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第二章 非日常
010 八月
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玄関の扉を開けると、一匹のキツネが地面をじっと見つめて何かと格闘していた。前足でつついては腰が引け、人間みたいな仕草に緊張感が抜けていく。
「何してるの?」
声をかけると、キツネはくうん、と小さく鳴いた。セミがひっくり返り、ぴくりとも動かなくなっている。
「死んでるのかな」
顔を近づけてみる。死んでいたのは見せかけで、高速で羽を動かすと、髪の先をかすめて飛んでいった。
神社に足を踏み入れると、宮司が境内の掃除をしている。
「おはようございます」
「おはようございます。本日からお世話になります」
宮司は何か言いたげに口を開き、すぐに閉じた。
「随分嫌われたものですね」
「え?」
背後では、キツネが宮司に対し威嚇している。頭を撫でても牙を向ける強い目は変わらなかった。
「年代の神子も、キツネによく好かれました。この時期は私や神官は嫌われるのです」
「なぜですか?」
「神子を幽閉している要注意人物だと思われているのでしょうね。全く、困ったものです」
木陰から覗くキツネも、宮司をずっと睨んでいた。
「禊の内容は、聞いていますね」
「はい。大まかにですけれど」
「禊の間にご案内致します」
境内をさらに進むと、一定の距離を開けてキツネたちがついてきた。一匹は俺の足下から離れない。この子たちとも一か月間、お別れしないといけないのは寂しい。
儀式の間に入り、廊下を進んでいくと、宮司は引き戸の前で止まっ。扉を引くと、木の軋む音が鳴る。
何の変哲もない、普通の和室だ。机に座椅子、ちゃぶ台、布団が一式。シンプルすぎて、今の時代では珍しいくらいだ。
「一か月間はこちらが神子の使用する部屋となります。七時、十二時、十九時に食事が運ばれてきます。衣服はすべて箪笥の中のものをお召し下さい。それ以外は身につけないよう、お気をつけ下さい」
箪笥を開けると、上の段も下の段も、白装束しか入っていなかった。
「あの……下着は?」
「禁止です。普段の着用されている私服、学校の制服も、すべて肌に触れないで下さい」
徹底しているが、下着ともなると抵抗がある。
「下着くらいは何とかなりませんか?」
「なりません。そもそも、一か月間は神子の外出は許されておりません。人と会いはしないので、問題ないかと思いますが」
「でも、」
一番大好きな人に会うのだ。肌を見せなくてはいけないが、それとこれとは話が違う。恥ずかしいものは恥ずかしい。
「佐狐の人間ならば問題ないでしょう。基本的に神子の要望はすべて叶えることになっております。食事に関しても、召し上がりたいものがあれば遠慮なく仰って下さい」
「なんでも?」
「叶えられる範囲内ですが。掃除もしなくて結構です。ご要望があれば、佐狐の人間にお伝え下さい」
必要最低限を伝えると、宮司は廊下に下がり、ちょうど幸春さんとはち合わせた。白装束ではないが、和服を着ている。あまりの格好良さに凝視していると、彼と目が合った。
「では、一か月間、お願い申し上げます」
「お任せ下さい」
同じ高校生でも二年の差は大きいと思っていたが、誰とでも幸春さんは大人に見える。例え俺が五年早く生まれていたとしても、彼の方が大人だろう。
足下が遠ざかっていくと、幸春さんは部屋の中に入ってきた。開きっぱなしになっている箪笥の中を覗く。何とも居心地が悪い。
「眠れた?」
幸春さんの声が優しかった。ここまで来る間、それほど時間が経っていないのに随分緊張していたようで、幸春さんの声を聞いたら身体の力が抜けてしまった。
「大丈夫? 何かあった?」
床に膝がつく前、間一髪で俺の腰を支えてくれた。
