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12-真夏の事件簿
069 謎の集団
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オークション二日目、昨日のようにスーツに着替えると再び会場へ足を運んだ。
一日目と違う点でいえば、ブランドのスーツに身を固めた集団が些か浮いていた点だ。身体付きもプロレスラーのようで、ある意味ルカ以上に目立っている。男たちの視線の先はルカではなかった。どこへ行っても他人の視線をものにしてしまうルカの苦しさは、悠は少しだけ分かった気がした。
オークショニアの軽快なトークと共に競りがスタートした。次々とテンポ良く落とされていく中、お目当てのネックレスが登場した。ダイヤモンドの輝きが眩しく、参加者たちからは感嘆の息が漏れた。
次々に札が上がる中、隙を付いてルカもかざした。だがすぐに破られる。三度目も大金をふっかけたが、これも値段が上がってしまい、ルカにはもう手だてはない。
「悠」
ルカがこっそりと指をかざす。その額は最高額の倍だ。慌てて悠は札を上げ、数字を口にするとどよめきが沸き起こった。そこでハンマーの叩く音が地下室に響いた。
「え、え」
「落ち着いて。あなたが競り落としたことになります。後で手順を教えます」
慣れてきたはずのオークションで、昨日以上の緊張が身体中を駆け巡った。呪われたネックレスを競り落とした後は、何を競売にかけられているのか悠の頭には入らなかった。
「悠、大丈夫ですか?競売は終わりましたよ」
「だ、大丈夫です。やれます」
「その意気です。こちらをお持ち下さい」
ルカに渡されたメモ用紙には、住所が書かれている。
「依頼主の住所です。宛先を書くように指示されますので、こちらを書いて下さい。送り主は、SHIRAYUKIの住所を書き、ルカ・フロリーディアと記して下さい」
「フロリーディアですね。分かりました」
「支払い後、荷物を送る手筈になります。入札者には封筒を渡されます」
「封筒?」
「振込先などが記載されているものです。開けずに、私の元へ持ってきて下さい」
かちこちに固まる身体に鞭を打ち、通された裏口に進むと会場よりも狭い空間がある。英語での説明のため、悠にも理解が出来た。言われた通りにメモを見ながら住所と連絡先を送り主を書き、封筒を受け取った。
梱包などはお任せし、悠は地上へ続く階段を上がっていく。
ルカがいない。休息所とビュッフェ会場にも顔を出すが、ルカの姿は見当たらなかった。とくん、と静かに鼓動が駆け出していく。ぎゅっと心臓付近を押さえ込んだ。
『失礼ですが、ハルカ・カゲモリさんで間違いないですね?』
プロレスラー並の体格を持つ男たちは、悠の目の前にくると英語で声を掛けた。悠は瞬時にイタリア訛りではないと把握する。
『あなた方は?』
『ルカ様なら、我々の仲間と共におります』
『仲間?』
訝しげに、悠は聞き返した。
『まずはお名前を教えて下さい。素性が分からない方に言われても信じられません』
『フランスから参りました』
悠は口を噤み、相手の出方を待った。フランスという隣国の名前は危険な香りが付きまとう。回りの人たちは一触即発の雰囲気に、動く足が自然と早くなっている。目に見えないものたちは、悠にしか聞こえない声でざわめいている。
『フランスでのニュースはご覧になりましたか?』
『生憎、フランスへは行っておりません』
『スペインのニュースは?』
『スペイン語は不得意です』
不得意ではなく、正確には炭酸が入っているかどうかしか理解していない。
『ハルカ様にお話をお伺いしたいのです』
『ご用件ならここでお願いします』
『いえ、ワゴン車の中へお願いします』
『まずはルカさんに会わせて下さい』
『ご自分の立場を踏まえて、どうかご発言を注意して頂きたい』
腰に添えられた手を払おうにも、力の差は歴然だった。
『それは、ルカさんに危害を加えようとしているのですか?』
『まさか。とんでもない。ルカ様には傷一つ付けられません。国が黙っていないでしょう』
落ち着け、落ち着けと何度も自身に訴える。この場合、ルカなら一体どうするのかと思考を巡らせた。悠にすべきことは一つで、まずはルカの身の安全が先だった。悠は頷き、スーツの男たちについていった。
