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十八話:宴のあと
しおりを挟む 偶に来る残党を迎撃しながら包囲を続けていると、程なくして洞窟から、試験官が数名の男女を連れて出てくる。
「終わったぞ。怪我人はいないか?」
試験官は受験者達の方を確認する。
受験者達の周りには、返り討ちにした残党の死体は何体もあったが、傷を負っている人は一人もいなかった。
「上出来だ。今回の受験者は優秀だな。みんな、試験結果の方は期待すると良い」
実質の合格宣言をされ、受験者達は表情を明るくさせる。
試験官は迎撃の様子を見ていなかったが、無傷で撃退したという結果は、チームワークが取れている何よりの証拠であった。
「では、街へ帰ろう」
突発の討伐を終えて帰ろうとしたその時、試験官の腹部から剣が飛び出した。
「うぐっ……。お前は……何故っ……」
試験官を後ろから刺していたのは、最初に殺したはずの、マフィアのボスであった。
「これはお返しだよ。ひゃひゃひゃ」
剣を引き抜くと、試験官は地面へと倒れる。
直後、凛がマフィアのボスへと飛び掛かった。
振り下ろしたハンマーを、マフィアのボスは紙一重で避ける。
「うおっと」
マフィアのボスが飛び退いて距離が空いたところで、凛が他の受験者達に言う。
「試験官の治療を!」
その声でハッとしたガーネットとラピスが、慌てて倒れた試験官の下へと駆け寄る。
「見ていたぞ。あの中では、お前が一番能力が高いな」
「ふざけんじゃないわよ! 試験官が死んじゃったら、せっかくやった試験がパーじゃないの!」
凛はマフィアのボスの足元の地面を凹ませるが、その瞬間に勘付かれて飛び退かれる。
「はっはっはっ、油断はしねーぞ」
最初は油断して試験官にやられたマフィアのボスだが、その後は死んだふりをして、敵の実力を見計らっていた。
腕が立つ上に、警戒心も強い厄介な相手であった。
ハンマーでは速度が足りないと判断した凛は、ハンマーを模っていた土を組み替えて、双剣に切り替える。
そしてすぐさまマフィアのボスへと飛び掛かった。
マフィアのボスも迎え撃ち、二人は打ち合いを始める。
「む」
双剣の連撃による手数の多さから、マフィアのボスは腕や足をどんどん斬り付けられて行く。
そして、傷に意識を取られた隙を突き、凛はその片目を剣で貫いた。
剣は脳にまで届くほど、深く突き刺さる。
だが、マフィアのボスは平然とした顔で言う。
「お前、思っていた以上にヤベーな。ひひっ。ヤバ過ぎて、笑いが込み上げてくるぜ」
マフィアのボスは刺された目を庇いもせず、剣を振り下ろした。
凛は咄嗟に、首に刺した剣から手を放して、飛び退く。
マフィアのボスが目に刺さった剣を抜いて捨てると、傷口から血が滝のように流れ出すが、全く物ともしない様子だった。
目だけでなく、試験官が刺した胸の傷からも、夥しい量の血が流れ出ている。
「何で、そんな状態で生きてるのよ」
「ひっひっひっ、秘密だよ」
目の傷も胸の傷も、明らかに致命傷であるのに、マフィアのボスは一切倒れる様子がなかった。
残った片目が血走っており、手足が若干痙攣しているが、それだけである。
(再生系のアーティファクト? それともモンスター化の薬? どれもちょっと違うわ……)
凛は心当たりのあるアイテムを思い返してみるが、どの効果とも当てはまらなかった。
しかし、何かしらのアイテムの効果によるものだろうと考えたところで、一つ別の危険性に気付く。
「みんな、気を付けて! さっき倒して奴ら、まだ死んでない可能性があるわ!」
凛が他の人達に警笛を鳴らすと、マフィアのボスが笑って答える。
「心配するな。あれは貴重な物だから、使ってるのは俺だけだ。ひひゃひゃ」
マフィアのボスはアイテムによるものであることを自白した。
(何のアイテムか分からないけど、何にしても不死身になることはあり得ない。なら……)
凛は飛び掛かり、凄まじい速度で連撃を行う。
「無駄だよ、無駄ぁー」
マフィアのボスは一切効いていない様子だが、凛は構わずダメージを与えて行く。
