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第一章 学生時代
09 占いという不確かなもの
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「僕も一度だけ旅行で海外に行ったことがありますが、日本語をこんなに綺麗に話す人はいなかったです。それで、初恋の人には会えたんですか?」
悲しそうな顔を見るに、答えが分かってしまった。
「その方のお名前は?」
「『かなた』」
「え?」
「少女の名前は、かなたといいます」
「…………あ、だから……そうか。初めて会ったとき、僕の名前にやけに反応してましたよね。日本では珍しい名前なのか、とか」
「はい。私もあの後調べましたが、どちらかというと男性に多い傾向にありますが、かなたという名前は男性でも女性でも珍しくなく、稀有な名前ではないと分かりました。絶望です」
「年齢はどのくらいですか?」
「ご存命なら、彼方さんと同じくらいです」
ご存命。そんな言葉、人の口から初めて聞いた。生きているかどうかも考えないといけないとなると、本当に絶望だ。若いからといって生きているとは限らないのだから。
「漢字も分かりません。名前は『かなた』で女性であること。これだけです」
「アーサーさんは、その方に会って何がしたいんですか?」
「何がしたい……そうですね。会うことが目的となっておりました。結婚の約束をした当時が懐かしく思います。言葉が通じていたとは思えませんが、友達になってくれたことにまずはお礼を伝えたいです」
想い出は綺麗なままでとっておくべきか、過去から現在への繋がりを信じて捜し続けるべきかは人による。大抵は前者だろうが、アーサーさんは後者だっただけの話だ。
この後は店を出て、彼に連れられるままにカフェ巡りをした。目的だった抹茶も頂き、ご満悦な顔が美しい。
帰るまでが遠足とはよくいったもので、くたくたなる僕とは違い、彼は最後までアーサー・ラナウェーラだった。
「では、お気をつけて、また今週お会いしましょう」
「はい、お疲れ様でした」
仕事のときのように頭を下げ、駅で別れた。
夜遅かったせいで祖母はすでに寝ていて、テーブルの上にあるおにぎりと鍋にある豚汁が涙が出るほど嬉しい。胃に入らないのがとても悲しい。
明日の朝食べるね、と紙に書いて、僕はシャワーを浴びてさっさと眠りについた。新幹線でも寝たのに、睡眠は全然足りていなかった。
早見秋人という人は、とにかく目立つ。アーサーさんと別の意味でとにかく目立った。
「あ、月森」
どのくらい目立つかというと、彼が僕の名前を呼んだだけでその場にいる人たちが全員振り返るほどだ。追加で僕の見た目のせいで二度見される。動物園のハダカデバネズミでさえあんな目で見られない。
「こんにちは」
「よっ。どこ行くの?」
「場所移動しようと……」
「なんで? ここで食べたらいいじゃん」
女子生徒に囲まれている中で食べられる彼が信じられない。
痛々しい視線の中、渋々席に座った。
「じゃあ俺、食い終わったから行くわ!」
意味が分からない。なぜ横に呼んだのか。
早見君はお盆を持って、さっさと食堂を出ていってしまった。
流れる微妙な空気を感じとってか、生徒たちは苦笑いのまま次々といなくなる。僕には人を楽しませるトーク力もなければ、彼のようにフレンドリーでもない。自分で言って泣けてくる。
「あの、もしかして吉祥寺に住んでたりする?」
「どうして?」
「電車で降りるところ、見たから」
誰とでも打ち解けるタイプなのか、僕相手でも彼女は遠慮なく口を開く。
興味津々でもなければ、適当に振ってあげようとした話題でもない。日常会話としてごく自然な会話で、僕も頬が緩む。
「住んでるし、バイト先なんだ」
「なんのバイト?」
「占いとカフェのお店」
「占い?」
カフェより占いに反応された。女性は占いが好きな人が多いと思う。興味がない、あまり信じないというわりには、しっかりと番組や雑誌をチェックしていたりする。目に見えず自分に能力がないものは認めたくないけれど好き、が正しい。
「好き?」
「まあまあかな。あんまり信じてないけど。どういうことするの? 占い師のところでバイトってこと? 本物?」
興味津々の様子だ。
「本物だと思う。偽物の占い師にそもそも出会ったこがないし。僕には判断つかないよ」
「何占い?」
「占星術」
「へえ! テレビでよく観るやつだ。ホロスコープ使うんでしょ? 行ってみたいなあ。いくらくらいで占ってもらえるの?」
値段を告げると、微妙な顔をされた。店にまで足を運ぶ人は納得した上だが、だいたいは今みたいな反応が普通だ。
