ぼくと彼女が自殺をやめた理由

ジェロニモ

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こうしてわたしは生きることにした

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胸に手を当てなくても、心臓の音が体に響いた。酸素が足りないのか、動いてもないのに立ちくらみがして、視界がチカチカして鬱陶しい。

 言った。わたしは言ってやった。わたしはおまえが好きだと、告白してやった!

「橙子が男だったら手っ取り早かったんだけどね。妥協してあげる」

 それは嘘だった。仮に橙子が男であっても、やはりわたしはこの男を好きになっただろう。

 男は「うーん」と唸った。なんと、こんなに可愛い女子高生の告白に、返答を悩んでいるのだ。わたしはムッとした。どう考えても答えは一つじゃないか。

 わたしは嫌なやつなんだ。なんとしてもイエスと言わせてやる。

「わたし、もしかしたらまた自殺を考えるかもしれないよ」
「だからこれからの人生、ずっと見張っててよ」
「そもそもおまえのせいでクラスの関係がぐちゃぐちゃになったんだから、責任とってよ」

 数々の罪悪感を煽る言葉をぶつけるも、やはり男はうーんと唸る。

「人を救うのが好きなんでしょ?なら、一生かけてわたしを救ってみせてよ」

 なにを言ってもまったく効果がないことに、わたしは焦りを感じは始めた頃、男は口を開いた。

「……なんというか、告白をそっちから言わせるのはどうなんだろうかと思って」
「なんだ、それ……」

 思わず、全身から力が抜けた。しかし、次の瞬間には怒りと恥ずかしさでお腹がグツグツと煮立った。

 必死にイエスと言わせようとあーだこーだと喋っていたわたしがバカみたいじゃないか!

「そういう御託はいいから!質問の答えは!」

 わたしは叫ぶ。その様は、あきらかに告白の返事を待つ女子ではない。可愛らしさもないだろう。でも、これがわたしなのだ。文句あるのか。

「ぼくも君が好きだと思う。だから、よろしくお願いします」
「……思うを消して、もう一回やり直して」

「好きだと思う」ってなんだ。男ならそこは断言しろ。なんだか不安になってしまうじゃないか。

「ぼくも君が好きだ。だからよろしくお願いします」

 彼はすぐに言い直した

「うん。それでいい」

 こうしてわたしに生まれて初めての彼氏ができた。
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