そうしているうちに、首が半分千切れ、内臓は飛び出し、人の形を保っていられるのが怪しくなってきた。
喉が壊れて声も出さなくなっていたが、戦う手は止めず、狂ったように反撃を続けている。
目の焦点は合っておらず、既に正気は失っていた。
「もう化け物じゃないの……」
身体が崩壊しているのに死なないその姿に、凛は恐怖を抱いていた。
周りで見ていた他の受験者達も、恐れ戦いている。
「こんなの生かしておいちゃいけないわ」
凛は再度、マフィアのボスの足元を凹ませる。
既に真面な意識がなかったマフィアのボスは、足を引っかけて、あっけなく地面に倒れた。
すると、凛は即座に飛び退いて距離を開け、武器を再びハンマーに替える。
それを振り上げると、一回り二回りと大きくなり、大きなハンマーとなった。
そしてそのハンマーをマフィアのボスへと振り下ろす。
ハンマーが地面とぶつかり、地響きが鳴る。
凛はすぐにハンマーを持ち上げ、何度も打ち付けた。
十分な回数を打ち付けてから退かせると、そこには血溜まりだけとなっていた。
「……死んだわよね?」
凛は血溜まりの中に僅かに残っている潰れたミンチ肉を凝視する。
もしかするとまだ動くかもしれないと考えていたが、動くことはなかった。
決着が着いたところで、ラピスがヘルプを出す。
「凛さんっ、終わったなら手を貸してくださいっ。何とか命は繋いでますが、弱ってて私達だけじゃ……」
「オッケー、任せて」
凛はハンマーを消して、治療に参加する。
その後、凛の上級治癒魔法で試験官の人は無事回復し、みんなは街へと帰還した。
ギルドに戻ると、すぐに全員に合格が渡され、受験者達はそれぞれ笑顔で解散した。
凛達がギルドを出たところで、ガーネットが声を掛けてくる。
「貴方、本当に凄い人だったのね。悔しいけど、魔法使いとしても冒険者としても、今の貴方には勝てそうにないわ。でもね。いつか勝ってみせるから」
ガーネットは一方的にそれだけ言って去って行った。
「認めてくれたってこと?」
「そうですね。ガーネちゃん素直じゃないから」
凛達は微笑ましく去り行くガーネットの背を見送った。
「終わったぞ。怪我人はいないか?」
試験官は受験者達の方を確認する。
受験者達の周りには、返り討ちにした残党の死体は何体もあったが、傷を負っている人は一人もいなかった。
「上出来だ。今回の受験者は優秀だな。みんな、試験結果の方は期待すると良い」
実質の合格宣言をされ、受験者達は表情を明るくさせる。
試験官は迎撃の様子を見ていなかったが、無傷で撃退したという結果は、チームワークが取れている何よりの証拠であった。
「では、街へ帰ろう」
突発の討伐を終えて帰ろうとしたその時、試験官の腹部から剣が飛び出した。
「うぐっ……。お前は……何故っ……」
試験官を後ろから刺していたのは、最初に殺したはずの、マフィアのボスであった。
「これはお返しだよ。ひゃひゃひゃ」
剣を引き抜くと、試験官は地面へと倒れる。
直後、凛がマフィアのボスへと飛び掛かった。
振り下ろしたハンマーを、マフィアのボスは紙一重で避ける。
「うおっと」
マフィアのボスが飛び退いて距離が空いたところで、凛が他の受験者達に言う。
「試験官の治療を!」
その声でハッとしたガーネットとラピスが、慌てて倒れた試験官の下へと駆け寄る。
「見ていたぞ。あの中では、お前が一番能力が高いな」
「ふざけんじゃないわよ! 試験官が死んじゃったら、せっかくやった試験がパーじゃないの!」
凛はマフィアのボスの足元の地面を凹ませるが、その瞬間に勘付かれて飛び退かれる。
「はっはっはっ、油断はしねーぞ」
最初は油断して試験官にやられたマフィアのボスだが、その後は死んだふりをして、敵の実力を見計らっていた。
腕が立つ上に、警戒心も強い厄介な相手であった。
ハンマーでは速度が足りないと判断した凛は、ハンマーを模っていた土を組み替えて、双剣に切り替える。
そしてすぐさまマフィアのボスへと飛び掛かった。
マフィアのボスも迎え撃ち、二人は打ち合いを始める。
「む」
双剣の連撃による手数の多さから、マフィアのボスは腕や足をどんどん斬り付けられて行く。
