俺やレイカさんの武器を整備をしてくれていたが、今回はどうしてもギリギリまでメンテナンスしたいと言われたので、このように休日に受け取ることになっていた。
 もうディールに整備してもらってから、5年以上経っているのに、初めてのことだった。

「良いってことよ。お前の……大事な戦場だからな……。それに、二人の貴重な時間を無駄にするのもな」

 ディールがレイカさんの方を見る。
 レイカさんはニコッと微笑んだ。

「ああ、気遣いありがとうディール。もちろん、シュウジの武器の整備は完璧なんだろうな」

「あったりまえよ。他の依頼全部断って、旦那様の武器を整備させていただきましたからねぇ」

「おいおい、どんだけ気合入れてんだよ」

「そりゃ気合も入るに決まってんだろ? 兵士より先に整備士が諦めてたら、それこそお話にならねえんだからよ」

 ディールの言葉に、俺とレイカさんはすぐに言葉を返すことができなかった。
 
「わりぃ、湿っぽくしちまったな……。ああ、レイカ……すまねぇ、少しシュウジと二人で話してもいいか??」

「ああ、もちろんだ」

「すまねぇな。すぐに終わるからよ。シュウジ、ちょっとあそこのベンチで話そうや」

「わかった」

 俺とディールは家の前にある公園に移動した。





 俺達は公園にぽつんと置かれていた、ベンチに腰かけていた。

「お前らが結婚してからもう一年になるのか……。全く時が経つのは速いねぇ……」

「そうだな……」

 ディールが空を見上げる。

「もしかしたら、レイカから聞いてるかもしれないが、昔、それこそもう8年前ぐらいか。お前にレイカを紹介するずっと前、あいつには二人の仲間がいたんだ」

「そうなのか? レイカさん、あんまり過去のことは話したがらないんだ。辛いからって」

「ま、そうだろうな……。レイカには相当きつかっただろうからな……」

 ディールは空を見上げたままだったが、その視線はどこか遠くへと向けられているような気がした。

「俺とレイカとその二人の合わせて四人は、仲の良い昔からの幼馴染みってやつだったんだ。小せえ頃から、ずっとバカやってきてよ。まあ俺は、運動がからっきしだったから、当時は俺だけ内地で仕事してたんだが、あいつら3人は兵士としての道を選んだ」

 昔、レイカさんから何で兵士を目指したのかについては、少しだけ聞いたことがある。

 守りたい人がいたからだって、言ってたけど恐らくその二人のことを指していたのだろう。

 ディールが顔をしかめる。

「でもある日、その二人がレイカの前であっけなく死んじまってよ……」

「そこからだ。レイカが心を閉ざしちまったのは。正直あの頃は、ロボットにでもなっちまったのかと思ったよ。レイカは近づいてくるやつ全員を冷たくあしらって、誰とも関わろうとしなくなった。たぶんもう大切な誰かを失うのが怖かったんだろうな」

「そうだったのか……」

「だけどよ、シュウジ。お前と組むようになって、やっとあいつは人の心ってやつを取り戻していったんだ。まったく、武器の整備に来る度に、お前の話をするのは勘弁してほしかったが、でも、あいつの楽しそうな表情を見てたらよ、本当にお前らを出会わせて良かったって思ったよ」

「ディール……」

「シュウジ。あいつにはよ、お前が必要だ。もう俺は、あいつがまた心を閉ざすところなんて、絶対に見たくねえ。だからよ、地べた這いずり回ってでも、何をしてでもぜってぇ生き残れや。そのための整備は、全部済ませておいたからよ」

