上 下
12 / 13
1部

1-12 異変

しおりを挟む
 6月22日 日曜日
 今日は朝から不快感がすごい。昨日ドリンクをもらってきたのをいいことに、1本をがぶ飲みして寝てしまった。
 吐き気を催し、トイレへと駆け込む。食道から逆流してくる不快な吐瀉物をぶちまける。口内が苦味で充満される。
 しばし、放心状態になるが立ち上がり、キッチンまで行く。
 蛇口をひねり、水を飲む。そして深呼吸をし、またベッドで横になった。
 私はどうしてしまったのだろうか。頭がグルグルするような感覚。三半規管が麻痺しているようだ。めまいも起こしている。
 とりあえずじっと耐えるしかなかった。明日、病院へ行こう。そう思いながら、その日は寝て過ごした。

 翌朝、月曜日。
 気づくと午前11時ごろだった。優子から着信が入っていた。朝の講義を結果的にサボってしまっている。具合が悪く出れないと連絡する。
 少し、落ち着いてきた。念の為に体温計で熱を図るが平熱だった。
 しばらく、横になり午後から病院へ行くことにした

 13時ごろ、私は病院にいた。歩くのも気持ち悪いが、なんとか近くの内科にこれた。問診を受けるがこれと言って所見ではわからないと言われ、検査なども受けるが異常は見当たらなかった。
 念の為、薬をもらい帰宅する。
 家へ着くと、薬を飲みベッドで横になるが、よくなる気配はない。
 ドリンクが原因かはわからないが、コップに注ぎ半分くらいの量を飲んだ。
 すると、少し冷や汗をかく様な感覚に陥るが、徐々に気分が良くなってきた。
 薬よりもこのドリンクの方が効き目あるなんて不思議、そう思い今日は学校を休んだ。

 6月26日 木曜日。
 あれから3日ほどたち、体調は完全に回復していた。念の為、3日ほど休んだ。今日は朝から夕方まで講義が詰まっている。
 午前の授業をこなし、お昼時間。優子と食堂へきていた。
「あんた、しばらく休んでたけど大丈夫、連絡しても大丈夫しか言わないし」
「だ、大丈夫、特に何もないって。疲れてただけかも」
「ならいいけどさ、サークルも夏は気をつけな、熱中症とかね」
 心配する優子、言われてみれば熱中症だった可能性もある。私は水分を取らない時もあるし、あの時も炎天下の中、作業しっぱなしだった。
「今日はバイトも行くんでしょ、無理はしないことよ」
 釘を刺される。確かに今までの自分と比べたらハイペースで色々とやりすぎたのかもしれない。
「あ、ありがと、優子もサークル、気をつけてね」
 そういうと「大丈夫よ」と強気に言って見せた。

 3コマ目の授業を優子と一緒に受け、別々な授業へと向かう。
 私は体育の授業があるので、ジャージに着替え、バレーをした。
 インドア派にはなかなか辛い講義の時間だった。

 疲れた体を奮い立たせるようにドリンクを飲み、テリアへと向かう。
 3日ほど休んだおかげなのか体はまだ平気そうだ。

 ー午後5時半ー
 テリアへと付き、着替えを済ませる。
 今日は花さんが休みだそうで店長と絵里さんに仕事を教えてもらう。
 店長はあまり表に立たず後ろで事務作業やケーキなどの仕込みを行なっている。
「あんた、体調はどう?」
「だ、大丈夫です、この間はご迷惑をおかけしました」
「別に暇だし大丈夫よ、店長も心配してたよ」
 絵里さんやみんな心配してくれる。体調管理は気をつけないとと感じた瞬間だ。
 今日も相変わらずお客さんはほぼいない。
 レジに立つこと1時間、誰かが入ってきた。
 常連の勝己さんだった。
「あれ、茉莉花ちゃんだっけ?この間は大丈夫だった?」
 世間は狭いのか、みんな私が体調を崩したことを知っている様子だった。
「はい、大丈夫です」
「そっか、ならいいんだけど、茉莉花ちゃんのコーヒーもらえる?」
 そう言われコーヒーをいれる。絵里さんじゃなくていいのかな。
 そう思ったが、絵里さんにも淹れてみなさいと言われた。

 出来上がったコーヒーを勝己さんの元へと運ぶ。
「お、お待たせいたしました」
 少し震える手でこぼさぬ様、注意を払い、テーブルにコーヒーを置く。
 勝己さんは少しだけ匂いを嗅ぎ、そのまま口にした。
「うん、美味しいよ。君さすがだね、まだ入って間もないのに」
 みんな優しく褒めてくれて嬉しかった。
 
 お礼を言い席を離れようとした時に、勝己さんから声をかけられる。
「ねえ、茉莉花ちゃん、君の大学でマルチ商法の勧誘とか受けてない?」
 唐突な質問で困ったが、私はマルチ商法が何なのか分かっていなかった。
「うーん、よくわからないですけど、ないと思います」
 そう答えた。勝己は「ありがとう」とだけ言い、再びコーヒーを飲みつつ手帳を広げていた。

