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第二章 非日常
016 十月(二)
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湯船の底が見えないほど、何かの薬草が浮いていた。
身体と心の緊張を解すものらしい。慣れない香りで満たすよりも、アイスクリームを食べながらチョコレートのお風呂に入りたい。
桶の中には潰した薬草が入っている。これで身体を洗い、後ろの穴にも薬草を入れ、中を消毒するのだ。
嫌なことは先にやってしまおうと、男の意地を見せた。膝を開いて尻を持ち上げ、潰した薬草を中に入れる。染みはしない。異物に変な感じがするだけだ。
「うう、はる、にい…………」
彼の名前を呼ぶと、いくらか楽になれた。
はるにい、はるにいと呪文を唱え、異端な行為をした後は、ようやく湯船に浸かる。
「俺……植物になるかも」
今なら野原に交じっても、熊に見つからずに逃げ切れそうだ。人間の匂いがまったくしない。植物と同化している。
頭から足の先まで洗い終わり、湯船から上がると宮司が待ち構えていた。
宮司は下からゆっくりと身体を見つめ、ある中心で止まると目を細めた。
視線が気持ち悪くて、すぐに大きなタオルで身体を包む。
「こちらに着替えて下さい」
「部屋から出ていって下さい。俺ひとりで着替えができますから」
何か言いたげに口を開いたが、宮司は部屋を出ていった。前のように、咲いている花や歩き回るキツネの話をしたい。元通りの関係に戻れるだろうか。
稽古の最中に着ていた襦袢と似ていたが、こちらの方が軽くて着心地がいい。
廊下では宮司が待っていた。行きよりも帰りが短い、不思議な廊下だ。長くなれ、長くなれと願いを込めた結果、あれだけ並べられていた料理はすべて片づけられ、座卓もなくなっている。代わりに、汚れ一つない真っ白な布団が敷かれていた。二式並んでいるわけではない、大人二人でも横になれるような、大きな布団が一式だけだ。
「滞りのない儀式の成功を願っています」
「………………はい」
「では、外におりますので」
「待って下さい。外にいるって……家に帰らないんですか?」
「ご安心を。中を覗くわけではありません。外から物音を聞いているだけです」
呆れておぞましくて声が出ない。何を考えているんだ。
「趣味悪いぞ。まさか神官もいるとか言わないよな?」
湯浴みを終えた拓郎は、制服と同じように襦袢を着崩して頭をタオルで拭いている。だらしのない格好に宮司の眉間には皺が寄るが、俺からしてみたら真面目に着こなす拓郎の方が気持ちが悪い。今が拓郎のスタイルだ。
「おっしゃる通りです。本当は衝立の裏で耳を澄ます方法もございますが……さすがに酷だと思い、これ以上のない譲歩です」
「反吐が出る。まあいいよ、それで。絶対に中に入ってくんなよ」
やっぱり拓郎はするつもりだ。覚悟を決めていたはずなのに、今さら怖じ気づいていて、拓郎は今になって強い意思を持っている。俺とは何もかも真逆だった。
宮司が出ていくと、拓郎は施錠してカーテンも閉めた。薄暗い明かりだけで、いかにも夜の雰囲気といった様子なのに、気持ちがまるで乗らない。恐怖すら沸いている。
「座れよ、そこ」
拓郎はどっかりと大きな布団に腰を下ろし、胡座をかいた。
できるだけ距離を空け、俺も座る。
「ほ、ほんとにするの?」
「…………俺とはしたくないってことでいいんだよな」
「そうだよ!」
「声がでかい。外に聞こえる」
「そもそも、儀式で性行為なんて間違ってる。誰も幸せになんてなれない。拓郎も分かってるんでしょ?」
「佐狐家と仁神家の末っ子か……なんで末同士なんだろうな。もし……俺が先に生まれていたら、お前は」
最後はなんて言おうとしたのだろう。
拓郎の目が光り、俺は見ていられなくて目を伏せた。
強く唇を噛みしめたとき、後ろから誰かに口元を押さえられ、後ろに引かれた。
「んーっ」
「しっ」
この感触を知っている。体臭も体温も心地よくて、ずっと包まれていたくなる香り。暴れるのをやめ、首を傾けて後ろを向いた。