駐車場に停まるワゴン車に乗り込むと、車内は独特の匂いを放っている。頭がくらくらするような、妖艶な香りだ。ルカがたまにつけるイランイランの香りとも違う。
『どこへ向かっていますか?』
『とある建物です』
それ以上男たちは悠の質問には答えない。ワゴン車から眺める景色は新鮮だが、真逆を言えば何処を走っているのか悠には分からない。ルカの霊魂を辿れるかも自信がない。
後部座席の前にはカーテンが敷かれていて、運転席と助手席は見えない。悠の両隣にも男が二人座っていて、逃げ場はなかった。
やがてワゴン車は木々の中を走り出した。車内にも聞こえる鳥の声は、日本では聞き慣れない甲高い鳴き声だ。悠は息苦しくなった。原因は嗅ぎ慣れない香りで、頭の働きが鈍い。手を動かす動作にも、脳へ命令し指に伝わる感覚がずれている。足のつま先を動かす感覚もおかしいかった。
『着きました』
一時間以上走り続け、着いた先は森の奥で、コテージが一軒建っていた。中に入るよう促され、おとなしく男の後ろを追う。
『そちらのソファーへお座り下さい』
有無を言わせない態度に、悠は従った。棚には食器があるが、使われた形跡が無く、埃が溜まっている。電気は通っているようで、男の一人は電気ケトルに水を入れ、沸騰するのを待った。
『インスタントコーヒーですが、どうぞ』
『ルカさんはいないんですか?』
テーブルに置かれたコーヒーを無視し、悠は厳しい口調のまま質問をした。
『まず、あなたがルカ王子の婚約者だという証拠をお見せ下さい』
睨み合いだけでは埒が明かず、胸元から渡されたペンダントを取り出した。
『お渡しはしません。僕のものですから』
『結構です』
ルカから渡されたときと比べ、ロケットペンダントは形が変わっていた。少々複雑だったデザインはシンプルなものになり、これはルカがデザイナーに頼んで作り直してもらったためだ。悠にも似合うように、よりシンプルになったペンダントには、ドキュスティーヌ家の家紋が浮き彫りになっている。
男たちはフランス語を用いて小声で何か話している。
『大変失礼致しました、ハルカ様。これまでの無礼をお詫びしたい』
『無礼と思うのなら、ルカさんに会わせて下さい』
『それはできません。なぜなら、彼に誘拐の疑いがかかっているからです』
悠は一驚し、声が上擦った。
『何かの間違いです』
きっぱりと意思を示し、負けじと男たちを見回した。
『ソフィア・ド・ヴァーブル様をご存知ですか?』
『いいえ、知りません』
『ルカ様の奥様だった方です。連絡が取れず、家族総出で捜しております』
『なぜルカさんが疑われているのですか?』
『まず、彼とソフィア様がほぼ同時期に行方不明になったこと。そしてご家族の方が、ルカ様がご存知である可能性が高いと仰ったのです』
『根拠のない話です』
『我々は雇われた身ですから、根拠の問題ではありません』
人捜しならばルカに依頼すればいい。それをしないということは、ルカは身内に霊救師という職業を話していない。少し冷めたコーヒーは飲み頃であっても、口をつける気にはならない。
『意地でも吐いてもらおうと、僕を人質に取ったのですか』
『人質、ですか』
『違いませんよね』
『我々はソフィア様の安否確認と、彼女をフランスへ連れて帰ることが目的です。何度も言いますが、ハルカ様に危害を加えるつもりはありません』
『僕に何かあったら、ルカさんは黙っていない』
『でしょうね。法律をねじ曲げてでも、我々の息の根を止めようとするでしょう』
誰よりも人思いで優しくて、寂しい人。命に変えてでも、復讐を選ぶ男だ。悠は良く知っている。
『ハルカ様は時が来るまで、こちらで過ごして頂きます』
『逃げるかもしれません』
『あなたの身の安全のために、見張りをつけます。初めて来た居場所で、ここは森の奥地です。どうか、おとなしくなさって下さい』
丁寧な脅し文句に、悠はうなだれるしかない。
『心配なさらないで下さい。必ず、ルカ様の元へお返しします』
この状況であればルカも律儀な恫喝を受けているはずだ。手出しが出来ないよう、同じように苦しい状況で。
男たちは日本流の挨拶をし、コテージから出ていった。