背中に手を伸ばすと彼の動きが一瞬止まるが、引き寄せて背中ごと抱きしめる。
「爆弾のせいで心がバラバラになった」
「爆弾?」
「家の前でセミ爆弾食らった。死ぬ」
「ああ、あれね」
回した手越しに肩が揺れた。笑うなんてあり得ない。俺は死ぬかと思ったのに。腹が立ったので、背中に一発お見舞いしてやった。
「いたっ。あははっ」
「笑うなんてひどいよっ」
「あれはびっくりするよね。俺も何度も経験があるよ。今日は禊や準備はなしにして、久しぶりにふたりでゆっくりしようか」
「いいの?」
「ああ。今日からだと緊張もしているだろうし。何かほしいものはある?」
「ううん、今はない。春兄と一緒にいたい」
「うん……そっか」
離れていく手が名残惜しかった。
「湊のお母さんがさ、必要なものがあれば言ってだって」
「もう、それ今朝に何回も聞いた」
「心配しているんだよ。一か月も会えないんだから」
「じゃあ、炭酸飲料が飲みたい」
「伝えておくよ。他は?」
「あとは……今はいいや」
本当は、一か月もひとりで森の中で過ごすのは寂しかった。彼にも家があって、ここにいてとわがままは言えなかった。
日付が変わって、いよいよ儀式の準備が始まった。朝食前と夜に、必ず湯浴みが日課となった。冷水を頭から被り、身体を湯船に使って身体を温め、全身をくまなく洗う。
湯浴みの後は朝食だ。朝食は時間通りに儀式の間に置かれていて、朝から料亭のような豪華さだ。朝食というより神子への貢ぎ物に見えて、ひとり侘しく平らげた。
九時を過ぎると幸春さんがやってきて、神官と同じ格好をしている。準備は儀式の間ではなく、最奥の禊の間で行われる。長い廊下を歩くたび、木版が大きく軋み、本当にいいのか、行くのかと目に見えない者からの忠告に聞こえた。
白装束一枚で、夏なので寒さもないが、下着すら穿けないとなると、心もとない。
見えないように歩くには、小股でずれないようにするしかなかった。
禊ぎの間は、白い布が敷かれていた。横には例の重箱もある。またあれを読まされるのだろうか。
「皮は剥けた?」
「…………少しは」
「できなかったのか?」
「はい……痛くて、どうしたらいいか分からない」
「なら、俺がするしかないな」
幸春さんは部屋を出ると、一分足らずで戻ってきた。手には小瓶がある。
「滑りをよくするものだよ。怖いものじゃない。全部脱いで」
何度も肌を晒したのに、この瞬間だけは一生慣れない。脱がされる方が楽なのかもしれないが、幸春さんは絶対に手をかけようとはしなかった。
紐を解いて布を肩から滑らせると、簡単に裸体が現れる。エアコンの利いた寒さでは、まだ性器は眠ったままだ。遠慮なく集まる視線に、肩が震えて寒いとさえ感じる。
「今日から本格的に稽古を開始する。まずは皮をなんとかしないといけないな。一度大きくしようか」
淡々と告げられ、俺は目を瞑るしかない。恥ずかしい。
「自分でできるね?」
「む、むり……春兄がやって…………」
「……はあ…………」
なぜかため息を吐かれてしまった。
「やっぱりいい。自分でやる」
「俺が受け持つよ。これからも」
これからも。明日以降も彼にしてもらうのか。考えあぐねていると、俺の性器に手を伸ばしてきた。
くすぐったいくらいの柔らかな触れ合いで、下から上へと数度往き来すると、すぐに勃ち上がる。
幸春さんは小瓶の蓋を外し、液体を手に乗せ、両手で伸ばしていく。液体は儀式の社に足を踏み入れたときに感じた匂いに似ていた。
滑る手で性器を包み込むと、生暖かな感覚がぞわりと背筋を通り抜け、吐息が漏れる。
「あっ……いたい…………」
幸春さんは俺に視線を送るがそれも一瞬で、すぐに下を向く。
「ほら、あと少しだ」
「あ、あ、まって……だめ」
赤い先っぽが顔を出し、何の液体なのか分からないほどべとべとになっている。
怖くてたまらなかったのに、彼の手にかかれば何のことはなかった。
「よく熟れているな」
「あっ、あ……んっ」
親指の先で円を描くように擦ると、あっという間に達してしまった。
タオルで拭き取ることもせず、下腹部全体に塗りたくり、身体がいやでも反応する。
「せっかくだから、ここを剃ってみようか」
こことは、大人の証である。
幸春さんは黒い毛を絡め取り、人差し指で巻いては小さく笑う。
「そんな……いいよ。本番前ってこの前話したじゃない」
「慣れておいた方がいいと思って」
重箱には、この前までなかった剃刀が入っていた。
「痛い?」
「痛くない。怪我はさせない」
彼を信じるしかない。
先ほどの液体を丹念に塗り、関係のない性器にも手を伸ばしてきた。萎えた先は段々と頭をもたげ、恥ずかしさのあまり見ていられない。
「あ、は、る……にい」
「ちゃんとよく見て。さあ、剃るよ」
剃刀を当てた瞬間は恐怖で背中が固まるが、肌を滑るとくすぐったい。持ち上がる性器を押さえつけ、あくまで幸春さんの目は真剣だった。
ティッシュで拭き取ると、まるで子供の性器だ。上を向く性器だけが大人の証で、アンバランスさが羞恥心を煽る。
閉じそうになる足を、幸春さんは再び両側に開いた。じっくりと眺め、性器に触れ、指先で肌を撫でていく。
つい最近まで勃起しないと悩んでいたのが嘘みたいだ。
「今日はこれくらいにしよう。明日は今までとは違う稽古を行う」
「今までとは違う……?」
重箱に入っている木枝のような細い棒を見せる。
恐ろしいのは、箱の中にはまだ数本入っている。太さが異なり、一番大きいものでは男性性器をかたどったもので、先も立派に膨らんでいる。
「最初は細いものからで、徐々に太いものを入れていく。そのうち、これなしではいられない身体になる。淫乱な身体ほど、稲荷様は喜んで下さるんだ。今日は早めに休んで、明日も今と同じ時間で稽古を行う」
「はい…………」
夢物語のように思っていた儀式は、あと少しでやってくる。
儀式のため、島の繁栄のため、俺と拓郎は一つに繋がらなければならない。
覚悟を決めたはずなのに、俺の覚悟は揺らぎ始めた。
「何してるの?」
声をかけると、キツネはくうん、と小さく鳴いた。セミがひっくり返り、ぴくりとも動かなくなっている。
「死んでるのかな」
顔を近づけてみる。死んでいたのは見せかけで、高速で羽を動かすと、髪の先をかすめて飛んでいった。
神社に足を踏み入れると、宮司が境内の掃除をしている。
「おはようございます」
「おはようございます。本日からお世話になります」
宮司は何か言いたげに口を開き、すぐに閉じた。
「随分嫌われたものですね」
「え?」
背後では、キツネが宮司に対し威嚇している。頭を撫でても牙を向ける強い目は変わらなかった。
「年代の神子も、キツネによく好かれました。この時期は私や神官は嫌われるのです」
「なぜですか?」
「神子を幽閉している要注意人物だと思われているのでしょうね。全く、困ったものです」
木陰から覗くキツネも、宮司をずっと睨んでいた。
「禊の内容は、聞いていますね」
「はい。大まかにですけれど」
「禊の間にご案内致します」
境内をさらに進むと、一定の距離を開けてキツネたちがついてきた。一匹は俺の足下から離れない。この子たちとも一か月間、お別れしないといけないのは寂しい。
儀式の間に入り、廊下を進んでいくと、宮司は引き戸の前で止まっ。扉を引くと、木の軋む音が鳴る。
何の変哲もない、普通の和室だ。机に座椅子、ちゃぶ台、布団が一式。シンプルすぎて、今の時代では珍しいくらいだ。
「一か月間はこちらが神子の使用する部屋となります。七時、十二時、十九時に食事が運ばれてきます。衣服はすべて箪笥の中のものをお召し下さい。それ以外は身につけないよう、お気をつけ下さい」
箪笥を開けると、上の段も下の段も、白装束しか入っていなかった。
「あの……下着は?」
