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第5章 ユミルの恋
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「エイドリアンさん、この子はケットシーのフク。仲良くしてください。」
ユミルが部屋に入ってフクを紹介すると、エイドリアンは律儀にフクに向かって頭を下げた。
『よろしく。僕はフク。』
『ふ~ん、そっか。』
『自分で言いなよ。』
エイドリアンとフクが向かい合うと、フクは独り言のようにエイドリアンに向かって話し出した。
「フク?どうしたの?」
『だって、こいつ念話で訴えかけてくるんだ。』
「え?人ってそんなことできるの?」
『いや、こいつが特殊なだけじゃない?』
フクの話にユミルは驚いて、フクとエイドリアンの間で視線を行ったり来たりさせる。
「それで、エイドリアンさんは何て言ってるの?」
『自分で聞きなよ。』
「エイドリアンさんの念話って、人に対してもできるの?」
ユミルがエイドリアンの方を向いて尋ねると、エイドリアンは肩を丸めて首を横に振った。
それを見たフクは呆れたような顔をしてみせてから、渋々、と言った様子で話し出す。
『…敬語と敬称を止めてほしいんだって。』
確かに、相手が孤児院の出身なら、平民のユミルが敬語を使わなくとも、違和感はないだろう。
エイドリアンはフクの隣で大きく頷いている。
「わかったわ。それじゃあ、改めてよろしくね。エイディー、と呼んでも良い?」
日中ずっと張り付かれてしまうなら、関係は友好にしておいた方が良い。
そう思ったユミルは距離を縮めようとそう問いかけると、エイドリアンは少しだけ見えている頬を赤らめながら、何度も頷いた。
「ねぇ、エイディー。いきなり不躾で申し訳ないのだけれど、その髪型は気に入っているの?」
ユミルはエイドリアンを一目みたときから髪形が気になっていた。全体的にふわふわの髪の毛が伸びっぱなしになっているので、前が見づらそうだ。
エイドリアンは首を横に振る。
『特にこだわりないんだってさ。』
「そうなの?それじゃあ、私が髪を切っても良い?自分の髪の毛も、フクの毛も私が切っているから、そこそこ上手にできると思う。」
ユミルがそう言うと、エイドリアンが戸惑いながらも頷いてくれたので、ユミルは早速床に古紙を敷いて、その中央に置いた椅子にエイドリアンを座らせる。
ユミルは日中、暇で仕方がないので、ついつい気になったエイドリアンの髪の毛を切りたくなってしまったのだ。
ユミルが髪の毛を切るためにブロッキングをしようと手持ちのクリップでエイドリアンの前髪を上げると、エイドリアンはびっくりしたような顔をして、慌ててクリップを外して前髪を下げ直した。
一方のユミルも、びっくりしていた。
エイドリアンの顔が人形のようだったからだ。
エイドリアンはフクと同じようなくりくりとした釣り目がちの青い瞳をしており、瞳孔も少しケットシーぽくて人間離れしている。髪の毛も相まって、ますますフクにそっくりだ。
青年、といっても差し支えないが、線が細いので、どことなく少年のような雰囲気も纏っている。
あのもさっとした格好からは想像もできなかった美貌に、ユミルは一瞬息を呑むが、それと同時に勿体ないと思った。
「ごめんね、嫌だった?」
エイドリアンは俯きながら首を小さく横に振る。
『ユミルの方が、嫌だったんじゃないかって。』
「なんで?」
『……。気持ち悪いだろって。』
フクは言いづらそうにそうユミルに伝えた。
様子を見るに、過去にそう言われたことがあったのだろう。確かに、瞳は独特な雰囲気を纏っていた。
ユミルはエイドリアンと同じ目線までしゃがんでエイドリアンに話しかけた。
「勝手に触ってごめんね。でも、誰が何と言おうとも、貴方は絶対に気持ち悪くなんかないし、とっても綺麗!私が貴方の顔だったら、毎日いろいろなところに見せびらかしちゃうくらい!…ただ、顔を見せるのが嫌なら、前髪は長くしたままにしておくよ。」
ユミルがそう言うと、エイドリアンは口をもごもごとさせた後、「大丈夫」と声を出さずに口を動かした。
「…本当に切って、良いの?大丈夫?命令じゃないのよ?」
ユミルは断られると思っていたので、戸惑いながら再確認をすると、エイドリアンは強く頷いて見せた。