まずは部屋の確認を始めた。リビングにキッチン、トイレと風呂は別、寝室にはベッドが二つ。どこで携帯端末を開いても圏外であり、此処へ拉致された理由を突きつけられた。
キッチンを漁ると、紅茶がある。ティーバッグだが、余っている湯を入れて飲んだ。不気味な黒のワゴン車が窓から見える風景を占め、カーテンを閉める。
時刻は夕方に差し掛かり、悠は気分を変えようと冷蔵庫を開けた。レトルト食品ばかりで、常温で保存するはずのものまでなぜか冷やされている。アジアンショップで売られているカレーも入っていて、パッケージには英語で表記されている。湯で温めている間に冷凍ライスを電子レンジで解凍しようとスイッチを入れる。
もう一度スマホの時計を見ると、ステータスバーに無線マークが浮かび上がった。悠の思惑通りだった。この分だとルカも無線の届かないところへ監禁されている可能性があると考え、悠は電子レンジの写真を撮るとすぐに一枚送った。
温めた熱々のご飯を皿に装い、湯煎したカレーも盛り付けた。溶いた卵はマグカップに入れ、砂糖と牛乳─賞味期限を確認したもの─を混ぜ合わせる。それを電子レンジで数分セットし、その間にカレーの写真と窓から見える黒のワゴン車と風景の写真も送信した。出来上がったプリンは気泡ができて美しくない。
レトルトカレーと即席プリンで夕食を食べ終え、ひとまず熱いシャワーで汗を流した。とにかく何か温めるものはないかと探し、マグカップに水を入れもう一度ボタンを押した。
メッセージはない。だが、通話アプリのに写真が一枚貼り付けられている。それを見た悠は心臓が飛び出しそうになった。
「ビ、ビューティー」
風呂上がりなのかバスローブを羽織ったルカが、白い肌をこれ見よがしに見せつけている。浮き出た鎖骨には水滴が溜まり、妖美な喉元に悠は喉を鳴らした。白い靄が掛かるのは霊的なものである。
悠ははたと気づく。ルカの性格を考えれば彼は自撮りなどしない。写真や鏡の類を嫌うからだ。
「喉……」
悠は喉に手をやり、意図を読み取った。写真であれば万が一見られても誤魔化しが利く。ロケットペンダントだ。一度も開けたことのないペンダントの蓋を開けると、写真を入れるはずの上には美しい女性がレリーフされている。どことなくルカに似ていた。下画面には、小さなボタンが備わっている。取り外しが出来るようで、これもルカが填めたものだ。悠はボタンを押し込んだが、何も鳴らない。カチッという音だが虚しく響いた。
以降ルカからも連絡は無く、明日の動ける体力を考え、就寝した。
目が覚めたのは沖融たる自然の音色でも甘く低い声でもない。コテージの外が騒がしく、カーテンを通した車のライトで飛び起きた。
解錠と共に廊下が騒がしいが、外はまだ起床には早すぎる時間帯だ。
『ハァイ!』
窓を全開にし、下框に足を掛けたまま、悠は背後を振り返った。陽気な男性が片手を上げ、人懐っこい笑みを撒き散らしている。悠は関わりたくないと全身で訴え、悪寒が身体中を駆け巡った。
『オーケイ、そんなにルークのところへ行きたいんだね!分かるよ、うん。僕もしばらく会ってないからさ!』
『……ルークと言いましたか』
ルークとは、ルカの愛称だ。
『そうそう、君の愛する恋人だよ!会いたいだろう?それなら僕と一緒に来るんだ!あいつら起きちゃうからね。さっさと荷物をまとめたまえ』
びしっと命令口調で決める男は、癖のある英語でハリーアップと言う。
着替えをショルダーバックに詰め、用意されていたスーツを着た。コテージの外には数人の男性たちがいて、悠を閉じ込めた彼らの仲間ではない。地面には悠を攫った男たちが伸びていた。日本製の高級車に乗るよう指示され、行き先も告げられず車は走り出した。
『やっぱり車は日本製に限るね!とにかく燃費が良い。素晴らしいだろう?』
『え、ええ……まあ』
『あ、ワインでも飲むかい?残念ながらつまみになるチーズやチョコはないんだけど』
『遠慮します』
『そう?朝食はどこで取ろうか。ホテルのラウンジなんてオシャレでいいよね!』
『お任せします……』
壊れた笑い袋のように勢いは止まらず一人で喋り続ける男だが、一緒に乗車した男性たちは慣れている様子だった。
『あの、ハルカ・カゲモリと申します。助けて下さったんですよね?』
『今更?君が助けてと呼んだんじゃないか』
『呼んだ?』
『ボタン押しただろう?』
