皇帝の右手、女神の左手

肩ぐるま

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12 フルプレートアーマー

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今日はここで夜を過ごそうか?
ここで?こんなに開けた所で?危険じゃない?
魔物が入って来れない魔法陣を作動させるから大丈夫だ。
そんなことができるの?
ああ、俺はいろんな魔法陣が使える。
魔法使いなの?剣士じゃないの?そういえば、剣はどうしたの?丸腰だけど?
剣は、いつもはしまってある。と言いながら左手に剣を出す。
リーネは目を丸くしてその剣を見つめた。
俺はすぐに剣を消して、
俺はいわば魔法剣士だな。と答えた。
収納魔法で剣を隠しているの?相手を油断させるため?
本当は剣が左手の一部であることがばれないようにリーネといるときは隠すことにしただけだが、相手を油断させるためというのはいい口実なので、それを使わせてもらうことにした。
そうだ、剣の他にも槍とかいろいろ武器はあるが、相手を油断させるために普段は武器を隠している。
そういえばあの熊は切られてなかったようだったけど、ほかにはどんな武器を持ってるの?
パーティーを組んだからといって、どこまで手の内を見せていいのか悩む。街に着くまでは仲間でも、それ以降も仲間でいるとは限らない。俺の秘密をあまり知られるのはまずい。だからといって、これから一緒に行動する以上、何も知られずに済むわけはない。要は何を見せて何を隠すかだ。
剣術は全部見せていいだろう。虚空斬撃は強力なスキルだが魔法剣だといい逃れができるので、虚空斬撃は隠さないことに決めた。それに、これを使わないと強い冒険者としてやっていくのは無理だ。槍も伸ばさずにあくまでも虚空突だけを使えば怪しまれないだろう。問題は巨岩拳だ。これを使うと人間かどうか疑いの目で見られるのは間違いない。そうすると俺の秘密を嗅ぎ回る奴が出てこないとも限らない。魔法陣を使うということでごまかすか?それなら岩石で殴りつけるという魔法陣でもつくっておくか。そこまで考えて、
そのうち見せてやるよ。それより、そろそろ飯にしないか?
と話題を変えると
そういえば、喉が渇いたわ。水筒は持ってる?とリーネが、話題に乗ってきた。
水は魔法で出せる。俺は左の掌を水を掬うような形にしてリーネの前に差出した。
命の水。と俺が唱えると掌に水が溜った。飲んでみるか?
それ魔法なの?と聞きながらもリーネは俺の掌に自分の口を近づけた。そして、水に口をつけるとすぐに貪るように水を飲みはじめた。リーネは暫くの間、一心不乱に命の水を飲み続けた。
あ~美味しかった。こんな美味しい水、飲んだことないわ。それにいくら飲んでも減らないし。
そんなに美味しかったか?
美味しかった。それに元気も出たし。
この水は命の水という魔法だ。この水を飲んでいれば、何日かは食べなくても大丈夫なくらいだ。
そんなに凄い水なの。魔法が使えるっていいなあ!羨ましいなぁ!
リーネは魔法は?
使えないわよ。たいがいの冒険者は、魔法なんて使えないわ。
そうなのか?冒険者の半分くらいは魔法使いだと思っていたんだが?
クリフ、あなた本当にこの世界なのことを知らないのね。
だから知らないといっただろう。
魔法が使える冒険者はほんの一握りよ。
それじゃ、リーネのパーティーに魔法使いは?
一人もいなかったわ。ほかのパーティーにも魔法使いがいなかったの。もし強力な魔法使いがいたらあんなことにはならなかったんでしょうね。
最後の部分は悔しそうな呟きだった。
さて、そろそろ何か食べるか?
そう言うと俺は目の前に二つの魔法陣を出した。大き目のお皿ぐらいの大きさで青い光を放ちながら、一つは俺の目の前に、もう一つはリーネの目の前に浮かんでいる。そしてそれぞれの魔法陣の上に収納から取出した猪の魔物の肉を置いた。
片側には骨が突き出している。食べるときにつかむためだ。
俺が魔法陣を作動させると、魔法陣から弱い炎が上がり肉を焼きはじめた。
リーネはびっくりしてその様子を見ている。
俺は、二人の肉を両方ともひっくり返した。
もう少し焼けたら食べ頃だぞ。
俺は火を小さくした。ガスコンロをイメージしてつくった魔法陣だ。
これはなんていう魔法?
名前なんてないよ。魔法陣をコンロとお皿の代わりにしているだけだ。そんなことより、さぁ食べよう。
俺は骨の部分を手に持って肉を食べ始めた。これは猪の魔物の肉だ。いくらでもあるから遠慮せずに食べろ。
リーネは
それじゃ遠慮なくと、肉に手を伸ばした。
途中で喉が渇いたというので魔法陣でコップをつくって水を入れてやった。
この水、さっきのような美味しさはないのね。
それは魔法陣の水だから仕方がない。俺の掌から湧く水は特別なんだ。
あの水をまた飲ませてくれない?
今か?
あ、後でもいいわ。
あぁわかった。
こうして俺たちは肉を食い、命の水を飲んで、大木に背中を預けながら座っていた。目の前の地面に置いた焚き火の魔法陣が心地良い炎をあげている。
この火も魔法なの?
そうだ。
この森で目覚めた頃は魔法陣を操れなかったので、夜は本当の焚き火を燃やしていたが、魔法陣が使えるようになった今では、生活に必要なほとんどのことが魔法陣で出来てしまう。
俺は二人の座っている地面に大きめの魔法陣をつくった。この魔法陣で次元バリアを張り、威圧の効果も加えたので、夜でも安心して眠れる。
リーネは疲れているのか食べ終るとすぐに眠り始めた。はじめは俺にもたれかかっていただけだったが、そのうち俺の太腿に体を預けて眠り続けた。
いつの間にか俺も眠り、空が明るくなった頃目が覚めた。
リーネは俺の太腿に胸を押し付けるようにして眠っていたが、俺の体はフルプレートアーマーに包まれて入るので、彼女の胸の柔らかさを感じることはできなかった。
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