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第一章 大学生とバーテンダー
018 交わらない想いは存在しない
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「ルイ、この前はありがとう。俺が汚したタオルを返すよ。ちゃんと洗ってきたんだぜ」
偉いでしょ、と園児のように褒めて褒めてアピールをしたら、ルイの知人に冷蔵庫に埋まっている干からびた玉ねぎを見る目で見られた。この前俺の家の冷蔵庫にあった。普段から掃除をして気をつけなければ。
「泊まらせてもらって、悪かったな」
なんだろう、この張り詰めた空気感は。やはり、間に入らなければ良かったのか。
「お泊まりなんて、後から考えたらすげードキドキした。そういう経験なかったし」
相手の男性から、これでもかというほど不審な目を向けられている。
「……これはなんだ」
「ちょっとしたお礼」
一緒に袋に入れていたのは、キャラメルだ。
「無駄遣いはするなと言っただろう」
「違うって。買ったんじゃなくて作ったの。材料費も大してかかってないし」
知人であろう男性は席を立ち、頭を下げても返してくれはしなかった。
「またな、ルイ」
「……またがあれば」
彼の席には、飲みかけのコーヒーがまだ残っている。
「ごめん、ルイ。メールを見たらいても立ってもいられなくなって。話を遮って……その……」
「花岡さん」
困惑しているのは俺以上にルイで、ルイ以上に彼だろう。
「大変そうなのでまた今度、話を聞いて下さい」
「ごめんなさい、勝手に席を立ったりして」
「いえ、では」
平川さんは俺にも頭を下げ、面識のないルイにも同じく腰を曲げた。
俺は何をやっているのだろう。ルイの知人を怒らせ、平川さんも帰らせてしまった。猪突猛進というか、ルイに一言メールを送っておけば済んだ話だった。後々後悔してももう襲い。精神が抉られる。
「時間があるならば、どうぞ」
バーテンダー・ルイが目の前にいる。恭しいお辞儀と、丁寧な言葉遣い。まだ残っているコーヒーを持ってきて、先ほどまでルイの知人がいた席に腰を下ろした。
「あのメールはどういうことだよ? 俺すっげー焦ったんだからな。また警察に囲まれてるんじゃないかってはらはらして……」
ルイは自分の端末を見て、目を見開く。
「送ったつもりが送られていなかった」
「な、なんだよ……それ……良かった……緊急じゃなかったんだな……」
「ああ」
「本当に、本当に心配した。ああ……頭ががんがんする……俺の回りに酸素ってあるのかな……」
「何か食べるか? 奢ってやろう」
「大丈夫。まだコーヒーも残ってるし」
頭はくらくらしても、心の負担は軽くなった。
「友達? そのわりにはかしこまった格好してるけど」
ルイもスーツで、相手もスーツだった。
「相手もバーテンダーだ。仕事の関係者といえば、そうとも取れる」
「まるで違うみたいじゃん」
「仕事の相談がある、と言われたが、仕事の話ではなかった」
「何の話?」
「恋」
「わーお」
タイムリーすぎる。俺も受けていた。しかもルイと同じ場所で。
「俺とルイって磁石みたい。偶然とは思えない」
「……………………」
「ぐっちゃぐっちゃしてたけど、ルイの顔を見たら整理整頓できそうな気がしてきた」
「気がするだけでは整えはできないだろう」
「……うう、俺って恋愛相談相手に向いてないのかもしれない」
奥野さんのことは話せない。彼女は、俺に事実を話していない。横から投げられたストレートボールにぶつかった話であり、ボールを彼にも投げるわけにはいかない。
「自分にがっかりしてるんだ。俺さ、男女の恋愛が普通だと思い込んでた。でもそうじゃない世界だってあるって、バイトを通して知ったはずなのに、何も学んでいなかった。普通ってなんだろうな」
「人間は、心に留めている理想を普通という。普通という言葉を用いて、理想を無理やり相手に貼りつけているだけなんだ。肌の色も髪の色も……目の色も」
「目の色……」
ルイは言葉を吐き捨て、コーヒーを口にした。
日本人は茶色が多いが、俺の目の色は青みがかっている。別に欧米人の血が入っているわけでもなく、カラーコンタクトも使用していない。ちょっと歴史を調べてみると、東北の人間は青い目を持つ人は一定数いるらしい。
「男性が男性と、女性が女性と恋愛するって、俺の世界では有り得ないのかな……。言われるまでは脳の片隅にもなかった」
元アルバイト先の先輩といざこざがあっても、俺はすっぽりと抜け落ちていた。
「ルイはさっきの人とどんな恋愛話してたんだ?」
「私と付き合ってほしい、だそうだ」
「………………え、」
「実はな、ここだけの話、好きな人がいると告げられたとき、男である私だとはまさか思わなかった。私の中でも、男女の恋愛が『普通』となっていたらしい」
「そっそれでルイは……っ」
テーブルに手をついたせいで、ルイのコーヒーが揺れてソーサーに零してしまった。
「何を焦っている。断った。同業者だしな」
「同業者とは恋愛しないのか?」
「基本的にはないな。この気持ちを超えられるものがあれば話は別だが」
「ごめんなあ、怒らせてしまって」
「正直、入ってきてくれて助かった。誤解を生んでいたが」
「誤解? 何かあったのか?」
「……なんでもない」
ルイは残ったコーヒーをすべて飲んだ。ソーサーに残るコーヒーには申し訳ない。しかもルイが零したような印象だ。
「相談受けているときにも思ってたけど、恋愛って上手くいかないよなあ。生まれたときから赤い糸が見えればいいのにって思うときがあるよ。でもそれだと人付き合いも疎遠になりそうだし、楽しくないなって自問自答するけど」
「もし、恋愛対象にならない人が赤い糸で結ばれていたらどうする」
「えー、どうしよう。意識はするけど、やっぱり好きになった人と一緒になりたいかな。でもこれだと糸なんて必要ないのかもな」
「そういうことだ」
「ルイはミステリアスな雰囲気だし、いろいろ知りたくなっちゃう」
「何が知りたい?」
「いっぱいあるよ。髪を伸ばしている理由とか、家族構成とかさ」
知っても知っても、知った分だけ離れていく。距離が近くにならず、その分一歩先を歩んでしまう。堂々と彼の隣にいられる日は来るのだろうか。
「長髪の理由は、リボンを身につけるためだ。これが私の目印となる」
「それって、ルイの捜し人と関係があるの?」
「ある」
「その人からもらったもの?」
「ああ」
なんとなく、捜し人は女性なんじゃないかとイメージした。
「水色のリボンは目印だけではなく、手錠や足枷のようなものだ」
「手錠……」
「相手は忘れているだろうがな」
過去の思い出を懐かしむというより、哀愁を漂わせて苦渋に顔を歪ませている。
「それと家族構成は、父と母……兄が一人いる」
「ええ、お兄さんいるの?」
今の間が気になる。
「その驚きはどういう意味だ」
「なんとなく、一人っ子のイメージだった。でも兄弟はいないって言われても驚いたかも。仲良いの?」
答えを聞く前から分かってしまった。兄の話になると、ルイの口が閉じてしまう。白くてきれいな歯も見えなくなる。無言も答えになる場合もある。
「そっかあ……」
「何も言っていない」
「無理しなくていいよ、俺も話すには勇気が出ないこともあるし」
「隠しているつもりはない。私の家族とは会う機会もないだろうしな。この世で一番苦手な人だ」
嫌いではなく、苦手。血を分けた家族を嫌いになれないのだろう。
「ルイは暖かいな。ぎりぎりの優しい答えって感じ。似てるの?」
「髪の色は似ている。目は似ていない」
「ふーん」
