28 / 37
二十八話:解散
しおりを挟む
放課後。リカルドはハレー先輩に用事があると言って、しばらくヴァイゼと二人だけになった。一見、勉強に熱心な風を装っていたが、ちらちらと僕を見る様子から、何か気にかかることがあるのだろうと思った。
「何かありましたか?」
「その、違っていたら悪いんだが、二人は――シルヴァとリカルドは付き合っているのか?」
ペンを落としてしまった。
「つ、付き合ってません」
今のところは、と心の中で付け加えた。
自惚れかもしれないが、もし本当にリカルドと付き合うことになったら、リカルド意外と二人だけになる状態はやめるように言われる気がする。自惚れかもしれないが。
「しかし、リカルドはシルヴァが好きだと思う」
「な、なぜそう思ったんですか?」
「シルヴァが私に話しかけるたびに不機嫌になっていってるのが表情に出てたからな。目線で牽制もされていたように思う」
「実を言えば告白はされているんです」
ヴァイゼのペンが止まった。
「ミブ殿下からの好意を断って、リカルドからの好意も断って、シルヴァは一体誰が好きなんだ?」
いません、と答える前にノートに影が落ちた。
「シルヴァ君、好きな人いるの?」
姿を見るまでもない。リカルドだ。
「いないよ」
「だよね。良かった。もう俺以外のとこにはお嫁にいけないもんね」
「ちょっと、変な言い方しないで」
はっ、と口を閉じたが、またしても学校司書に見つかってしまい追い出されることになってしまった。
「ごめん、ヴァイゼ。なんかこういうのばっかりだ」
「いや、私にも非はある。その……ほんとに付き合ってないのか?」
「聞いてよヴァイゼ。シルヴァ君ってばどんなに俺がアプローチしても躱すんだ」
「ミブ殿下からの好意も断ってると聞いたが」
「ああ、それなら俺が断るように言ったからだね」
ヴァイゼが頭を抱えた。
「こんなに可愛いのに自覚はないし。困ってるんだよ」
ヴァイゼに申し訳ないからリカルドには止まってほしい。とういうか、お昼休みのことがあったのに、なぜリカルドはこんないつも通り飄々としていられるんだ。
「挙句の果てには次の試験で俺が勝ったらお試しで付き合ってもいいとか言いだすし」
「ちょっとリカルド」
「ああ、それで俺に声をかけたのか。すまないがシルヴァ、明日からの勉強会は無しでいいか?」
「すみません。動機が不純すぎました」
僕だったら嫌だ。
「ああ、そんな悲しい顔をするな。リカルドに怒られる。そうじゃなくて」
う~ん、とヴァイゼが唸った。
「リカルドは嫉妬深い。私はリカルドに喧嘩を売りたくはない」
そういうことだ、とヴァイゼは言った。理解しがたいが、頷いておいた。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
せっかく勇気を出して声をかけたのに一週間もたたずに勉強会の集まりは解散になってしまった。
「そういうわけでシルヴァ君。自力で頑張ってね」
何がそういうわけで、だ。
「他の人に頼んでも俺は全力で妨害するから」
「ハレー先輩やサロモア嬢でも?」
「もちろん」
ずるい。これでリカルドと勉強しようものなら、間違ったことを教えられるんじゃないかと疑いたくなるレベルだ。
「変なことに巻き込んですまないね。それじゃ俺たちはこれで」
リカルドに腕を引っ張られてヴァイゼのもとを後にした。まだ馬車の迎えが来るまでには一時間以上もあるのに。どこへ行くというんだ。
リカルドに引っ張られるままに着いたのは玄関だった。外にカレンベルク家の馬車が止まっているのが見える。まさか。
「家まで送るよ。迎え遅くしてもらってるんでしょ」
「そうだけど」
「ほら乗って乗って」
押し込まれるようにして馬車に乗った。リカルドは僕の腰を掴んで、僕はリカルドの膝の上に座ることになった。
「俺さ、シルヴァ君ともっとくっつきたいし、えっちなこともしたい。付き合ってないから互いの家に呼んで泊まるのも難しい。未成年だから宿にも行けない。早く大人になりたい。シルヴァ君を俺だけのものにしたい」
「昼休みのは……」
「足りない」
そう言ってリカルドは僕の太ももをやわやわと触りながら、首もとに口づけた。ちゅうっと吸われて、ぴりっと僅かな痛みが走る。
「ちょっと……」
今日のリカルドはいささか暴走ぎみだ。
「はあ、このまま家に連れていけたらいいのに」
「駄目です」
「分かってる」
「これ以上したら嫌いになるよ」
そう言うとぴたりと手が止まった。
「ごめん。今日もお昼休みのはちょっとやり過ぎたかなと思ってさ、終わったらすごい後悔した。自分の欲を押し付けたら駄目だって分かってるのに。もう学院ではしない。お願いだから嫌いにならないで」
リカルドの声があまりにも弱弱しくて、うっかり許しそうになった。そんなんだからいつも流されてしまうんだ。
「抱きしめるのだけは許して」
家につくまで僕はずっとリカルドの腕の中にいるはめになった。
それを拒めない僕も僕だ。