『あれはそういう意味でしたか』
『オーウ……知らなかったのかい?』
『ピンチのときにルカさんに押せと言われただけです』
外国人らしいリアクションで肩を上げ、頭を振った。
『それはルークが悪いね。後でちゃんと叱っておくよ。ま、僕の意見なんかこれっぽっちも聞いちゃくれないだろうけど。正確には僕は頼まれて君を助けにきた。とある女性からの依頼でね。あ、女性について聞きたそうだね?そうだね?残念だけど着いてからのお楽しみだよ!今から丸一日かけてイタリアへ行くんだからさ!』
『イタリア?スペインから遠いですよね?』
『そうだよ!遠いよ!だから感謝してよ』
『はい、します。ありがとうございます』
『素直だね。ルークもこれくらい素直だといいんだけど』
男は前髪を鬱陶しそうに後ろへ撫でた。
『あなたは少し、ルカさんに似ています』
『そうだね、兄弟だからね』
『…………え?』
『ワォ!驚いた?僕の名前はクリストファー・シモン・ド・キュスティーヌ』
『シモン……?チェスティではないのですか?』
『異母兄弟だからね。シモンは母方の名前』
『知らなかった……』
『君たちって恋人だよね?僕のことも何も聞いてないの?』
『ご兄弟のことは話したがらないので、なるべく聞かないようにしているんです』
『なんてことだ……!それほど嫌われていたとは……』
『仲悪いんですね』
『僕はルークを愛してるし憎んでるよ。理由は分かるね?』
『はい……多分』
遺産相続の権限は、瞳の色がそれぞれ異なる末孫が生まれた場合、城も遺産もすべて受け渡すという問題の遺言書だ。今のところ、ルカが相続人となっている。命を狙われかねないので、ルカは両方の目に黒いコンタクトレンズを装着している。
『選んだのが男性だとは思わなかった。聞いたときは君も憎たらしく思ったさ』
『ですよね。心中察します』
『素晴らしい棒読みだ。ちょっと相談があるんだけど』
黙っていれば、ふとした瞬間にルカに似ている。だが今のように企みのある表情をすれば、全く似て非なる人物だった。
『日本円で一千万円あげるから、ルークと別れてくれない?』
『簡単に言いますね』
『一千万くらいならポンと出せるし』
『そうですか』
『なんなら二千万まで出すよ。どう?』
『お断りします』
『ばっさり切り捨てたね。まるで日本のテレビの通信販売に出てくる包丁のようだよ!』
『お詳しいですね』
『日本が大好きだからさ!それで、いくらなら別れてくれる?』
『別れるも何も、その気は一切ありませんよ。そもそもルカさんは二千万円の価値しかないと言いたいんですか?それよりルカさんはどこにいるんです?』
『まあまあ落ち着いて。ルーク、良かったね!』
『え?』
クリストファーは懐からスマホを取り出すと、悠に差し出した。
『悠?元気そうで何よりです』
「ルカさん……!」
『日本語で結構ですよ。私もそのように話します。クリスは日本語が分かりませんので』
「ルカさん、待って切らないで」
『切りませんよ。落ち着いて』
含み笑いをするルカの声は平静で、どこか楽しんでいるような声色だ。
『謝罪や説明などはすべて後回しにします。不本意ですが、今はその煩いコバエのような男の指示に従って下さい』
『日本語聞き取れたよ。コバエとは酷いね』
『あなたに渡したネックレスがある限り、誰もあなたに手出しは出来ません。従者とクリスから離れないように、いやクリスからはなるべく離れるように』
「複雑ですけど、把握しました。また必ず会えますよね?ルカさんはケガしてませんよね?」
『ピンピンしておりますよ。あなたが送ってくれたカレーライスの画像でさらに食欲が沸いたほどに。私は今、フランスにいます。家の騒動に巻き込まれていて、終わり次第あなたの元へ参ります』
「えーと、えーと……」
『あなたの荷物はホテルから回収し、こちらで預かっています。それと』
一呼吸置き、甘ったるい声でルカは語りかけた。
『誰よりも尊く、愛おしく思っていますよ、悠。またしばらく連絡は出来ませんが、必ず迎えにいきます。欲しいものや生活に足りないものがあれば、遠慮なくクリスに言って下さい。では』
悠の返事を待たず、ルカは電話を切った。別れ惜しさを捨てた配慮に、浮かんだ涙をぐっと堪える。
『愛されてるねえ。さっきは二千万とか言っちゃってごめんよ?三千万で手を打たない?』
『クリスさん、お腹が空きましたのでどこかに寄って下さい』
『……君はルークにそっくりだね』
一日目と違う点でいえば、ブランドのスーツに身を固めた集団が些か浮いていた点だ。身体付きもプロレスラーのようで、ある意味ルカ以上に目立っている。男たちの視線の先はルカではなかった。どこへ行っても他人の視線をものにしてしまうルカの苦しさは、悠は少しだけ分かった気がした。
オークショニアの軽快なトークと共に競りがスタートした。次々とテンポ良く落とされていく中、お目当てのネックレスが登場した。ダイヤモンドの輝きが眩しく、参加者たちからは感嘆の息が漏れた。
次々に札が上がる中、隙を付いてルカもかざした。だがすぐに破られる。三度目も大金をふっかけたが、これも値段が上がってしまい、ルカにはもう手だてはない。
「悠」
ルカがこっそりと指をかざす。その額は最高額の倍だ。慌てて悠は札を上げ、数字を口にするとどよめきが沸き起こった。そこでハンマーの叩く音が地下室に響いた。
「え、え」
「落ち着いて。あなたが競り落としたことになります。後で手順を教えます」
慣れてきたはずのオークションで、昨日以上の緊張が身体中を駆け巡った。呪われたネックレスを競り落とした後は、何を競売にかけられているのか悠の頭には入らなかった。
「悠、大丈夫ですか?競売は終わりましたよ」
「だ、大丈夫です。やれます」
「その意気です。こちらをお持ち下さい」
ルカに渡されたメモ用紙には、住所が書かれている。
「依頼主の住所です。宛先を書くように指示されますので、こちらを書いて下さい。送り主は、SHIRAYUKIの住所を書き、ルカ・フロリーディアと記して下さい」
「フロリーディアですね。分かりました」
「支払い後、荷物を送る手筈になります。入札者には封筒を渡されます」
「封筒?」
「振込先などが記載されているものです。開けずに、私の元へ持ってきて下さい」
かちこちに固まる身体に鞭を打ち、通された裏口に進むと会場よりも狭い空間がある。英語での説明のため、悠にも理解が出来た。言われた通りにメモを見ながら住所と連絡先を送り主を書き、封筒を受け取った。
梱包などはお任せし、悠は地上へ続く階段を上がっていく。
ルカがいない。休息所とビュッフェ会場にも顔を出すが、ルカの姿は見当たらなかった。とくん、と静かに鼓動が駆け出していく。ぎゅっと心臓付近を押さえ込んだ。
『失礼ですが、ハルカ・カゲモリさんで間違いないですね?』
プロレスラー並の体格を持つ男たちは、悠の目の前にくると英語で声を掛けた。悠は瞬時にイタリア訛りではないと把握する。
『あなた方は?』
『ルカ様なら、我々の仲間と共におります』
『仲間?』
訝しげに、悠は聞き返した。
『まずはお名前を教えて下さい。素性が分からない方に言われても信じられません』
『フランスから参りました』
悠は口を噤み、相手の出方を待った。フランスという隣国の名前は危険な香りが付きまとう。回りの人たちは一触即発の雰囲気に、動く足が自然と早くなっている。目に見えないものたちは、悠にしか聞こえない声でざわめいている。
『フランスでのニュースはご覧になりましたか?』
『生憎、フランスへは行っておりません』
『スペインのニュースは?』
『スペイン語は不得意です』
不得意ではなく、正確には炭酸が入っているかどうかしか理解していない。
『ハルカ様にお話をお伺いしたいのです』
『ご用件ならここでお願いします』
『いえ、ワゴン車の中へお願いします』
『まずはルカさんに会わせて下さい』
『ご自分の立場を踏まえて、どうかご発言を注意して頂きたい』
腰に添えられた手を払おうにも、力の差は歴然だった。
『それは、ルカさんに危害を加えようとしているのですか?』
『まさか。とんでもない。ルカ様には傷一つ付けられません。国が黙っていないでしょう』
落ち着け、落ち着けと何度も自身に訴える。この場合、ルカなら一体どうするのかと思考を巡らせた。悠にすべきことは一つで、まずはルカの身の安全が先だった。悠は頷き、スーツの男たちについていった。
駐車場に停まるワゴン車に乗り込むと、車内は独特の匂いを放っている。頭がくらくらするような、妖艶な香りだ。ルカがたまにつけるイランイランの香りとも違う。