見つめると、逸らされた。分かっていた、ルイは目を見られるのが苦手だから。
「お兄さんって何してるの?」
「主に土地の管理だな」
「なんか、すごそうなんだけど。良いとこの坊ちゃんだったりする?」
「他の屋敷と比べたことはない」
屋敷ときたか。家じゃなく、屋敷。仕草や着ている服装からみるに、王家の血筋を引いていても納得しそうだ。
「兄の話より、私の内面に関わる人物の話をしよう。私にはやかましい師がいる」
「へえ! そうなのか。バーテンダーとしての心得を教えてくれた人?」
「教えてくれたのではなく、頭からつま先まで隙なく叩き込んだ人なんだ。崖から突き落とし、私が登るのを上から笑って見下ろすような人だ。教科書通りの教えは通用せず、そのおかげで今の私があるといっても過言ではない」
「き、厳しかったんだな……」
「そして、唯一私の心を許せる人だ」
唯一というところに、彼の人生が詰まっている言葉だ。生まれてから家族と過ごしたであろう中、許せるのは師匠一人だけだったのか。
「交わらない想いは存在する。だが、人によりけりだ。人により、想いが交わる人も当然いる」
「なんとなく分かるよ。家族だからって通じ合えるわけじゃないし、血の繋がらない人の方が分かり合える場合もある。ん? もしかしてさっきの恋愛相談がどうのこうのって話、慰めてくれているのか?」
「……飲んだら店を出るぞ」
師匠の話をしたかったというより、多分、俺が相談相手に適していないと言ったからだ。ちょっとほわほわする。
性別により心を通わせることは無理なのは仕方ない。血の繋がりがあっても、難しいのは俺もよく知っている。
俺にとってルイはどうだろうか。どのような存在だろう。ちょっとくらい、心の拠り所になっていると嬉しい。俺の内面なんてエメラルド・ミストみたいに綺麗ではないけれど、あんな風に透き通った心を持ち続けたい。
帰り、ルイは夕食に食べろと弁当を買ってくれた。しっかりした重箱に入っていて、怖くて値段は見なかった。現実を受け止めきれない。なぜそこまでしてくれるのか、未だに理由は分からない。
偉いでしょ、と園児のように褒めて褒めてアピールをしたら、ルイの知人に冷蔵庫に埋まっている干からびた玉ねぎを見る目で見られた。この前俺の家の冷蔵庫にあった。普段から掃除をして気をつけなければ。
「泊まらせてもらって、悪かったな」
なんだろう、この張り詰めた空気感は。やはり、間に入らなければ良かったのか。
「お泊まりなんて、後から考えたらすげードキドキした。そういう経験なかったし」
相手の男性から、これでもかというほど不審な目を向けられている。
「……これはなんだ」
「ちょっとしたお礼」
一緒に袋に入れていたのは、キャラメルだ。
「無駄遣いはするなと言っただろう」
「違うって。買ったんじゃなくて作ったの。材料費も大してかかってないし」
知人であろう男性は席を立ち、頭を下げても返してくれはしなかった。
「またな、ルイ」
「……またがあれば」
彼の席には、飲みかけのコーヒーがまだ残っている。
「ごめん、ルイ。メールを見たらいても立ってもいられなくなって。話を遮って……その……」
「花岡さん」
困惑しているのは俺以上にルイで、ルイ以上に彼だろう。
「大変そうなのでまた今度、話を聞いて下さい」
「ごめんなさい、勝手に席を立ったりして」
「いえ、では」
平川さんは俺にも頭を下げ、面識のないルイにも同じく腰を曲げた。
俺は何をやっているのだろう。ルイの知人を怒らせ、平川さんも帰らせてしまった。猪突猛進というか、ルイに一言メールを送っておけば済んだ話だった。後々後悔してももう襲い。精神が抉られる。
「時間があるならば、どうぞ」
バーテンダー・ルイが目の前にいる。恭しいお辞儀と、丁寧な言葉遣い。まだ残っているコーヒーを持ってきて、先ほどまでルイの知人がいた席に腰を下ろした。