そもそも、相場がいまいち分からない。日本中誰でも知っている占い師は、一人十万円というところもある。
「外れたところは見たことないよ。納得してみんな納得して帰っていくし」
「興味があったら行ってみるよ。ありがとね」
名前も知らない彼女もお盆を持って立ち上がった。
これはあれだ。多分来ない。
どこかに遊びにいかない?と誘ったときに、気が向いたらねと同じパターン。
僕も愛想笑いを浮かべて、お盆を手にした。
と、思ったのに。今週の土曜日、プチ事件が起きた。
「いらっしゃいませ」
フロアに続くドアを開けようとしたとき、息を呑む声が聞こえてきた。
目の前のハンサムに絶句しているのだろうと予測つく。
そして、聞いたことのある声に、僕も絶句した。
「ここで占いをしているって聞いたんですけど……」
独特の高い声を持つ彼女だ。今週、食堂で一緒になった名前も知らない生徒で、占いに対して興味があるようなないような態度だった人。
「はい。占い兼カフェの店でございます」
「なんでも占えますか?」
切羽詰まった声に、アーサーさんではなく僕がたじろいだ。
「ええ、もちろん。例えば、恋占いでも」
女性は小さな声にならない声を上げる。彼女の心を読むならば「なぜ分かったの」だろう。
「揉め事を起こさないためにも、最初に料金についてご説明させて頂きます。こちらへどうぞ」
どうしたら、どうしたらいいのか。出ていくタイミングを失った。
仕切られた部屋に行くのを見計らい、僕はこっそりドアを開ける。
占いを希望する人には、お茶を一杯サービスだ。気温やそのときに入った茶葉によって、毎日変わる。今日はアイスティー。水色は赤茶色で、キラキラしている。透明な氷と合わさると、もうすぐ夏と言う感じがする。
「彼方さん?」
「あ、あの、遅れました……」
アーサーさんは僕に微笑むだけで、何も言わなかった。
「他のお客様もいらっしゃいませんし、もし居づらいのなら裏にいて下さって結構ですよ」
グラスをトレーに乗せると、アーサーさんは占いの部屋へ行ってしまった。
役に立てず、心が空っぽだ。何もない空間に、要らない泥水を流し込んでしまった。
棒立ちのまま唖然としていると、キッチンにいつもはない紙が貼っているのに気づいた。
──彼方さんへ。アイスティーの作り方。
これは。まさか。
濁ったもので満たされたものは減りはしないが、少しず浄化されていく。その気持ちはなんて名前をつけたらいいんだろう。
悲しそうな顔を見るに、答えが分かってしまった。
「その方のお名前は?」
「『かなた』」
「え?」
「少女の名前は、かなたといいます」
「…………あ、だから……そうか。初めて会ったとき、僕の名前にやけに反応してましたよね。日本では珍しい名前なのか、とか」
「はい。私もあの後調べましたが、どちらかというと男性に多い傾向にありますが、かなたという名前は男性でも女性でも珍しくなく、稀有な名前ではないと分かりました。絶望です」
「年齢はどのくらいですか?」
「ご存命なら、彼方さんと同じくらいです」
ご存命。そんな言葉、人の口から初めて聞いた。生きているかどうかも考えないといけないとなると、本当に絶望だ。若いからといって生きているとは限らないのだから。
「漢字も分かりません。名前は『かなた』で女性であること。これだけです」
「アーサーさんは、その方に会って何がしたいんですか?」
「何がしたい……そうですね。会うことが目的となっておりました。結婚の約束をした当時が懐かしく思います。言葉が通じていたとは思えませんが、友達になってくれたことにまずはお礼を伝えたいです」
想い出は綺麗なままでとっておくべきか、過去から現在への繋がりを信じて捜し続けるべきかは人による。大抵は前者だろうが、アーサーさんは後者だっただけの話だ。
この後は店を出て、彼に連れられるままにカフェ巡りをした。目的だった抹茶も頂き、ご満悦な顔が美しい。
帰るまでが遠足とはよくいったもので、くたくたなる僕とは違い、彼は最後までアーサー・ラナウェーラだった。
「では、お気をつけて、また今週お会いしましょう」
「はい、お疲れ様でした」
仕事のときのように頭を下げ、駅で別れた。
夜遅かったせいで祖母はすでに寝ていて、テーブルの上にあるおにぎりと鍋にある豚汁が涙が出るほど嬉しい。胃に入らないのがとても悲しい。
明日の朝食べるね、と紙に書いて、僕はシャワーを浴びてさっさと眠りについた。新幹線でも寝たのに、睡眠は全然足りていなかった。
早見秋人という人は、とにかく目立つ。アーサーさんと別の意味でとにかく目立った。
「あ、月森」