「何かありましたか?」
「その、違っていたら悪いんだが、二人は――シルヴァとリカルドは付き合っているのか?」
ペンを落としてしまった。
「つ、付き合ってません」
今のところは、と心の中で付け加えた。
自惚れかもしれないが、もし本当にリカルドと付き合うことになったら、リカルド意外と二人だけになる状態はやめるように言われる気がする。自惚れかもしれないが。
「しかし、リカルドはシルヴァが好きだと思う」
「な、なぜそう思ったんですか?」
「シルヴァが私に話しかけるたびに不機嫌になっていってるのが表情に出てたからな。目線で牽制もされていたように思う」
「実を言えば告白はされているんです」
ヴァイゼのペンが止まった。
「ミブ殿下からの好意を断って、リカルドからの好意も断って、シルヴァは一体誰が好きなんだ?」
いません、と答える前にノートに影が落ちた。
「シルヴァ君、好きな人いるの?」
姿を見るまでもない。リカルドだ。
「いないよ」
「だよね。良かった。もう俺以外のとこにはお嫁にいけないもんね」
「ちょっと、変な言い方しないで」
はっ、と口を閉じたが、またしても学校司書に見つかってしまい追い出されることになってしまった。
「ごめん、ヴァイゼ。なんかこういうのばっかりだ」
「いや、私にも非はある。その……ほんとに付き合ってないのか?」
「聞いてよヴァイゼ。シルヴァ君ってばどんなに俺がアプローチしても躱すんだ」
「ミブ殿下からの好意も断ってると聞いたが」
「ああ、それなら俺が断るように言ったからだね」
ヴァイゼが頭を抱えた。
「こんなに可愛いのに自覚はないし。困ってるんだよ」
ヴァイゼに申し訳ないからリカルドには止まってほしい。とういうか、お昼休みのことがあったのに、なぜリカルドはこんないつも通り飄々としていられるんだ。
「挙句の果てには次の試験で俺が勝ったらお試しで付き合ってもいいとか言いだすし」
「ちょっとリカルド」
「ああ、それで俺に声をかけたのか。すまないがシルヴァ、明日からの勉強会は無しでいいか?」
「すみません。動機が不純すぎました」
僕だったら嫌だ。
「ああ、そんな悲しい顔をするな。リカルドに怒られる。そうじゃなくて」
う~ん、とヴァイゼが唸った。
「リカルドは嫉妬深い。私はリカルドに喧嘩を売りたくはない」
そういうことだ、とヴァイゼは言った。理解しがたいが、頷いておいた。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
せっかく勇気を出して声をかけたのに一週間もたたずに勉強会の集まりは解散になってしまった。
「そういうわけでシルヴァ君。自力で頑張ってね」
何がそういうわけで、だ。
「他の人に頼んでも俺は全力で妨害するから」
「ハレー先輩やサロモア嬢でも?」
「もちろん」
ずるい。これでリカルドと勉強しようものなら、間違ったことを教えられるんじゃないかと疑いたくなるレベルだ。
「変なことに巻き込んですまないね。それじゃ俺たちはこれで」
リカルドに腕を引っ張られてヴァイゼのもとを後にした。まだ馬車の迎えが来るまでには一時間以上もあるのに。どこへ行くというんだ。
リカルドに引っ張られるままに着いたのは玄関だった。外にカレンベルク家の馬車が止まっているのが見える。まさか。
「家まで送るよ。迎え遅くしてもらってるんでしょ」
「そうだけど」
「ほら乗って乗って」
押し込まれるようにして馬車に乗った。リカルドは僕の腰を掴んで、僕はリカルドの膝の上に座ることになった。
「俺さ、シルヴァ君ともっとくっつきたいし、えっちなこともしたい。付き合ってないから互いの家に呼んで泊まるのも難しい。未成年だから宿にも行けない。早く大人になりたい。シルヴァ君を俺だけのものにしたい」
「昼休みのは……」
「足りない」
そう言ってリカルドは僕の太ももをやわやわと触りながら、首もとに口づけた。ちゅうっと吸われて、ぴりっと僅かな痛みが走る。
「ちょっと……」
今日のリカルドはいささか暴走ぎみだ。
「はあ、このまま家に連れていけたらいいのに」
「駄目です」
「分かってる」
「これ以上したら嫌いになるよ」
そう言うとぴたりと手が止まった。
「ごめん。今日もお昼休みのはちょっとやり過ぎたかなと思ってさ、終わったらすごい後悔した。自分の欲を押し付けたら駄目だって分かってるのに。もう学院ではしない。お願いだから嫌いにならないで」
リカルドの声があまりにも弱弱しくて、うっかり許しそうになった。そんなんだからいつも流されてしまうんだ。
「抱きしめるのだけは許して」
家につくまで僕はずっとリカルドの腕の中にいるはめになった。
それを拒めない僕も僕だ。
7
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?


嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる