9 / 46
このクラスの担任は学級活動を休憩時間だと勘違いしている
しおりを挟む
「演劇はいいけどさー、なにやんの」
「普通に童話とかでいいんじゃない?」
「でもそれだとありきたりでつまんなくね?」
会話の流れに、ぼくは計画通りと言わんばかりにニヤリと笑った。
「ぼくは言った。このクラスは演劇をするために生まれたと言っても過言じゃないと」
「まあ、普通に学力が低い奴らを集めただけだけどねー」
この担任、ぼくの話にやじを入れないでほしい。黙ってゲームやってろゲーム。いや教師が授業中にゲームやるのもダメだけど。
「あの、神楽坂先生、そいういうを本人たちの前で言うのはどうかと思います」
さすがに我慢の限界だったのか、文化祭実行委員の林さんが注意をしてくれた。みんなもよくぞ言ってくれたと思っただろう。しきりにうんうんと頷いていた。
「あれ、知らなかった?昔から四組は成績や素行の悪いやつらをかき集めた掃き溜めなんだよ。ちょっとはバランス取るために優秀な生徒も生贄にちらほら放り込まれてるけど。ちなみに数字が一に近づくにつれてマシになってくシステムね」
学生時代から自分が落ちこぼれだったことを知って、少し気分が沈むと同時に納得してしまった。ぼく、帰宅部で特に忙しくもなかったのに勉強とかまるでしなくてバカだったもんな……。
ぼくだけでなく、クラス全体の雰囲気が沈んだ。
「そんで、それに合わせて担任も私みたいな落ちこぼれ教師ってわけよ」
先生はなぜか自信げに笑った。ぼくらは誰も笑わなかった。
「やはり人間とは罪深い生き物なのだな……」
閻魔ちゃんが担任を見ながらつぶやく。今回ばかりはぼくもその意見に、首がちぎれるくらい縦に振りたい。
「んん、ありきたりな話はやりたくない!どうせならオリジナルなやつやって目立ちたいって思う人~!」
暗くなった雰囲気を払拭するべく、できる限りバカっぽい、明るい声でクラスに問いかける。結構な人数が手を挙げた。
「じゃあ、自分話を作れるよーって人」
そう促すと、途端に一人も手を挙げなくなった。先ほどまで髪をいじったり、爪の手入れをしていた女子生徒も、手を挙げた判定されない為にお行儀よく手を膝の上に置いて微動だにしなくなった。
いや、おまえだよおまえとぼくは大助を睨む。すると奴はすっと窓の外へと視線をそらした。バカめ。逃げられるとでも思っているのか。
「そう。話が作れるやつなんてそうそういない。でもこのクラスにはなんと!お話をつくるのが大好きな、小説家の卵、西宮大助くんもいる!」
「マジ、そうなの?」「神じゃん」「俺、このクラスで演劇をやるために生まれてきたんだなって」
最後のやつは重すぎるが、いい感じの反応になってきた。
その一方で、大助は「え!?」と驚愕の声をあげていた。
「でもさ、それでくっそつまんない話になったらどうするの?」
最前列の女子が冷めた声でそう言うと、クラスが一瞬で静まった。大助の話だと、彼女は読モ?かなにかで雑誌とかにも写真が載っているらしい。名前はたしか、小川雪とか言ったか。こいつもぼくの記憶に残っていた。どう残ってたかというと、「なんか怖いなぁ……っ」て記憶が残ってた。過去をやり直しているというのに、当時の記憶が大助の情報より役に立たないのはどういうことなのか。
「うーん、じゃあこうしようぜ!まだ時間には余裕あるからさ、来週の学級活動までに台本的なやつ作って来てもらって、面白いかどうか多数決取る。で、みんながその話がつまんねーってなったら、普通に童話かなんかをやることにするってのはどうよ?」
静寂を切り裂くように、金髪イケメンがそう提案した。小川さんが「……それならいいけど」と答えるとクラスの雰囲気が一気に弛緩した。イケメンすげーなーって思っていると、イケメンがぼくに向かってウィンクした。いや厄介オタクの勘違いとかじゃなくて、マジでぼくに向けてだ。
書いた本人がいるのにつまらないと言えるやつはそうそういない。だから金髪イケメンの提案した方法なら、大助の話が採用される可能性が高い。だから正直言ってさっきの提案が助かったのは確かだ。