どのくらい目立つかというと、彼が僕の名前を呼んだだけでその場にいる人たちが全員振り返るほどだ。追加で僕の見た目のせいで二度見される。動物園のハダカデバネズミでさえあんな目で見られない。
「こんにちは」
「よっ。どこ行くの?」
「場所移動しようと……」
「なんで? ここで食べたらいいじゃん」
女子生徒に囲まれている中で食べられる彼が信じられない。
痛々しい視線の中、渋々席に座った。
「じゃあ俺、食い終わったから行くわ!」
意味が分からない。なぜ横に呼んだのか。
早見君はお盆を持って、さっさと食堂を出ていってしまった。
流れる微妙な空気を感じとってか、生徒たちは苦笑いのまま次々といなくなる。僕には人を楽しませるトーク力もなければ、彼のようにフレンドリーでもない。自分で言って泣けてくる。
「あの、もしかして吉祥寺に住んでたりする?」
「どうして?」
「電車で降りるところ、見たから」
誰とでも打ち解けるタイプなのか、僕相手でも彼女は遠慮なく口を開く。
興味津々でもなければ、適当に振ってあげようとした話題でもない。日常会話としてごく自然な会話で、僕も頬が緩む。
「住んでるし、バイト先なんだ」
「なんのバイト?」
「占いとカフェのお店」
「占い?」
カフェより占いに反応された。女性は占いが好きな人が多いと思う。興味がない、あまり信じないというわりには、しっかりと番組や雑誌をチェックしていたりする。目に見えず自分に能力がないものは認めたくないけれど好き、が正しい。
「好き?」
「まあまあかな。あんまり信じてないけど。どういうことするの? 占い師のところでバイトってこと? 本物?」
興味津々の様子だ。
「本物だと思う。偽物の占い師にそもそも出会ったこがないし。僕には判断つかないよ」
「何占い?」
「占星術」
「へえ! テレビでよく観るやつだ。ホロスコープ使うんでしょ? 行ってみたいなあ。いくらくらいで占ってもらえるの?」
値段を告げると、微妙な顔をされた。店にまで足を運ぶ人は納得した上だが、だいたいは今みたいな反応が普通だ。
そもそも、相場がいまいち分からない。日本中誰でも知っている占い師は、一人十万円というところもある。
「外れたところは見たことないよ。納得してみんな納得して帰っていくし」
「興味があったら行ってみるよ。ありがとね」
名前も知らない彼女もお盆を持って立ち上がった。
これはあれだ。多分来ない。
どこかに遊びにいかない?と誘ったときに、気が向いたらねと同じパターン。
僕も愛想笑いを浮かべて、お盆を手にした。
と、思ったのに。今週の土曜日、プチ事件が起きた。
「いらっしゃいませ」
フロアに続くドアを開けようとしたとき、息を呑む声が聞こえてきた。
目の前のハンサムに絶句しているのだろうと予測つく。
そして、聞いたことのある声に、僕も絶句した。
「ここで占いをしているって聞いたんですけど……」
独特の高い声を持つ彼女だ。今週、食堂で一緒になった名前も知らない生徒で、占いに対して興味があるようなないような態度だった人。
「はい。占い兼カフェの店でございます」
「なんでも占えますか?」
切羽詰まった声に、アーサーさんではなく僕がたじろいだ。
「ええ、もちろん。例えば、恋占いでも」
女性は小さな声にならない声を上げる。彼女の心を読むならば「なぜ分かったの」だろう。
「揉め事を起こさないためにも、最初に料金についてご説明させて頂きます。こちらへどうぞ」
どうしたら、どうしたらいいのか。出ていくタイミングを失った。
仕切られた部屋に行くのを見計らい、僕はこっそりドアを開ける。
占いを希望する人には、お茶を一杯サービスだ。気温やそのときに入った茶葉によって、毎日変わる。今日はアイスティー。水色は赤茶色で、キラキラしている。透明な氷と合わさると、もうすぐ夏と言う感じがする。
「彼方さん?」
「あ、あの、遅れました……」
アーサーさんは僕に微笑むだけで、何も言わなかった。
「他のお客様もいらっしゃいませんし、もし居づらいのなら裏にいて下さって結構ですよ」
グラスをトレーに乗せると、アーサーさんは占いの部屋へ行ってしまった。
役に立てず、心が空っぽだ。何もない空間に、要らない泥水を流し込んでしまった。
棒立ちのまま唖然としていると、キッチンにいつもはない紙が貼っているのに気づいた。
──彼方さんへ。アイスティーの作り方。
これは。まさか。
濁ったもので満たされたものは減りはしないが、少しず浄化されていく。その気持ちはなんて名前をつけたらいいんだろう。
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