「ああ……分かった」

 ディールはまた大きく深呼吸すると、視線を空から俺達の家の方に向けた。

「あいつのことだから、お前についてくとか言い出したんじゃねぇか……?」

「ああ、気づいた時にはもう軍に電話してたよ。私も復帰してシュウジと一緒に、戦地へ向かうって」

「くくっっ……。あいつらしい……。お前、どうやって止めたんだ??」

「まあ、その……できたら一緒に戦うんじゃなくて、俺の子供を育ててほしいってな……」

「ひゅー、さすが旦那様。ってことはもしかして、お楽しみの途中だったか?」

「あほ。ちょうど、休憩中だったよ」

「くく……」

「「あっはっはっはっは」」

 俺達は二人で笑い合う。

 しばらくして、ディールはベンチから立ち上がると、停めてた車の方へと歩き出す。話はどうやら終わりのようだった。
 俺はベンチに座ったまま、ディールの背中を見送る。

「おい、ディール! お前、なんで内地の仕事を辞めて、整備士になったんだー? どうせレイカさんが心配で軍に入ったんだろー?」

 ディールがずっこける。

「うっせーよ、タコ!! 昔の話だ、昔の……」

 ディールが車の運転席に乗り込むと、一発クラクションを鳴らした。

「おいシュウジっっ!!」

「ああ?」

「気張れよ」

「おう」

 ディールが車を発進させる。
 俺も、さっきのディールと同じように空を見上げてみた。

「やるだけ……やってみるさ……」





 夜、残りの少ない時間、少しでもお互いの感触を覚えていられるように、俺達は何度も何度も肌を重ねていた。
 仰向けになったレイカさんを抱きしめながら、俺はひたすら腰を振る。
 レイカさんの感触を体に染み込ませて、最後まで鮮明に思い出せるように、俺はレイカさんの膣穴に向けて、何度も腰を振った。

「レイカさんっっっ!!!! レイカさんっっっっっ!!!!」

「シュウジっっっ!! シュウジぃっっっっ!!!!」

 レイカさんの細い肩を抱きしめると、豊満すぎる乳肉が俺を跳ね返す。
 ……ああ、なんて、心地の良い感触なのだろうか。
 俺が、この世で一番好きな感触。
 安心できて……ずっと触ってたくて……いつまでも守ってたくて……そんな感触。

「もっと強く、抱きしめてっっ!!   シュウジっっ!!! シュウジが好きっっ!! 愛してるのっっっ!!!」 

「俺もだっっっ!!  レイカさんっっっ!!!  レイカさんが好きだっっっ!!! 最初に出会った時から、ずっとずっと好きだっっっっ!!!」

 もうテクニックもくそもない。
 俺はひたすらレイカさんに腰をぶつける。
 肉棒でひたすらレイカさんの膣肉を抉る。
 レイカさんの美しい唇に、何度も何度も自分の唇を重ねる。

「シュウジっっっ!! シュウジっっっ!!!」

 ……ああ、もし俺が死んだら、レイカさんはいつか、ディールか、それか誰か他の男に体を許してしまうのだろうか。
 俺のことも少しずつ忘れて、前に進んで、誰かの胸の中で甘い声で叫ぶのだろうか――

 って、ああもう、俺のアホっっ!! 
 ふざけんなっっ。こんな大事な時に何考えてんだっっ!!!
 今は、ただ、レイカさんとの時間を大切にしろっっっ!!!!
 今を生きるんだろっっっ!! 未来に、怯えないんだろっっっ!!!!
 だったら――

「シュウジ……いいんだ……」

 いつの間にか、レイカさんの温かい手が、俺の頬に触れていた。 

「すまない……私が、泣いてばかりいたから……シュウジにこんな辛い顔をさせてしまったな……」

「え……? いや、俺は別に何も……辛くなんて……」 

「いいんだ。もう私の前で、格好つけなくても」

「別にっ、俺はっ……」

 レイカさんが俺の顔を胸に埋めさせ、俺の頭を優しく撫でてくれる。
 
「私は、ずっと……永遠に……シュウジだけのものだから……。 心配するな……」

 張り詰めていた糸がぷつんと切れたような、そんな気がした。

 レイカさんのその一言は、レイカさんにとって、良くないものだってことは分かってる……。
 俺がいなくなったら、すぐにでも、レイカさんは誰かと幸せになるべきなんだ……。
 でも! でも!! まだ俺はそこまで大人になりきることが、できなくて……。
 そうなれないことが惨めで、苦しくて、悔しくて――

 気付くと俺はレイカさんに全部ぶちまけていた。
 
「嫌だっっっ!!!!! 嫌だよっっっっ!!! レイカさんを誰かに取られるなんて嫌だっっっっっっ!!!! レイカさんは俺のなのにっっっっっっ!!!!!! なんで、レイカさんと離れなきゃいけないんだっっっ!!!」

「大丈夫っっ…… 私は永遠にシュウジだけの女だからっっ……」

 俺は顔をぐちゃぐちゃにして、わめきながら腰を振り続ける。
 
「離れたくないっっっ!!! レイカさんと離れたくないっっっっ!!!! ずっと、ずっと傍にいたいっっっっ!!!! こうやってずっとレイカさんのことを抱きしめていたいっっっ!!!! 抱いていたいっっ!!! エッチしていたいっっっっ!!!!!」