『どこへ向かっていますか?』
『とある建物です』
それ以上男たちは悠の質問には答えない。ワゴン車から眺める景色は新鮮だが、真逆を言えば何処を走っているのか悠には分からない。ルカの霊魂を辿れるかも自信がない。
後部座席の前にはカーテンが敷かれていて、運転席と助手席は見えない。悠の両隣にも男が二人座っていて、逃げ場はなかった。
やがてワゴン車は木々の中を走り出した。車内にも聞こえる鳥の声は、日本では聞き慣れない甲高い鳴き声だ。悠は息苦しくなった。原因は嗅ぎ慣れない香りで、頭の働きが鈍い。手を動かす動作にも、脳へ命令し指に伝わる感覚がずれている。足のつま先を動かす感覚もおかしいかった。
『着きました』
一時間以上走り続け、着いた先は森の奥で、コテージが一軒建っていた。中に入るよう促され、おとなしく男の後ろを追う。
『そちらのソファーへお座り下さい』
有無を言わせない態度に、悠は従った。棚には食器があるが、使われた形跡が無く、埃が溜まっている。電気は通っているようで、男の一人は電気ケトルに水を入れ、沸騰するのを待った。
『インスタントコーヒーですが、どうぞ』
『ルカさんはいないんですか?』
テーブルに置かれたコーヒーを無視し、悠は厳しい口調のまま質問をした。
『まず、あなたがルカ王子の婚約者だという証拠をお見せ下さい』
睨み合いだけでは埒が明かず、胸元から渡されたペンダントを取り出した。
『お渡しはしません。僕のものですから』
『結構です』
ルカから渡されたときと比べ、ロケットペンダントは形が変わっていた。少々複雑だったデザインはシンプルなものになり、これはルカがデザイナーに頼んで作り直してもらったためだ。悠にも似合うように、よりシンプルになったペンダントには、ドキュスティーヌ家の家紋が浮き彫りになっている。
男たちはフランス語を用いて小声で何か話している。
『大変失礼致しました、ハルカ様。これまでの無礼をお詫びしたい』
『無礼と思うのなら、ルカさんに会わせて下さい』
『それはできません。なぜなら、彼に誘拐の疑いがかかっているからです』
悠は一驚し、声が上擦った。
『何かの間違いです』
きっぱりと意思を示し、負けじと男たちを見回した。
『ソフィア・ド・ヴァーブル様をご存知ですか?』
『いいえ、知りません』
『ルカ様の奥様だった方です。連絡が取れず、家族総出で捜しております』
『なぜルカさんが疑われているのですか?』
『まず、彼とソフィア様がほぼ同時期に行方不明になったこと。そしてご家族の方が、ルカ様がご存知である可能性が高いと仰ったのです』
『根拠のない話です』
『我々は雇われた身ですから、根拠の問題ではありません』
人捜しならばルカに依頼すればいい。それをしないということは、ルカは身内に霊救師という職業を話していない。少し冷めたコーヒーは飲み頃であっても、口をつける気にはならない。
『意地でも吐いてもらおうと、僕を人質に取ったのですか』
『人質、ですか』
『違いませんよね』
『我々はソフィア様の安否確認と、彼女をフランスへ連れて帰ることが目的です。何度も言いますが、ハルカ様に危害を加えるつもりはありません』
『僕に何かあったら、ルカさんは黙っていない』
『でしょうね。法律をねじ曲げてでも、我々の息の根を止めようとするでしょう』
誰よりも人思いで優しくて、寂しい人。命に変えてでも、復讐を選ぶ男だ。悠は良く知っている。
『ハルカ様は時が来るまで、こちらで過ごして頂きます』
『逃げるかもしれません』
『あなたの身の安全のために、見張りをつけます。初めて来た居場所で、ここは森の奥地です。どうか、おとなしくなさって下さい』
丁寧な脅し文句に、悠はうなだれるしかない。
『心配なさらないで下さい。必ず、ルカ様の元へお返しします』
この状況であればルカも律儀な恫喝を受けているはずだ。手出しが出来ないよう、同じように苦しい状況で。
男たちは日本流の挨拶をし、コテージから出ていった。
まずは部屋の確認を始めた。リビングにキッチン、トイレと風呂は別、寝室にはベッドが二つ。どこで携帯端末を開いても圏外であり、此処へ拉致された理由を突きつけられた。
キッチンを漁ると、紅茶がある。ティーバッグだが、余っている湯を入れて飲んだ。不気味な黒のワゴン車が窓から見える風景を占め、カーテンを閉める。