「な、なんで……どうやって入ったの……?」
優しさの正体は、幸春さんだ。拓郎のお兄さんで、俺の好きな人。
入れるわけがないのに、なぜ彼がいるのか。頭がついていかない。
「拓郎が裏口を見つけてくれていたんだよ」
「いつ?」
「八月中に」
「八月……もしかして、森の中をうろうろしてたのって」
禊の最中、俺はカメラを担いだ男性たちや拓郎と遭遇している。あのときしか考えられない。
「ランニングのふりして、裏口や見つからない抜け道を探していてもらってたんだ」
「そうだったんだ……」
「ふりじゃねえよ。ランニングはしてた。裏口がついでだ。じゃあ、俺は部屋に戻ってるぜ」
「え……儀式は?」
「お前……したいのかしたくないのかどっちなんだよ」
「し、したくないに決まってるよ」
「俺とは?」
唐突の幸春さんだ。彼はまっすぐに俺を見て、むき出しの太股に触れてくる。
「俺の代わりに兄貴が儀式を行う」
「ちょっと待ってよ。それってありなの? 本当は末同士じゃないとダメなのに」
「だからしたいのかよ」
「したくないってば」
「なら兄貴でいいじゃねーか」
「でいいって言い方気に食わないけどね。湊は俺がいいよね? さっき盛大な告白もしていたんだし」
ぐるぐると頭の中の針が逆回転をし、拓郎とのやりとりを思い出す。
部屋が薄暗くて助かった。じゃないと、顔が真っ赤なのがばれていた。
「ど、う、して……」
「俺も湊と一緒がいい。誰にも渡したくない」
それは、彼の盛大な告白ととっていいのだろうか。
「好きって……こと? 」
「うん」
「いつから?」
「ずっと前。湊があまりに俺にばっかり懐くから」
「神様って本当にいたんだ……。最後の最後で俺に味方してくれた……」
「じゃあ、俺はもういらないな」
拓郎は立ち上がると、さっさと部屋を出ようとした。
「待って、拓郎」
「あ?」
「あの……いいの? 拓郎はそれで」
「お前、まさか俺が告ったの本気にしてんじゃねーだろうな?」
「はあ? あれ嘘だって言うの?」
「嘘に決まってんだろ、バーカ」
「やっぱり拓郎は嫌い! 絶対に覗かないでよ!」
「誰かそんな趣味あるかよ。俺は部屋でゲームやってるから、お前こそ邪魔すんなよ」
拓郎は、拓郎だ。昔から変わらない。
けれど、俺にバカと言う声が少しだけ震えていたのは、知らないふりをする。それが俺と拓郎の関係だ。それでいい、将来はお酒を飲めるようになっても、杯を交わす間柄になっても、俺たちは変わらない。
幸春さんも気づいているはずなのに、部屋を出ていく拓郎には何も声をかけなかった。
「さて、湊」
「はい」
「俺でいい?」
「春兄がいいけど……大丈夫だよね? ばれないよね?」
「俺は声を出さないようにして、湊がいっぱい喘げば大丈夫」
生々しい言葉に、気持ちが後込みしてしまう。
「俺たちのするのは儀式でも何でもない。ただのセックスだ。それによって災いが起こるなんて馬鹿げてる。俺たちより上の世代は信じ切ってる人も多いし、大きな声を上げて否定はしないけどね。信じているものを否定されるのは、少なからず人生や人間関係にひびが入る。消しゴムの件も」
「…………あ。春兄、知ってて黙ってたの?」
「湊は忘れちゃった? 消しゴムに好きな人の名前を書くっておまじないは、俺が教えたんだよ」
「そうだっけ?」
「湊は小さかったから覚えてないかも。あのときも湊は一生懸命に俺の名前を書いて、ホント可愛かった。変わったことと言えば、俺の名前を漢字で書けるようになったことかな。湊の成長を感じられて、少し涙が出そうになった」
俺ひとりでてんやわんやしていて、すべて幸春さんにはお見通しだった。なんて恥ずかしい。穴が空ったら埋まりたいし、上から蓋をしてほしい。
「それじゃあ、セックスしよう」
儀式、ではなく、言葉選びがセックス。幸春さんの儀式に対する思いが感じられる言葉だった。
端から信じていないのに、なぜ一か月間も付きっきりて稽古をしてくれたのか。神官たちに俺を触れさせたくなかった、と都合の良いことばかり浮かんでしまう。俺の思い過ごしではないといい。