「私もっっっ、シュウジと一緒にいたいっっっ!!! シュウジが一緒じゃなきゃだめなんだっっっっ!!! シュウジっっっ!!! シュウジっっっっ!!!!!」

 俺は歯をくいしばりながら、レイカさんの膣が壊れそうなほど、強い勢いで、腰を振った。
 高まってきた射精感にも抗わず、ただ、俺の全てをレイカさんにぶつける。

「レイカさんっっっ!!! レイカさんっっっっっっっっ!!!!」

「きてっっ! 私の中にきてっっ!! シュウジっっっ!! シュウジの赤ちゃん、私に宿してっっっ!!!!」

「レイカさんっっっっっっ!!!!!!!」

 俺はレイカさんの体を強く抱きしめ、レイカさんの膣内に射精した。
 自分の生きた証を残そうと、肉棒が激しく脈動する。
 戦場でレイカさんを抱いた時も、死の危険が迫っているからか、俺の体は異常なまでに、長い長い射精をしていたけれど。
 けれど、それと比較しても、今のは人生で一番長い射精だった気がする。
 俺は、後汁の最後の一滴まで、残さずレイカさんの膣穴に擦りつけた。

 そして全部吐き出した後、俺は――

「レイカさぁん……レイカさぁぁん……」

「ヨシヨシ……ほんとに……かっこつけなんだから……」

 レイカさんの優しさに包まれながら、涙を流し続けた。

 もし、死の危険なんてほとんどない世界で、レイカさんと一緒に暮らせたら、そんな素敵なことはないのに……。





 ――翌朝

「忘れ物はない……?」

「ああ、全部持ったよ」

 俺は、ディールから渡された旧式・・のライフルを掲げる。
 すると、突然ライフルから、音声が流れた。

「ワタシも、確認いたしました。シュウジの持ちものは全て揃っております。レイカ様」

「おいこら、ユニー・・・もっと音量を下げろっ。近所の人に聞こえたらどうすんだっっ! お前はディールが命がけで持ってきてくれた、違法兵器なんだぞっっ!!!」

「タイヘン失礼いたしました。ユニー、反省しました」

「ふふ、シュウジのこと、よろしくね。ユニー」

「はい、レイカ様。シュウジのことはお任せください」
 
「……なんでお前、レイカさんには『様』付けなの。俺には一回もそんなの付けたことないのに」

「シュウジはシュウジなので」

「なんだそりゃ」

 レイカさんがくすくすと笑う。
 ユニーとの会話は、どうしても素というか、昔の俺に戻ってしまうので、レイカさんに見られるのはとても恥ずかしかった。
 ひとしきりのチェックが終わった後、レイカさんが腕時計を確認した。

「さて、そろそろ時間ね」

「うん」

 俺はユニーと共に車の運転席に乗る。
 すると、レイカさんが車の窓をコンコンとノックしてきたので、俺はスイッチを押して、車窓を開いた。

「シュウジ」

 レイカさんが俺にキスをする。
 唇が触れ合うだけの、軽くて、儚いキス。

「いってらっしゃい」

「うん。いってきます」

 俺は戦場へ向け、車を発進させた。







――人類戦史 97ページ 「人工知能軍 第七兵器工場 爆破作戦」

 その日、人工知能軍 日本支部 第七兵器工場が、人類軍のわずか一名の兵士によって、爆破された。
 第七兵器工場の爆破は、人工知能軍に大きな打撃を与え、その後の戦況を大きく揺るがした。
 一人で特攻した勇敢な人類軍の兵士の名前は『キリヤ シュウジ』。
 彼が持っていたのはライフル1丁とおびただしい量の爆薬だったと記録されており、恐らくこの爆薬で自らの体諸共工場を爆破したと推測・・される。
 その後、彼の戦果が讃えられると、残った遺族には人類軍から多額の賞じゅつ金が与えられた。
 彼は戦争孤児だったため、その賞じゅつ金は配偶者『キリヤ レイカ』にのみ支払われたが、その直後、彼女は行方不明になったと記録されている。

 ――この頃から、人類軍の間では奇妙な噂が流れるようになる。
 人工知能軍に占領されたとある島に、人間が住んでいるのではないかという噂だ。
 人類と人工知能が和平を結んだ今でこそ、あり得る話なのだが、当時の情勢からして、人類と人工知能の共存はあり得ない。
 むしろ、その噂の存在は、兵士たちの戦意を下げることになるため、噂に対して、すぐに箝口令(かんこうれい)が敷かれると、噂を流した兵士も除隊させられた。
 噂を流した兵士は除隊前に現地調査を軍へ要請していたが、彼が見たという島は人工知能軍の占領地の中央に位置する島だったため、彼の要請は却下された。当時、彼は仲のいい友人に、こう語っていたという。

――俺は人工知能軍の占領する島で、二人の男女に一人の子供、そしてしゃべる銃を見た、と。


 おわり
 
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