上 下
11 / 13
1部

1-11 サークル活動

しおりを挟む
    6月21日 土曜日
 今日は今月2回目のサークル活動日だ。活動内容は1回目にあった時のような河川敷のゴミ拾いだ。
 だいぶ気温も上がってきており、外を歩くだけでじんわりと汗が滲む季節だ。
 里見と駅で待ち合わせしている。午前10時になろうとした時に駅に着いた。
「おはよう、今日は暑いね」
「お、おはよう、夏って感じだね」
「こんな日にゴミ拾いか、きついね」
「で、でも、それでBBQする人とかが快適に慣れば」
 そんな会話をしつつ改札を通り駅のホームへ降りる。
 今日は前回よりも少し大きな川でのゴミ拾いだ。

 電車で30分ほど移動する。揺られながら景色の移り変わりを見ていると里見が話しかけてくる。
「ねえ、バイト始めたんでしょ。楽しい?」
「うん、楽しいよ。それなりに覚えて来たところかな」
「いいなー、私も何かやろうかな?」
 里見は一人暮らしだが実家からの仕送りが手厚いようで、私よりも広い部屋に住んでいる様子で、食費、交友費なども全て仕送りで賄っている。
「里見は何が好きなの?」
「そんなこと言われてもなぁ、飲食店は嫌かな、忙しそうだし」
 それには私も同意見だ。優子の話を聞く限りではやはり夜や土日は忙しそうだ。
「何か、こう、クリエイティブな仕事がいいな」
「クリエイティブ?」
 思わず聞き返した。
「地味な作業とか、命令されるだけの仕事は嫌かな」
 里見はそういった。世の中の大半はそういう仕事だとは思うが、あえて私は何も言わずに頷いた。
「茉莉花は将来的にどんな仕事がしたい?」
「私は、ううん、なんだろう。改めて言われると何も思い浮かばないや」
 将来の夢、仕事、それは生きてる上で来て然るべき現実だ。本音を言えば文芸に関わる仕事がしたくて文芸学部に入ったが、だからと言って得意な分野があるわけでもなかった。里見の何気ない質問に対して言葉が詰まってしまった。

 そんな話をしていると目的地の駅に着いた。駅から出て10分ほど歩くと広い河川敷に出た。
 先輩たちの姿を探す。少し遠くにいたようだった。
 手順は前回と同じで、指定の区域を広い交代で休憩を取る。
 
 私と里見含めた1年生、2年生組は河川敷を降りた川に近い部分から土手付近にかけて細かいゴミも見逃さずに拾い続けた。
 黙々と作業すること2時間、佐野さんに声をかけられた。
「おお、しっかりとしてて偉いね」
「さ、佐野さん、お疲れ様です」
「俺たちもある程度終わったからご飯にしていいよ」
「わ、わかりました」
 今日はBBQをしたりなどはしないので、私と里見は近くのファミレスでお昼を取ることにした。

 メニューを見て、適当に注文する。
「ねえ、あんたさ、佐野さんとはどうなのよ」
 不意に聞かれ、水が喉に詰まる。
 むせかえる私を見て、里見はやれやれと言った様子だった。
「その調子じゃ進展はないようね」
 里見はなかなかに鋭かった。
「これと言って何か誘う口実もないし、サークルは月に2回くらいだし」
「そんな事ばっかり言っててもどうにもならないわよ、私が狙っちゃうぞ」
 確かに私よりも里見の方が可愛いし、そう言われると何も言い返せないが、気持ちでは負けたくなかった。
「わかった、食事に誘ってみる」
「おお、思い切ったね」
 完全に里見のペースに乗せられてしまっていた。
 食事が運ばれて来たので、手をつけながらしばしの休息と談笑を楽しんだ。