布団に横になるよう促され、緊張が走る中、身体を横たえた。
布一枚しかまとっていない身体は、簡単に全裸になる。
「俺が奉仕するから、何もせずそのままでいて」
幸春さんは額にキスをし、瞼、頬、鼻と音を立てて唇を落としていく。
唇にしてほしくてねだるが、前のように深いものはしてくれない。
「ごめん、してしまったら俺のが爆発しそう」
「おっきいね」
「湊の中に入りたいって言ってる」
ズボンの上から擦ってみると、幸春さんは笑うだけでそっと手を外した。
「限界だよ。可愛く泣いてね」
「あっ…………」
胸につくほど足を持ち上げ、膝を抱えるようにしてと言う。
従順に従えば、興奮の証としてすでに勃ち上がった性器からは透明な液体が漏れている。
初めは人差し指を入れ、すんなり入るのを見計らい、中指も一緒に埋め込んでいく。
「自分で濡らしたの?」
「うん……身体洗ったときに、やるように言われてたから」
「いいね……もう俺のものが入りそう」
「入れてほしい……おっきいので、いっぱいして」
入るだろうか。稽古で使った棒よりもはるかに大きい。それに生々しい。
亀頭があてがわれると、ゆっくりと貫いていく。
「はあっ……もう少し入れるよ」
両方の突起をくるくると指の腹で回されると、甲高い声が出てしまう。彼により馴らされた身体は着実に作り替えられていた。
「いい声だ……たくさん泣いて、神官たちに聞かせないとね」
「あっやだ……まって、恥ずかし…………っ」
声が一番高く上がるところを見つけた幸春さんは、そこばかりを攻め続ける。止めてと言っても止めてくれない。
神官たちには確実に聞こえていても、快楽を教えられた身体は抑えがきかなかった。
奥底で小刻みに揺らされ、生暖かいものが体内で飛び散った。
いく、いくとうわ言のように声を上げ、彼の胸元に飛沫を散らす。
「頑張ったね、湊。あとは任せて」
幸春さんは顔中にキスを降らし、意味ありげな言葉を残した。
何を意味するのか聞く前に、俺は眠気に勝てなかった。嬉しいだの、好きだの漏らした気がするが、彼に届いていたのか定かではない。
身体と心の緊張を解すものらしい。慣れない香りで満たすよりも、アイスクリームを食べながらチョコレートのお風呂に入りたい。
桶の中には潰した薬草が入っている。これで身体を洗い、後ろの穴にも薬草を入れ、中を消毒するのだ。
嫌なことは先にやってしまおうと、男の意地を見せた。膝を開いて尻を持ち上げ、潰した薬草を中に入れる。染みはしない。異物に変な感じがするだけだ。
「うう、はる、にい…………」
彼の名前を呼ぶと、いくらか楽になれた。
はるにい、はるにいと呪文を唱え、異端な行為をした後は、ようやく湯船に浸かる。
「俺……植物になるかも」
今なら野原に交じっても、熊に見つからずに逃げ切れそうだ。人間の匂いがまったくしない。植物と同化している。
頭から足の先まで洗い終わり、湯船から上がると宮司が待ち構えていた。
宮司は下からゆっくりと身体を見つめ、ある中心で止まると目を細めた。
視線が気持ち悪くて、すぐに大きなタオルで身体を包む。
「こちらに着替えて下さい」
「部屋から出ていって下さい。俺ひとりで着替えができますから」
何か言いたげに口を開いたが、宮司は部屋を出ていった。前のように、咲いている花や歩き回るキツネの話をしたい。元通りの関係に戻れるだろうか。
稽古の最中に着ていた襦袢と似ていたが、こちらの方が軽くて着心地がいい。
廊下では宮司が待っていた。行きよりも帰りが短い、不思議な廊下だ。長くなれ、長くなれと願いを込めた結果、あれだけ並べられていた料理はすべて片づけられ、座卓もなくなっている。代わりに、汚れ一つない真っ白な布団が敷かれていた。二式並んでいるわけではない、大人二人でも横になれるような、大きな布団が一式だけだ。
「滞りのない儀式の成功を願っています」
「………………はい」
「では、外におりますので」
「待って下さい。外にいるって……家に帰らないんですか?」