「禁止です。普段の着用されている私服、学校の制服も、すべて肌に触れないで下さい」
徹底しているが、下着ともなると抵抗がある。
「下着くらいは何とかなりませんか?」
「なりません。そもそも、一か月間は神子の外出は許されておりません。人と会いはしないので、問題ないかと思いますが」
「でも、」
一番大好きな人に会うのだ。肌を見せなくてはいけないが、それとこれとは話が違う。恥ずかしいものは恥ずかしい。
「佐狐の人間ならば問題ないでしょう。基本的に神子の要望はすべて叶えることになっております。食事に関しても、召し上がりたいものがあれば遠慮なく仰って下さい」
「なんでも?」
「叶えられる範囲内ですが。掃除もしなくて結構です。ご要望があれば、佐狐の人間にお伝え下さい」
必要最低限を伝えると、宮司は廊下に下がり、ちょうど幸春さんとはち合わせた。白装束ではないが、和服を着ている。あまりの格好良さに凝視していると、彼と目が合った。
「では、一か月間、お願い申し上げます」
「お任せ下さい」
同じ高校生でも二年の差は大きいと思っていたが、誰とでも幸春さんは大人に見える。例え俺が五年早く生まれていたとしても、彼の方が大人だろう。
足下が遠ざかっていくと、幸春さんは部屋の中に入ってきた。開きっぱなしになっている箪笥の中を覗く。何とも居心地が悪い。
「眠れた?」
幸春さんの声が優しかった。ここまで来る間、それほど時間が経っていないのに随分緊張していたようで、幸春さんの声を聞いたら身体の力が抜けてしまった。
「大丈夫? 何かあった?」
床に膝がつく前、間一髪で俺の腰を支えてくれた。
背中に手を伸ばすと彼の動きが一瞬止まるが、引き寄せて背中ごと抱きしめる。
「爆弾のせいで心がバラバラになった」
「爆弾?」
「家の前でセミ爆弾食らった。死ぬ」
「ああ、あれね」
回した手越しに肩が揺れた。笑うなんてあり得ない。俺は死ぬかと思ったのに。腹が立ったので、背中に一発お見舞いしてやった。
「いたっ。あははっ」
「笑うなんてひどいよっ」
「あれはびっくりするよね。俺も何度も経験があるよ。今日は禊や準備はなしにして、久しぶりにふたりでゆっくりしようか」
「いいの?」
「ああ。今日からだと緊張もしているだろうし。何かほしいものはある?」
「ううん、今はない。春兄と一緒にいたい」
「うん……そっか」
離れていく手が名残惜しかった。
「湊のお母さんがさ、必要なものがあれば言ってだって」
「もう、それ今朝に何回も聞いた」
「心配しているんだよ。一か月も会えないんだから」
「じゃあ、炭酸飲料が飲みたい」
「伝えておくよ。他は?」
「あとは……今はいいや」
本当は、一か月もひとりで森の中で過ごすのは寂しかった。彼にも家があって、ここにいてとわがままは言えなかった。
日付が変わって、いよいよ儀式の準備が始まった。朝食前と夜に、必ず湯浴みが日課となった。冷水を頭から被り、身体を湯船に使って身体を温め、全身をくまなく洗う。
湯浴みの後は朝食だ。朝食は時間通りに儀式の間に置かれていて、朝から料亭のような豪華さだ。朝食というより神子への貢ぎ物に見えて、ひとり侘しく平らげた。
九時を過ぎると幸春さんがやってきて、神官と同じ格好をしている。準備は儀式の間ではなく、最奥の禊の間で行われる。長い廊下を歩くたび、木版が大きく軋み、本当にいいのか、行くのかと目に見えない者からの忠告に聞こえた。
白装束一枚で、夏なので寒さもないが、下着すら穿けないとなると、心もとない。
見えないように歩くには、小股でずれないようにするしかなかった。
禊ぎの間は、白い布が敷かれていた。横には例の重箱もある。またあれを読まされるのだろうか。
「皮は剥けた?」
「…………少しは」
「できなかったのか?」
「はい……痛くて、どうしたらいいか分からない」
「なら、俺がするしかないな」