 午後16時、今日の活動が終了した。
「みんなお疲れ様、これ一本ずつ持っていってよ」
 そう言われ、皆にエナジードリンクが手渡された。
 なぜか、鼓動が早くなる。脳があのドリンクを見ただけで興奮しているような感覚に襲われる。早く飲みたい、少しでも口に含みたい、気づけばそんなことを考えていた。
「おーい、茉莉花、大丈夫?」
 里見の声で我に帰った、私はどうしちゃったのだろうか。
「ご、ごめん、少し疲れただけ」
「ボーとしてたよ、疲れたなら帰ろ」
 そういいドリンクをもらって、佐野さんに挨拶をして帰ることにした。
 もっと話したいが今日、このタイミングでは難しそうだった。
「ねえ茉莉花、これ飲んだことある?」
「う、うん、少し」
「そうなんだ、なんか怪しいし、私こういうドリンク苦手だからあげる」
 茉莉花にとっては嬉しい話だ、なんせ結構な値段がするからだ。
 里見は飲んだことがないらしい、おすすめしようとも思ったがやめておいた。
 家へ帰り、夕方の事を思い出す。少し不安に駆られたが、ドリンクを飲めばすぐにどうでも良くなっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ぐれい、すけいる。

羽上帆樽
現代文学
●時間は過ぎる。色を載せて。 近況報告代わりの日記帳です。描いてあるのは、この世界とは別の世界の、いつかの記録。とある二人の人生の欠片。1部1000文字程度、全50部を予定。毎週土曜日に更新します。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

イケメンにフラれた部下の女の子を堪能する上司の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

おむつ体験実習レポート

yoshieeesan
現代文学
以下は、看護や介護の職場の研修で時たま行われる研修に対するレポートの一例です。当然課題である実習レポートに複製して用いたりはしないでください。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【今日も新作の予告!】『偽りのチャンピオン~元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌VOL.3』

M‐赤井翼
現代文学
元女子プロレスラー新人記者「安稀世」のスクープ日誌の3作目になります。 今回のお題は「闇スポーツ賭博」! この春、メジャーリーグのスーパースターの通訳が起こした「闇スポーツ賭博」事件を覚えていますか? 日本にも海外「ブックメーカー」が多数参入してきています。 その中で「反社」や「海外マフィア」の「闇スポーツ賭博」がネットを中心にはびこっています。 今作は「闇スポーツ賭博」、「デジタルカジノ」を稀世ちゃん達が暴きます。 毎回書いていますが、基本的に「ハッピーエンド」の「明るい小説」にしようと思ってますので、安心して「ゆるーく」お読みください。 今作も、読者さんから希望が多かった、「直さん」、「なつ&陽菜コンビ」も再登場します。 もちろん主役は「稀世ちゃん」です。 このネタは3月から寝かしてきましたがアメリカでの元通訳の裁判は司法取引もあり「はっきりしない」も判決で終わりましたので、小説の中でくらいすっきりしてもらおうと思います! もちろん、話の流れ上、「稀世ちゃん」が「レスラー復帰」しリングの上で暴れます! リング外では「稀世ちゃん」たち「ニコニコ商店街メンバー」も大暴れしますよー! 皆さんからのご意見、感想のメールも募集しまーす! では、10月9日本編スタートです! よーろーひーこー! (⋈◍>◡<◍)。✧♡

くすぐり奴隷への道 FroM/ForMore

レゲーパンチ
現代文学
 この作品は、とある18禁Web小説を参考にして作られたものです。本作品においては性的描写を極力控えた全年齢仕様にしているつもりですが、もしも不愉快に思われる描写があったのであれば、遠慮無く申し付け下さい。  そして本作品は『くすぐりプレイ』を疑似的に体験し『くすぐりプレイとはいったいどのようなものなのか』というコンセプトの元で作られております。  インターネット黎明期の時代から、今に至るまで。  この道を歩き続けた、全ての方々に敬意を込めて。  それでは、束の間の短い間ですが。  よろしくお願いいたします、あなた様。  追伸:身勝手ながらも「第7回ライト文芸大賞」というものに登録させていただきました。

処理中です...