 私は一旦レジに戻る、もう時刻は19時に近かった。絵里さんからもう一度、レジ締め作業を教えてもらいながら作業する。
 勝己さんと常連でいつもいるお爺ちゃんから代金をもらい、レジを閉められる状況にしておいた。
 その後は誰も来なかったので店長がもう閉めるといい、少し早いがクローズの札を出し、8時前に勝己さんとお爺ちゃんも帰っていった。

「お疲れ、2人とも。今日もケーキあるよ」
そういい、店長からあまりもののケーキをもらう。絵里さんと一緒に事務所に入り着替えて帰ることにした。

「そういや、あんたさ、なんでここでバイトしようって思ったわけ?」
 絵里さんに尋ねられる。
「わ、私、カフェとか好きで、たまたま見つけて」
「へえ、そうなんだ」
 それだけだった。絵里さんは優しそうだが、所々、素っ気ない感じがする。
 着替え終わった後、途中まで一緒の道みたいなので一緒に帰ることとなった。

「ちょっとあそこでタバコ吸ってっていい?」
 絵里さんがコンビニでそういった。私は今日の晩御飯を買って帰ることにした。外に出ると絵里さんはまだタバコを吸っていた。
「ごめんね、普段、我慢しているからさ、匂い気になる?」
「い、いや、大丈夫です」
「ここ、最近さ、売ってるくせに吸う場所なくてね」
 確かに私はよく知らないが、昔に比べると喫煙者の人口も減り、屋内なども商業施設ではほとんど吸う場所はない。私は田舎の出身だから、その辺で吸ってる人も見かけたが、こっちにきてからは少なく感じる。
「あんた、少しは慣れた?」
「え、はい、少しは……」
「ならいいんだけど、何かあったらすぐ言いなよ」
「は、はい」
 絵里さんがタバコを吸い終わると、また歩き出して帰り道に戻った。

「あんた、少しおどおどしてるけどさ、堂々としたら、まあ気持ちはわかるんだけどね」
「わ、わかりました」
「実はね、私もあんたからどう見えてるかわかんないけどさ、学生の頃はあんたみたいだったよ」
 意外な言葉だった。絵里さんは活発というかヤンチャな雰囲気を感じていたからだ。
「そ、そうなんですね、どうしたら変われますか?」
「自信をつければいいんじゃない、ちょっとずつでも自分を受け入れていくことね」
 自分を受け入れる、その言葉に衝撃を打たれたような気分だ。
 確かに私は自分自身に自信がない。自分が嫌いなわけではないが。

 家まで近づくと絵里さんは「私はもう少し向こうだから」といい、去っていった。

 家に帰り、先ほど買ったご飯を食べながら絵里さんに言われたことを思い出していた。
 自信をつけるか、どうしたらいいのかな。考えても今の私にはわからなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

イケメンにフラれた部下の女の子を堪能する上司の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【今日も新作の予告!】『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼
現代文学
元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌の3作目になります。 今回のお題は「闇スポーツ賭博」! この春、メジャーリーグのスーパースターの通訳が起こした「闇スポーツ賭博」事件を覚えていますか? 日本にも海外「ブックメーカー」が多数参入してきています。 その中で「反社」や「海外マフィア」の「闇スポーツ賭博」がネットを中心にはびこっています。 今作は「闇スポーツ賭博」、「デジタルカジノ」を稀世ちゃん達が暴きます。 毎回書いていますが、基本的に「ハッピーエンド」の「明るい小説」にしようと思ってますので、安心して「ゆるーく」お読みください。 今作も、読者さんから希望が多かった、「直さん」、「なつ&陽菜コンビ」も再登場します。 もちろん主役は「稀世ちゃん」です。 このネタは3月から寝かしてきましたがアメリカでの元通訳の裁判は司法取引もあり「はっきりしない」も判決で終わりましたので、小説の中でくらいすっきりしてもらおうと思います! もちろん、話の流れ上、「稀世ちゃん」が「レスラー復帰」しリングの上で暴れます! リング外では「稀世ちゃん」たち「ニコニコ商店街メンバー」も大暴れしますよー! 皆さんからのご意見、感想のメールも募集しまーす! では、10月9日本編スタートです! よーろーひーこー! (⋈◍>◡<◍)。✧♡

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

くすぐり奴隷への道 FroM/ForMore

レゲーパンチ
現代文学
 この作品は、とある18禁Web小説を参考にして作られたものです。本作品においては性的描写を極力控えた全年齢仕様にしているつもりですが、もしも不愉快に思われる描写があったのであれば、遠慮無く申し付け下さい。  そして本作品は『くすぐりプレイ』を疑似的に体験し『くすぐりプレイとはいったいどのようなものなのか』というコンセプトの元で作られております。  インターネット黎明期の時代から、今に至るまで。  この道を歩き続けた、全ての方々に敬意を込めて。  それでは、束の間の短い間ですが。  よろしくお願いいたします、あなた様。  追伸:身勝手ながらも「第7回ライト文芸大賞」というものに登録させていただきました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

処理中です...