「あのメールはどういうことだよ? 俺すっげー焦ったんだからな。また警察に囲まれてるんじゃないかってはらはらして……」
ルイは自分の端末を見て、目を見開く。
「送ったつもりが送られていなかった」
「な、なんだよ……それ……良かった……緊急じゃなかったんだな……」
「ああ」
「本当に、本当に心配した。ああ……頭ががんがんする……俺の回りに酸素ってあるのかな……」
「何か食べるか? 奢ってやろう」
「大丈夫。まだコーヒーも残ってるし」
頭はくらくらしても、心の負担は軽くなった。
「友達? そのわりにはかしこまった格好してるけど」
ルイもスーツで、相手もスーツだった。
「相手もバーテンダーだ。仕事の関係者といえば、そうとも取れる」
「まるで違うみたいじゃん」
「仕事の相談がある、と言われたが、仕事の話ではなかった」
「何の話?」
「恋」
「わーお」
タイムリーすぎる。俺も受けていた。しかもルイと同じ場所で。
「俺とルイって磁石みたい。偶然とは思えない」
「……………………」
「ぐっちゃぐっちゃしてたけど、ルイの顔を見たら整理整頓できそうな気がしてきた」
「気がするだけでは整えはできないだろう」
「……うう、俺って恋愛相談相手に向いてないのかもしれない」
奥野さんのことは話せない。彼女は、俺に事実を話していない。横から投げられたストレートボールにぶつかった話であり、ボールを彼にも投げるわけにはいかない。
「自分にがっかりしてるんだ。俺さ、男女の恋愛が普通だと思い込んでた。でもそうじゃない世界だってあるって、バイトを通して知ったはずなのに、何も学んでいなかった。普通ってなんだろうな」
「人間は、心に留めている理想を普通という。普通という言葉を用いて、理想を無理やり相手に貼りつけているだけなんだ。肌の色も髪の色も……目の色も」
「目の色……」
ルイは言葉を吐き捨て、コーヒーを口にした。
日本人は茶色が多いが、俺の目の色は青みがかっている。別に欧米人の血が入っているわけでもなく、カラーコンタクトも使用していない。ちょっと歴史を調べてみると、東北の人間は青い目を持つ人は一定数いるらしい。
「男性が男性と、女性が女性と恋愛するって、俺の世界では有り得ないのかな……。言われるまでは脳の片隅にもなかった」
元アルバイト先の先輩といざこざがあっても、俺はすっぽりと抜け落ちていた。
「ルイはさっきの人とどんな恋愛話してたんだ?」
「私と付き合ってほしい、だそうだ」
「………………え、」
「実はな、ここだけの話、好きな人がいると告げられたとき、男である私だとはまさか思わなかった。私の中でも、男女の恋愛が『普通』となっていたらしい」
「そっそれでルイは……っ」
テーブルに手をついたせいで、ルイのコーヒーが揺れてソーサーに零してしまった。
「何を焦っている。断った。同業者だしな」
「同業者とは恋愛しないのか?」
「基本的にはないな。この気持ちを超えられるものがあれば話は別だが」
「ごめんなあ、怒らせてしまって」
「正直、入ってきてくれて助かった。誤解を生んでいたが」
「誤解? 何かあったのか?」
「……なんでもない」
ルイは残ったコーヒーをすべて飲んだ。ソーサーに残るコーヒーには申し訳ない。しかもルイが零したような印象だ。
「相談受けているときにも思ってたけど、恋愛って上手くいかないよなあ。生まれたときから赤い糸が見えればいいのにって思うときがあるよ。でもそれだと人付き合いも疎遠になりそうだし、楽しくないなって自問自答するけど」
「もし、恋愛対象にならない人が赤い糸で結ばれていたらどうする」
「えー、どうしよう。意識はするけど、やっぱり好きになった人と一緒になりたいかな。でもこれだと糸なんて必要ないのかもな」
「そういうことだ」
「ルイはミステリアスな雰囲気だし、いろいろ知りたくなっちゃう」