時刻は夕方に差し掛かり、悠は気分を変えようと冷蔵庫を開けた。レトルト食品ばかりで、常温で保存するはずのものまでなぜか冷やされている。アジアンショップで売られているカレーも入っていて、パッケージには英語で表記されている。湯で温めている間に冷凍ライスを電子レンジで解凍しようとスイッチを入れる。
もう一度スマホの時計を見ると、ステータスバーに無線マークが浮かび上がった。悠の思惑通りだった。この分だとルカも無線の届かないところへ監禁されている可能性があると考え、悠は電子レンジの写真を撮るとすぐに一枚送った。
温めた熱々のご飯を皿に装い、湯煎したカレーも盛り付けた。溶いた卵はマグカップに入れ、砂糖と牛乳─賞味期限を確認したもの─を混ぜ合わせる。それを電子レンジで数分セットし、その間にカレーの写真と窓から見える黒のワゴン車と風景の写真も送信した。出来上がったプリンは気泡ができて美しくない。
レトルトカレーと即席プリンで夕食を食べ終え、ひとまず熱いシャワーで汗を流した。とにかく何か温めるものはないかと探し、マグカップに水を入れもう一度ボタンを押した。
メッセージはない。だが、通話アプリのに写真が一枚貼り付けられている。それを見た悠は心臓が飛び出しそうになった。
「ビ、ビューティー」
風呂上がりなのかバスローブを羽織ったルカが、白い肌をこれ見よがしに見せつけている。浮き出た鎖骨には水滴が溜まり、妖美な喉元に悠は喉を鳴らした。白い靄が掛かるのは霊的なものである。
悠ははたと気づく。ルカの性格を考えれば彼は自撮りなどしない。写真や鏡の類を嫌うからだ。
「喉……」
悠は喉に手をやり、意図を読み取った。写真であれば万が一見られても誤魔化しが利く。ロケットペンダントだ。一度も開けたことのないペンダントの蓋を開けると、写真を入れるはずの上には美しい女性がレリーフされている。どことなくルカに似ていた。下画面には、小さなボタンが備わっている。取り外しが出来るようで、これもルカが填めたものだ。悠はボタンを押し込んだが、何も鳴らない。カチッという音だが虚しく響いた。
以降ルカからも連絡は無く、明日の動ける体力を考え、就寝した。
目が覚めたのは沖融たる自然の音色でも甘く低い声でもない。コテージの外が騒がしく、カーテンを通した車のライトで飛び起きた。
解錠と共に廊下が騒がしいが、外はまだ起床には早すぎる時間帯だ。
『ハァイ!』
窓を全開にし、下框に足を掛けたまま、悠は背後を振り返った。陽気な男性が片手を上げ、人懐っこい笑みを撒き散らしている。悠は関わりたくないと全身で訴え、悪寒が身体中を駆け巡った。
『オーケイ、そんなにルークのところへ行きたいんだね!分かるよ、うん。僕もしばらく会ってないからさ!』
『……ルークと言いましたか』
ルークとは、ルカの愛称だ。
『そうそう、君の愛する恋人だよ!会いたいだろう?それなら僕と一緒に来るんだ!あいつら起きちゃうからね。さっさと荷物をまとめたまえ』
びしっと命令口調で決める男は、癖のある英語でハリーアップと言う。
着替えをショルダーバックに詰め、用意されていたスーツを着た。コテージの外には数人の男性たちがいて、悠を閉じ込めた彼らの仲間ではない。地面には悠を攫った男たちが伸びていた。日本製の高級車に乗るよう指示され、行き先も告げられず車は走り出した。
『やっぱり車は日本製に限るね!とにかく燃費が良い。素晴らしいだろう?』
『え、ええ……まあ』
『あ、ワインでも飲むかい?残念ながらつまみになるチーズやチョコはないんだけど』
『遠慮します』
『そう?朝食はどこで取ろうか。ホテルのラウンジなんてオシャレでいいよね!』
『お任せします……』
壊れた笑い袋のように勢いは止まらず一人で喋り続ける男だが、一緒に乗車した男性たちは慣れている様子だった。
『あの、ハルカ・カゲモリと申します。助けて下さったんですよね?』
『今更?君が助けてと呼んだんじゃないか』
『呼んだ?』
『ボタン押しただろう?』
『あれはそういう意味でしたか』
『オーウ……知らなかったのかい?』
『ピンチのときにルカさんに押せと言われただけです』
外国人らしいリアクションで肩を上げ、頭を振った。
