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第7章 レインの不可思議な行動
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「レイン様、本日は美味しいお食事をありがとうございました。」
ユミルはその晩もレインの部屋に行くと、レインに満面の笑みでお礼を告げた。
「満足したか?」
「はい!」
ユミルは深く考えずに淀みなく答えた。
レインはユミルのその答えに満足そうに頷く。
「ならば、明後日の予定はなしで良いな。」
「…え?」
(…明後日?あぁ!ウィリアム・アンバー様との約束!)
ユミルは夕食の衝撃ですっかり忘れていたが、もともとパエリアはウィリアムと食べに行く約束だったものだ。
「満足したのだろう?」
「それは…そうですけど、また話しが別って言いますか…。」
「別?」
「えぇ、約束してしまいましたし。」
「約束なら、私の方から断っておこう。」
ユミルは、レインがそこまでしてこの問題に介入しようとすることが意外で目を見開いた。
いくらレインとウィリアムの職場が一緒なのだとしても、わざわざユミルの約束をレインが断るなんて、非効率にもほどがある。
「…明後日、やはり休暇は難しいでしょうか?」
ユミルは考えを巡らせた結果、レインが明後日、ユミルにお願いしたいことがあるのではないかと考えついた。
「いや、そうではないんだが…。」
ユミルの予想に反して、レインはバツの悪そうな表情を浮かべて口ごもる。
(別に、アンバー様に絶対会わないといけない!というわけではないけれど、パエリア以外にも食べたいものあるし。)
ユミルの本心はこれだ。
パエリアは大変に美味しかった。きっと他の海鮮類の料理もおいしいに違いない。
扉の近くに控えているエイドリアンはユミルの心の内がわかるのか、何とも言えない表情でユミルを睨んでいる。
「………何でもない。」
ユミルがキョトンとしている様子を見たレインは、プイと横を向き不服そうな顔をして、最後にそう言い捨てた。
「何でもなくはなさそうですけれど。」
「君の休暇だ。…私がとやかく言うべきではない。」
レインは残念そうにため息を吐いてから執務に戻ってしまった。
ユミルはレインの機嫌を損ねてしまったかと、色々と聞き出そうと話しかけたが、レインは首を横に振るばかりだった。
しかし、その翌日、ユミルはレインの行動がさらにわからなくなった。
朝から晩まで、3食すべて海鮮料理だったのだ。
ユミルが見たことも聞いたことも無いようなものまで並べられ、どれも最高に美味しい。
「バロンさん、レイン様からどんな指示があったのですか?」
ユミルは夕飯の際に、バロンに尋ねた。
海鮮料理をあまり食べたことのないユミルを思い遣ってくれたのだとしても、こんなにも高価な海鮮料理ばかり並べられるのはさすがにおかしいと思ったのだ。
「…せめて、楽しみが一つでも減れば良い、と仰っていましたよ。」
「…?」
(毎回違う料理が出てきて、私は楽しみが増えるばかりだけど?)
ユミルは納得できなくて首を傾げた。
しかし、バロンもこれ以上は言うつもりはないのか、有無を言わせない笑顔でにっこり笑うと、仕事に戻ってしまった。
ユミルはその晩もレインの部屋に行くと、レインに満面の笑みでお礼を告げた。
「満足したか?」
「はい!」
ユミルは深く考えずに淀みなく答えた。
レインはユミルのその答えに満足そうに頷く。
「ならば、明後日の予定はなしで良いな。」
「…え?」
(…明後日?あぁ!ウィリアム・アンバー様との約束!)
ユミルは夕食の衝撃ですっかり忘れていたが、もともとパエリアはウィリアムと食べに行く約束だったものだ。
「満足したのだろう?」
「それは…そうですけど、また話しが別って言いますか…。」
「別?」
「えぇ、約束してしまいましたし。」
「約束なら、私の方から断っておこう。」
ユミルは、レインがそこまでしてこの問題に介入しようとすることが意外で目を見開いた。
いくらレインとウィリアムの職場が一緒なのだとしても、わざわざユミルの約束をレインが断るなんて、非効率にもほどがある。
「…明後日、やはり休暇は難しいでしょうか?」
ユミルは考えを巡らせた結果、レインが明後日、ユミルにお願いしたいことがあるのではないかと考えついた。
「いや、そうではないんだが…。」
ユミルの予想に反して、レインはバツの悪そうな表情を浮かべて口ごもる。
(別に、アンバー様に絶対会わないといけない!というわけではないけれど、パエリア以外にも食べたいものあるし。)
ユミルの本心はこれだ。
パエリアは大変に美味しかった。きっと他の海鮮類の料理もおいしいに違いない。
扉の近くに控えているエイドリアンはユミルの心の内がわかるのか、何とも言えない表情でユミルを睨んでいる。
「………何でもない。」
ユミルがキョトンとしている様子を見たレインは、プイと横を向き不服そうな顔をして、最後にそう言い捨てた。
「何でもなくはなさそうですけれど。」
「君の休暇だ。…私がとやかく言うべきではない。」
レインは残念そうにため息を吐いてから執務に戻ってしまった。
ユミルはレインの機嫌を損ねてしまったかと、色々と聞き出そうと話しかけたが、レインは首を横に振るばかりだった。
しかし、その翌日、ユミルはレインの行動がさらにわからなくなった。
朝から晩まで、3食すべて海鮮料理だったのだ。
ユミルが見たことも聞いたことも無いようなものまで並べられ、どれも最高に美味しい。
「バロンさん、レイン様からどんな指示があったのですか?」
ユミルは夕飯の際に、バロンに尋ねた。
海鮮料理をあまり食べたことのないユミルを思い遣ってくれたのだとしても、こんなにも高価な海鮮料理ばかり並べられるのはさすがにおかしいと思ったのだ。
「…せめて、楽しみが一つでも減れば良い、と仰っていましたよ。」
「…?」
(毎回違う料理が出てきて、私は楽しみが増えるばかりだけど?)
ユミルは納得できなくて首を傾げた。
しかし、バロンもこれ以上は言うつもりはないのか、有無を言わせない笑顔でにっこり笑うと、仕事に戻ってしまった。
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