そして、傷に意識を取られた隙を突き、凛はその片目を剣で貫いた。
剣は脳にまで届くほど、深く突き刺さる。
だが、マフィアのボスは平然とした顔で言う。
「お前、思っていた以上にヤベーな。ひひっ。ヤバ過ぎて、笑いが込み上げてくるぜ」
マフィアのボスは刺された目を庇いもせず、剣を振り下ろした。
凛は咄嗟に、首に刺した剣から手を放して、飛び退く。
マフィアのボスが目に刺さった剣を抜いて捨てると、傷口から血が滝のように流れ出すが、全く物ともしない様子だった。
目だけでなく、試験官が刺した胸の傷からも、夥しい量の血が流れ出ている。
「何で、そんな状態で生きてるのよ」
「ひっひっひっ、秘密だよ」
目の傷も胸の傷も、明らかに致命傷であるのに、マフィアのボスは一切倒れる様子がなかった。
残った片目が血走っており、手足が若干痙攣しているが、それだけである。
(再生系のアーティファクト? それともモンスター化の薬? どれもちょっと違うわ……)
凛は心当たりのあるアイテムを思い返してみるが、どの効果とも当てはまらなかった。
しかし、何かしらのアイテムの効果によるものだろうと考えたところで、一つ別の危険性に気付く。
「みんな、気を付けて! さっき倒して奴ら、まだ死んでない可能性があるわ!」
凛が他の人達に警笛を鳴らすと、マフィアのボスが笑って答える。
「心配するな。あれは貴重な物だから、使ってるのは俺だけだ。ひひゃひゃ」
マフィアのボスはアイテムによるものであることを自白した。
(何のアイテムか分からないけど、何にしても不死身になることはあり得ない。なら……)
凛は飛び掛かり、凄まじい速度で連撃を行う。
「無駄だよ、無駄ぁー」
マフィアのボスは一切効いていない様子だが、凛は構わずダメージを与えて行く。
そうしているうちに、首が半分千切れ、内臓は飛び出し、人の形を保っていられるのが怪しくなってきた。
喉が壊れて声も出さなくなっていたが、戦う手は止めず、狂ったように反撃を続けている。
目の焦点は合っておらず、既に正気は失っていた。
「もう化け物じゃないの……」
身体が崩壊しているのに死なないその姿に、凛は恐怖を抱いていた。
周りで見ていた他の受験者達も、恐れ戦いている。
「こんなの生かしておいちゃいけないわ」
凛は再度、マフィアのボスの足元を凹ませる。
既に真面な意識がなかったマフィアのボスは、足を引っかけて、あっけなく地面に倒れた。
すると、凛は即座に飛び退いて距離を開け、武器を再びハンマーに替える。
それを振り上げると、一回り二回りと大きくなり、大きなハンマーとなった。
そしてそのハンマーをマフィアのボスへと振り下ろす。
ハンマーが地面とぶつかり、地響きが鳴る。
凛はすぐにハンマーを持ち上げ、何度も打ち付けた。
十分な回数を打ち付けてから退かせると、そこには血溜まりだけとなっていた。
「……死んだわよね?」
凛は血溜まりの中に僅かに残っている潰れたミンチ肉を凝視する。
もしかするとまだ動くかもしれないと考えていたが、動くことはなかった。
決着が着いたところで、ラピスがヘルプを出す。
「凛さんっ、終わったなら手を貸してくださいっ。何とか命は繋いでますが、弱ってて私達だけじゃ……」
「オッケー、任せて」
凛はハンマーを消して、治療に参加する。
その後、凛の上級治癒魔法で試験官の人は無事回復し、みんなは街へと帰還した。
ギルドに戻ると、すぐに全員に合格が渡され、受験者達はそれぞれ笑顔で解散した。
凛達がギルドを出たところで、ガーネットが声を掛けてくる。
「貴方、本当に凄い人だったのね。悔しいけど、魔法使いとしても冒険者としても、今の貴方には勝てそうにないわ。でもね。いつか勝ってみせるから」
ガーネットは一方的にそれだけ言って去って行った。
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「そうですね。ガーネちゃん素直じゃないから」
凛達は微笑ましく去り行くガーネットの背を見送った。
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