ただ、まったく接点のない(クラスメイトなのに接点がないってのもどうかと思うけど)やつが、ぼくに手を貸すような真似をしたのがどうも釈然としない。なにか企んでいるのかと頭をひねってみるも、まるで検討がつかなかった。
イケメンはやることもイケメンっていうだけなのかもしれない。
「ってことで、大助はそれで大丈夫そう?いや、俺はどのくらい話作んのに時間かかるかとかまったくわかんねーからさ」
「えっと、その……」
断るのは簡単だ。ぼくにはムリですといえば、そこで終わる。しかし、大助は考え込んだように目をうろうろとさまよわせた。そして、
「やり……ます!」
すこし震えた声で、拳を握りしめてそう答えた。
「そっか、じゃあそういうことで……」
ちょうどよく、授業終了をつげるチャイムが鳴った。
「お、俺のタイムキープ完璧か? せんせー終わりでいいですよね?」
「え?もう休憩終わっちゃった?」
「まだスタミナ消費しきれてないんだけど」と担任は額に手を当てた。
学級活動の時間は休憩時間じゃねえよ。
「普通に童話とかでいいんじゃない?」
「でもそれだとありきたりでつまんなくね?」
会話の流れに、ぼくは計画通りと言わんばかりにニヤリと笑った。
「ぼくは言った。このクラスは演劇をするために生まれたと言っても過言じゃないと」
「まあ、普通に学力が低い奴らを集めただけだけどねー」
この担任、ぼくの話にやじを入れないでほしい。黙ってゲームやってろゲーム。いや教師が授業中にゲームやるのもダメだけど。
「あの、神楽坂先生、そいういうを本人たちの前で言うのはどうかと思います」
さすがに我慢の限界だったのか、文化祭実行委員の林さんが注意をしてくれた。みんなもよくぞ言ってくれたと思っただろう。しきりにうんうんと頷いていた。
「あれ、知らなかった?昔から四組は成績や素行の悪いやつらをかき集めた掃き溜めなんだよ。ちょっとはバランス取るために優秀な生徒も生贄にちらほら放り込まれてるけど。ちなみに数字が一に近づくにつれてマシになってくシステムね」
学生時代から自分が落ちこぼれだったことを知って、少し気分が沈むと同時に納得してしまった。ぼく、帰宅部で特に忙しくもなかったのに勉強とかまるでしなくてバカだったもんな……。
ぼくだけでなく、クラス全体の雰囲気が沈んだ。
「そんで、それに合わせて担任も私みたいな落ちこぼれ教師ってわけよ」
先生はなぜか自信げに笑った。ぼくらは誰も笑わなかった。
「やはり人間とは罪深い生き物なのだな……」
閻魔ちゃんが担任を見ながらつぶやく。今回ばかりはぼくもその意見に、首がちぎれるくらい縦に振りたい。
「んん、ありきたりな話はやりたくない!どうせならオリジナルなやつやって目立ちたいって思う人~!」
暗くなった雰囲気を払拭するべく、できる限りバカっぽい、明るい声でクラスに問いかける。結構な人数が手を挙げた。
「じゃあ、自分話を作れるよーって人」
そう促すと、途端に一人も手を挙げなくなった。先ほどまで髪をいじったり、爪の手入れをしていた女子生徒も、手を挙げた判定されない為にお行儀よく手を膝の上に置いて微動だにしなくなった。
いや、おまえだよおまえとぼくは大助を睨む。すると奴はすっと窓の外へと視線をそらした。バカめ。逃げられるとでも思っているのか。
「そう。話が作れるやつなんてそうそういない。でもこのクラスにはなんと!お話をつくるのが大好きな、小説家の卵、西宮大助くんもいる!」
「マジ、そうなの?」「神じゃん」「俺、このクラスで演劇をやるために生まれてきたんだなって」
最後のやつは重すぎるが、いい感じの反応になってきた。
その一方で、大助は「え!?」と驚愕の声をあげていた。
「でもさ、それでくっそつまんない話になったらどうするの?」
最前列の女子が冷めた声でそう言うと、クラスが一瞬で静まった。大助の話だと、彼女は読モ?かなにかで雑誌とかにも写真が載っているらしい。名前はたしか、小川雪とか言ったか。こいつもぼくの記憶に残っていた。どう残ってたかというと、「なんか怖いなぁ……っ」て記憶が残ってた。過去をやり直しているというのに、当時の記憶が大助の情報より役に立たないのはどういうことなのか。