「ご安心を。中を覗くわけではありません。外から物音を聞いているだけです」
呆れておぞましくて声が出ない。何を考えているんだ。
「趣味悪いぞ。まさか神官もいるとか言わないよな?」
湯浴みを終えた拓郎は、制服と同じように襦袢を着崩して頭をタオルで拭いている。だらしのない格好に宮司の眉間には皺が寄るが、俺からしてみたら真面目に着こなす拓郎の方が気持ちが悪い。今が拓郎のスタイルだ。
「おっしゃる通りです。本当は衝立の裏で耳を澄ます方法もございますが……さすがに酷だと思い、これ以上のない譲歩です」
「反吐が出る。まあいいよ、それで。絶対に中に入ってくんなよ」
やっぱり拓郎はするつもりだ。覚悟を決めていたはずなのに、今さら怖じ気づいていて、拓郎は今になって強い意思を持っている。俺とは何もかも真逆だった。
宮司が出ていくと、拓郎は施錠してカーテンも閉めた。薄暗い明かりだけで、いかにも夜の雰囲気といった様子なのに、気持ちがまるで乗らない。恐怖すら沸いている。
「座れよ、そこ」
拓郎はどっかりと大きな布団に腰を下ろし、胡座をかいた。
できるだけ距離を空け、俺も座る。
「ほ、ほんとにするの?」
「…………俺とはしたくないってことでいいんだよな」
「そうだよ!」
「声がでかい。外に聞こえる」
「そもそも、儀式で性行為なんて間違ってる。誰も幸せになんてなれない。拓郎も分かってるんでしょ?」
「佐狐家と仁神家の末っ子か……なんで末同士なんだろうな。もし……俺が先に生まれていたら、お前は」
最後はなんて言おうとしたのだろう。
拓郎の目が光り、俺は見ていられなくて目を伏せた。
強く唇を噛みしめたとき、後ろから誰かに口元を押さえられ、後ろに引かれた。
「んーっ」
「しっ」
この感触を知っている。体臭も体温も心地よくて、ずっと包まれていたくなる香り。暴れるのをやめ、首を傾けて後ろを向いた。
「な、なんで……どうやって入ったの……?」
優しさの正体は、幸春さんだ。拓郎のお兄さんで、俺の好きな人。
入れるわけがないのに、なぜ彼がいるのか。頭がついていかない。
「拓郎が裏口を見つけてくれていたんだよ」
「いつ?」
「八月中に」
「八月……もしかして、森の中をうろうろしてたのって」
禊の最中、俺はカメラを担いだ男性たちや拓郎と遭遇している。あのときしか考えられない。
「ランニングのふりして、裏口や見つからない抜け道を探していてもらってたんだ」
「そうだったんだ……」
「ふりじゃねえよ。ランニングはしてた。裏口がついでだ。じゃあ、俺は部屋に戻ってるぜ」
「え……儀式は?」
「お前……したいのかしたくないのかどっちなんだよ」
「し、したくないに決まってるよ」
「俺とは?」
唐突の幸春さんだ。彼はまっすぐに俺を見て、むき出しの太股に触れてくる。
「俺の代わりに兄貴が儀式を行う」
「ちょっと待ってよ。それってありなの? 本当は末同士じゃないとダメなのに」
「だからしたいのかよ」
「したくないってば」
「なら兄貴でいいじゃねーか」
「でいいって言い方気に食わないけどね。湊は俺がいいよね? さっき盛大な告白もしていたんだし」
ぐるぐると頭の中の針が逆回転をし、拓郎とのやりとりを思い出す。
部屋が薄暗くて助かった。じゃないと、顔が真っ赤なのがばれていた。
「ど、う、して……」
「俺も湊と一緒がいい。誰にも渡したくない」
それは、彼の盛大な告白ととっていいのだろうか。
「好きって……こと? 」
「うん」
「いつから?」
「ずっと前。湊があまりに俺にばっかり懐くから」
「神様って本当にいたんだ……。最後の最後で俺に味方してくれた……」
「じゃあ、俺はもういらないな」
拓郎は立ち上がると、さっさと部屋を出ようとした。
「待って、拓郎」
「あ?」
「あの……いいの? 拓郎はそれで」
「お前、まさか俺が告ったの本気にしてんじゃねーだろうな?」
「はあ? あれ嘘だって言うの?」
「嘘に決まってんだろ、バーカ」
「やっぱり拓郎は嫌い! 絶対に覗かないでよ!」
「誰かそんな趣味あるかよ。俺は部屋でゲームやってるから、お前こそ邪魔すんなよ」
拓郎は、拓郎だ。昔から変わらない。
けれど、俺にバカと言う声が少しだけ震えていたのは、知らないふりをする。それが俺と拓郎の関係だ。それでいい、将来はお酒を飲めるようになっても、杯を交わす間柄になっても、俺たちは変わらない。
幸春さんも気づいているはずなのに、部屋を出ていく拓郎には何も声をかけなかった。
「さて、湊」
「はい」
「俺でいい?」
「春兄がいいけど……大丈夫だよね? ばれないよね?」
「俺は声を出さないようにして、湊がいっぱい喘げば大丈夫」
生々しい言葉に、気持ちが後込みしてしまう。
「俺たちのするのは儀式でも何でもない。ただのセックスだ。それによって災いが起こるなんて馬鹿げてる。俺たちより上の世代は信じ切ってる人も多いし、大きな声を上げて否定はしないけどね。信じているものを否定されるのは、少なからず人生や人間関係にひびが入る。消しゴムの件も」
「…………あ。春兄、知ってて黙ってたの?」
「湊は忘れちゃった? 消しゴムに好きな人の名前を書くっておまじないは、俺が教えたんだよ」
「そうだっけ?」
「湊は小さかったから覚えてないかも。あのときも湊は一生懸命に俺の名前を書いて、ホント可愛かった。変わったことと言えば、俺の名前を漢字で書けるようになったことかな。湊の成長を感じられて、少し涙が出そうになった」
俺ひとりでてんやわんやしていて、すべて幸春さんにはお見通しだった。なんて恥ずかしい。穴が空ったら埋まりたいし、上から蓋をしてほしい。
「それじゃあ、セックスしよう」
儀式、ではなく、言葉選びがセックス。幸春さんの儀式に対する思いが感じられる言葉だった。
端から信じていないのに、なぜ一か月間も付きっきりて稽古をしてくれたのか。神官たちに俺を触れさせたくなかった、と都合の良いことばかり浮かんでしまう。俺の思い過ごしではないといい。
布団に横になるよう促され、緊張が走る中、身体を横たえた。
布一枚しかまとっていない身体は、簡単に全裸になる。
「俺が奉仕するから、何もせずそのままでいて」
幸春さんは額にキスをし、瞼、頬、鼻と音を立てて唇を落としていく。
唇にしてほしくてねだるが、前のように深いものはしてくれない。
「ごめん、してしまったら俺のが爆発しそう」
「おっきいね」
「湊の中に入りたいって言ってる」
ズボンの上から擦ってみると、幸春さんは笑うだけでそっと手を外した。
「限界だよ。可愛く泣いてね」
「あっ…………」
胸につくほど足を持ち上げ、膝を抱えるようにしてと言う。
従順に従えば、興奮の証としてすでに勃ち上がった性器からは透明な液体が漏れている。
初めは人差し指を入れ、すんなり入るのを見計らい、中指も一緒に埋め込んでいく。
「自分で濡らしたの?」
「うん……身体洗ったときに、やるように言われてたから」
「いいね……もう俺のものが入りそう」
「入れてほしい……おっきいので、いっぱいして」
入るだろうか。稽古で使った棒よりもはるかに大きい。それに生々しい。
亀頭があてがわれると、ゆっくりと貫いていく。
「はあっ……もう少し入れるよ」
両方の突起をくるくると指の腹で回されると、甲高い声が出てしまう。彼により馴らされた身体は着実に作り替えられていた。
「いい声だ……たくさん泣いて、神官たちに聞かせないとね」
「あっやだ……まって、恥ずかし…………っ」
声が一番高く上がるところを見つけた幸春さんは、そこばかりを攻め続ける。止めてと言っても止めてくれない。
神官たちには確実に聞こえていても、快楽を教えられた身体は抑えがきかなかった。
奥底で小刻みに揺らされ、生暖かいものが体内で飛び散った。
いく、いくとうわ言のように声を上げ、彼の胸元に飛沫を散らす。
「頑張ったね、湊。あとは任せて」
幸春さんは顔中にキスを降らし、意味ありげな言葉を残した。
何を意味するのか聞く前に、俺は眠気に勝てなかった。嬉しいだの、好きだの漏らした気がするが、彼に届いていたのか定かではない。
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