「何が知りたい?」
「いっぱいあるよ。髪を伸ばしている理由とか、家族構成とかさ」
知っても知っても、知った分だけ離れていく。距離が近くにならず、その分一歩先を歩んでしまう。堂々と彼の隣にいられる日は来るのだろうか。
「長髪の理由は、リボンを身につけるためだ。これが私の目印となる」
「それって、ルイの捜し人と関係があるの?」
「ある」
「その人からもらったもの?」
「ああ」
なんとなく、捜し人は女性なんじゃないかとイメージした。
「水色のリボンは目印だけではなく、手錠や足枷のようなものだ」
「手錠……」
「相手は忘れているだろうがな」
過去の思い出を懐かしむというより、哀愁を漂わせて苦渋に顔を歪ませている。
「それと家族構成は、父と母……兄が一人いる」
「ええ、お兄さんいるの?」
今の間が気になる。
「その驚きはどういう意味だ」
「なんとなく、一人っ子のイメージだった。でも兄弟はいないって言われても驚いたかも。仲良いの?」
答えを聞く前から分かってしまった。兄の話になると、ルイの口が閉じてしまう。白くてきれいな歯も見えなくなる。無言も答えになる場合もある。
「そっかあ……」
「何も言っていない」
「無理しなくていいよ、俺も話すには勇気が出ないこともあるし」
「隠しているつもりはない。私の家族とは会う機会もないだろうしな。この世で一番苦手な人だ」
嫌いではなく、苦手。血を分けた家族を嫌いになれないのだろう。
「ルイは暖かいな。ぎりぎりの優しい答えって感じ。似てるの?」
「髪の色は似ている。目は似ていない」
「ふーん」
見つめると、逸らされた。分かっていた、ルイは目を見られるのが苦手だから。
「お兄さんって何してるの?」
「主に土地の管理だな」
「なんか、すごそうなんだけど。良いとこの坊ちゃんだったりする?」
「他の屋敷と比べたことはない」
屋敷ときたか。家じゃなく、屋敷。仕草や着ている服装からみるに、王家の血筋を引いていても納得しそうだ。
「兄の話より、私の内面に関わる人物の話をしよう。私にはやかましい師がいる」
「へえ! そうなのか。バーテンダーとしての心得を教えてくれた人?」
「教えてくれたのではなく、頭からつま先まで隙なく叩き込んだ人なんだ。崖から突き落とし、私が登るのを上から笑って見下ろすような人だ。教科書通りの教えは通用せず、そのおかげで今の私があるといっても過言ではない」
「き、厳しかったんだな……」
「そして、唯一私の心を許せる人だ」
唯一というところに、彼の人生が詰まっている言葉だ。生まれてから家族と過ごしたであろう中、許せるのは師匠一人だけだったのか。
「交わらない想いは存在する。だが、人によりけりだ。人により、想いが交わる人も当然いる」
「なんとなく分かるよ。家族だからって通じ合えるわけじゃないし、血の繋がらない人の方が分かり合える場合もある。ん? もしかしてさっきの恋愛相談がどうのこうのって話、慰めてくれているのか?」
「……飲んだら店を出るぞ」
師匠の話をしたかったというより、多分、俺が相談相手に適していないと言ったからだ。ちょっとほわほわする。
性別により心を通わせることは無理なのは仕方ない。血の繋がりがあっても、難しいのは俺もよく知っている。
俺にとってルイはどうだろうか。どのような存在だろう。ちょっとくらい、心の拠り所になっていると嬉しい。俺の内面なんてエメラルド・ミストみたいに綺麗ではないけれど、あんな風に透き通った心を持ち続けたい。
帰り、ルイは夕食に食べろと弁当を買ってくれた。しっかりした重箱に入っていて、怖くて値段は見なかった。現実を受け止めきれない。なぜそこまでしてくれるのか、未だに理由は分からない。
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