幸春さんは部屋を出ると、一分足らずで戻ってきた。手には小瓶がある。
「滑りをよくするものだよ。怖いものじゃない。全部脱いで」
何度も肌を晒したのに、この瞬間だけは一生慣れない。脱がされる方が楽なのかもしれないが、幸春さんは絶対に手をかけようとはしなかった。
紐を解いて布を肩から滑らせると、簡単に裸体が現れる。エアコンの利いた寒さでは、まだ性器は眠ったままだ。遠慮なく集まる視線に、肩が震えて寒いとさえ感じる。
「今日から本格的に稽古を開始する。まずは皮をなんとかしないといけないな。一度大きくしようか」
淡々と告げられ、俺は目を瞑るしかない。恥ずかしい。
「自分でできるね?」
「む、むり……春兄がやって…………」
「……はあ…………」
なぜかため息を吐かれてしまった。
「やっぱりいい。自分でやる」
「俺が受け持つよ。これからも」
これからも。明日以降も彼にしてもらうのか。考えあぐねていると、俺の性器に手を伸ばしてきた。
くすぐったいくらいの柔らかな触れ合いで、下から上へと数度往き来すると、すぐに勃ち上がる。
幸春さんは小瓶の蓋を外し、液体を手に乗せ、両手で伸ばしていく。液体は儀式の社に足を踏み入れたときに感じた匂いに似ていた。
滑る手で性器を包み込むと、生暖かな感覚がぞわりと背筋を通り抜け、吐息が漏れる。
「あっ……いたい…………」
幸春さんは俺に視線を送るがそれも一瞬で、すぐに下を向く。
「ほら、あと少しだ」
「あ、あ、まって……だめ」
赤い先っぽが顔を出し、何の液体なのか分からないほどべとべとになっている。
怖くてたまらなかったのに、彼の手にかかれば何のことはなかった。
「よく熟れているな」
「あっ、あ……んっ」
親指の先で円を描くように擦ると、あっという間に達してしまった。
タオルで拭き取ることもせず、下腹部全体に塗りたくり、身体がいやでも反応する。
「せっかくだから、ここを剃ってみようか」
こことは、大人の証である。
幸春さんは黒い毛を絡め取り、人差し指で巻いては小さく笑う。
「そんな……いいよ。本番前ってこの前話したじゃない」
「慣れておいた方がいいと思って」
重箱には、この前までなかった剃刀が入っていた。
「痛い?」
「痛くない。怪我はさせない」
彼を信じるしかない。
先ほどの液体を丹念に塗り、関係のない性器にも手を伸ばしてきた。萎えた先は段々と頭をもたげ、恥ずかしさのあまり見ていられない。
「あ、は、る……にい」
「ちゃんとよく見て。さあ、剃るよ」
剃刀を当てた瞬間は恐怖で背中が固まるが、肌を滑るとくすぐったい。持ち上がる性器を押さえつけ、あくまで幸春さんの目は真剣だった。
ティッシュで拭き取ると、まるで子供の性器だ。上を向く性器だけが大人の証で、アンバランスさが羞恥心を煽る。
閉じそうになる足を、幸春さんは再び両側に開いた。じっくりと眺め、性器に触れ、指先で肌を撫でていく。
つい最近まで勃起しないと悩んでいたのが嘘みたいだ。
「今日はこれくらいにしよう。明日は今までとは違う稽古を行う」
「今までとは違う……?」
重箱に入っている木枝のような細い棒を見せる。
恐ろしいのは、箱の中にはまだ数本入っている。太さが異なり、一番大きいものでは男性性器をかたどったもので、先も立派に膨らんでいる。
「最初は細いものからで、徐々に太いものを入れていく。そのうち、これなしではいられない身体になる。淫乱な身体ほど、稲荷様は喜んで下さるんだ。今日は早めに休んで、明日も今と同じ時間で稽古を行う」
「はい…………」
夢物語のように思っていた儀式は、あと少しでやってくる。
儀式のため、島の繁栄のため、俺と拓郎は一つに繋がらなければならない。
覚悟を決めたはずなのに、俺の覚悟は揺らぎ始めた。
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