「そう、わかった。とっても可愛くしてあげるからね!」
ユミルはそう言って、カットに取り掛かった。
ユミルが部屋に入ってフクを紹介すると、エイドリアンは律儀にフクに向かって頭を下げた。
『よろしく。僕はフク。』
『ふ~ん、そっか。』
『自分で言いなよ。』
エイドリアンとフクが向かい合うと、フクは独り言のようにエイドリアンに向かって話し出した。
「フク?どうしたの?」
『だって、こいつ念話で訴えかけてくるんだ。』
「え?人ってそんなことできるの?」
『いや、こいつが特殊なだけじゃない?』
フクの話にユミルは驚いて、フクとエイドリアンの間で視線を行ったり来たりさせる。
「それで、エイドリアンさんは何て言ってるの?」
『自分で聞きなよ。』
「エイドリアンさんの念話って、人に対してもできるの?」
ユミルがエイドリアンの方を向いて尋ねると、エイドリアンは肩を丸めて首を横に振った。
それを見たフクは呆れたような顔をしてみせてから、渋々、と言った様子で話し出す。
『…敬語と敬称を止めてほしいんだって。』
確かに、相手が孤児院の出身なら、平民のユミルが敬語を使わなくとも、違和感はないだろう。
エイドリアンはフクの隣で大きく頷いている。
「わかったわ。それじゃあ、改めてよろしくね。エイディー、と呼んでも良い?」
日中ずっと張り付かれてしまうなら、関係は友好にしておいた方が良い。
そう思ったユミルは距離を縮めようとそう問いかけると、エイドリアンは少しだけ見えている頬を赤らめながら、何度も頷いた。
「ねぇ、エイディー。いきなり不躾で申し訳ないのだけれど、その髪型は気に入っているの?」
ユミルはエイドリアンを一目みたときから髪形が気になっていた。全体的にふわふわの髪の毛が伸びっぱなしになっているので、前が見づらそうだ。
エイドリアンは首を横に振る。
『特にこだわりないんだってさ。』
「そうなの?それじゃあ、私が髪を切っても良い?自分の髪の毛も、フクの毛も私が切っているから、そこそこ上手にできると思う。」
ユミルがそう言うと、エイドリアンが戸惑いながらも頷いてくれたので、ユミルは早速床に古紙を敷いて、その中央に置いた椅子にエイドリアンを座らせる。
ユミルは日中、暇で仕方がないので、ついつい気になったエイドリアンの髪の毛を切りたくなってしまったのだ。
ユミルが髪の毛を切るためにブロッキングをしようと手持ちのクリップでエイドリアンの前髪を上げると、エイドリアンはびっくりしたような顔をして、慌ててクリップを外して前髪を下げ直した。
一方のユミルも、びっくりしていた。
エイドリアンの顔が人形のようだったからだ。
エイドリアンはフクと同じようなくりくりとした釣り目がちの青い瞳をしており、瞳孔も少しケットシーぽくて人間離れしている。髪の毛も相まって、ますますフクにそっくりだ。
青年、といっても差し支えないが、線が細いので、どことなく少年のような雰囲気も纏っている。
あのもさっとした格好からは想像もできなかった美貌に、ユミルは一瞬息を呑むが、それと同時に勿体ないと思った。
「ごめんね、嫌だった?」
エイドリアンは俯きながら首を小さく横に振る。
『ユミルの方が、嫌だったんじゃないかって。』
「なんで?」
『……。気持ち悪いだろって。』
フクは言いづらそうにそうユミルに伝えた。
様子を見るに、過去にそう言われたことがあったのだろう。確かに、瞳は独特な雰囲気を纏っていた。
ユミルはエイドリアンと同じ目線までしゃがんでエイドリアンに話しかけた。
「勝手に触ってごめんね。でも、誰が何と言おうとも、貴方は絶対に気持ち悪くなんかないし、とっても綺麗!私が貴方の顔だったら、毎日いろいろなところに見せびらかしちゃうくらい!…ただ、顔を見せるのが嫌なら、前髪は長くしたままにしておくよ。」
ユミルがそう言うと、エイドリアンは口をもごもごとさせた後、「大丈夫」と声を出さずに口を動かした。
「…本当に切って、良いの?大丈夫?命令じゃないのよ?」
ユミルは断られると思っていたので、戸惑いながら再確認をすると、エイドリアンは強く頷いて見せた。
「そう、わかった。とっても可愛くしてあげるからね!」
ユミルはそう言って、カットに取り掛かった。
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