『それはルークが悪いね。後でちゃんと叱っておくよ。ま、僕の意見なんかこれっぽっちも聞いちゃくれないだろうけど。正確には僕は頼まれて君を助けにきた。とある女性からの依頼でね。あ、女性について聞きたそうだね?そうだね?残念だけど着いてからのお楽しみだよ!今から丸一日かけてイタリアへ行くんだからさ!』
『イタリア?スペインから遠いですよね?』
『そうだよ!遠いよ!だから感謝してよ』
『はい、します。ありがとうございます』
『素直だね。ルークもこれくらい素直だといいんだけど』
男は前髪を鬱陶しそうに後ろへ撫でた。
『あなたは少し、ルカさんに似ています』
『そうだね、兄弟だからね』
『…………え?』
『ワォ!驚いた?僕の名前はクリストファー・シモン・ド・キュスティーヌ』
『シモン……?チェスティではないのですか?』
『異母兄弟だからね。シモンは母方の名前』
『知らなかった……』
『君たちって恋人だよね?僕のことも何も聞いてないの?』
『ご兄弟のことは話したがらないので、なるべく聞かないようにしているんです』
『なんてことだ……!それほど嫌われていたとは……』
『仲悪いんですね』
『僕はルークを愛してるし憎んでるよ。理由は分かるね?』
『はい……多分』
遺産相続の権限は、瞳の色がそれぞれ異なる末孫が生まれた場合、城も遺産もすべて受け渡すという問題の遺言書だ。今のところ、ルカが相続人となっている。命を狙われかねないので、ルカは両方の目に黒いコンタクトレンズを装着している。
『選んだのが男性だとは思わなかった。聞いたときは君も憎たらしく思ったさ』
『ですよね。心中察します』
『素晴らしい棒読みだ。ちょっと相談があるんだけど』
黙っていれば、ふとした瞬間にルカに似ている。だが今のように企みのある表情をすれば、全く似て非なる人物だった。
『日本円で一千万円あげるから、ルークと別れてくれない?』
『簡単に言いますね』
『一千万くらいならポンと出せるし』
『そうですか』
『なんなら二千万まで出すよ。どう?』
『お断りします』
『ばっさり切り捨てたね。まるで日本のテレビの通信販売に出てくる包丁のようだよ!』
『お詳しいですね』
『日本が大好きだからさ!それで、いくらなら別れてくれる?』
『別れるも何も、その気は一切ありませんよ。そもそもルカさんは二千万円の価値しかないと言いたいんですか?それよりルカさんはどこにいるんです?』
『まあまあ落ち着いて。ルーク、良かったね!』
『え?』
クリストファーは懐からスマホを取り出すと、悠に差し出した。
『悠?元気そうで何よりです』
「ルカさん……!」
『日本語で結構ですよ。私もそのように話します。クリスは日本語が分かりませんので』
「ルカさん、待って切らないで」
『切りませんよ。落ち着いて』
含み笑いをするルカの声は平静で、どこか楽しんでいるような声色だ。
『謝罪や説明などはすべて後回しにします。不本意ですが、今はその煩いコバエのような男の指示に従って下さい』
『日本語聞き取れたよ。コバエとは酷いね』
『あなたに渡したネックレスがある限り、誰もあなたに手出しは出来ません。従者とクリスから離れないように、いやクリスからはなるべく離れるように』
「複雑ですけど、把握しました。また必ず会えますよね?ルカさんはケガしてませんよね?」
『ピンピンしておりますよ。あなたが送ってくれたカレーライスの画像でさらに食欲が沸いたほどに。私は今、フランスにいます。家の騒動に巻き込まれていて、終わり次第あなたの元へ参ります』
「えーと、えーと……」
『あなたの荷物はホテルから回収し、こちらで預かっています。それと』
一呼吸置き、甘ったるい声でルカは語りかけた。
『誰よりも尊く、愛おしく思っていますよ、悠。またしばらく連絡は出来ませんが、必ず迎えにいきます。欲しいものや生活に足りないものがあれば、遠慮なくクリスに言って下さい。では』
悠の返事を待たず、ルカは電話を切った。別れ惜しさを捨てた配慮に、浮かんだ涙をぐっと堪える。
『愛されてるねえ。さっきは二千万とか言っちゃってごめんよ?三千万で手を打たない?』
『クリスさん、お腹が空きましたのでどこかに寄って下さい』
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