「うーん、じゃあこうしようぜ!まだ時間には余裕あるからさ、来週の学級活動までに台本的なやつ作って来てもらって、面白いかどうか多数決取る。で、みんながその話がつまんねーってなったら、普通に童話かなんかをやることにするってのはどうよ?」
静寂を切り裂くように、金髪イケメンがそう提案した。小川さんが「……それならいいけど」と答えるとクラスの雰囲気が一気に弛緩した。イケメンすげーなーって思っていると、イケメンがぼくに向かってウィンクした。いや厄介オタクの勘違いとかじゃなくて、マジでぼくに向けてだ。
書いた本人がいるのにつまらないと言えるやつはそうそういない。だから金髪イケメンの提案した方法なら、大助の話が採用される可能性が高い。だから正直言ってさっきの提案が助かったのは確かだ。
ただ、まったく接点のない(クラスメイトなのに接点がないってのもどうかと思うけど)やつが、ぼくに手を貸すような真似をしたのがどうも釈然としない。なにか企んでいるのかと頭をひねってみるも、まるで検討がつかなかった。
イケメンはやることもイケメンっていうだけなのかもしれない。
「ってことで、大助はそれで大丈夫そう?いや、俺はどのくらい話作んのに時間かかるかとかまったくわかんねーからさ」
「えっと、その……」
断るのは簡単だ。ぼくにはムリですといえば、そこで終わる。しかし、大助は考え込んだように目をうろうろとさまよわせた。そして、
「やり……ます!」
すこし震えた声で、拳を握りしめてそう答えた。
「そっか、じゃあそういうことで……」
ちょうどよく、授業終了をつげるチャイムが鳴った。
「お、俺のタイムキープ完璧か? せんせー終わりでいいですよね?」
「え?もう休憩終わっちゃった?」
「まだスタミナ消費しきれてないんだけど」と担任は額に手を当てた。
学級活動の時間は休憩時間じゃねえよ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
死を願われた薄幸ハリボテ令嬢は逆行して溺愛される
葵 遥菜
恋愛
「死んでくれればいいのに」
十七歳になる年。リリアーヌ・ジェセニアは大好きだった婚約者クラウス・ベリサリオ公爵令息にそう言われて見捨てられた。そうしてたぶん一度目の人生を終えた。
だから、二度目のチャンスを与えられたと気づいた時、リリアーヌが真っ先に考えたのはクラウスのことだった。
今度こそ必ず、彼のことは好きにならない。
そして必ず病気に打ち勝つ方法を見つけ、愛し愛される存在を見つけて幸せに寿命をまっとうするのだ。二度と『死んでくれればいいのに』なんて言われない人生を歩むために。
突如として始まったやり直しの人生は、何もかもが順調だった。しかし、予定よりも早く死に向かう兆候が現れ始めてーー。
リリアーヌは死の運命から逃れることができるのか? そして愛し愛される人と結ばれることはできるのか?
そもそも、一体なぜ彼女は時を遡り、人生をやり直すことができたのだろうかーー?
わけあって薄幸のハリボテ令嬢となったリリアーヌが、逆行して幸せになるまでの物語です。
男装の公爵令嬢ドレスを着る
おみなしづき
恋愛
父親は、公爵で騎士団長。
双子の兄も父親の騎士団に所属した。
そんな家族の末っ子として産まれたアデルが、幼い頃から騎士を目指すのは自然な事だった。
男装をして、口調も父や兄達と同じく男勝り。
けれど、そんな彼女でも婚約者がいた。
「アデル……ローマン殿下に婚約を破棄された。どうしてだ?」
「ローマン殿下には心に決めた方がいるからです」
父も兄達も殺気立ったけれど、アデルはローマンに全く未練はなかった。
すると、婚約破棄を待っていたかのようにアデルに婚約を申し込む手紙が届いて……。
※暴力的描写もたまに出ます。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる